ダメじゃんニッポン…

日本という「国」は、こんなにポンコツだったのか?
「先進国ではない」「二流国家」と呼ばれることが珍しくなくなった「日本国」だが、その素っ頓狂がすさまじい。個々の事例のポンコツぶりだけでなく、これらが総合された国家の頽廃を考えると、本当にやるせない。
現実は想像以上に過酷だ。


北海道誘致見送り
「カジノで活力」不信
「稼げても多くの不幸うむ」
集客は年839万人・雇用は1万人と試算 でも、道民の6割超「不安」
2019年12月4日:東京新聞・こちら特報部

北海道が、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致申請を見送ると発表した。誘致を予定・検討する全国8地域で初の判断。鈴木直道知事は「自然環境への影響」を理由に挙げたが、地元では政府などが喧伝する経済効果は疑わしいとの声が根強い。道の動きは、IR誘致を考える他地域に影響を及ぼす可能性があるとの見方も出ている。                      (安藤恭子、榊原崇仁)

希少生物生息 環境面を考慮

 北海道の空の玄関口、新千歳空港から7㌔ほど南に、IRの候補地だった苫小牧市植苗地区がある。3日午前に訪れると、ミズナラなどの木々が空に伸び、冬枯れの自然林に小雪が舞っていた。一帯は渡り鳥の中継地として知られるウトナイ湖に近く、ヒグマの移動ルートにも当たる。
 この場所から、希少な猛禽類オオタカや、絶滅が危惧されるクマゲラの巣などが見つかった。鈴木知事は11月29日の道議会で「候補地は希少な動植物が生息する可能性が高い。限られた期間で環境への適切な配慮を行うことは不可能」として、2021年7月が期限になっている国への誘致申請の見送りを表明。「来るべき時には挑戦できるよう準備を進める」とも述べ、今後の誘致の可能性に含みを残した。
 鈴木知事の決断に、市民団体「苫小牧の自然を守る会」の舘崎やよい代表(78)は「賢明な判断にほっとした。経済開発よりも、生態系や湿地帯といった自然環境の保護にこそ価値を見出してほしいと願ってきた」と喜ぶ。
 一方で落胆の色を隠さないのは推進派。関東より北で誘致を予定・検討していたのは道だけで。空港にも近いことから苫小牧は有力との見方があった。カナダと米国の4つのIR事業者も昨年以降、市内に事務所を設けていた。同市選出の遠藤連道議は「過疎を食い止めるには政策しかないのに、同には熱意がない。これから投じられるであろう5000億円の民間投資をどぶに捨てたようなものだ」と嘆く。
 市も同様だ。市は昨年6月、カジノに加えて国際会議などが開催できる「MICE施設」を中心としたIR構想を独自に公表。ショー、乗馬などの自然体験施設、地元の食材を生かしたレストランやホテルを組み合わせ、最大約1600億円の売り上げを見込み、うち6割がカジノの収益としていた。6年かけて取り組んできた岩倉博文市長は11月29日の記者会見で、「ただただ、残念としか言いようがない」と悔しさをにじませた。

会議場の採算 議会も疑問視

 ただ、推進派も一枚岩ではなかったようだ。遠藤道議によると、自信が所属する道議会の最大会派「自民党・道民会議」の中にも、慎重な意見が少なくなかった。MICE施設は札幌市の既存施設と競合し、採算性が危ぶまれる。現地へのアクセス道路の整備費をどこが負担するのかといった観点でも懸念の声があったという。
 世論も慎重だった。道が11月に悔過を公表したアンケートで、回答した約700人のうち2/3が、IR誘致は「不安」と回答、「継続した施設運営」「治安悪化」「ギャンブル依存問題」などを理由として挙げた。

負のコスト直視を
韓国の民間試算 借金利息で1.7兆円 生産性低下2.9兆円

 苫小牧市の見立てが現実に即していない部分もあった。昨年6月の構想公表時、最大で年839万人の集客があるとの試算を盛り込んだが、北海道を代表する観光地「旭山動物園」でも、昨年度の来場者は137万人にとどまる。
 10000人の直接雇用を生み出すとした試算も、プラスに働かない恐れがある。ハローワーク苫小牧の9月の有効求人倍率は、過去最高の1・38倍。人口減が続き、建設、飲食、サービスなどの業種で人手不足が続く。IRができていれば、他地域と人材の奪い合いになる事態が考えられた。
 「カジノ(賭博場)誘致に反対する苫小牧市民の会」共同代表の篠原昌彦・苫小牧駒澤大名誉教授は「稼げても多くの不幸をうむ。地元経済の起爆剤にはならず、むしろ空洞化を招くことになる」と話す。
 「カジノ解禁法」と称される統合型リゾート施設(IR)整備推進法が成立したのは2016年12月。IR整備推進を国の責務と明記した。18年7月成立のIR整備法はより具体的で、全国3カ所を上限に整備するほか、日本人から入場料を1回6000円徴収することなどを定めた。
 IR誘致を希望する都道府県や政令市は、21年1~7月に事業者と共同で整備計画を国に提出する。国による審査を経て、20年代半ばに開業というスケジュールが描かれている。

「反対」の声 他地域でも
横浜では市長リコール目指す運動

 これまでに誘致を正式表明したのは横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県、北海道のほか東京都、千葉市、名古屋市は「申請予定又は検討中」と回答している。
 ただ、慎重論は各地で根強い。横浜市では、誘致を決めた林文子市長のリコール(解職請求)や誘致の是非を問う住民投票を目指す活動が市民の間で始まった。大阪市や名古屋市ではIR反対の団体ができ、署名集めなどを進めている。
 こうした訴えに対し、推進派がよりどころにしているのが経済効果だ。大和総研は、横浜、大阪、北海道の3カ所にIRを整備した場合、建設で約5兆円、運営で年約2兆円の経済効果があると試算。みずほ総研の計算では、東京にIRができると建設で約8000億円、運営で年3兆円近くの効果が出るという。
 いずれも膨大な額だが、もろ手を挙げて喜べるわけではない。阪南大の桜田照雄教授(経営財務論)は「建設で潤うのは業者など限られた人たちだけ。カジノで生じる利益は、運営主体になるであろう外国業者に流れていく」と指摘する。むしろ目を向けるべきは、ギャンブルがもたらす「負の経済効果」だという。
 「(カジノが多い)韓国のギャンブル依存症患者の支援団体が行った試算によると、同国の依存症患者が背負う借金の支払い利息だけで、年1兆7000億円に上る。ギャンブルに気を取られて集中力を欠き生産性が落ちると、年2兆9000億円の損失が出るともいわれる」
 そう語る桜田氏は「日本では、負の経済効果は『確定した数字を示せない』という理由を付け、行政側が出したがらない。結果的にプラスの数字ばかりが脚光を浴びる」と続ける。
 ただ、北海道では「負の効果」に対する抵抗感が強く、誘致断念に至った。札幌弁護士会消費者保護委員会の猪野亨弁護士は「『カジノがバラ色なのか』という道民の強い疑念がこの結果を招いた」とみる。
 「北海道以外の方々も冷静に考えれば『カジノなんて、うまくいくわけがない』という結論に達するはず。そもそも米国のトランプ政権が日本に圧力をかけ、同国業者のために話を進めようとしているだけ。いい目を見るのは誰で、負の影響を受けるのが誰なのか、しっかり見極めてほしい」

デスクメモ
 政府のもくろみ通り、IRが20年代半ばに開業したとする。地元の建設業者は潤い、一定数の来場者も訪れるかもしれない。ただ、住民と行政の間には間違いなく大きなしこりが残り、行政運営は困難になる。メリットとデメリット、どちらが大きいか。考えるまでもなく明らかだ。           (千)



「これだけ言われて…」記述式、
官邸で急拡大した延期論
2019年12月5日:朝日新聞

 大学入学共通テストで英語民間試験に続き、国語と数学の記述式問題も延期に向けた調整が本格化することになった。政府内で調整が続いていたが、5日に公明党が声を上げたことで動きが表面化。強行することによる政権への悪影響を心配した首相官邸の意向も背中を押す。
 5日午後。文部科学省を訪ねた公明党の斉藤鉄夫幹事長は萩生田光一文科相に対し、「来年度の導入について、見直し・延期を検討すること」と記した記述式問題の提言を読み上げた。提言書では、受験生による自己採点とセンターの採点との不一致率が国語で約3割に達したと指摘。「受験生や保護者、高校関係者、国民の理解が十分に得られているとは言い難い」と批判した。
 斉藤氏は、公明党として高校生や有識者へのヒアリングを独自に重ねたことで「強い確信が得られたので、(公明党の)単独の申し入れとなった」と説明。同党幹部は近く閣議決定する来年度予算案に関連経費を盛り込む必要性があるからだとして、「引き返すギリギリのタイミング」と話した。
 実際、首相官邸側も「これだけ色々言われているのに、そのままというわけにはいかない」(官邸幹部)と延期、見直しは避けられないとの判断に傾いていた。
 英語の民間試験導入の延期を決めたのは11月1日。その後は国語・数学の記述式が焦点になっていた。立憲民主党など野党統一会派と共産党は11月14日に導入を中止する法案を衆院に提出。対応を誤れば不満が高まり、政権運営への打撃になりかねない事情もあった。
 官邸には文科省の藤原誠事務次官らが頻繁に出入りし、対応が議論された。官邸側は一時、配点を少なくしたり、自己採点をしやすくしたりするよう検討を求めたが、不安が解消されるか疑念が払拭(ふっしょく)できなかったという。
 官邸幹部は「必要だと思う大学があるなら、そこがやればいい話。何も50万人も受けるようなテストでやる必要はない」と話した。(矢島大輔、松山尚幹、大久保貴裕)

記述式、採点しやすくすると生じる「矛盾」

 記述式の導入は、英語の民間試験の活用と並ぶ大学入試改革の目玉だった。キーワードは「思考力・表現力」と「脱1点刻み」だ。
 「センター試験は1点刻みの合否判定を助長しているとも指摘される」。安倍政権の教育再生実行会議は2013年10月、センター試験の後継テスト導入を求める提言で、こう述べた。わずかな点差を競う入試が「知識偏重」になっているとして、結果を段階別に示すことの検討も求めた。
 文部科学省の中央教育審議会は14年12月、マークシート式に加えて記述式問題も導入する方針を示す。16年3月、文科省の有識者会議の最終報告は「生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進む」「より主体的な思考力・判断力の発揮が期待できる」などと、期待をこめていた。
 一度に数十万人の答案を処理するため、条件に沿った記述をさせ、結果を段階別で表示することにした。文科省は17年7月、まず国語と数学で導入し、その後に地歴公民や理科などでも検討する方針を公表。大学入試センターの試行調査では、駐車場の契約書などが題材になり、注目された。
 ただ、質の高い採点者の確保や、自己採点の難しさなど公平性の課題は残ったままだった。細かな条件を課して採点しやすくするほど、思考力や表現力から遠い問題になるという矛盾もあった。
 文科省の会議で記述式導入を批判した南風原(はえばら)朝和・東京大名誉教授(テスト理論)は「記述式を共通テストに盛りこむのは無理が多い。共通テストを大学の個別試験と組み合わせることで多様な力を測るべきだ」と話す。(根岸拓朗)
     ◇
<記述式問題>
 2020年度に行われる大学入学共通テストでは、従来の大学入試センター試験と同様のマークシート式の選択問題に加え、国語と数学で記述式の問題が出される。文章や数式などを書かせる出題が3問ずつあり、国語は3問を総合して5段階で評価。数学は点数化する。採点はベネッセコーポレーションの関連会社が請け負う。24年度以降は、理科などの科目にも広げる予定。

「公平な採点は無理」
 共通テスト記述式導入、議論紛糾
2019年12月9日:朝日新聞

 大学入試改革の目玉の一つだった国語と数学の記述式問題をめぐり、国会で議論が紛糾している。数十万人分の答案を、限られた日数でどう公平に採点するか――。心配されてきた問題への不安が、今もってぬぐい切れないからだ。
 記述式の導入をめぐっては、安倍晋三首相が設けた教育再生実行会議が2013年10月、従来のセンター試験に代わる新テストの導入にあたり「知識偏重の1点刻みの選抜からの脱却」が必要だと指摘。文科省の中央教育審議会も14年12月の答申で、記述式の導入や成績の「段階別表示」を盛りこんだ。その後の有識者会議も、「生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進む」などと指摘し、17年7月に実施方針が決まった。
 国語は、200点満点のマーク式問題に加え、最も長いもので80~120字程度の文章を書く記述式3問が出題される。マーク式の配点とは別にA~Eの5段階で評価する。数学では、「数学Ⅰ」から数式などを書く問題が3問。マーク式と合わせて100点満点となる。
 試験を行う大学入試センターは17、18年に1度ずつ試行調査を実施した。
 17年調査の国語では、80~120字の文章を書かせる問題の完全正答率が0・7%にとどまった。18年調査では、解答の助けになるよう条件などを提示。完全正答率は15・1%に上がったが、専門家からは「思考力や表現力より情報処理力を問う方向に傾いた」との指摘があがった。
 数学の記述式も、17年調査では、3問の正答率が全て1割を切り、約半数は無解答。18年は数式だけ、または短い文章だけを求める内容に変更したが、正答率は3・4~10・9%で無解答率も高いままだった。センターは、初年度は短い文章を求める問題は出さないことを決めた。
 栄光学園中学高校(神奈川県)の井本陽久教諭(数学)は、「(解き方の)プロセスが大事というメッセージを発する点で記述式に意味はあるが、数十万人が1度に受ける試験では難しい」と残念がる。共通テストでは短期間に採点するために1万人の採点者が必要とされる。学生アルバイトなどに頼むことになりそうで、採点者ごとの「ぶれ」や質の確保が心配されている。
 神奈川県立横浜修悠館高校の小嶋毅・総括教諭(国語)も「50万人の記述式問題を公平に正確に採点するのは無理」と言い切る。漢字の書き取り問題でさえ、答案の数%で判断に悩むものが出るという。「文章の記述式では、漢字だけでなく、同義語や類義語、語順の問題なども出てくる。試験後の数週間で公平に採点できるとはとても思えない」
 「自己採点」の難しさもある。受験生は問題用紙に答えをメモしておき、試験後に自己採点し、その成績を元に出願先を決める。しかし、国語の試行調査では、記述式全3問で自己採点と実際の採点結果の不一致率が3割前後もあった。大事な出願先選びで判断を誤りかねない。
 センターは今月11~25日、各地の高校1年生の協力を得て「採点準備事業」を実施する。採点するのはセンターから請け負ったベネッセの関連企業。採点方法やスケジュールを検討するという。(宮崎亮、宮坂麻子、根岸拓朗)

民間試験の方針、国立大が公表へ

 国立大学協会は8日、熊本市で総会を開き、2020年度から始まる大学入学共通テストで活用が見送られた英語民間試験について、各大学が今月29日までに、国のシステムを通さずに独自に利用するかどうかの方針を公表することに決めた。国大協は18年3月に出したガイドラインなどで、20年度から実施する入試で一般入試の全受験生に民間試験を課す方針を示していた。永田恭介会長(筑波大学長)は「大学はたいへんだが、受験生のことを第一に考えて決めた」と述べた。
 一方、大学入試センターの山本広基理事長はこの日の国大協総会で、15日までに民間試験の見送りを受けた対応を発表すると表明した。「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る民間試験の活用を前提に、23年度まではセンターが「読む・聞く」の2技能に特化した試験を実施することになっていた。山本氏は個人的な見解としながら、「すでに大枠を作り終えていて、すべて作り直すのは極めて困難」との見方を示した。(増谷文生)

共通テスト、国・数の記述式も批判
 バイトも採点、反発
2019年11月9日:朝日新聞

 英語民間試験の活用延期が決まった2020年度開始の大学入学共通テストをめぐり、国語と数学の記述式問題も激しい批判にさらされている。大学入試センター試験のような選択式と異なり、採点の難しさが指摘されているためだ。野党だけでなく、高校生ら当事者にも中止を求める声が高まっている。
 8日の参院予算委員会。立憲民主党の福山哲郎氏は高校生の言葉を紹介する形で、二つの懸念を示した。
 一つ目は採点の精度。「学生バイトを信頼して任せられるわけがありません。短期間でミスなく採点を行うのは不可能です」。数十万人規模の試験で、学生アルバイトによる採点も想定されているからだ。
 二つ目は、2次試験の出願先を選ぶ際の目安になる自己採点で、実際の点数との差が出る恐れがあることだ。「5段階評価の一つのランクの違いで加点が大きく異なる場合があります」。国語は5段階で評価される仕組みでぶれも大きい。自己採点に自信が持てず、第1志望をあきらめる受験生も出かねない。
 福山氏は記述式について「不安を与えるだけ。ぜひ中止を」と迫ったが、萩生田光一文部科学相は「採点がしやすい制度を作り上げていく」と予定通り導入する方針を改めて示した。
 不安はぬぐえず、その後に質問した自民党の山田修路氏も「色んな問題があるというのも事実」と指摘。萩生田氏も「課題があることは十分承知している」と応じざるを得なかった。
 当事者も動き出している。東京都内の高校生らは6日、記述式問題の中止を求める約4万2千人分の署名を文科省に提出した。ネット上で呼びかけ、全国の高校生らから2週間足らずで集まったという。代表を務める高校2年生は提出後、記者団に「実力が反映されない制度。誰の声を聴いて、どういう判断で実施しようとしているのか疑問を感じる」と訴えた。
 立憲は野党各党と記述式を中止する法案を近く提出する方針で、政府・与党にも危機感が広がる。「入試は若い世代から祖父母まで関心を持つ。長引くほど政権の体力が奪われる」(自民のベテラン議員)
 大学入試センターは11日から、両科目で計2万人の高校生に記述式問題を解いてもらい、採点の運用を確認する「準備事業」を始める。文科省はこれを元に制度改善をめざす方針を示すが、風当たりは強まる一方だ。大学入試改革の目玉である英語民間試験は「政治判断」で延期となっただけに、文科省幹部は先行きを見通せずにいる。「記述式まで延期となれば、大学入試改革は崩壊する」(永田大、矢島大輔)

記述式問題
 従来の大学入試センター試験はマークシート式の選択問題のみだったが、2020年度に始まる大学入学共通テストでは、選択問題に加え、国語では文章を、数学では数式などを書かせる記述式が3問ずつ出される。知識だけでなく「思考力・判断力・表現力」を測ることが目的。数学は記述式も点数化するが、国語は3問を総合してA~Eの5段階で評価する。採点は、ベネッセの子会社が請け負う。



13兆円の経済対策
 規模ありきのつけは重い
2019年12月6日:毎日新聞

 政府が新たな経済対策を決めた。国と地方の財政措置が13兆円に上る大型対策だ。民間支出などを加えた事業規模は26兆円に達する。今年度補正予算と来年度予算に計上し「アベノミクスの加速」を図るという。
 疑問の多い内容だ。最大の問題は危機的な財政にもかかわらず、規模ありきで策定されたことだ。安倍晋三首相が「しっかりした規模」を指示し、与党も大型対策を促した。
 政府は米中貿易摩擦など海外リスクを強調するが、日本経済については消費増税後も「緩やかに回復している」との認識を変えていない。なのに規模を優先し、ばらまきになりかねない事業も詰め込んだ。
 典型的なのが、マイナンバーカードを持っている人への買い物ポイント還元である。2万円の買い物に5000円分と破格の還元率だ。
 増税対策で始めた別のポイント還元が来年6月末に終わるため、その後の消費落ち込みを防ぐ狙いだ。
 だが、財政頼みの消費刺激策を続けていては、対策でうたった「民間主導の成長」と矛盾する。
 普及率が低迷するカードを高額のポイントで広める狙いもあるが、筋違いの手法だ。
 公共事業は6兆円規模と手厚く盛り込む。台風などの被害を踏まえ、防災を柱に据えたためという。
 必要な堤防改修などは行うべきだ。ただメニューには道路や港湾、農業施設など幅広いインフラ整備が並び緊急性が乏しい事業も目立つ。
 成長戦略として、経済のデジタル化や中小企業への補助金拡充も計上する。首相はこれまでも「アベノミクスの加速」と称し大型予算を組んできた。だが成果は限定的だ。今回も効果を見極めたのか疑問だ。
 たび重なる財政出動で国と地方の借金は1100兆円を超えた。
 今回の対策の財源は、公共事業などに使途を限る建設国債や、過去の予算の使い残しの剰余金などで賄い、赤字国債は発行しないという。
 だが建設国債も赤字国債も同じ借金であることに変わりない。剰余金も本来、借金返済に充てるべきだ。対策に使う分、借金が減らず、将来世代に負担が先送りされる。
 首相は対策を「未来への投資」と位置づけた。しかし、未来へのつけが膨らんでしまえば本末転倒だ。



元委員「物価下落議論せず」
ヤマ場迎える生活保護減額訴訟
1割カット公約 自民から圧力?
「最低限度の生活」保障 ないがしろに
2019年12月2日:東京新聞・ニュースの追跡

 厚生労働省が2013年、生活保護費の給付水準を引き下げた問題を巡り、受給者たちが引き下げ処分の取り消しを求めた集団訴訟がヤマ場を迎えている。先行している名古屋地裁では、同省の有識者会議の元委員が、引き下げの根拠とされる物価下落について「議論していない」と証言。識者の議論を経ずに、多くの受給者の生活保護費が減らされたことが浮き彫りになった。

 「財源を削るために生活保護基準を引き下げる構図を転換しないと、生活保障全体が引き下げられてしまう」
 10月10日に名古屋地裁であった証人尋問。原告側証人として出廷した岩田正美・日本女子大名誉教授(社会福祉学)はこう危ぶんだ。貧困研究の第一人者で、18年まで厚労省で生活保護基準が適切か検討する社会保障審議会の部会長代理だった。
 厚労省は13~15年、生活保護費のうち食費や光熱費にあてる「生活扶助費」を670億円、減額した。このうち580億円を削った理由は「デフレによる物価下落」。下落率を示すため「生活扶助相当消費者物価指数」という新たな指標を作り、08~11年に4・78%下落したとしている。
 裁判で国側は、こうした引き下げは「厚労相の裁量の範囲内」などと主張。物価下落を考慮したことは「部会の委員全員の了承を得た」としてきた。
 ところが岩田氏は証人尋問で「了承」を否定した。物価下落を考慮した生活保護基準の引き下げは、同省社会・援護局保護課から13年10月の部会で初めて示されたと証言。それまで部会では物価について議論していなかったので「大変驚いた。財政削減のために行われたと感じた」。原告の代理人弁護士から「議論もしていないわけだから、容認していない」と明言した。
 厚労省が部会の議論を避けるように、生活保護基準を引き下げたのはなぜか。岩田氏は「当時の政治家や財務省から、生活保護の削減を求める圧力があったのではないか」と話す。12年12月には、自民党が公約で「生活保護給付水準の原則1割カット」を掲げ、政権復帰していた。
 岩田氏は『日本では生活保護基準が、最低賃金や就学援助など他の最低生活保障の参照基準にもなっている。下がり続ければ、生活保障の底が抜けてしまう恐れがある」と警鐘を鳴らす。
 実際、多くの受給者の暮らしはさらに厳しくなった。名古屋地裁で10月末にあった原告本人尋問では、男性(76)が「食事を1日3回から2回に減らした。電気代がかさむので冬はエアコンをつけていない。減額をやめてほしい」などと窮状ぶりを訴えた。
 原告代理人の小久保哲郎弁護士は「磐田市の証言で、これまでの国側の主張がでたらめだったことが明らかになった。専門家の議論に諮ることなく、厚労省の独断で物価下落を考慮して生活保護費を大きく減らしたことは大きな問題だ」と話す。
 全国の受給者1000人余は、国に引き下げ処分の取り消しを求めて名古屋や東京など29地裁で提訴し、係争中。名古屋裁判は来年1月に決心予定で、来春にも判決が出る見通しだ。原告の支援団体は、公正な判決を求めて署名を集めている。署名用紙はインターネットで「いのちのとりで裁判」と検索すると、ホームページからダウンロードできる。



火がつかぬ日本の危機感
温暖化対策後ろ向き 常連の「化石賞」また受賞
政府 今なお石炭に固執
2019年12月5日:東京新聞・ニュースの追跡


 地球温暖化対策に後ろ向きだとして、世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」が日本に「化石賞」を贈った。梶山弘志経済産業相が、温暖化を悪化させる石炭火力発電の利用を続ける方針を示したのが授賞理由だが、日本は過去に何度もこの賞を受けている。これほど国際的に批判を浴びているのに、なぜ改めようとしないのか。                           (片山夏子)

 同ネットワークの日本事務局を担うNPO法人「気候ネットワーク」東京事務所によると、化石賞の授与は1999年の気候変動枠組み条約第5回締約国会議(COP5)で始まった。地球温暖化対策に前向きでない国に対し開催中毎日、贈るようになった。今回はスペイン・マドリードで開かれているCOP25の会場で3日に発表され、大規模な森林火災への対応の悪さを指摘されたブラジルとオーストラリアも受賞した。
 梶山氏が同日の閣議後会見で「石炭火力、化石燃料の発電所は選択肢として残しておきたい」と述べたことが“評価”された。東京事務所の桃井貴子所長は「日本は毎年のように授与される常連国。経産相の発言は、化石賞をくれと言っているようなものだ」と皮肉る。
 日本は東京電力福島第一原発事故が起きた2011年には複数回受賞し、「国民に途方もない苦難をもたらした(原発)技術を途上国に輸出し、見返りに排出枠を得ようとしている」として、不適切かつ無責任で道徳的に誤っていると批判されてきた。
 石炭火力発電所を巡っては、欧州主要国やカナダなどが廃止に向けて舵を切る一方、日本では新増設が相次いでいる。震災以降、原子力発電の割合が下がる中で、18年度の石炭火力の割合は31・2%と、10年度から3・4%増えた。一方、再生エネルギー(水力、太陽光、風力、地熱、バイオマス)は同期間で7・5%増の16・9%にとどまっている。国際環境団体「グリーンピース・ジャパン」エネルギー担当のハンナ・ハッコ氏は、温暖化対策の国際的枠組みを定めた15年の「パリ協定」採択後も、日本では15基の石炭火力発電所が新たに稼働しと指摘する。「ほとんどの先進国が再生可能エネルギーにシフトし、パリ協定を離脱した米国ですら石炭火力の割合を急速に低減させる中、日本は逆行している」
 NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は「この10年で世界の流れが大きく変わり、発電コストは風力が1/3以下、太陽光は1/10になった。経済的にも、環境やエネルギー自給の上でも利点が大きくなった。政府はあれだけの事故を起こした原発や、石炭火力が電力の中心だとする考えを直視して根本から見直すべきだ」と提言する。
 日本は50年までに、温室効果ガスを8割削減する目標を掲げている。ただ、エネルギーの転換には時間がかかる。
 環境ジャーナリストの枝広淳子氏は「再生エネルギーに移行する際の大きなネックは、送電網の整備に莫大な費用がかかること。さらに、太陽光にしても風力にしても、大規模な発電施設を造るほど広い土地が十分にない点も問題になる。それでも具体的に計画を出して着実に実行していかないと、温暖化が進む中で国際的にますます厳しい立場に置かれる」と語った。



【主張】
COP25開幕 日本の低炭素化は原発で
2019年12月2日:産経新聞

 スペインの首都マドリードで、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が2日から13日までの日程で開かれる。
 地球温暖化防止の新たな国際的取り組みである「パリ協定」の運用開始が年明けに迫る中、実施ルールの細目の仕上げが主要な課題だ。
 先進国だけが二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガスの排出削減義務を負った「京都議定書」とは異なり、先進国と途上国が共通ルールの下で排出削減に取り組む。これがパリ協定の最大の特徴である。
 各国のCO2排出削減についての情報公開をはじめとする重要なルールの大部分は、昨年のCOP24で採択を終えている。
 しかし、今回のCOPは、チリでの開催が決まっていたにもかかわらず、同国の反政府デモや暴動で不可能になり、11月にスペインに変更されたという事情がある。短期間で大規模な国際会議の開催を実現したスペイン政府の努力に感謝したい。
 この尽力とほぼ同時期に行われた米国のパリ協定離脱通告は、極めて残念だ。世界全体のエネルギー起源CO2排出の15%を占める米国は、中国(28%)に次いで第2の当事者国である。
 また、中国がパリ協定で示している「削減目標」では、2030年まで排出増大が続く仕組みだ。米中に対しては、2大排出国としての真摯(しんし)な自覚を求めたい。
 パリ協定では、産業革命前から今世紀末までの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指している。
 日本は「30年度に13年度比マイナス26%」というCO2の排出削減目標を表明しているが、原発の再稼働が遅々として進まず、火力発電で穴埋めをしている現状のままでは達成不可能だ。
 気候変動の激化に世界の国々が切迫感を抱くCOP25では、日本に対して削減のさらなる上積みが求められよう。
 世界の要請に応え、先進国の一員としての責任を果たすには原発再稼働の円滑化が不可避である。安倍晋三政権の急務は、再稼働の遅れの原因の洗い出しだ。それなしには、26%削減さえ難しい。
 小泉進次郎環境相には、マドリードの国際舞台で低炭素社会の実現に果たす原発のプラス面について正面から論じてもらいたい。



ヘイトスピーチで名誉毀損
「在日特権を許さない市民の会」
元京都支部長に罰金刑
ヘイトスピーチをめぐり侮辱罪ではなく、
より量刑の重い名誉毀損罪が適用されたのはきわめて異例
2019年11月30日:ハフィントンポスト

判決後、会見する京都朝鮮学園側の弁護士ら
=2019年11月29日午前11時9分、京都市中京区の京都弁護士会館、山崎琢也撮影

ヘイトスピーチで名誉毀損、在特会元支部長に罰金刑判決

 ヘイトスピーチをしたとして名誉毀損(きそん)罪に問われた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)元京都支部長の西村斉(ひとし)被告(51)に対し、京都地裁は29日、罰金50万円(求刑懲役1年6カ月)の判決を言い渡した。柴山智裁判長は同罪の成立を認めた上で、懲役刑ではなく罰金刑とした理由を「公益を図る目的で主張を述べる中、名誉毀損の表現行為に及んだもので、相応に考慮すべきだ」と説明した。
 ヘイトスピーチをめぐり侮辱罪ではなく、より量刑の重い名誉毀損罪が適用されたのはきわめて異例。西村被告は同日、判決を不服として控訴した。
 判決によると、西村被告は2017年4月23日、京都朝鮮第一初級学校跡(京都市南区)近くの公園で拡声機を使い、同校跡を指して「この朝鮮学校は日本人を拉致しております」「その朝鮮学校の校長ですね、日本人拉致した、国際指名手配されております」などと発言。その様子を動画投稿サイトで流し、学校を運営していた京都朝鮮学園の名誉を傷つけた。
 判決は発言内容などから「京都朝鮮学園の外部的評価を低下させた」と認定。さらに、日本人拉致事件の実行犯にかかわる内容は公共性が高いといえるが、被告の発言は「真実性の証明も真実と信じた相当な理由もない」とし、名誉毀損にあたると結論づけた。
(朝日新聞デジタル 2019年11月29日 21時34分)



(社説)
マイナンバー カード普及を焦る不毛
2019年12月2日:朝日新聞

 マイナンバーカードは何のために持つのか。
 必要性を多くの国民が実感できないなか、政府はカードを一気に広げようと、前のめりになっている。しかし、予算をばらまき、半ば強引に取得を迫るような手法は、看過できない。
 一つは、1人最大5千円分のポイント還元策だ。いわゆるデジタル版の商品券で、Suica(スイカ)やPayPay(ペイペイ)などのキャッシュレス決済で使える。
 消費増税後の景気対策の一つと位置づけ、昨年から実施ありきで制度設計が進んできた。来年9月から7カ月間の期間限定で、カードを取得して専用サイトでIDなどを設定すれば、所得や年齢に関係なく、恩恵を受けられる。ただしキャッシュレスで決済することが条件だ。
 約4千万人分、2千億円以上もの予算が投じられる見込みだが、消費刺激策としての効果ははっきりしない。
 もう一つは、「公務員には今年度中にカードの取得を推進する」との閣議決定の方針のもと、国家公務員に行われている調査だ。公務員ではない被扶養者も対象に、記名式でカード取得の有無や、申請しない場合はその理由を尋ね、上司に提出させている。人権侵害に当たらないだろうか。
 12けたのマイナンバーはすでに国民全員に割り当てられている。顔写真つきのカードの交付は本人の申請に基づき、2016年1月に始まった。
 本人確認ができる電子証明書もついており、政府は「安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤」と位置づけ、23年3月末には「ほとんどの住民が保有」すると想定する。
 しかしこれまでの発行枚数は1800万枚超と、普及は進まない。昨秋の内閣府の調査でも「必要性が感じられない」を選んだ人は多く、個人情報の漏洩(ろうえい)や盗難を心配する声も根強い。
 カードの裏面には、税や社会保障の手続きに使われ、「むやみに他人に見せるべきではない」とされてきた12けたの番号が書いてある。持ち歩くことに不安を感じる人は、少なくないだろう。
 住民票をコンビニで取れる、ポイント還元でお得だ、健康保険証として使えるようにもなると、いくら「利便性」を強調しても、結局は制度開始当初から指摘された国民の懸念を、ぬぐいきれていない。
 必要性を感じないままでは、たとえカードが普及しても使われない。「デジタル社会の基盤」にしたいのなら、政府がやるべきは必要性を繰り返し説明し、国民の懸念を解消することだ。予算のばらまきや取得の強要ではない。



PISAで読解力低下
 長文に触れる機会作りを
2019年12月5日:毎日新聞

 3年ごとに行われる経済協力開発機構(OECD)の2018年国際学習到達度調査(PISA)で、前回調査に続き日本の子どもの読解力の低下傾向が示された。
 文部科学省や学校現場は真摯(しんし)に受け止める必要がある。結果を詳しく分析し、学習改善につなげることが大事だ。
 今回の調査には、79の国・地域から義務教育修了段階の約60万人が参加した。
 PISAは日本の教育政策に大きな影響を与えてきた。03年調査でも読解力や数学の順位が大幅に低下し「ゆとり教育」が原因と指摘された。それを機に、全国学力テストが始まり、学習指導要領が改定されて授業時間が増えた。
 その後、順位はいったん回復したが、前回は再び低下に転じて参加国・地域中8位となり、今回はさらに15位まで急落した。
 とりわけ日本の正答率が低かったのは、ある程度長い文章から求められた情報を探し出したり、書かれていることの信用性を評価して事実なのか意見にすぎないのかを判断したりする問題だ。
 専門家は、低下の原因として、スマートフォンやSNSの普及で子どもの読み書きやコミュニケーションが短文中心になっていることを挙げる。調査では、日本の子どもがゲームやインターネット上で友人らとやりとりするチャットに費やす時間の長さも指摘された。
 一方で、小説や伝記、ルポルタージュ、新聞などまで幅広く読んでいる子どもは読解力が高いことが示された。長文に触れる機会を授業や課外活動で増やしていく工夫が求められる。
 インターネット上にフェイクニュースがあふれ、真実を見抜く力が求められる時代だ。紙かデジタルかにかかわらず、文章を批判的に読み解く力の大切さはますます高まってきている。
 英語教育の重視などで授業時間が増え、子どもも教師もゆとりがない中で、新たな試みをするには難しい問題もあろう。だが、読解力は学力の基本だ。
 全体の学習プログラムを調整したうえで、文章を読む楽しみを根付かせたい。

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