今年は「未忘年会」で締めくくる

「餅を食っても」、「桜騒動」はつづく。
国会が閉幕しようが、年がかわろうが、この問題が象徴する「アベ政治」の基調を国民は許してはならない。
世の中がいかに「アベっても」、放置し続ければ未来を失うからだ。


社説[臨時国会閉幕]「1強政治」の劣化進む
2019年12月11日:沖縄タイムス

 野党議員の質問に正面から答えず、ごまかしたり、はぐらかしたりする政権の姿勢が極まった国会だった。政治は劣化し、「言論の府」は機能不全に陥り、三権分立は破綻の危機にひんしている。
 臨時国会が閉幕した。
 安倍晋三首相は閉幕後の記者会見で、後半国会最大のテーマとなった「桜を見る会」について、招待者が膨れ上がったことなどを「大いに反省する」と述べたが、疑惑の核心には触れずじまいだった。
 首相主催の桜を見る会を巡る問題は多岐に及ぶ。
 まず焦点になったのは税金で賄われる公的行事に、首相の後援会関係者が多数参加したことである。「功績、功労のあった方々」という招待基準の無視は明らかで、私物化との批判は免れない。
 さらに預託商法を展開し破綻した「ジャパンライフ」の元会長が招かれ招待状が宣伝に利用されたことや、反社会的勢力が参加した疑いももたれている。
 真相解明に必要な招待者の全容が明らかにならないのは、内閣府が野党議員から資料要求のあった直後に名簿をシュレッダーにかけたためだ。なんとも釈然としない話である。
 後日、バックアップデータが残っていたことが分かったものの、政府は「バックアップデータは行政文書に該当しない」と詭弁(きべん)ともいえる説明を繰り返した。
 疑惑を解明したいという意思があれば、首相自らがデータの復元などを指示することもできたはずだ。
 おざなりの対応に終始する姿は、説明責任からはほど遠い。
■    ■
 政治とカネの問題を巡り、10月に辞任した菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相の疑惑も解明されないままである。
 辞任に際し「説明責任を果たしたい」と述べた両氏だったが、その後、国会を欠席し続け、約束は果たされていない。
 不適格な人物を大臣にした任命責任は首相にある。「任命した者として責任を痛感している」と反省を口にした以上、本人に説明するよう指導するのが責任を取るということではないか。
 政府に自浄能力がないのなら、問題を指摘し監視するのは国会の役割だ。
 野党が申し入れた臨時国会の会期延長を与党が突っぱねたのは、疑惑に向き合おうとしない「言論の府」の劣化である。
■    ■
 閉幕を受けての記者会見で首相は、憲法改正について「必ずや私の手で成し遂げていきたい」と改めて強い意欲を示した。
 共同通信社が11月下旬に実施した全国電話世論調査で、桜を見る会に関する首相発言を「信頼できない」と答えた人は7割近くに上った。
 森友、加計学園問題の時もそうだったが、これら問題が浮き彫りにするのは、公的な情報を隠し、責任を曖昧にする政権の体質である。
 安倍政権の姿勢に世論の厳しい目が向けられている。疑惑を晴らす努力をしない首相に、改憲を語る資格はない。



<社説>桜を見る会巡る疑惑
 不問に付してはならない
2019年12月13日:琉球新報

 これほど誠意を欠いた政権がかつてあっただろうか。桜を見る会を巡る政府の対応は国民を愚弄(ぐろう)している。
 臨時国会が召集されて間もなく、安倍晋三首相は、こう宣言した。「野党からも謙虚で丁寧な首相と言ってもらえるよう、努力を重ねる」
 口先だけだったことはその後の展開を見ればはっきりする。野党が求める予算委員会の集中審議を与党は拒否した。会期延長にも応じず、結局、何一つ説明責任を果たさないまま、臨時国会は閉幕した。
 2014年に約1万3700人だった桜を見る会の出席者が今年は約1万8200人に達した。各界で功績や功労のあった人などを慰労する催しに、安倍首相の後援会関係者が多数出席していた。国費で接待したことになる。
 預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」元会長が首相推薦枠で招かれた疑いがある。反社会的勢力と指摘される人物まで出席したとみられている。
 14年に約3千万円だった支出も今年は約5500万円に増えた。全て国民の税金だ。適正だとは思えない。会計検査院は厳格に検査すべきだ。
 だが、招待者の名簿は共産党議員が関連資料の提出を求めた日に破棄された。不適切な実態を隠蔽(いんぺい)するためとしか考えられない。
 首相は臨時国会の閉幕後の会見で、桜を見る会の全般的な見直しを自身の責任で行う考えを表明した。
 肝心の招待者の名簿が廃棄されているのに、どうやって見直しができるのか。支離滅裂としか言いようがない。
 菅義偉官房長官は、名簿が残っていないか改めて調査するかを会見で問われ「紙も電子データも全て削除していると報告を受けており、新たな調査を行うことは考えていない」と述べた。国民の疑問に背を向けているようにしか見えない。
 小泉政権が2001年に国会議員への文書提供に関する答弁を閣議決定している。「行政文書として存在しない場合であっても、必要に応じ要求内容に沿った資料を新たに作成して提供することがある」とする。この政府見解に照らせば、招待者名簿は当然復元されるべきものだ。
 天皇・皇后主催の園遊会は各界の功績者約2千人が招かれる。宮内庁は招待者を公表し名簿を30年保存している。功労者などとして桜を見る会に招待された人たちを非公開にする理由は全くない。
 首相は、憲法改正について「必ずや私の手で成し遂げていきたい」と表明した。不正が疑われる政権に国の最高法規の改正を論じる資格があるとは思えない。数々の疑惑に対し、根拠を示し、説明をするのが先決だ。
 「前夜祭」を含め、さまざまな問題が一切解明されないまま不問に付されるなら権力を握った者は何をしても許されることになってしまう。国民の規範意識が問われている。



(社説)安倍政権 道理失う ご都合主義
2019年12月13日:朝日新聞

 無理が通れば道理が引っ込むという。道理ある政治を手にするには、理屈にあわぬ政権の説明は見過ごせない。
 「桜を見る会」をめぐる安倍政権の弁明は詭弁(きべん)に満ちている。その最たるものが、「反社会的勢力」の定義をめぐるやりとりであろう。
 この会に反社会的勢力とみられる人物が参加し、要人と撮影した記念写真まで流布している。対象は功績・功労があった人という趣旨に反しており、事実なら、なぜ招かれたのかを究明するのは当然だ。
 しかし、政府は招待者名簿を廃棄済みで確認できないというのみならず、野党議員の質問主意書に対し、反社会的勢力を「あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難」との答弁書を閣議決定した。
 政府が07年にまとめた「指針」には、反社会的勢力は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」とある。今回の決定は、指針に従って関係遮断に取り組む企業に対し、はしごをはずすような行為ではないのか。
 菅官房長官は記者会見で、犯罪が多様化しており、定義で固めると、かえって取り締まりを難しくすると補足したが、反社会的勢力が招かれていたことを認めたくないがためのつじつま合わせにしか聞こえない。
 「行政文書」の定義についての説明も納得できない。
 紙の招待者名簿は野党議員が資料要求した直後にシュレッダーにかけられ、電子データも前後して削除された。しかし、バックアップデータは最長8週間、保存される仕組みだった。
 データの復元が可能だったにもかかわらず、そうしなかった理由として、菅氏は「バックアップデータは行政文書ではない」と言い切った。行政機関の職員が組織的に利用できない状態なので、公文書管理法が定める定義に当たらないというが、それでは何のためのバックアップなのか。廃棄を正当化するために、手前勝手に定義を狭めているというほかない。
 安倍首相の妻の昭恵氏による招待者推薦に関連して、首相夫人が「私人」であるという見解も維持された。首相の外国訪問に同行し、政府職員がサポート役につく夫人に公的な性格があることは明らかだ。もとをただせば、森友問題で昭恵氏の関与が取りざたされた時に「私人」との答弁書が閣議決定された。昭恵氏を疑惑から切り離し、説明責任を回避することが優先されたのではないか。
 当座の責任逃れのために、ご都合主義で言葉の定義をゆがめる。その先にあるのは政治不信だけだと、首相は知るべきだ。


税金そして国家の「私物化」
 桜を見る会何が問題か 前編
2019年12月14日:毎日新聞

2019年の「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相=コラージュ

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」問題。「前夜祭」「首相枠」「名簿の廃棄」「60番」「ジャパンライフ」――。新しいキーワードが次々と噴出するあまり、混乱している人も多いに違いない。「いつまでやっているのか」「もっと大事なことを取り上げろ」との声も聞こえてくる。しかし、その批判は違う、とあえて言いたい。今回の問題には日本という国の根幹に関わる問題が凝縮されているからだ。では、いったい何が本質なのか、2回にわたって考えたい。前編は東京・新宿御苑で開かれた「桜を見る会」本体について。【江畑佳明/統合デジタル取材センター

税金で支援者を「接待」

2017年の「桜を見る会」で、招待者にあいさつして回る安倍晋三首相の妻昭恵氏
=東京都新宿区の新宿御苑で2017年4月15日、竹内紀臣撮影

 「桜を見る会は国の公式行事で、当然税金が使われています。そこに首相個人の支援者を多数招待したとなると、首相が税金を自分の財布にしたようなものです」
 そう表現するのは、田中信一郎・千葉商科大准教授(政治学)だ。田中氏はかつて、新党さきがけの田中秀征衆院議員、中村敦夫参院議員の秘書を務め、民主党政権で内閣官房国家戦略室上席政策調査員として政府の仕事に携わった。その後も長野県総合政策課企画幹などを歴任し、政治や行政の現場をよく知っている。
 「本来、税金は国民全体の福祉や公益のために使われるものです。にもかかわらず、桜を見る会では、それが個人的な支援者の接待に回されていたというわけです」
 首相らが自由に招待者を選べたのかどうかについて菅義偉官房長官は当初「総理枠、政治枠といった特別なものはない」と、否定していたが、結局、今年は首相推薦の招待者が約1000人、さらに自民党推薦が約6000人いたことを認めた。そしてこれらの「枠」は、実はもっと多かったのではないか――というのが、今取り沙汰されている疑惑だ。
 招待者の中に「60」という数字が振られた案内状を受け取った人たちがいる。野党は内閣府の資料から首相枠を示す番号の可能性が高いとみており、その後に2000や3000番台の番号のついた案内状を受け取った人もいることから「首相枠は本当は1000人以上いたのではないか」と疑っている。

ジャパンライフの宣伝チラシに印刷された2015年の「桜を見る会」招待状と受付票。
受付票には「60」と「2357」という番号が続いて記されている=共産党提供

 そして、マルチ商法が社会問題となり、強制捜査を受けた「ジャパンライフ」元会長、山口隆祥氏もその中に含まれていた疑惑が浮上している。

「何が悪い」相次ぐ発言

 だが、首相に近い人物や自民党幹部からは、支援者を招くことの何がいけないのかと言わんばかりの発言が相次いだ。安倍首相の秘書だった前田晋太郎・山口県下関市長は11月18日の記者会見でこう述べた。

定例記者会見で「桜を見る会」についての質問に答える山口県下関市の前田晋太郎市長
=下関市で2019年11月18日、近藤綾加撮影

 「選挙で勝って、主催になって、多くの方に喜んでもらえるのは悪いのか」
 「何十年も頑張って応援してきた議員がトップをとって、招待状が届いて、『今まで応援してきてよかったな』となるのはよいのでは」
 自民党の二階俊博幹事長も11月12日の記者会見でこう言った。「誰でも議員は、選挙区の皆さんに機会あるごとに、できるだけのことを呼びかけて参加いただくことに配慮するのは当然だ」「(議員枠が)あったって別にいいんじゃないですか。何か特別問題になることがありますか」
 これらの発言は、安倍首相や自民党議員の支持者には「ウチの先生は人情に厚い」と響くかもしれない。だが、民主党政権時代に当時の首相側近や党幹部が同じことを言ったとしたらどうだろうか。
 田中氏は言う。「首相が支援者のために税金を使うのは不公正です。政権維持のために接待したことになる。これはどんな政党が政権に就いても同じこと。主義主張は関係ありません」

私費で有権者接待は犯罪

 では、税金ではなく、首相のポケットマネーなら支持者を接待していいのか。答えはノーだ。それは公職選挙法で禁止されている買収という行為になる。
 選挙の時に有権者に「飲ませ食わせ」、いわゆる供応接待をして候補者や陣営幹部が公選法の買収罪などで起訴される例は国政、地方を問わずある。さらに、候補者が直接関係していなくても、陣営幹部の有罪が確定すれば連座制が適用されて当選が無効になることもある。それだけ買収は厳しく禁じられているのだ。
 それはなぜか。公選法の罰則規定に詳しい立命館大学法科大学院の松宮孝明教授(刑法)は言う。
 「選挙は民主主義の基本です。有権者が政党や候補者の主張を判断したうえで自由な意思による投票で行われなければなりません。ですが、供応接待をすれば、有権者が誘導されて票を入れてしまう可能性があります。これではカネで民主主義がゆがめられてしまう。だから罰則を設けて禁止しているのです」
 つまり、民主主義の根幹に関わる問題なのだ。

飲食物は総額2191万円

 今年の桜を見る会では、次のような飲食が提供された。小西洋之参院議員(無所属)の問い合わせに内閣府が答えた。
 それによると、料理は▽山菜がトッピングされた茶そば3000食▽老舗惣菜店が実演で提供した焼き鳥7000本▽タケノコご飯・赤飯各7000食▽フライドチキン4500個――だった。飲み物は▽安倍首相の地元・山口県の銘酒として知られる獺祭(だっさい)を含む日本酒40本▽たる酒4たる▽甘酒・紅茶・緑茶(それぞれホット)各2500杯――など。このほか、和菓子と洋菓子の詰め合わせがそれぞれ1万8000パック用意されるなど、業者との契約総額は2191万3232円だった。

買収にならないのか

 なかなか豪華なメニューだが、これらのもてなしは買収にならないのか。
 政府は「招待者は最終的に内閣官房及び内閣府で取りまとめており、推薦された人がそのままではない」(大西証史・内閣審議官の国会答弁)として、飲食物提供は買収にあたらないとの見解だ。
 だが、松宮氏の見方は違う。「買収に当たると考えていいと思います。『安倍晋三』という衆院議員が自身の後援会を使い、自分の選挙区の有権者を招いて利益を与えた。後援会は国会議員を応援して当選させる目的の組織なので、公選法の買収罪における『当選を得させる目的をもって』の部分に該当します。捜査機関は本腰を入れて捜査をすべきです」
 また、今年の桜の会には今夏の参院選で改選だった議員に多くの枠が割り当てられていた。選挙を控えた議員の枠を増やし、そこに後援者が多数参加していたなら、やはり「同じように公選法違反の可能性が出てくる」(松宮氏)という。

「私人」昭恵氏に推薦枠

 こうした状況から浮上してきたのが、「私物化」というキーワードだ。
 例えば、首相夫人の安倍昭恵氏にも推薦枠があることが明らかになっている。しかし、政府は2017年3月に「首相夫人は私人」と閣議決定し、今年11月29日にも「首相夫人は公人でなく私人との認識は変わりない」との答弁書を改めて閣議決定した(熊谷裕人参院議員=立憲民主=の質問主意書への回答)。この答弁書は、昭恵氏が桜を見る会に出席したのは「首相の公務の遂行を補助する一環」とも記している。

「桜を見る会」で招待客たちと記念撮影する安倍晋三首相夫妻(中央右)
=東京都新宿区の新宿御苑で2019年4月13日、喜屋武真之介撮影

「森友・加計」との共通点

 しかし、前出の田中・千葉商科大准教授は「私人なら公的行事への招待者は推薦できないはず。夫婦で税金を私物化しているとの批判は免れない」と指摘する。そして「首相の『私物化』は今回が初めてではない」とも。
 それは「森友・加計問題」だ。森友学園問題では安倍首相の支援者だった籠池泰典理事長(当時)が設立を予定していた小学校の用地として、国有地が大幅に値下げされた。首相の妻昭恵氏はこの小学校の名誉校長に一時就任していた。加計学園の加計孝太郎理事長は首相の友人。その学園の大学獣医学部開設の手続きが、加計学園に有利に扱われた疑いがある。
 田中氏は言う。
 「これらは税金というより、首相の権限が私物化されたケースです。税金も権限も、となれば、安倍首相は国家を私物化しているということになります」

潔白が証明の名簿破棄

 それらに付随する形で深刻な問題となっているのが、公文書の廃棄だ。
 今年の桜を見る会にいったい、どんな人物が何人参加したのか。政府が潔白を主張するのであれば、招待者の名簿さえ公開すればすぐに証明できる。だが、内閣府は名簿を5月9日に大型シュレッダーで細断して廃棄したと説明している。

桜を見る会の招待者名簿を廃棄した内閣府の大型シュレッダー

 捨てた理由について政府は、招待者名簿は保存期限が1年未満の文書であり、「個人情報を含んだ膨大な文書を適切に管理する必要が生じるため、内閣府は遅滞なく廃棄している」(菅官房長官の国会答弁)などと説明している。
復元「考えていない」
 だが、名簿がシュレッダーにかけられたのは、宮本徹衆院議員(共産)が桜を見る会について内閣府に資料を請求した約1時間後だった。証拠隠滅を図ったのではないかと疑われても仕方のないタイミングだ。しかし、内閣府は「連休前に予約を入れたら5月9日しか取れなかった」(酒田元洋・官房総務課長)と繰り返し、偶然だったとの主張を貫いている。
 三権分立制の日本では、国会には行政をチェックする責任がある。要求された資料を行政が破棄したのでは国会はチェック機能を果たせず、形骸化しかねない。
 野党の追及で、政府は紙の名簿を処分した後も電子データがしばらく残っていたことは認めた。コンピューターのデータは削除しても記憶媒体に残っていることが多く、技術的に復元できる場合があることが知られている。だが安倍首相は12月2日の参院本会議で「復元不可能」と答弁。12月10日には中谷一馬衆院議員(立憲民主)の質問主意書に対し「復元することは考えていない」との答弁書を閣議決定している。

公文書は政府の所有物ではない

 公文書管理法の1条はこううたっている。
 「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」

安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、乾杯する安倍首相(後列左)、
公明党の山口那津男代表(同右)、菅義偉官房長官(中列右から3人目)
=東京都新宿区の新宿御苑で2019年4月13日、代表撮影

 公文書は政府の所有物ではなく、主権者である国民と共有しなければならないという理念だ。公文書も税金で作られる。都合が悪いからと意図的に公文書を捨てたり削除したりしていたとしたら、それは民主主義をないがしろにする行為にほかならない。
 「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」――と、菅官房長官も自著「政治家の覚悟 官僚を動かせ」(文芸春秋企画出版、2012年)で指摘している。旧民主党政権下、東日本大震災に関する会議の大半で議事録が残されていなかったことを批判した一文である。



安倍首相は“テフロン加工”
桜を見る会、海外の反応は「えこひいき」
2019年12月14日:毎日新聞

米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、安倍政権下で、
政府文書が次々に廃棄される事態に疑問を投げかける

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る一連の問題は、海外メディアでも安倍政権や日本政界の体質を表す問題として多く取り上げられた。「えこひいき」「秘密主義」「緩み」。そんな言葉と共に、11月20日で通算在職日数が歴代最長となった安倍首相を皮肉る記事も多い。【外信部・前谷宏、ソウル渋江千春、北京・河津啓介】

英BBC(電子版)は、後援会関係者を多数招待していた安倍政権の「えこひいき」体質を指摘する

「政府文書の秘密主義的な取り扱い方」

 「議論を呼んだ国費のパーティーの招待者名簿は? 廃棄された。首相官邸への訪問者リストは? 廃棄された。自衛隊が(南)スーダンやイラクで直面した脅威を記した日報は? 最初は廃棄されたと説明されたが、後で見つかった」
 こうした書き出しで桜を見る会を取り上げたのは11月27日付の米紙ワシントン・ポストだ。「安倍政権の政府文書の秘密主義的な取り扱い方」として、共産党の宮本徹衆院議員が桜を見る会の招待者名簿を要求した5月9日当日、名簿がシュレッダーにかけられた経緯を詳報した。
 ポスト紙は一方で、米国では大統領が作成したり受け取ったりした文書はすべて、歴史的記録として公文書館に保存されることにも言及。トランプ米大統領はすぐに文書を破ってゴミ箱に捨てる癖があるが、その紙片を組み合わせて復元するチームもあるとした米メディア「ポリティコ」の報道も取り上げ、「日本は情報公開において他の西側民主主義国に長い間、後れを取ってきた」と指摘した。

「えこひいき」スキャンダルを生き抜く「テフロン加工の首相」

 安倍首相が地元後援会関係者を多数招待していた桜を見る会に関しては、「cronyism(えこひいき)」という単語を使って紹介する英語メディアが多い。例えば、来年の桜を見る会が中止されたことを報じた英BBCの見出しは「えこひいき非難の渦中で日本は桜パーティーを中止する」だった。

「桜を見る会」で、招待者との記念写真に納まる安倍晋三首相(右端)
=東京都新宿区の新宿御苑で2015年(平成27年)4月18日、長谷川直亮撮影

 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙も11月16日、「安倍氏は、(森友、加計問題という)二つのえこひいきの問題を生き抜いた(スキャンダルに強い)『テフロン加工』の首相とされてきたが、(在職期間が史上最長となる)歴史的な週を国会で自分の身を守るために費やさないといけないようだ」と指摘。「親政府系」の読売新聞の社説でも「長期政権ゆえの緩みが背景にあるのではないか」と指摘されていることを紹介した。

首相の「障害者雇用職員が廃棄」発言は「日本の態度を象徴」

 桜を見る会の招待者名簿を廃棄したのは「障害者雇用職員」だったと安倍氏が明かしたことを批判的に取り上げたメディアもあった。ロイター通信は、日本ではツイッター上などで、日本の中央省庁で障害者雇用が水増しされていた問題や相模原市の障害者施設で入所者19人が殺害された事件と併せ「日本における(障害者への)態度を象徴している」などの意見が出ていることを報じた。
 桜を見る会を巡る安倍政権の対応について、隠された意図を分析する記事もある。11月13日付の米ブルームバーグ通信は、来年の桜を見る会の中止が決まったことを「日本の安倍氏は日米貿易協定のために桜の木をおので切った」と表現。「今国会における安倍氏の最優先事項はトランプ政権が来年1月の発効を望んでいる日米貿易協定の承認だった」とし、対米関係を意識して問題の早期収束を図ったという見方を示した。
 一方、バングラデシュの英字誌ダッカ・クーリエは12月6日付のコラムで、安倍政権が早期収拾を図ったのにもかかわらず支持率が低下し、改憲手続きを定める国民投票法の改正も難しくなったことを指摘。一部メディアで安倍氏が1月に総選挙に打って出るのではという観測が流れていることにも触れ、「総選挙はリスクがないわけではない。(改憲発議に必要な全議員の)3分の2(の勢力)を確保できなければ、安倍氏が長年温めてきた目標(憲法改正)を達成することなく退陣を余儀なくされる状況となる」と指摘した。

韓国、中国は安倍首相の苦境ぶりにフォーカス

「桜を見る会」や「前夜祭」を巡る問題について記者団の質問に答える安倍晋三首相
=首相官邸で2019年11月15日午後6時40分、川田雅浩撮影

 韓国では、桜を見る会を巡る疑惑そのものよりも、安倍政権の今後や憲法改正の行方に関心が集まっている。
 朝鮮日報は、日本の一部メディアが麻生太郎副総理兼財務相が海上自衛隊の潜水艦に体験搭乗していたことを批判的に報じたことにも触れながら、毎日新聞が今月2日に発表した世論調査を引用し、安倍内閣を「支持する」が前回調査より6ポイント減って42%となったことを「急落」と報道。疑惑の影響が長引いた場合、安倍氏が衆議院を解散し、総選挙に踏み切ることを考えるとの観測が政界で出ていると伝えた。
 通信社ニューシスは、野党の会期延長要求を与党が拒んで臨時国会が9日に閉会したと報じる中で、桜を見る会や2閣僚の辞任にも触れ「安倍内閣が打撃を受けた」と分析した。また、国民投票法改正案が継続審議となったものの、自民党は引き続き改憲を目指していると指摘。安倍氏の総裁任期である2021年9月までは改憲が可能だとする日本の新聞報道を引用して見通しを伝えた。
 一方、中国主要メディアは、日本の報道を引用する形で安倍政権の苦境を伝えている。だが、独自の論評記事など踏み込んだ報道は見当たらない。
 2012年に第2次安倍政権が発足してから数年は、日中関係の悪化を反映し、中国メディアは安倍氏に対する厳しい報道が続いた。だが、最近は関係改善の動きが本格化し、攻撃的な論調は減少。来春には習近平国家主席が国賓待遇で訪日する予定であり、中国側は友好的な雰囲気作りを重視している模様


桜名簿「復元しないのは違法」
 元公文書管理委の弁護士指摘
2019年12月12日:東京新聞

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、元公文書管理委員会委員長代理で、行政文書の管理に関するガイドラインの改定に携わった三宅弘弁護士が本紙のインタビューで「国会議員が資料を要求したのに復元しないのは公文書管理法に違反する」と明言し、法改正も含む抜本的な改革を政府に求めた。内閣府が招待客名簿の保存期間を一年未満にしたことも「情報隠しと疑われても仕方ない。官僚の劣化だ」と痛烈に批判した。 (妹尾聡太、清水俊介)
 内閣府は今年の招待客名簿の書類と電子データを「五月に破棄した」と説明。当時は共産党議員が関連資料を請求した直後で、外部にバックアップ(予備)データが保存されていたが公表せず、現在も「復元は不可能」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)との立場を崩していない。
 政府のこうした対応について、三宅氏は「招待客名簿の廃棄を正当化するために、今まで積み重ねてきた情報公開法と公文書管理法の運用をねじ曲げている。その場しのぎで実に見苦しい」と批判し、政府が今後もガイドラインに沿わない不適切な運用を続けるのであれば「公文書管理法の抜本的な改正をしなければいけない」と強調した。
 ガイドラインが「重要または異例な事項に関する情報を含む」文書などについて、保存期間を一年以上に設定するよう定めていることを踏まえ「保存期間一年未満の文書でも、議論になれば(一年以上保存の)歴史公文書として残す必要がある」とも語った。
 菅氏が予備データについて、職員が業務に使用できず「組織共用性」を欠くため、行政文書に該当しないと説明したことに対しては「ものすごく解釈が狭い。バックアップは万が一のために組織で共用している。行政文書だ」と明言した。
 安倍政権の文書管理の姿勢については「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源なのに、権力維持のために情報をコントロールしている」と指摘した。
(東京新聞)




熊本被災地視察後「全国に50の高級ホテル」
菅氏、復興軽視「無神経」の声
まだ仮設暮らしの人いるのに
2019年12月11日:東京新聞・ニュースの追跡

 菅義偉官房長官が視察先の熊本県で、外国人誘致のため「全国に高級ホテルを50カ所建設する」と発言した。熊本地震の傷も癒えない復興途上の被災地で、富裕層重視を打ち出す発言。「無神経」と怒りの声が上がっている。                               (佐藤直子)

 「ふざけるなって話ですよね。まだ仮設住宅で不便な生活を続けている人もおられるのに…」。熊本市を拠点に被災者支援を続ける「こころをつなぐよか隊ネット」の佐藤彩己子(あつこ)代表は菅氏の発言を知り、怒りが収まらなかったという。
 佐藤さんは、2016年の熊本地震から、子ども食堂を運営したりして、困窮者の支援に関わってきた。今はひとり親家庭の支援に力を入れ、自家用車のトランクに米や卵など食材を積んでは各家庭に届けて回る。
 「みなさん、家が壊れたり、仕事を失ったり、病気になったり、いろんな事情を抱えているのに、それでもなかなか助けてとは言えないんですよ」
 菅氏の発言は7日、震度7を観測した同県益城町で飛び出した。地表面に断層が現れた同町の現場や南阿蘇村の崩落した橋を訪ねた後、記者団に「自信の発生前以上に、地域の賑わいを取り戻し、地域経済を活性化することが重要。特に観光産業は成長産業だ」と強調。「わが国は世界レベルのホテルが不足している」と指摘し、財政投融資制度などを活用して、全国にスイートルームを多く含む高級ホテルを50カ所程度新設することを目指すとした。
 菅氏は、外国人観光客を誘致する観光事業にご執心だ。政府が15年にスタートさせた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」作業部会で座長を務める。官公庁観光産業課の坂野修一課長補佐は、「日本はアジア諸国に比べ5ツ星ホテルが少ないと以前から指摘されていた。菅官房長官の発言は、こうした流れから出た」と説明する。
 熊本にも高級ホテルがやってくるのか。県知事公室は高級ホテルについて「何も聞いていない」というが、「もしも建設されたなら、震災復興の後押しになる」と期待を抱く。

住民置き去り 宿泊業 人手不足拍車の恐れ

 しかし、被災地の傷はまだ癒えていない。高級ホテルが復興支援になるのか、中小宿泊業者は戸惑う。阿蘇地区で旅館を営む男性は「熊本で発言することじゃないですよ」と不快感をあらわに。周辺は地震で大きなダメージを受け、数カ月は温泉が止まった。国道や鉄道の復旧もまだ終わっていない。
 「震災で廃業したホテルもある。高級ホテルが熊本にできたとしても、われわれのような旅館とは客層が違うから、客の取り合いにはならないだろうが、従業員など人材の引き抜きなどが始まる。人手不足に拍車がかかる」
 熊本地震の被災者の人権問題に取り組んできた熊本学園大水俣学研究センターの井上ゆかり研究員(社会福祉学)も、憤りを隠さない。
 「傷跡の残る益城町の現状を見た後に、よく高級ホテルの話ができるなと、無神経さに言葉が出ない。高級ホテルが熊本に建設されても、それで収益をあげる人はごく一部。県民全体の底上げになる話ではない。国としては何かと復興の印象づけをしたいのだろうが、住民が置き去りになるばかりだ」



「事前に記事見せろ」仰天要求 その後
新宿御苑「強制しない」
環境省「小の対応と違う」
2019年12月12日:東京新聞・こちら特報部

 「掲載前に記事を全文見せてほしい」。桜を見る会で何かと話題の新宿御苑(東京都新宿区)が先日、「こちら特報部」の取材に条件を付けてきた。取材歴20年前後のベテランが居並ぶ特報部でも、公的機関からこんなことを言われた記者はいない。なぜ、あり得ない条件を持ち出したのか。それにしても取材や表現活動を巡る最近の世の中は息苦しい。              (中沢佳子、大野孝志)

 取材をしたのは11月22日。翌23日、「桜を見る会に一言 騒動の舞台 新宿御苑で聞く」の見出しで掲載した。御苑を訪れた記者に聞くと、そこにいた職員は丁寧に対応してくれたそうだ。記者は「急だったのに、感謝している」と話している。
 なのに、園内にある環境省新宿御苑管理事務所に「1日の来園者数」を電話で訪ねると、あり得ない条件を出された。
 「メールで取材の趣旨と質問内容を送ってもらいたい。それから、事前に原稿を見せることが回答の条件だ」。電話口の女性はそう答えた。なぜそんな必要があるのかとただすと、「記事に御苑の歴史や開園時間などが書かれる場合、事前確認のためにお願いしている」とのことだった。
 憲法は検閲を禁じている。公的機関にチェックさせろと言われ、応じる記者がいると思えない。3週間近く過ぎた11日、改めて事務所に質問した。
 電話口の女性は「ケース・バイ・ケースです。でも、間違った情報が広がってはいけないですから」。百歩譲ってそうだとしても、御苑側が答えた部分以外も見せるなんてあり得ない。重ねて問うと「…ちょっとお待ちください」。電話の相手が男性に変わった。
 事務所庶務課の見川崚さんが説明する。「開園時間や固有名詞を確認するため、特に印刷物は事前に確認させてほしいと伝えている。新聞と雑誌、社によっても対応は違う。断られることもある。検閲になるので強制はしない」
 そう言うので、改めて来園者数を聞いた。「時期によって違うが、桜のころは1日70000人ぐらい」。ちなみに原稿は見せていない。
 ならばなぜ、あの日は質問に答えなかったのか。「間違った情報で多くの問い合わせがきて、対応に困ったこともある。窓口が定型的な対応をしてしまった」桜を見る会の影響でもなく、現場レベルで行き届かなかったということ。こういう時の決まり文句だ。釈然としないので、上部機関の環境省に突撃した。
 25階の広報室。待っていると、棚にびっしり並んだ文書のファイルが目に入った。背表紙に今話題の保存期間が記されている。ほとんどが「5年」だが、中には「1年」も。そこへ川久保康範室長補佐がやってきた。
 「賞としての対応とは違う」。川久保氏は御苑の対応を否定した。「お願いベースならあるかもしれない。ただ、省の政策関連も含め一般記事を見せろということはない」。川久保氏はその理由を「事前検閲になるので」と説明した。
 ただ、例外が一つあるとも。大臣の個別インタビューだ。「掲載まで時間がかかることが多い。発言で触れたデータが最新の数値で変わることや、事実関係、言葉の確認の必要もある。行数の関係で発言が切り取られて違うニュアンスになることもある」
 掲載前の確認を条件にインタビューの調整をするという。そして、川久保氏は苦笑しながら「今の(小泉進次郎)大臣になってからは、特にお願いしている」と語った。

取材や表現活動 増す息苦しさ
>内閣府「多忙」で記者門前払い
>映画女性「公益性」で取り消し
>政権上層部に忖度「過剰防御」

 首をひねる報道対応はほかにもある。
 菅義偉官房長官は4日の会見で、桜を見る会の出席者名簿についての説明に窮し、職員のメモを持つことが何度もあった。内閣府は6日、「桜を見る会」の取材窓口を案内した。
 それより前の2日、特報部の記者が内閣府に取材を申し込んだときは、交換台の女性が「担当者が外出中で対応できない。戻り時間もわからない」と門前払い。説明しようという気すらうかがえなかった。
 話を表現活動へと広げると、行政のおかしな対応はまだまだ出てくる。もちろん、その代表は「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」だ。展示で抗議や放火予告が相次いだ後、の9月、文化庁は芸術祭への約7800万円の補助金不交付を発表した。
 直後に「日本下術文化振興会(芸文振)」が、助成金の交付要綱を改めた。芸術や文化の振興活動に助成する文化庁所管の独立行政法人だ。
 新要綱は、交付を取り消せる場合として「公益性の観点から不適当と認められる場合」を明記した。不自由展と歩調を合わせたとしか思えないが、芸文振の裏山晁生企画調整課長は「無関係」と強調する。
 ちなみに、芸文振側の説明では、1000万円の助成が内定していた映画「宮本から君へ」を巡るトラブルが改訂のきっかけだった。
 出演者の一人がピエール瀧・元被告。麻薬取り締まり法違反で執行猶予付きの有罪判決を受けた。芸文振が判決後、制作会社スターサンズ側に助成の辞退や再編集を持ち掛け、応じてもらえなかったため取り消した。その後要綱を改訂した。
 同社の河村光康社長は怒っている。「配役は映画表現の根幹。それが理由の不交付は表現の自由を制限し違憲、違法」として、提訴する構えだ。「助成金が欲しいわけではない。憲法軽視の大きな流れへの抵抗です」
 外務省は10月末、オーストリア友好150周年のウィーンでの芸術展で、大使館公認を取り消した。茂木俊充外相は会見で「相互理解と友好促進という要件を満たしていない。作品の表現の自由に関する評価を行うものではない」と説明した。ただ、取り消しの前に、ネット上で「展示が反日的だ」と批判されていた。
 こんな流れはしばらく前から始まっていたと言う人も。不自由展に天皇制を扱った絵画を出展した小泉明朗氏(43)は、6年ほど前に開かれたイタリアでの展覧会を振り返る。
 外務省所管の独立行政法人「国際交流基金」が関わっていた。映像作品の「慰安婦、南京大虐殺という言葉を削ってほしい」と、基金の要望として学芸員から告げられたという。
 小泉氏は「議論を投げかけるのが芸術の大きな役割。なのに、調和を重んじる今の社会では、先回りして問題を起こすことを止めてしまう。芸術はプロパガンダに利用されやすく、政治と距離を置かなければならない」と語る。
 自由なはずの報道や芸術に役所が横やりを入れるのはなぜなのか。
 「役所はなるべく議論を起こさないようにするのが仕事。芸術や取材との間には、もともと緊張関係がある」と東京大大学院の明戸隆浩特任助教(社会学)は語る。
 そして、明戸氏は「もめ事の原因がネットやSNSで可視化されるようになった。国や政権の印象を操作したい上層部の願望を現場が忖度するあまり、過剰に防御する。事なかれ主義で主体性や自主性がない現場は、上層部が強く押し出すことになる」と指摘した。

デスクメモ
 「遺族に配慮して」と被害者を匿名にする役所が増えている。台風19号のときは「遺族取材をしないなら」という条件で報道各社に知らせたところもあった。どちらも取材制限だ。この時、義母を亡くし、意向確認もなく匿名とされた。「遺族」は、面倒を避ける口実ということか。         (裕)



参院議員宿舎の家賃、庶民感覚と大きなズレ
2019年12月12日:東京新聞

都心の超一等地に位置する参院清水谷議員宿舎(手前中央)。奥はホテルニューオータニ
=東京都千代田区で、本社ヘリ「おおづる」から

 老朽化に伴って建て替え中の参院清水谷議員宿舎(東京都千代田区紀尾井町)の家賃が、参院議院運営委員会の理事会で決まった。国会議員宿舎の家賃は、これまでも相場に比べて格段に安いとの批判が絶えなかったが、今回も同じような金額になった。国会議員の意識は、どうしてこうも一般と乖離しているのか。(稲垣太郎)

◆紀尾井町の新築3LDKが15万8600円

 東京メトロ赤坂見附駅を出て間もなく。八階建ての建設中の建物が目に飛び込んでくる。道路の向かいにあるのは、安倍晋三首相の後援会が「桜を見る会」の前夜祭を開いた会場として注目を集めたホテルニューオータニ。周囲には値段の高そうな飲食店や高層ビルなどが立ち並び、鳥の鳴き声を聞きながら憩いのひとときを過ごせそうな公園もある。国会まで歩いて十分余りという立地だ。
 五十六戸が入る清水谷宿舎は来年三月に入居が始まる。それを前に決まった家賃は、3LDK(八十一平方メートル)が月十五万八千六円、1LDK(五十六平方メートル)は同十万九千二百三十九円。参院事務局によると、国家公務員宿舎法施行令に基づいて他の議員宿舎に比べて高い基準になったというものの、地元不動産会社の女性社員は「八十一平方メートルの3LDKの新築なら約四十万円、五十六平方メートルの1LDKでも三十万円近くはする」と話した。

◆他にも都心の一等地、いずれも相場の数分の一

 議員宿舎は他に、参院の町(千代田区)、衆院の新赤坂(港区)と青山(港区)がある。いずれも国会から数キロ圏内という都心の一等地にありながら、家賃は清水谷同様、相場の数分の一。〇七年に二十八階建ての新赤坂宿舎ができた際は、「豪華批判」を恐れた一部議員が一時期、民間の賃貸住宅で暮らす珍現象が起きている。
 議員宿舎はもともと、地方選出の国会議員のために建てられたもので、入居できるのは都内や近郊に住居がない場合に限られる。議員宿舎は必要だとしても、多額の税金を投入している現状には根強い批判がある。
 また、国会議員には年約二千二百万円の歳費が支払われるほか、非課税の上に使途の公開義務がない「文書通信交通滞在費」が月百万円支給されている。新幹線のグリーン車を含めてJRを無料で利用できるパスが配られたり、地元が東京から遠い議員は三~四往復分の航空券が無料になったりもする。どんなに業績が良い企業でも、単身赴任をしている社員らにここまで大盤振る舞いするケースはないだろう。

◆政治ジャーナリスト「国民目線になってない」

 政治ジャーナリストの野上忠興氏は「自分で宿舎を借り、『実質的に小遣いになっている』とやゆされる文書通信交通滞在費を充てればいいという意見もある。人口や経済が小さくなり、これからさらに先細りするといわれる中、歳費や交通費などを含め、国会議員のあらゆる待遇を見直す時期だ」と訴える。
 先月来、「桜を見る会」を巡り、税金の使い道に対する国民の目が改めて厳しくなっている。政治ジャーナリストの原野城治氏は「国会議員が、税金の使い道をコントロールするという自分たちの役割を果たさなくなっている。国民目線になっていないから有権者は納得できず、政治に関心をなくしていく。もっと議論を深めていくべきだろう」と主張した。


消費増税で景気が
東日本大震災直後に次ぐマイナスに!
来年はさらに悪化が確実、
追い詰められる安倍政権
2019年12月11日:ハフィントンポスト

 臨時国会が閉幕した。安倍首相ら政権幹部は「桜を見る会」問題の追及から「逃げ切った」と胸をなで下ろしている。年を越えればオリンピックイヤーとなり、国民もメディアも五輪特有のナショナリズム一色に染まる。“お祭りムード”に浮かれた世論は、政権が喧伝する「戦後最長の景気回復」を実感し、政権の不祥事やスキャンダルへの関心は消える──と踏んでいるのだろう。
 だが、そうは問屋がおろさないかもしれない。一番の理由は、10月の消費増税から始まった“大不況”の気配にある。これまで「経済政策の成果」を大看板にし、国民の不満や批判をかわそうとしてきた安倍政権だが、今後はそのフェイクがまったく使えなくなるからだ。
 なぜかマスコミは大きく報道していないが、消費税率10%への引き上げ以降、景気は目も当てられないくらい落ち込んでいる。日本は、安倍政権によって谷底に突き落とされたと言っていいぐらいだ。
 たとえば、今月6日に内閣府が発表した10月の景気動向指数(速報値)では、景気の現状を示す一致指数が前月比5.6ポイント減の94.8で、実に6年8カ月ぶりの低水準だった。前月比マイナス5.6という下落幅は東日本大震災の2011年3月(マイナス6.3)に次ぐ数値で、8年7カ月ぶり。安倍政権が消費税率を5%から8%に引き上げた2014年4月(マイナス4.8)をゆうに超える下がり幅である。基調判断は3カ月連続で景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」となり、しばらく景気の下落は止まらないだろう。
 経産省や財務省が発表した10月の産業・貿易等に関する統計も景気の低調を物語る。商業動態統計(経産省)の10月速報値をみれば、商業販売額は前年同月比9.1%の減少(卸売業=10%減、小売業=7.1%減)。これも前回2014年4月増税時を大きく超えるマイナスだ。貿易統計(財務省)の10月総額速報値では輸出額が前年同月比9.2%、輸入額が14.8%の減少となっている。
 消費増税は当然、家計へも大きく影響している。総務省が今月6日に発表した10月の家計調査では、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出(物価変動を除いた実質)が前年同月比5.1%減。マイナスは11カ月ぶりで、下落幅は3年7カ月ぶりの大きさ。これまた2014年4月時(4.6%減)を上回っている。一時的な落ち込みではない。2014年の消費増税後の消費支出は13カ月連続でマイナスだったが、前回を上回る下落幅を考慮すると、買い控えが長期化する可能性はかなり高いと言わざるを得ない。

来年6月、ポイント還元制度が切れてさらに悪化。
五輪が終わると、日本経済はどん底に

 しかも、注視しておかなければいけないのは、こうした景気悪化を示すデータがプレミアム商品券とポイント還元制度という消費増税にともなう「景気対策」を施したうえでの数字だということだ。とくにポイント還元制度は中間層から富裕層の利用率が高く、格差助長の一方で、消費維持対策としては効果があったと言われていた。しかし、この制度が実施されるのは2020年6月まで。これが過ぎると、一気に消費が冷え込むのは間違いない。
 さらに、この悪夢のシナリオに拍車をかけるのが東京オリンピック・パラリンピックの存在だ。2020年は五輪で全体的に消費が伸び、指標上で景気が好転して見えるかもしれないが、これはあくまで一時的なもの。閉会と同時に打ち止めだ。消費や投資の反動が確実にやってきて、景気を直撃する。いわゆる「五輪不況」である。
 インフラ特需やインバウンドなど経済効果ばかりが強調される五輪だが、実は、歴代の夏季大会開催国の経済成長推移を見ても、大会翌年の経済成長率は大会前年を下回るケースが多い。たとえば2008年の北京大会の場合、14%台だった2007年の成長率が、大会後の2009年には9%台まで下落。日本の場合も、前回1964年東京大会の翌年には一気に経済成長率が落ち、大会前年と比較すると企業の倒産件数は約3倍にもなった。
 しかも、今回の場合は「アフター五輪不況」どころではない。前述したような経済動向のデータを見ると、来年頭から「ビフォア五輪不況」が本格化する恐れが高いのだ。
 これはたんに景気が悪くなるというだけでは済まない。経済が冷え込めば、必然的に国の税収全体が低調となり、失業保険や生活保護費など社会保障費の増大が生じる。財政は消費増税前より悪化し、“社会保障費カット”はさらに進み、貧富の格差はもっと激しくなる。待っているのは、これまで以上の財政悪化と消費減少という負のスパイラルだ。
 国民生活を一気に困窮させたうえ、逆に財政を悪化させる消費増税という愚策を断行した安倍政権には怒りしか湧いてこないが、しかし、この経済悪化はその安倍政権に対しても、大きな打撃を与えることになるはずだ。これまでどんなデタラメな政策や不正をやっても安倍政権に支持があったのは、表向き「経済が悪くない」ということをアピールしてきたからだ。しかし、さらに景気が悪化すれば、さすがにそんな詐術は使えなくなるだろう。
 そういう意味では、この消費増税による景気後退は安倍政権にとって“終わりの始まり”になる可能性があるのだ。

検察のジャパンライフ強制捜査で「桜を見る会」問題が再燃する?

 しかも、安倍政権にとっては来年、もうひとつ頭の痛い問題がある。それは「桜を見る会」問題の再燃だ。国会閉幕でこの問題の追及から逃げ切る気満々の安倍政権だが、永田町ではまったく別の見方が広がっている。ベテラン政治評論家はこう言う。
「政権のアキレス腱は、悪徳マルチ商法のジャパンライフとの関係だ。実は、永田町界隈では年明けに、検察がジャパンライフ元会長の強制捜査に踏み切るのではとの観測が広がっている。これまで政治に蓋をされ続けてきたジャパンライフ問題が、今回の『桜を見る会』問題で国民から大きな再注目をあびたことで、検察内はにわかに本気モードになっているという。仮にジャパンライフ関係者が逮捕されれば、来年の通常国会で『桜を見る会』問題は一気にぶり返す。政権は窮地に立たされるだろう」
 言葉を継げば、ジャパンライフ問題はマスコミにとっても格好のネタだ。事実、安倍首相の後援会贔屓や「前夜祭」をめぐる開催費負担問題など、私物化や身内優遇に焦点が当たった段階では、テレビのワイドショーは集中的に取り上げることに及び腰だったが、これがジャパンライフとの接点が再浮上した途端、我先にと争うようにして報じだした。
 ある民放キー局関係者は「ジャパンライフ問題で報道が盛り上がったのは、はっきり言って数字がいいから」とあけすけに語るが、ここに「強制捜査」というビッグニュースが加われば、さすがに連日連夜の大報道となるだろう。前述のベテラン政治評論家は「官邸関係者から聞いた話だが」と前置いて、こうため息をつく。
「お得意の経済政策による誤魔化しも、消費増税の悪手によって、その虚像が完全に崩壊しつつある。そんななかで解散などできない。いま、首相周辺が期待しているのは米朝交渉の決裂らしい。金正恩が核開発を本格再開し、トランプが武力行使をちらつかせ始めれば、再び“北朝鮮の脅威”を国民に喧伝することができる。そうなれば、憲法改正を訴えて、解散総選挙に臨み、あらゆる経済失政や不正をなかったことにできると踏んでいるようだ」
 国民生活を困窮させる消費増税を断行し、自らのスキャンダル隠しのために米朝関係の悪化を望み、この国を危機に陥れる。こんな亡国宰相を放置しておいていいのか。日本経済が壊滅してからでは遅すぎる。野党は一刻も早くまず、消費税減税で一致し、安倍政権を追い込むべきだろう。
(編集部)

コメント

こん

昨日は休刊
13日の金曜日、25年ほど前に千葉県高等学校教職員組合で立ち上げた「日の丸君が代」対策委員会の初めての「未忘年会」は、千葉に集まって、高級インド料理店でインドワインをぐいぐい呑みながら、大いにジジイ放談して盛り上がった。呑み過ぎたわけではないが、チョッとくたびれたので、昨日は臨時休刊としました。ご心配なく…。元気です。
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