不自由で自分の頭で考えない教員に自由と考えることを子どもたちに語れるか?

学校。ほとんどの人たちにとって、それは“既知”のもの。経験し、分かっているつもりのもの…。
ボクは、5歳の幼稚園入学に始まって、小学校、中学校、高校、大学、そして、教員となって60歳となるまで、この64年間の人生のうち18年間を児童・生徒・学生として38年間を教員として、そのうちの1年間は「院生×非常勤講師」という立場で“学校”に関わってきた。今でもしばしば「先生」と呼ばれ、そこに違和感を感じることは少ない。
かなり異常な人生を過ごしたボクは、かなり変わった教員だったと自己イメージを持っている。ボクの教職人生は生徒に恵まれ幸せだった。また、フツーの教員が経験しないような、濃密な時間を持ったと思っている。千葉県教育研究会地理部会事務局長、同教育相談部会理事もやり、千葉県高等学校教職員組「日の丸・君が代」対策委員会委員や役員もやり、学校外では日本地理学会地理教育専門委員会委員や日本学術会議地理教育小委員会委員、地理教育研究会理事などもやりながら、地理教科書も書かせてもらった。さらに、「趣味は市民運動」などと言って、AMNESTYや熱帯雨林行動ネットワークなどさまざまな市民運動に関わってきた。裁判のミソカス原告となったり、支援会にもかかわってきた。
フツーの教員人生の数倍は、さまざまな経験をすることができたと思う。
しかし、よく考えれば、ブラックな職場で、ダークな働い方をしてきたと言える。
それでもボクが幸せだと思えるのは、自分を見失うことなく、自分の頭で考え、行動することができたからだと思う。授業も、組合活動も、地理学会も、市民運動も、やらされたわけではない。主体性を見失うようなことはなかったつもりだ。おかげで、退職後も幸せだ…、たぶん。


教員の働き方改革法案
 実効性確保に不安が残る
2019年11月27日:毎日新聞

 公立校の先生の働き方改革の一環として、教職員給与特別措置法(給特法)を改正する案が国会で審議されている。
 特に忙しい時期の労働時間を延長する代わりに、その分を夏休み中などに休日としてまとめ取りできるようにする「変形労働時間制」の導入が柱だ。残業時間の上限を月45時間とする指針も法律で明示する。
 だが、夏休み中も研修や部活動などに追われる教員が多く、休日のまとめ取りは容易でない。学校現場からは、長時間労働が常態化している現状を追認し、助長させるだけではないかと懸念の声が上がっている。
 日本の教員は世界で最も忙しい。改正案が実効性を持つには業務量の削減が伴わなければならないが、現状では対策が不十分だ。
 長時間労働がはびこる背景には、教員の担う業務があまりに多岐にわたっている実態がある。そのため、文部科学省は事務作業を補助するスタッフや部活動指導員などの学校への配置を進めている。そうした外部人材の活用を一層広げるべきだ。
 自治体単位で意欲的に対策に取り組んでいるところもある。
 衆院の委員会で、夏休み中に連続16日間、学校を完全に閉じている岐阜市の例が紹介された。期間中は電話も留守番電話設定にし、緊急の用件は保護者に事前に番号を伝えてある市教委の電話で対応したという。
 膨大な業務に手をつけずにやりくりするのでなく、教員を休ませることを前提に業務を選別する発想だ。他の自治体にも参考になるだろう。
 ただ、市には保護者の一部から「学校と連絡が取れないのが不安」などの声もあったといい、保護者や地域の理解は欠かせない。夏休み中に行われるスポーツ・文化行事を絞り込むことも大事だ。
 教員の働き方にはより根本的な問題がある。公立校の教員には残業代が出ない代わりに一律で基本給の4%が支給されている。これが労働時間管理をずさんにし、残業時間の不正確な把握につながっている。
 昨年度の公立小学校の教員採用試験の倍率は全国平均で3・2倍と過去最低だった。教員の仕事の魅力を高めることは喫緊の課題だ。そのためには、教員の給与体系の踏み込んだ見直しが必要だろう。



まるで誘導…
記述式問題「自由な思考」に逆行する
ガチガチ解答条件に中止を求める声
2019年11月30日:AERA

 大学入学共通テストで国語と数学に導入予定の記述式問題の見直しを求める声が強まっている。実際にどんな点が問題なのか。高校教師や予備校講師が分析した。AERA 2019年12月2日号では具体的な出題内容を例に解説する。
*  *  *
 大学入学共通テストを巡る問題に取り組む高校生らのグループが11月19日、2020年度から予定されている国語と数学の記述式問題の導入中止を求める緊急声明文を文部科学省に提出した。

「まったく『思考力・表現力』を測れるものではなく、何ら導入の価値がない」「一律の基準での採点が極めて難しく、採点の質が担保されない」──当事者の生徒たちがこう主張する記述式問題は、どのようなものなのか。まず、国語から見ていこう。

 大学入試センターは17年度と18年度に「試行調査」と題してプレテストを実施した。それに先立ち、国語の出題のねらいとして、複数の資料の中から必要な情報を抜き出す思考力や判断力を問うことを挙げている。

 実際に17年度のプレテストの問題1では、架空の高校の生徒会を巡って、5人の登場人物の会話文を、部活動規約と資料で補足して読み解く「複数の資料」を用いた出題となった。問1で「当該年度に部を新設するために必要な、申請時の条件と手続き」を、問2で兼部に関する要望を尋ね、問3で登場人物の会話の一部を推測させる内容だ。

 東京都内の私立高校で国語を教える教員はこう指摘する。

「問1は規約の12条と13条を見れば会話文さえ読む必要がなく解けるし、問2は規約8条を読めば分かる。ここまで資料を使わずに解けたので、問3では資料を参照させるために設問が無理やり作られた形になっている。そこから導き出される解答も、不必要な情報だらけの悪文にならざるを得ない」

 しかも問3は、文字数を80字以上120字以内とした上で、1文目を「確かに」と書き出し、2文目は「しかし」で書き始めるよう規定。さらに資料の中から「具体的な根拠」を選び出して示せ、というガチガチの条件付けで解答を縛っている。センターが発表した正答例はこうだった。
「確かに、部活動の終了時間の延長の要望は多く、市内に延長を認める高校も多いことから、延長を提案することは妥当である。しかし、通学路は道幅も狭い上に午後六時前後の交通量が特に多いため、安全確保に問題があり、延長は認められにくいのではないか。(118字)」

 これに対し、前出の国語科教員はこう分析する。

「条件に誘導されて自由な発想を制限されていて、思考力や判断力、表現力を高めるはずの共通テストの導入目的が損なわれる恐れがあります。もし自由記述式で私が模範解答を作るとしたら、『下校時の安全確保に問題がある』というシンプルなものになります」

 資料の読解についてはさらに問題があるという。

「部活動の終了時間の延長の要望は28通で、これは意見の総数やほかの要望と比べて決して『多い』とは言えないはず。それを『多い』と読み取らせるのは、解釈を強制する思想誘導です。複数の資料は扱い方によっては生徒の視野を広げるいい問題も作れますが、複数の資料ありきの無理な作問は、本来の資料の持つ多義性を縛り、質の低下を招きます」

 形にとらわれ、目的を見失っているのは国語ばかりではない。18年度の数学のプレテストに顕著に表れている。学校の階段の踏面の範囲を求めるこの問題の正答例は一つだが、これについて予備校数学講師の中村拓人さんは疑問を投げかける。

「これほど単純に見える問題でも、正答の書き方は様々です。『≦』を国際的には一般的な、<の下にイコールの代わりに一本線を引く書き方にした場合や、tan°33の代わりに、三角比の一つであるコタンジェントを用いる書き方などは、高校の教科書に載っていないので、不慣れな人が採点したときに、書き間違いとしてバツにされる恐れがあります。他の解答のように『°33の三角比を用いて』という指示に従っていないものや、問題文の解釈が不十分なものは、どのように採点されるのでしょうか。数学的には誤りとは言えない解答をバツにするのは、記述式の本来の良さでもある解答の自由度を下げることになります」
 実際、センターが発表したこの問題の正答率は10.9%と高くなく、誤答が44.5%、無解答が44.5%だった。中村さんが続ける。

「試行テストということで問題が練られていない印象があり、本番ではもっと精度を上げてくるとは思います。しかし、採点の問題はどこまでいっても解決できません。出題側が意図していなくても『あ、これ合ってる』という答案が出てくる可能性はあります。国立大学の個別試験と異なり、共通テストの採点は、作問者と採点者、あるいは採点者間の意思疎通が十分に行えません。50万人が受ける試験で、それが40万枚目に出てきたら、採点を一からやり直すことができるのでしょうか」

 そもそも記述式問題は、共通テストと親和性があるのか。これについては20年前、日本数学会が国立大学協会に出した入試情報開示に対する要望書が的を射た指摘をしている。▽数学記述式試験は総合的なものであり、言語能力が重要▽良問の答えは多様であり「解答例」や「採点基準」の開示は不可能──などと記された要望からも、記述式問題が共通テストには不向きだということが分かる。

「模擬試験の作成に関わった経験からすると、採点ミスや整合性の担保も心配で、ミスを発見して防ぐ制度設計が不可欠です。また、50万枚からどの2枚を取り出して比較しても、整合性のある評価がなされているか。その取り出し方は約1250億通りにも上り、チェックを行うことはまず不可能です」(中村さん)

 文科省は国公立大に対し、2段階選抜の際、国語の記述式の成績を判断材料に使わないよう求める検討を始めた。数学についても、少なくとも同様の措置が必要ではないか。(編集部・大平誠)

※AERA 2019年12月2日号



首都圏国公立大
 英語民間試験導入、酷評 国語記述、不信
2019年12月1日:東京新聞

 二〇二一年一月に初めて実施される大学入学共通テストへの英語民間検定試験導入の延期を巡り、本紙が首都圏の国公立大二十九校へアンケートを行ったところ、二十一校が一般選抜で民間試験を「利用しない」と回答した。「無理なシステムだった」「専門家の意見を聞いてほしかった」と導入への不満の声も上がった。文部科学省が「予定通り行う」としている国語の記述式問題については様子見の大学もあった。 (柏崎智子)
 本紙は、国立大学協会(国大協)の方針により各国立大が二十九日に民間検定試験延期への対応を公表したのに合わせ、東京、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、神奈川の一都六県にある国立大十九校、公立大十校にアンケートを行った。
 延期への対応では、もともと利用予定のなかった二校を含む二十一校が、経済的、地理的格差が助長されることなどを理由に民間試験を「利用しない」とした。公立の四校は検討中と回答した。
 一部の学部などで利用する大学が四校あるが、いずれも国のシステムとは無関係に、以前から独自に出願資格や加点の対象としてきた制度を継続するものという。
 理由を個別に取材すると、ある大学の関係者は「最初からセンスの悪い政策だと思っていた」と打ち明けた。「民間試験は、推薦など学力試験を課さないタイプの入試では一定の学力のバロメーターとして有効。しかし、五十万人が一度に受ける一般入試に導入するとは、現場を知らない人の思い付きだ」。それでも、大学として拒否できなかったといい「反対の声を上げた高校生たちには本当に頭が下がる。延期になってよかった」と話した。
◆「利用する」19校
 アンケートでは、採点の公平性確保や正しい自己採点の難しさが指摘され、撤回を求める声が強まっている国語の記述式問題の利用方針も聞いた。合否判定に使わないと決定した大学はなく、十九校が「利用する」と回答した。
 「思考力、判断力を評価する意義はある」という意見もあったが、複数の大学が「採点者によって判断に差が出るのでは」などと不安を挙げた。ある大学の関係者は「共通テストで出題する必要はない。配点を最小限にして影響を少なくした」と説明した。
 「本当に実施するのか」といぶかる声も相次ぎ、配点を決めたのに「未定」と回答した大学も。担当者は「前から記述式の実施には学内で疑問は出ていたが、国会でも文科省が連日追及されている。中止になるかもしれず、発表できない。受験生には早く知らせたいが、振り回したくない。申し訳なく思う」と嘆いた。
 同様に配点を公表できずにいる別の大学関係者は「これまでルールが次々と上書きされ、その都度『またか』と思いながら対応してきた。記述式も、文科省や大学入試センターがあらためて『実施する』と通知を出さない限り、信じられない」と話す。大学入試の世界では、科目や試験方法などの変更は二年前までに公表するルールがあり、「共通テストまであと一年余り。タイムリミットはとっくに過ぎた。異常です」。



定期テスト、ノート持ち込み可
 一夜漬けやめ考える力を
2019年11月26日:朝日新聞

 各地の公立中学校で定期テストを見直したり、廃止したりする動きが広がっている。思考力や表現力を重視する大学入試改革をにらみ、詰め込みの一夜漬けではなく、考える力をはぐくむ狙いだ。問題を出す教員も試されている。
 福岡県須恵町立須恵中学校(生徒数504人)では、「自学(自作)ノート」なら何冊でも持ち込むことができる。11月上旬にあった定期テスト。生徒の机にはカラフルな付箋(ふせん)が貼られたノートがあった。10冊ほど積み上げた生徒もいた。
 どの教科も問題が多く、記述式が中心。国語は新聞のコラムにタイトルを付けさせたり、「コンビニはなぜ『曲がり角』なのか」を121字以上で書かせたり。終了のチャイムが鳴ると、「くそむずい(難しい)」「時間足りんかったぁ」。ため息が漏れた。
 須恵中は今年度、これまで4回あった定期テストを6月と11月の2回に減らし、自学ノートの持ち込みをOKにした。毎日1ページ以上自宅学習し、教員に提出する自作のノートだ。原則手書きのみで、教員が毎日、中身を点検する。
 「最初はイヤだなと思った。勉強しても差がつかなくなるから」と勉強熱心な3年女子。でも問題が増えて難易度も上がり、ノートを要領よくまとめないと探すうちに時間切れとなる。結果的に「毎日ノートに整理するようになって、頭の中がスッキリした」と話す。ある3年男子は「ノートを分かりやすくまとめるようになった。付箋も初めて使った」と話す。
 栗原美喜男校長は「ノート持ち込み可にしたことで、子どもは平素の勉強をおろそかにしなくなり、教員も応用問題を出さざるを得なくなった」。受験に備えて3年生は持ち込み不可の実力テストも3回以上行う。10月に持ち込み不可で実施した、業者による実力テストでは平均偏差値が1年前と比べ約1ポイント上がったという。視察した福岡市立中の校長は「思考力、判断力、表現力を伸ばす先進的な取り組み。学力は確実に上がると思う。本校でも検討したい」と話した。
 首都圏各地で学習塾を展開する栄光ゼミナールの広報担当者によると、首都圏の公立、私立中学校で定期テストの際のノート持ち込みを認める事例は「聞いたことがない」という。
 定期テスト見直しのきっかけは1月、「一夜漬けを助長し、本当の学びにつながらない」と感じた栗原校長が、3年生だけ期末テストをやめたことだった。その後、定期テスト全廃を提案。「ありえない」「どうやって評価するんですか」と戸惑う教員らと話し合いを重ね、ノートの持ち込みを認めることで決着した。
 生徒以上に試されるのは教員だ。ノートを見ただけでは解けない問題にするため、テスト前に何度も教科部会を開き、批評しあって練り直す。「どんな問題を出すか考えることで、日ごろの授業改善につながっている」と原結花教諭。答えがひとつとは限らないから採点も大変だ。過去問を使い回してきたベテランや、テストに頼って成績を付けていた教員にとっては負担感が増す。
 栗原校長は「応用問題の質を上げていくことが最大の課題。大学入試が知識偏重の学力観を変えていく中、生徒も教員も保護者も変わらないといけない。私たちも試行錯誤中です」と話す。(渡辺純子)

定期テストの扱いは各学校の判断

 定期テストをめぐっては、現場の試行錯誤が続いている。
 東京都の千代田区立麴町中学校は昨春、世田谷区立桜丘中学校は今春、定期テストを全廃した。いずれも単元ごとのテストをこまめにすることにした。詰め込んだ知識を吐き出すだけではなく、自分の頭で考える力を育てたいとの考えからだ。
 一方、栃木県鹿沼市立東中は1998年度に廃止したが、その後事実上復活させた。単元テストが教員にも生徒にも負担となり、他クラスへ問題が漏れる難点もあったという。「どちらも一長一短」と管理職。
 文部科学省によると、定期テストについて学習指導要領に定めはなく、どう扱うかは各学校の判断になっている。同省は今年3月、学習評価について「学期末や学年末など事後での評価に終始し、学習改善につながっていない」などと指摘、「慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと」とする通知を出した。
 麴町中の工藤勇一校長は「日本はいまだに、知識を詰め込んで解答用紙にはき出す力を『学力』としているが、今の国際社会では通用しない。欧米にはテストのない国も多い。教育の本質を考えると、ノート持ち込み可のテストは、理にかなった取り組みともいえる」と話す。

大学入試改革に詳しい渡辺弘・鹿児島大准教授の話

 定期テストに自作ノートを持ちこむ取り組みは珍しい。定期テストは本来、生徒の成長を確認し教員が授業を改善するためにあるが、生徒を選別して順位を付けるための手段になっている印象がある。新しい大学入試では知識を踏まえた上で、思考力、判断力、表現力がより問われている。「自作の参考書」を作り、教員がそれを点検するのは、生徒を評価する理想的なあり方に近づく一つの試みといえる。



下着の色・男女別の髪形指定…
?な校則一斉廃止 世田谷区立中、来年度
2019年11月28日:東京新聞

 下着は白色に限り、髪は男子が襟にかからないように、女子は長髪を束ねること-。不合理で理不尽とも思えるような事細かな校則に「そこまで定める必要があるのか」といった疑問の声が出ていることを受け、東京都世田谷区の区立中学校が一斉に、下着や男女別の髪形規定などをなくすことを決めた。新しい校則は二〇二〇年度から適用される。 (岩岡千景)
 区議会で校則の問題を指摘してきた桃野芳文区議によると、現在、制服の下に着るものに関する校則は区立中学二十九校のうち十三校にある。「ワイシャツの下は白で無地のシャツ(下着、キャミソール含む)、体育着などを着用する」「ワイシャツ、ブラウスの色は白、下着も白を基本とする」など、色を白と限るのが十二校で、一校は色柄を禁じる。これらの校則は二〇年度から、「ワイシャツの下に目立たないシャツを着用する」などに変わる。
 男女別に髪形を定めた校則は七校。男子は目や耳、襟にかからないこと、女子は肩より長くなったら束ねるなどが、今後は男女の区別なく「清潔で活動しやすい髪形を基本とする」などとする。
 また、ある中学の「給食中は牛乳をしっかり飲む」や、学年ごとに使用するトイレを定めるなど行動を細かく定めた校則もなくす。



 桃野区議ら議会側からの問題提起を受け、区教委教育指導課は今月下旬に各校の校則をホームページで公開してもらい、合わせて内容を点検した。その結果、見直しが必要と判断し、各校がそれぞれ取り組んだという。
 同課は「校則には子どもの主体性や自立性を養う意味があり、それに照らし必要性と妥当性を見直してもらった。校則は各学校で決めるのが原則で、区全体で変わるのは珍しいのでは」とする。
 桃野区議は「公立中学や高校の多くは、時代に合わせて校則を変える力が働かない。下着の色を決めるのは人権侵害だし、LGBT(性的少数者)への配慮が求められる今『男子は-』『女子は-』という校則は時代に合わない。変わって良かったし、強制するような実態も残さないでほしい」と話した。
◆特性ある子にも配慮を
<校則がなく、生徒の自主性を重んじる教育で知られる世田谷区立桜丘中学の西郷孝彦校長の話> 見直すべき校則にはレベルがある。(1)人権にかかわる(2)合理的理由がない(3)発達障害があったり、外国から来たりという特性がある子には守るのが難しい。人権にかかわるものはもとより、最終的には特性がある子に配慮するレベルまで見直してほしい。
◆学校自ら考えてほしい
 「ブラック校則」の共著書がある教育社会学者で名古屋大大学院の内田良准教授の話 世田谷区の取り組みは珍しいし、画期的。大阪府で髪が生まれつき茶色い高校生が教員らから黒染めを強要されて不登校になり、裁判を起こして二年たつ。学校が自主的に動いてほしかったし、古い校則が残る学校は全国にまだ多いが、自らそのおかしさを考え、変えてほしい。
(東京新聞)


子どもの貧困対策 改善の具体策が足りない
2019年12月1日:毎日新聞

 子どもの貧困対策をめぐる新たな大綱が閣議決定された。今後5年間の国の施策の指針となる。
 6月に子どもの貧困対策推進法が初めて改正され、「将来」に向けた学習支援に加え、「現在」の生活や家計への支援にも力点を置く方針が明記されたことを踏まえたものだ。
 新大綱では、公共料金の未払い経験など、貧困状況が改善しているかどうかを検証するための指標を25項目から39項目に増やした。法改正を踏まえ、家庭の現状を示す指標が入ったことを評価したい。
 新指標をみると、電気、ガス、水道料金の未払いを経験したことがある割合は、子どもがいる世帯全体では5~6%だが、ひとり親世帯では14~17%に上る。必要な食料が買えなかった経験は全体で17%、ひとり親世帯で3割強に達する。
 子どもの貧困率は2015年で13・9%と12年より2・4ポイント改善したが、7人に1人と高い水準にある。現状はまだ厳しい。
 大綱の基本方針では、必要な人に支援を確実に届けることが強調された。妊娠・出産期から子どもの自立まで切れ目のない支援など幅広い関連施策も盛り込まれた。
 だが、家庭の困難な現状を改善するための方策は、高等教育や幼児教育・保育の無償化など、大綱見直し以前に決まっていた施策の促進が目立つ。全体としては踏み込み不足と言わざるを得ない。
 貧困率改善のために重要なのは、ひとり親世帯への支援だ。8割が働いているにもかかわらず、貧困率が50・8%(15年)に上る。収入が低い非正規雇用が多いためだ。
 ひとり親への就労支援では、企業が積極的に正規雇用に取り組むような新たなインセンティブを検討することも必要ではないか。経済的支援では、児童扶養手当で2人目以降の加算増額などがされたが、まだ不十分だ。しかし、今後の拡充については触れられていない。
 子ども食堂をはじめとし、民間主導の支援は広がりをみせている。官民連携の重要性は増すが、NPOなどの人材育成や待遇改善に特化した施策は打ち出さなかった。
 より具体的な改善目標を持って財源を確保しなければ、現状打開の道筋は見えてこないだろう。



「下着白、ツーブロ禁止」
変な校則、変えたい 動く学生
2019年12月2日:朝日新聞

 女子の下着は白、男子の髪形はツーブロック禁止……。この校則、おかしくない? 中高生たちが学校の決まりを見直そうと、声を上げ始めている。先生任せにせず、自分たちも学校に主体的に関わることで、より楽しく学校生活を送りたい――。そんな思いが根っこにある。
 「部活動をやらないという選択肢を!」
 宮城県涌谷町立涌谷中学2年の松崎圭杜(けいと)さん(14)は10月、そう訴えるネット署名を始めた。
 文部科学省の学習指導要領は、部活を「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とする。スポーツ庁の部活ガイドラインのQ&Aにも「生徒の自主性を尊重し、部活動への参加を強いることがないよう留意しなければならない」とある。だが、涌谷中の決まりでは、部活は全員加入だ。
 「部活は自主的な活動のはずなのに、強制入部なのは矛盾」と松崎さん。好きな部活がなく、ソフトテニス部に入ったが、合わなかった。退部したかったが、許されなかったという。
 2年の夏休み、文科省の指導要領やスポーツ庁の部活のガイドラインなどを調べ、校長先生に質問。要望書も出したが、決まりはそのままだ。
 「世間から見て自分の考えがどう見えるか確かめたい」とツイッターを始めると、フォロワーが800人を超えた。ネット署名では12月2日現在、240人超が賛同する。「部活動の入部、参加、退部を生徒の意思に委ねるようにしてほしい」と松崎さんは話す。

校則を変えるための校則がない

 東京都内の私立高3年の筒井太加良さん(18)と吉田実結さん(18)も、学校の決まりを変えようと、動き始めた。2人とも2年生の時の生徒会役員だ。
 携帯電話の校内持ち込み不可、女子の下着は白色、男子の髪形はツーブロック禁止……。学校の校則は「厳しめ」で「理由が分からないものも多い」といい、生徒からは変更を求める声が常にあった。校則は生徒手帳には書かれておらず、年度初めに学校から配られるプリントで知らされるという。
 同校には、生徒と学校が話し合いをする場が年1回ある。歴代生徒会は、その場に、携帯電話の持ち込みを認めるよう要望書を出してきた。
 どうしたら変えられる?
 どうしたら先生がちゃんと議論してくれる?
 弁護士や大学教授、地元議員……多くの人に方法を聞いた。分かったのが「校則を変えるための校則がない」ことだった。「そこから変えようと思った」
 7月、生徒会は学校に要望書を出した。生徒の意見を反映した校則改正手続きを作る、話し合いの場の回数増、校則の必要性の説明――など4項目。結果、話し合いは学期に1回程度に増えそうだ。
 まだ、校則を変えるための校則はできていない。それでも「学校と話し合う場は増やせた。後輩たちが校則を変えたいと思った時、その土台になるはずだ」と筒井さんは期待する。

民主主義の学びの場にも

 筒井さんと吉田さんがいま、一つの理想と考えるのが「三者協議会」だ。長野県辰野町の県辰野高校に1997年にできた仕組みで、学校運営を教職員と保護者、生徒が対等に話し合って進める。
 東京都世田谷区の大東学園高校は、2003年からこの仕組みを導入する。三者の「事務局」で打ち合わせを重ねたうえで協議会の本番にのぞむ。近年では「ツーブロック」の髪形や、女子トイレの古くなったサニタリーボックスの一部更新などが認められてきた。今年11月にも30回目の三者協議会があり、生徒会が要求を読み上げた。
 「大東祭(文化祭)当日、クラスTシャツなどでの登下校の許可を求めます」。大東祭では制服で登校した後、トイレでクラスTシャツに着替えていたが、場所が狭く混雑し、衛生面の心配もある――。生徒側はアンケート結果などを説明した。
 一方、教員からは、大東祭では身だしなみ規定の違反者が普段より多いとして「(要求を認めると)さらに違反が多くなるのでは」との意見が出た。
 教員の意見がまとまっていないとして、教員が「今年度中に回答する」ことになった。ただ、教員から「身だしなみ規定そのものの見直しを始めてはどうか」との声も上がった。
 この日は授業や教員の生徒指導もテーマとされ、生徒会は「話し合い方を学ぶ」「(生徒の)授業への要望を聞く」機会をつくってほしい、と提案した。
 前生徒会長の倉沢夏樹さん(3年)は「協議会で、教員や保護者など立場の違う人たちの視点も考えられるようになった」。
 高校教員時代、辰野高で三者協議会を提起した首都大学東京の宮下与兵衛・特任教授(教育学)は、「生徒や保護者が学校運営に入ることによって学校は開かれ、理不尽な規則や活動にもメスが入る。学校が民主的な運営をすること自体が、民主主義の学びになる」と話す。ただ、三者協議会がある学校は圧倒的に少数で、都内でも5校程度。「教師の役割は子どもの声に応答することだという当たり前のことを、学校は徹底しなければならない」と言う。(根岸拓朗、山下知子、編集委員・氏岡真弓)
     ◇

中高の校則の例

・髪の毛の長さが決められている
・スカートの長さが決められている
・眉毛を剃(そ)ってはいけない
・整髪料を使ってはいけない
・下着の色が決められている
・帰宅途中に買い物をしてはいけない
(「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」の2018年の調査から)


丸刈りなど強制でうつ状態、
済々黌高退学の元生徒が熊本県を「1円」提訴
2019年12月2日:毎日新聞












熊本地方裁判所=遠山和宏撮影

 熊本県立済々黌(せいせいこう)高(熊本市中央区)の部活動で「伝統」名目で丸刈りを強制されるなどして退学を余儀なくされた元生徒の男性が「校内の違法行為を放置し、精神的苦痛を受けた」として、熊本県に1円の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴していたことが判明した。2日に第1回口頭弁論があり、県側は請求棄却を求めた。
 済々黌高は1882年創設の熊本県内有数の進学校。
 訴状などによると、男性は2017年4月の入学式後、他の新入生とともに同校応援団から校舎屋上に集められ、30分以上、大声で校歌を歌わせられた。入部したソフトテニス部では同月下旬、他の1年生部員と共に3年生から「伝統」として強制的にバリカンで丸刈りにされた。
 男性は翌5月に退部後、うつ状態となって不登校になった。同校から2年生への進級を不可とされたため、昨年5月に退学。県内の通信制高校へ転学し、今年9月に提訴した。
 男性側は、同校内で「シメ」と呼ばれる先輩からの強制指導行為は、100年以上の歴史を持つ伝統校に根ざした独特の文化と指摘。「学校側が違法なシメを黙認・放置し、男性が不登校となった原因と知りながら対策を講じなかったのは安全配慮義務違反に当たる」と主張している。
 男性の代理人弁護士は「明文化されていない校内ルールを問う裁判は珍しく、無批判に続く伝統に一石を投じたい」と話す。賠償金1円について、男性の母親は「賠償金が目的ではない。学校はシメ文化を見直し、謝罪してほしい」と訴える。
 県側は毎日新聞の取材に対し「元生徒の訴えと不登校や退学との間に因果関係はないと考えており、学校の対応は適切だった」として争う姿勢を示した上で「事実関係を確認している」と説明。済々黌高は「この件は県に任せている」としている。【栗栖由喜】


日本の15歳、自由記述苦手?
 国際調査で読解力低下
2019年12月3日:朝日新聞

 79の国・地域の15歳ら約60万人が参加し、「読解力」「科学的リテラシー(活用する力)」「数学的リテラシー」を調べた2018年の国際的な学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」の平均点が前回より低下し、上位国との差が広がったことがわかった。「科学」「数学」の2分野は、前回に続き最高クラスだった。経済協力開発機構(OECD)が3日、公表した。
 調査結果によると、文章や資料などから情報を理解・評価し、考える力を問う「読解力」は前回より12点低い504点(OECD平均487点)で、8位から15位に落ちた。OECDは、統計上、偶然とは言えない有意な低下だと分析。特に、自分の考えを根拠を示して説明する自由記述式の解答に課題がみられるという。
 例えば、電子レンジの安全性を確かめる問題では、必要な情報がどのウェブサイトに記されているか推測し、探し出す問いの正答率が56・1%(同59・2%)だった。電子レンジを宣伝する企業サイトと雑誌記事を比べて情報の質や信憑(しんぴょう)性を評価する問題では、自分ならどう対処するかを根拠を示して説明する記述式問題の正答率は8・9%(同27・0%)だった。
 PISAの読解力調査をめぐっては、日本は09年、12年といったん順位が上がったが、前回の15年から再び順位が下がっていた。文部科学省は低下の理由を「複合的な要因」としたうえで、日本の生徒がコンピューターを使った解答の仕方に不慣れな点や、SNSなどの普及で「長文を読んだり書いたりする機会が減るなど、子どもが接する言語環境が急速に変わってきている」ことなどを挙げた。
 OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は「フェイクニュースの多いデジタルの世界では複数の出どころの情報を比較し、事実なのかどうか区別をつけないといけない」と出題の意図を説明。「事実かどうか精査されていた紙のメディアを読むのとは異なり、(デジタル上の長文の読み比べに慣れていないことが多い)日本の15歳にとって容易ではない」と指摘した。
 一方、「科学」の平均点は529点(同489点)で、2位から5位に。「数学」は527点(同489点)で、5位から6位となり、いずれも順位は下がったが、トップレベルは維持した。
 また、日本は授業(国語、数学、理科)でデジタル機器を利用する時間が加盟国中で最も短く、「利用しない」と答えた生徒の割合が8割にのぼった。コンピューターを使って宿題をする割合も3%と、OECD平均の22・2%を大幅に下回り、最下位だった。ただ、学校外でネット上のチャットをする割合は87・4%(同67・3%)、1人用ゲームで遊ぶ割合は47・7%(同26・7%)といずれも加盟国平均より高かった。
 ほかに、日本は社会経済文化的な水準の生徒間の差が加盟国中で最も少なく、得点への影響を及ぼす度合いも低いとの結果も出た。(矢島大輔)
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 〈PISA〉 Programme for International Student Assessmentの略称。OECDが2000年から3年ごとに15歳(日本は高1生)を対象に実施。参加国は00年の32カ国から18年に79カ国・地域に増加した。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野の調査が中心で、15年以降はコンピューターを使ったテストとなっている。日本は03年の調査で、読解力の順位が急落。「PISAショック」と呼ばれ、文科省が全国学力調査など「脱ゆとり」政策を進めるきっかけとなった。



PISAが問うのは「行間を読む力」
 AI時代こそ必要に
2019年12月3日:毎日新聞


 日本の子どもたちの読解力がここ数年低下し続けている実態が経済協力開発機構(OECD)の2018年の国際学習到達度調査(PISA)で浮き彫りになった。PISAで問われている読解力とは何なのか。
 「誤解している教員が多い」と語るのは09年のPISAで読解力調査国内専門委員を務めた北川達夫・星槎大客員教授。11月下旬、首都圏で小中学校教員を対象に自治体が開いた研修会で「PISA型の読解力を伸ばす授業のイメージを聞かせてください」と教員らに尋ねると、返ってきたのは「意見を言わせる」「『あなたが物語の主人公だったらどのように考えるか』と問う」――など「誤解」した回答ばかりだった。
 北川教授によると、PISAの読解力では自分の意見を言うことは求められていないという。最も重視されるのは「推論」。ある事柄について書かれた複数の資料をみて、行間を読み取る力が評価される。だが、今の小中学校では課題文から正答となる単語や文章を抜き出すような試験や授業が散見される。「国語で言えば、課題文の中にない『行間を読む』ことができなければ国際化社会でコミュニケーションがうまくいかない。授業の方向性を見直すべきだ」と訴える。
 現行の学習指導要領は「思考力・判断力・表現力」の育成を重視している。これらは読解力に通ずる能力だが、学力と教育政策に詳しいお茶の水女子大の浜野隆教授も「本当の意味で理解されて現場に浸透しているわけではない。言葉だけが上滑りしている状態になっていないか」と指摘する。
 浜野教授は読解力を「批判的思考力」と言い換える。「悪いところを見つけて批判するという意味ではなく、入ってくる情報を評価し、自ら知識を生産して表現していく力、つまり創造的な思考力を指す。人工知能(AI)には代替できない分野であり、今後あらゆる職場で求められる技能だろう」と指摘する。【千脇康平、水戸健一】


日本の15歳、読解力が15位に急落
 国際学習到達度調査
2019年12月3日:毎日新聞


 
 経済協力開発機構(OECD)は3日、加盟国などの15歳を対象に3年に1度実施する国際的な学習到達度調査(PISA、ピザ)の2018年の結果を公表した。日本は数学・科学分野は高位を維持したが、読解力は15位で前回(15年)の8位から急落した。
 今回の調査はOECD非加盟国・地域を加えた79カ国・地域の約60万人の生徒が参加した。日本は昨年6~8月、無作為に抽出された全国の国公私立高(183校)の1年生約6100人が受けた。
 日本の平均得点は数学的リテラシー(応用力)が527点で6位(前回532点・5位)、科学的リテラシーが529点で5位(前回538点・2位)だった。読解力は504点とOECD平均(487点)を上回ったものの前回の516点から大幅に下がった。
 日本は03年調査で数学と読解力の順位が大きく下がり「PISAショック」と呼ばれた。学ぶ内容を減らした「ゆとり教育」の影響が指摘され、文部科学省は07年度から基礎的知識に加えPISA型の応用力もみる全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)を開始し、08、09年度に改定した小中学校の学習指導要領では「知識と思考力などのバランスのよい育成」を重視し、授業時間を増やした。その後“V字回復”したが、読解力は15年の調査で再び下降した。


 専門家は原因として、スマートフォンやSNSの普及で子どもたちの読み書きやコミュニケーションが「短文中心」になっていることや、答えのない課題に対処する「課題解決型能力」を養う指導が学校で十分できていないことを指摘している。15年からPISAがコンピューターで解答する形式となったため学校の情報通信技術(ICT)整備が遅れている日本は操作の不慣れも低下の一因に挙げられている。
 文科省は小中学校で20年度以降に順次実施される新学習指導要領で、課題解決型能力を育むため教科横断的な言語活動の充実を図り、国語では多様な文章を読ませ、話し合ったりまとめたりする授業を強化する。【水戸健一】

PISA(ピザ)
 「読解力」「数学的リテラシー(応用力)」「科学的リテラシー」の3分野について、学校で身につけた知識や能力を実生活のさまざまな場面でどの程度活用できるかをみる。「満点」はなく、難易度によって設問の得点が調整され、全体の平均が500点、3分の2が400~600点になる設定のため過去の調査と比較できる。学習の意欲やインターネットの利用などに関する質問調査もしている。



段落がない文章に誤字・脱字…
 スマホ依存の影響指摘も
2019年12月3日:毎日新聞

 経済協力開発機構(OECD)の2018年の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の子どもたちの読解力がここ数年低下し続けている実態が浮き彫りになった。今回は、学習指導要領の見直しなどにつながった03年の「PISAショック」時とほぼ同水準にまで下がった。教育現場で何が起きているのか。【千脇康平、成田有佳、水戸健一、伊澤拓也】
 「増えているとは感じていたが、これほど多いとは……」。首都圏の有名私立大の男性教授は昨年、学期試験の答案用紙を前に言葉を失った。講義で扱った雇用問題の背景を論述させたが、段落がなく文を羅列しただけの答案が300人超の2割にも上った。主語・述語や論旨が曖昧で、学歴を「学暦」、適したを「的した」といった誤字・脱字も散見された。「何が大事な情報か全く整理できていないんですよね」と嘆く。

読書経験が圧倒的に不足

 異変の兆しは数年前からあった。学生に1年間に本を何冊読むかを聞くとほとんどが「1冊くらい」。新聞はおろかインターネットニュースも見ないため時事問題を尋ねても意見が言えない。「最近の学生たちは文章を読む経験がひどく不足している。このままでは世の中の情報を読み解く力は育たない」。そんな思いから毎月、授業に関連する新書を1冊読ませ、内容を紹介するリポートを学生に書かせている。「あきらめずに地道にやるしかない」
 日本の読解力は03年調査で8位から14位に落ち、「PISAショック」と呼ばれた。これを機に教育政策は「脱ゆとり教育」へとかじを切った。その後、全国学力テストの復活や学習内容を増やした現行の学習指導要領などの影響で、12年調査で4位に「V字回復」した。しかし、15年に8位、今回は15位と03年時の水準にまで落ちた。
 なぜなのか。冒頭の私立大教授が指摘するように、新聞や本を読む時間が減少傾向にあることを原因に挙げる専門家は多い。今回のPISA調査では新聞を読む頻度も聞いているが、「月に数回以上」は日本が21・5%(OECD平均は25・4%)で09年に比べ36・0ポイント減。ノンフィクションの本に関しては「月に数回以上」読む生徒は日本は12・2%でOECD平均20・7%を下回る。

友達としゃべるより1人で動画

 さらに読解力低下の原因に指摘されているのがスマートフォン(スマホ)やネット交流サービス(SNS)の影響だ。福岡市早良区で小中学生対象の学習塾「ベーシック」を16年から運営する中村聡代表(46)は「ノートをとれない子が増えている」と明かす。口頭でポイントを伝えてもメモをしない。教科書の大事だと思う部分に赤線を引かせるとページ全体が赤で埋まる――。
 気になるのは、休憩時間になると、友達と会話をするよりもスマホを取り出し1人で動画を見る子どもが目に付くことだという。PISA調査で日本の生徒は1人用のゲームで遊ぶ割合が高いこともわかった。中村さんは「文章を書く能力や能動性は人と話す中でつくられていくが、そうした時間がスマホに取られている。他者の考えや物事の本質を読み解く力の低下はその蓄積の結果だと思う」と危機感を口にする。


新聞の要約 英語読解にも効果
 試行錯誤する教育現場
2019年12月3日:毎日新聞

東京女子学園高校では、読解力の向上を目的に新聞記事を要約する「朝読解」を続けている
=東京都港区で、根岸基弘撮影

 経済協力開発機構(OECD)の2018年の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の子どもたちの読解力がここ数年低下し続けている実態が浮き彫りになった。読解力を伸ばそうと、学校では試行錯誤が続いている。
 私立東京女子学園高校(東京都港区)では今、週1回の「朝読解」に取り組む。15分間で新聞の社説やコラムを読み、題名を付けて三つの文に要約する。時間が余った生徒は意見も書き添える。元々、文章を読み解く力や時事問題への関心を持たせることなどを目的に15年ほど前に始めた。学年ごとに実施状況に濃淡があったが、国語の記述式問題の成績が上がったことに加え、英語の長文読解にも効果が見られたため、4年前から一貫校の中学を含め全学年で本格導入した。
 これに加え、国語担当の石井力教諭は3年ほど前から、授業終盤の5分間で、生徒にその日の授業内容を文章で要約させる「クイックライト」の時間を設けている。理解できているかを自覚させるためだ。石井教諭は「文章などの情報に触れ、頭で映像化し、それを自分の言葉で文章化する訓練を重ねることが重要」と強調する。

そもそも問題文が理解できない

 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の正答率が長年、全国平均を下回っていた東京都板橋区。区教委は17年、その原因を探るために区内の中学校1校でRSTを試験実施した。RSTとは、中高生の読解力を科学的に診断するため新井紀子・国立情報学研究所教授らが開発した「リーディングスキルテスト」のことだ。
 その結果、問題を解く以前に、問題文の意味自体が理解できていない可能性が浮かび上がり、18年度からRSTの対象を全小中学校に拡大した。区は今年度から「読み解く力」を向上させるための研究を開始した。中川修一教育長は「学力の向上は教科書を読めるということが大前提。そこから始める必要があった」と明かす。
 福島県西会津町立西会津中学校でも今年3月にRSTを実施したところ、問題文を読解できない課題が明確になった。今年度から新聞の速読や、読んだ本の魅力を紹介し合う「ビブリオバトル」の全校大会を始めたほか、教員も授業中、生徒に問い返す機会を増やして内容を理解できているかを意識した指導をするようになった。五十嵐正彦校長は「特効薬はない。いろいろやってみるしかない」と話している。【千脇康平、成田有佳、伊澤拓也】

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