みんな“マイノリティ”の自覚って、ある?

マイノリティがこの国で生きることにはさまざまな困難が存在する。
その多くは理不尽な差別や、社会制度、政策によってもたらされている。実はマイノリティではないと思っている多くの人びともそれらによって徐々に生きづらい社会となっていることに気づくことが大切だ。
自らの内なる差別や偏見、欲望が自分をダークサイドに突き落とすことを「スターウォーズ」は教えている。


(社説)
川崎ヘイト条例 差別許さぬ策を着実に
2019年12月13日:朝日新聞

 差別や排除をあおるヘイトスピーチに刑事罰を科す全国初の条例が、川崎市議会で全会一致で可決・成立した。
 16年にヘイト対策法が施行され、極端に過激な言葉を使うデモの件数は減った。一方で、手口が巧妙・陰湿化した、一部で揺り戻しがあるといった声も強く、罰則規定のない法の限界が指摘されていた。
 そんななか、在日コリアンが多く住み、そこでの反ヘイトの取り組みが3年前の対策法制定の原動力にもなった川崎市で、根絶に向けた新たな一歩が踏み出された意義は大きい。
 条例によると、公共の場所で拡声機やプラカードなどを使った差別的言動が刑事罰の対象となる。市長は有識者でつくる審査会の意見を聞いたうえで、勧告、命令を順に出し、それでも繰り返した者を刑事告発する。さらに検察と裁判所が相当と判断して初めて、最高で50万円の罰金が科される仕組みだ。
 ヘイト対策は必要だが、ゆき過ぎれば表現の自由を侵す。このため市は、6月に素案を公表し、市民や専門家の意見を踏まえて修正を施し、最後は議会の審議にゆだねた。内容、手続きとも均衡のとれたものになったと、まずは評価できる。
 ヘイトに対する制裁として最近注目されたものに、先月の京都地裁判決がある。朝鮮学校への差別的言動は刑法の名誉毀損(きそん)罪にあたるとして、男に罰金50万円を言い渡した。発言の一部に「公益性」を認めた点に、被害者側から強い批判もある。とはいえ懲役刑もあり得る罪が適用されたことは、社会に一定の抑止効果をもたらすだろう。
 厳格な規制措置を講じている国もあるが、日本国内では議論が十分に熟しているとは言い難い。そんな事情もあってヘイト対策法は、それぞれの地域の事情に応じた施策を講じるよう、自治体に求めている。
 これを受けて大阪市や東京都は、ヘイト行為をした者の氏名を公表できる条例を制定した。しかし問題の行為をした人物を特定するのは難しいなどの事情で、実施した例はまだない。
 川崎市の条例についても、実際に運用してみて、実効性はあるか、過度な制約が生じていないかなどを検証することが求められる。その営みが、他の自治体の条例づくりや法改正の論議に反映されるのを期待したい。今回まさに表現の自由とのかねあいから、ネット上の言動は刑事罰の対象から外されたが、この匿名性の高い空間への対処は、今後の重要な課題だ。
 ヘイトは、同じ社会で現に暮らす人々を日々深く傷つける。それを胸に、撲滅への歩みを着実に重ねていかねばならない。



ヘイト禁止条例 共生の土台を築くには
2019年12月13日:東京新聞

 公共の場所でのヘイトスピーチ(憎悪表現)を罰則付きで禁止する全国初の条例が川崎市議会で成立した。人の尊厳を守る実効性とともに、運用には過度な制約とならぬ歯止めも必要だ。
 川崎市では、激しいヘイトスピーチやデモが繰り返され、二〇一六年に国のヘイトスピーチ対策法が成立する契機となった。
 条例では、市内の道路や公園などの公共の場所で、特定の国や地域の出身であることを理由としての、不当な差別的な言動を禁じている。具体的には住んでいる場所から出ていくことや、生命などに危害を加えることをあおったり、人以外のものに例えるなどして著しく侮辱したりすることを指す。
 市は違反者に勧告や命令を行い、命令から六カ月以内に三回目の違反をした場合は学識者で構成する審査会に意見を聞いた上で氏名を公表、捜査機関に告発する。裁判で有罪が確定すれば五十万円以下の罰金が科される。
 インターネット上での書き込みは刑事罰の対象外だが、拡散防止に必要な措置を講ずることを市に求めている。
 今も続く差別的な街頭宣伝に恐怖や苦痛を感じている住民がいる。ネット上でのヘイト被害も深刻となっている。その現実のもとに今回の条例は成立に至った。一方で、憲法の表現の自由との兼ね合いで、懸念の声もある。
 権力による言論や表現の規制は容易に拡大しかねず、戦前は権力者側の弾圧の道具として使われたという歴史がある。ヘイトスピーチ対策法が、罰則を設けない理念法となっているのも、その反省を踏まえてのものだ。
 昨年、新宿区がヘイト対策を理由にデモで使える公園を四カ所から一カ所に減らし、表現の自由を侵害するとして議論も起きた。
 川崎市は審査会の人選や、審査基準を明確化するためのガイドラインの作成など、来年の施行に向けて、丁寧で開かれた議論を続けてほしい。施行後は、刑事罰が被害救済につながっているのかの検証も必要だろう。
 本来は差別の意識そのものをなくしていくことが一番の対策だ。外国人労働者の受け入れ拡大も始まっている。差別の扇動が横行すれば、共生社会の土台は築けない。教育など根元の部分に加えて、違いを認め合うことのできる社会の実現に向けた努力を粘り強く続けることが、私たち一人一人に求められている。



川崎ヘイト条例
 表現の自由萎縮させぬ運用を
2019年12月14日:読売新聞

 差別を煽あおり立てる言動は許されないが、表現活動を不当に制約することがあってはなるまい。
 公共の場所でのヘイトスピーチ(憎悪表現)を禁じ、違反者への刑事罰を盛り込んだ川崎市の人権条例が市議会で可決・成立した。来年7月に全面施行される。罰則付きの条例は全国初という。
 特定の国や地域の出身者らに対し、拡声機を使って差別的言動を行うことなどを禁じる。市長がやめるよう勧告、命令しても従わない場合、個人や団体名を公表し、刑事告発する。裁判で有罪になれば、50万円以下の罰金を科す。
 国として差別解消の理念を掲げたヘイトスピーチ対策法が、2016年に施行された。街頭でのデモの件数は減ったが、根絶には至っていない。外国人が多く住む川崎市では、これまで激しいヘイトデモが繰り返されてきた。
 市は、デモが行われる恐れがある場合、公的施設の利用を事前に制限できる指針も設けている。指針に加えて罰則付きの条例を定めることで、ヘイトスピーチの抑止効果を狙ったのだろう。
 国の対策法は憲法が保障する「表現の自由」に配慮し、罰則が盛り込まれていない。合法と違法の線引きは難しく、恣意しい的な運用を招く恐れがあるためだ。
 川崎市の条例では、ヘイトスピーチをやめさせる勧告や命令にあたり、市長が学識経験者で構成する審査会の意見を聞く仕組みを設けた。裁判を経なければ罰則は科されない。手続きに慎重を期したことがうかがえる。
 ただ、審査会のメンバーは市長が委嘱する。市長の政治的立場によって人選に偏りが出たり、判断が左右されたりするようなことがないか気がかりだ。
 表現に問題があるかどうかを公権力が判断する以上、具体的にどのような言動が処罰対象になるのかを、分かりやすく示す必要がある。審査の過程を透明化することが欠かせない。
 正当な表現活動まで萎い縮しゅくさせてしまうことのないよう、適正な運用に努めてもらいたい。
 匿名性が高いインターネット上の書き込みへの対応も課題だ。
 16年にヘイトスピーチ抑止条例を施行した大阪市では、審査対象の半数以上がネット上の動画や書き込みだという。ヘイトと認定した動画などについて、市はプロバイダーに削除を要請している。
 ネット上から悪意と偏見に満ちた表現をどのようになくしていくか、議論を深めねばならない。



【主張】
ヘイト禁止条例 趣旨を正しく理解しよう
2019年12月14日:産経新聞

 川崎市が全国で初めてヘイトスピーチ(憎悪表現)に刑事罰を科す条例を作った。条例は周知期間を経て来年7月、全面施行される。
 公共の場で、拡声器やビラなどで日本以外の特定の国や地域の出身者に差別的な言動をすることを禁じた。具体例として居住地域からの退去や身体への危害を扇動することや、人以外のものに例えて侮辱することを挙げた。
 違反者が勧告、命令に従わない場合、市は氏名公表と同時に刑事告発し、裁判で有罪が確定すれば50万円以下の罰金が科される。
 差別的憎悪表現が許されないのは当然だ。ただし条例には懸念もある。趣旨の解釈の「拡大」と「限定」である。市に委ねられた解釈が拡大されれば、正当な言説による批判が対象となる可能性が否定できない。条例の適用には慎重な運営が求められる。
 禁止行為の対象者が「本邦外出身者」に限定されているため、日本人は憎悪表現の対象ではないとの誤解を生む恐れもある。
 条例は日本人に対しても「不当な差別的言動による著しい人権侵害が認められる場合には必要な施策、措置を検討する」などとする付帯決議を盛り込んだ。法的拘束力はないが、その意思は尊重されなくてはならない。



日本で初、
ヘイトスピーチ“処罰”条例を制定
2019年12月12日:ハンギョレ新聞

在日コリアンが多く居住する川崎市 
違反すれば最高罰金50万円
2017年7月、神奈川県川崎市の平和公園で市民が「共に幸せに」と書かれた横断幕を持ち
ヘイトスピーチ反対デモをしている様子=資料写真//ハンギョレ新聞社

 在日コリアンが多く居住する川崎市の市議会が、嫌韓デモをはじめとする「ヘイトスピーチ」(特定集団に対する公開的差別・嫌悪発言)をした者を処罰できる条例を制定した。日本国内でヘイトスピーチ“処罰”を盛り込んだ法規が制定されたのは今回が初めてだ。
 日本の首都圏にある神奈川県川崎市議会は12日、本会議で公共の場所において日本以外の国や地域の出身者とその子孫に対して差別的言動を繰り返した場合、最高罰金50万円(約546万ウォン)を賦課する内容を骨格とする条例案を通過させた。来年7月から施行される。“差別的言動”とは、拡声器やプラカードを使い日本以外の国や地域にルーツを持つという事実を理由に、居住地退去や生命・自由に対する威嚇を扇動・告知することと規定した。人を人間以外のものに比喩し侮辱する行為も該当する。川崎市は、極右団体の嫌韓デモが頻発している所だ。「朝鮮人は日本から出て行け」のような文句を拡声器を通じて叫び、時には命を威嚇する言葉もはばからなかった。
 日本政府は、嫌韓デモが激しくなると、2016年に「ヘイトスピーチ防止法」を制定したが、処罰規定のない宣言的な法に終わった。東京都など一部の地方自治団体でも、ヘイトスピーチ防止条例を制定したが、処罰規定がないのは同じだった。川崎市は処罰規定を盛り込んだが、実際の処罰までには数々の手順を踏まなければならない。市長がヘイトスピーチをした団体や個人に対し、一次的に中止を“勧告”し、勧告に従わない場合に2次中止“命令”を下す。命令にも違反する場合、市長が検察に加害者を告発し、捜査を経て処罰することができる。ただし、インターネット上のヘイトスピーチは今回の条例でも処罰対象から除外された。
東京/チョ・ギウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/920616.html



性同一性障害と職場
 意識改革迫った地裁判決
2019年12月14日:毎日新聞

 戸籍上は男性だが女性として生きる性同一性障害の職員に対し、女性トイレの使用を制限した経済産業省の対応について、東京地裁が違法とする判決を出した。
 判決は、自ら認識する性別で社会生活を送ることは、重要な法的利益として保護されると明言した。その意義は大きい。
 LGBTなど性的少数者の働く環境に関する初の司法判断だった。
 職員は専門医に性同一性障害と診断されたが、健康上の理由で性別適合手術を受けられなかった。女性ホルモンの投与を受け、女性として勤務していた。
 経産省は、抵抗を感じる同僚がいるとして、職員に執務室から2階以上離れた女性トイレを使うよう求めた。人事院もこの対応を追認した。
 判決は、職員が女性として認識されている半面、制限の理由は抽象的で正当化されないと指摘した。
 性同一性障害の人が働きやすい職場環境の重要性が、社会で意識されてきていることも挙げた。国に賠償を命じ、人事院の判定についても妥当性に欠けるとして取り消した。
 国は判決を受け入れ、率先して職場環境を改善すべきだ。
 体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーの認知度は高まっている。オフィスの全フロアに誰でも入れるトイレを設けるなど、配慮する取り組みを実施した企業もある。
 ただし、働く環境の改善はまだ途上だ。金沢大などの調査では、トランスジェンダーの4割が、使いたいトイレを利用できていなかった。周囲の人々に抵抗感が残っているとの結果も出た。
 判決は、こうした現状に意識改革を迫ったものだ。社会全体で、性的少数者への理解を深め、多様性を尊重し、誰もが生きやすい環境づくりを進めていかなければならない。
 性同一性障害特例法は戸籍上の性の変更に際し、性別適合手術を要件としている。手術は心身の負担が大きく、改正を求める声が強い。
 最高裁は今年1月、手術要件を合憲と判断した。しかし、4人中2人の裁判官は、手術なしでも変更を認める国が増えており、手術要件には違憲の疑いが生じていると補足意見で言及している。これについても議論を進めるべきだろう。



性同一性障害訴訟
 当事者勇気づけた 原告喜び
2019年12月13日:毎日新聞

判決後に記者会見する原告の経済産業省職員=東京・霞が関の司法記者クラブで12日、吉田航太撮影

 性的少数者に配慮した職場環境への改善が争われた訴訟の12日の東京地裁判決は、性の多様性を尊重し、性同一性障害の原告の請求を認めた。原告は「同じ当事者を勇気づける司法判断だ」と喜び、支援者も「判決を性的少数者の人権擁護につなげてほしい」と訴えた。【巽賢司、服部陽】

 12日夜、東京・霞が関の司法記者クラブ。記者会見した経済産業省職員の原告は「トランスジェンダーには、さまざまな人がいる。多くの職場で(改善に向け)前向きに取り組んでほしい」と力を込めた。
 職員は幼い頃から、性別が男性であることに違和感があった。入省後の1998年ごろから女性ホルモンの投与を受けるようになり、性同一性障害との診断を受けた。2010年に女性として働き始め、翌年には戸籍名も変更。だが、職場でのトイレの利用制限は改まらなかった。
 「裁判を通じて平等な社会になってほしい」との願いを込め、15年に提訴。しかし、訴訟中も経産省は改善に動かず、「間違いを認めない姿勢」が見て取れたという。同じ立場の性的少数者のためにもと4年に及んだ裁判を闘い、判決を得た。
 職員は「個人に応じた柔軟な対応が必要だと認めた判決で、非常にいい判断。安堵(あんど)した」と表情を和らげた。同じ立場の当事者を鼓舞するきっかけになると前向きに捉え、「大切なのは人権を重視した対応。他の女性と同じように扱ってほしい」と訴えた。

働く環境、改善遅れ

 性同一性障害など性的少数者の社会での認知度は近年になって高まっている。2015年には東京都渋谷区が同性カップルを対象にした「パートナーシップ制度」を導入するなど、官民の取り組みも進んでいる。
 民間のLGBT総合研究所が今年11月に発表した調査結果によると、トランスジェンダーの人の割合は全国の20~69歳の1・8%。一方で、性的少数者を指す「LGBT」を知っている人は91%に上り、16年調査の54・4%から大きく上昇した。
 ただ、認知度の高まりが、必ずしも性的少数者が働きやすい職場環境づくりにはつながっていないとの見方もある。
 同研究所の森永貴彦代表によると、特に体と心の性が一致しないか違和感のあるトランスジェンダーの人は、多くの職場で健康診断やトイレ・更衣室の利用時にストレスを感じているという。「のぞき」と誤解されることもあるため、性的指向や性自認についての説明を職場で強いられるケースもあるという。
 日本IBM(東京)は、性別を問わず利用できるトイレを25階建ての本社ビルに24カ所設置。性的少数者向けの相談窓口も設けた。ただ、スペースや資金面の問題もあり、こうした動きは一部企業に限られる。経団連の17年の調査では、企業から「性的少数者への対応に関するガイドラインの策定」を求める声が多く寄せられた。

「大きな一歩」

 性的少数者を支援するNPO法人グッド・エイジング・エールズの松中権代表は判決について「大きな一歩。判決は、性的少数者の職場環境を整えるために何をすべきか考える指針になる。性的少数者は認知度こそ高まっているが、理解が進んでいるとは言いがたい。性的少数者の人権が守られ、自分らしく働ける社会の実現につなげたい」と話す。



「自認する性別で生活、重要」
社会の柔軟さ求めた判決
2019年12月12日:朝日新聞

 自分の認識する性別で社会生活を送ることは、重要な法的利益だ――。女性として生き、女性トイレの自由な使用を求めた経済産業省職員の訴えに対し、12日の東京地裁判決は、社会の意識の変化を踏まえて、多様性を尊重していく重要さを明確に示した。勝訴した職員は社会全体に理解が広がるよう願った。
 自分の認識する性別で生きる。そんな多数派には当然の権利が、生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーには十分保障されていない。それだけに、「真に自認する性別に即した社会生活を送れることは重要な法的利益」「国家賠償法上も保護される」と指摘し、経産省の対応やそれを追認した人事院の判定を違法と認めた今回の判決の意義は大きい。
 原告は11年かけて女性ホルモンの投与を進め、私生活で化粧や女性用の服に慣れていった。女性への「社会的性別移行」ができたと感じてから、女性トイレの使用など女性職員としての処遇を申し出た。上司には「残りの人生、自分により正直に生きたい」と思いを伝えた。
 皮膚の病気などで、予定していた性別適合手術は受けられていない。経産省は、原告が手術を受けず戸籍上の性別を変更していないことを理由に、硬直的な対応に終始。他の女性職員との間にトラブルが生じる恐れがあるとして、職場から2階以上離れた女性トイレを使うことや、異動したら同僚の女性職員に性同一性障害だと説明して理解を得るよう「強制的なカミングアウト」(原告)を求めた。
 性的少数者への配慮から大企業や公共施設では性別に関係なく使える多目的トイレなどの設置が進むが、原告のように自認する性別のトイレ使用を望む人も多い。ただ、周囲への配慮などから職場や学校が認めないケースが絶えない。
 金沢大の岩本健良准教授(ジェンダー学)が企業と共同で行った2017年の調査では、トランスジェンダーが性自認に沿ったトイレを使うことについて、非当事者の計35%が「どちらかといえば抵抗がある」「とても抵抗がある」と答えた。
 それでも判決は、他の職員への配慮などを考えても「直ちに自認する性別のトイレの使用を制限することは許されない」と個々の事情や社会状況を踏まえた対応を求め、今回のケースでは「原告の法的利益の制約を正当化できない」と判断した。経産省のような処遇は「意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約する一面もある」と、性別適合手術を強いるかのような対応も問題視した。
 今の性同一性障害特例法では、性別適合手術を受けて精巣や卵巣を切除し、生殖機能を失わなければ、戸籍上の性別は変えられない。心身への負担の大きさから手術を受けず、原告のように外見を変えても戸籍を変えられない人は多い。大阪府立大の東優子教授(性科学)は「手術を受けていない、戸籍が変わっていないという形式論で、小中学校でも性自認に沿ったトイレの使用が認められない現状がある。判決の意義を踏まえ、職場や学校や地域社会で性自認を尊重した対応がいっそう広がることを望みたい」と話した。(二階堂友紀)

判決のポイント

・自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益として保護され、トイレの使用制限はこの制約にあたる
・経済産業省の要求に従えば、女性を自認している原告が女性用トイレを使うには、意思に反する性別適合手術を強いることになる
・同僚の女性職員への配慮は必要であり、自認する性別に合わせたトイレの使用が国内外で画一的に認められているとまでは言えないが、個々の具体的な事情や社会状況の変化を踏まえて判断すべきだ
・性同一性障害の診断を受けた原告は社会生活上、女性と認識される度合いが高く、国民の意識や社会の変化、諸外国の状況などに照らせば、抽象的なトラブルの可能性を理由に原告の利益を制限することは正当化できない
・「手術を受けないなら男に戻ってはどうか」という上司の発言も違法だ
     ◇

性同一性障害

 生まれた時の性別と自認する性別が一致せず、持続的に苦悩がある状態の診断名。生まれた時と異なる性別で生きる人をトランスジェンダーと呼ぶ。性同一性障害特例法では①20歳以上②結婚していない③未成年の子がいない④生殖腺や生殖機能がない――などが戸籍上の性別を変える要件で、精巣や卵巣を切除する性別適合手術が必要になる。心身や金銭面の負担が大きいため、社会的に性別を変えて暮らしていても、戸籍上の性別を変えられない当事者が多い。



反社会的勢力の定義困難
「お困りであれば警察に」
 16日午前の菅官房長官会見詳報
2019年12月16日:毎日新聞

記者会見で質問に答える菅義偉官房長官=首相官邸で2019年12月16日午前11時27分、川田雅浩撮影

 菅義偉官房長官の16日午前の記者会見では、首相主催の「桜を見る会」に反社会的勢力(反社)が出席した疑惑に関連し、政府が「反社の定義は困難」と閣議決定したことを受け、企業から懸念が出ているとの質問が出た。菅官房長官は、政府が2007年に反社を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」と定めた指針は「まったく変わっていない」と述べたうえで、反社との関係について「お困りであれば警察にご相談いただければ」と語った。主な一問一答は以下の通り。
記者「国民の理解広がっていないが」


記者会見で質問に答える菅義偉官房長官=首相官邸で2019年12月16日午前11時20分、川田雅浩撮影

 ――各種世論調査で「桜を見る会」に関し、「首相が十分に説明しているとは思わない」が83%、「政府のこれまでの説明に納得できない」が75%――といった結果が出ている。長官は最近、「懇切丁寧な説明」を掲げているが、理解は広がっていない。受け止めと、理由をどう分析するかお伺いします。
 ◆あの、世論調査について、個別のコメントは差し控えたいと思いますが、結果を謙虚に受け止めてですね、国民の皆様の声に耳を傾けながら、ま、一つ一つ丁寧に対応していきたい、このように思います。
 ――長官は13日午後の会見で、内閣官房が首相枠など政治家に絡む推薦者名簿を廃棄したのは、「桜を見る会」終了後1週間程度のうちだったと述べました。(「時期は特定できない」と言っていたのに)急に説明に転じた理由は「何度も聞かれるので改めて確認した」とのことだが、「桜を見る会」の問題を巡っては、何度も伺わないと事実を確認したり説明したりしていただけないのでしょうか。逆に言えば、何度も伺えば新しく説明していただけるんでしょうか。
 ◆そんなことはありません。

「お困りであれば警察に」

 ――反社の定義が困難と閣議決定したことについて伺います。北海道新聞の取材では、道内の自動車販売会社の現場から、反社と判断して取引停止した場合、相手に「定義を示せ」と言われ、訴訟や慰謝料を求められかねないとの不安が聞かれた。07年の政府指針を根拠にマニュアルを作成していて、政府が及び腰では困るとも訴えた。長官は11日の記者会見で、現場の混乱の可能性はないとおっしゃったが、混乱もあるように思うが、いかがでしょうか。
 ◆あの、指針は全く変わってませんから。指針はその通りであります。ただ、その暴力団をはじめ、反社会的な勢力と関係の遮断のためにですね、これは全力で取り組んでいく中での判断でありまして、指針については全く変わってません。ですから、それに基づいて行うわけでありますけど、個別の件でお困りであればですね、それは警察、関係省庁、ご相談いただければ、そこはしっかり対応していきます。
 ――今、話題になった推薦者名簿だが、会の実施から1週間後に廃棄したという新たな事実は先週の会見で出てきた。「桜を見る会」を巡ってはさまざまな議論が指摘されているが、長官が調査の指示を出せば、こういった問題の解明はさらに進んでいくのではないかと思うが、この点お考えいかがでしょうか。
 ◆いろんなご質問に今まではお答えをしてきているんじゃないでしょうか。できるだけ言われたことについては、丁寧に対応していきたい。こういうふうに思ってます。

記者会見で質問を受ける菅義偉官房長官=首相官邸で2019年12月16日午前11時28

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