量子論の実用が面白い、かも…

たぶん、ライト兄弟の初飛行と同じレベルの事件なのだと思うのが「量子コンピュータ」なのだが、現実に「ノイマン式コンピュータ」との違いが大きすぎて、未だボクたちが理解できないでいるようでもある。
ボクは、分からないなりにも量子論について少し、勉強しているので、そのカギになる「かさねあわせ」「ねじれ」「コヒーレンス」「不確定性原理」「遠隔操作」など、アインシュタインも「ボクは嫌いだ」と言った、奇妙な世界について多少の理解がある。ごく簡単に言うと、ノイマン式コンピュータはデジタル、量子コンピュータはアナログと言ってもイイと思う。多分、ボクが生きているうちに実用は難しいかもしれないが、100年後にはフツーに使われているだろう。
ボクは、「量子地理学」という奇妙なことを言っているのだが、誰も相手にはしてくれない。若い研究者で興味のある方、地域と量子論は親和性が高いと思うのでチャレンジする方、募集中です。


スパコンで1万年かかる計算を
たった200秒で!
グーグル「量子コンピューター」の可能性
2019年11月20日:AERA

 米グーグルの「量子超越」の発表は、量子コンピューターが人類の未来を切り開く「夢」かどうかを見極めるカギだ。果たして「曙」は来るのか? AERA 2019年11月25日号では、その量子コンピューターの可能性について特集。科学ジャーナリスト・内村直之氏が解説する。
*  *  *
「ミクロ世界の理論を使った量子コンピューターの能力は既存のフォン・ノイマン型のスーパーコンピューターを遥かに超えるという証拠を得た」

 10月23日、米グーグルのこの発表に使われたメディアは、世界的な科学誌「ネイチャー」だ。その表紙は後光のように広がる金色のワイヤーの中央に「QUANTUM SUPREMACY(量子超越性)」の文字が浮かび上がっている。どうもその後ろに量子コンピューターが隠れているということらしい。その下には「量子チップが初めて古典スーパーコンピューターをしのいだ」という文が添えられている。同誌10月24日号は、エディトリアル、ニュース、解説記事、そして本論文「プログラム可能な超伝導素子を使った量子超越」と4本の記事で埋まっていた。やや異様ともいうべきだろうか。

 実は、その1カ月ほど前から、この話題は研究者に広まっていた。NASAエームズ研究センターのウェブサイトに、この論文の元原稿がアップロードされていたというのだ。この研究をしている人物がNASAでも活動し、その下書きを誤ってか故意かわからないが、載せたらしい。その後消されたが、その重要性を見てとった人たちによってダウンロード、転載、そして流通したという。それをつかんだ経済紙フィナンシャル・タイムズが9月21日付の記事として概要を書いていた。「オリジナル論文はまだか、どこに出るんだ」と、関係者はウズウズしたという。

 ミクロ世界の原理である量子力学の本質を計算に使おうという量子コンピューターは1981年、量子電磁力学を創ってノーベル物理学賞を受けたリチャード・ファインマンが提唱した。量子力学的な現象を解析しようと思ったら、古典的な理屈で動くこれまでのコンピューターでは不十分、量子コンピューターでないと計算できないことがあるはずだ、という主張であった。 だが、実際の量子力学のもとで動く素子を作ることの難しさは、並大抵ではなかった。

●ミクロの世界で難問だった、量子コンピューターの原理

 ミクロ世界を成立させている量子力学は不思議の塊である。私たちの世界では「電気のスイッチはオンかオフのどちらか」でしかないが、ミクロ世界ではオンとオフの両方を背負った「重ね合わせ」という存在が可能だとされる。あの「生きているネコ」と「毒にあたって死んでしまったネコ」が共存しているという「シュレーディンガーのネコ」と同じ話である。
 私たちが使っているいわゆるフォン・ノイマン型コンピューターは1か0かどちらかを表すことができる「ビット(bit)」という基礎単位を並べて数や字を表して処理している。ある時点でのコンピューターの状態は一つに決まってしまう。ところが、量子コンピューターでつかう基礎単位「量子ビット=キュービット(qubit)」は、一つで1と0の両方を背負うことができる。10個並べればその表す数は一つではなく、重ね合わせの状態として「2の10乗個=1024個」の数が同時に存在することになる。不思議だが、それが量子力学的世界である。

 量子コンピューターの原理は、

(1)重ね合わせを使って、すべての場合を同時並列に計算する。

(2)計算された重ね合わせ状態の中から目的に合う状態を選ぶ「量子アルゴリズム」という手続きを実行する。

 という二つだが、それをミクロの世界で実行することは難問だった。

 物理学者、工学者ら量子ビットを実現させようという人々は、超伝導回路、光学的なパルス、電子のミクロな磁石的性質(スピン)、1個のイオン……など、いろいろな物理的存在で作ろうと挑戦したが、難しい。ミクロであるだけに、外部からの雑音で動作がおかしくなる。高密度に並べるのも難しい。

 20世紀終わりになって、やっと超伝導を使って安定した動作をする量子ビットができた。99年、日本電気基礎研究所の中村泰信(当時、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授)が世界で初めての超伝導量子ビットを開発してネイチャーの表紙を飾った。しかしそこから今までの道のりは長かった。

●「実際に役に立つ」という確実な証拠が必要だった

 今回のグーグルチームでの立役者は、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授を兼任しているジョン・マルティニスである。超伝導の応用であるジョセフソン接合の研究で博士号を87年に取った後、2002年からジョセフソン接合を使った量子コンピューターの研究を開始、04年に同校に着任し、仕事を続けていた。10年に彼のグループは、「最初の量子機械」とあだなされた量子力学に従って運動する振動子の開発で、米科学振興協会の「今年のブレークスルー」を受賞した。これが今の量子ビットにつながる。

 彼のそんな仕事に目をつけたのが、米グーグルだ。20世紀終わりから量子コンピューターに取り組んできた老舗IBM社よりももちろん遅かった。一発逆転をねらったのが、14年のマルティニスグループの丸抱えだった。
 マルティニスは期待に応えて、いくつもの量子ビットを組み合わせた量子コンピューターを作った。17年に米シリコンバレーで開催された「ビジネスのための量子コンピューター」というカンファレンスでは、49量子ビットの機械の稼働を発表した。この延長上にあるのが、今回の発表だった。

 21世紀に入ってIBMやグーグルなどの大企業に加えいろいろなベンチャーも参加して盛り上がっている量子コンピューター開発業界だが、ある不安からは逃れられなかった。それは「量子コンピューターは果たして役に立つのか?」という不安である。

 確かに量子コンピューターで使えるアルゴリズムは、素因数分解やデータベース検索、エラー訂正などいくつか発表されたが、私たちが今使っているコンピューターのように何でもできる汎用というわけではない。さらに、暗号解読のための素因数分解ができる量子コンピューターのハード構成は「2千個の量子ビットとそれをコントロールする10の11乗個の量子ゲートが必要」という見積もりがある。10から数十の量子ビットを作るだけでも息が切れているのに、1千個レベルのものなどいつできるかわからない。それでも開発に意味を持たせるために、「役に立つ量子コンピューターができる」という確実な証拠が必要だった。

 その不安を取り除くために、量子コンピューターは今のフォン・ノイマン型コンピューター(こういう文脈では古典コンピューターと呼ばれる)よりもとにかく速い、高速で計算できることの提示が必須とされてきた。これもなかなか難しい問題だ。量子コンピューターのほうが古典コンピューターよりも速く解けるというのは、実はその古典コンピューターによる解法がたまたまベストの方法ではなかったからということもある。

 そこで提唱されたのが「量子超越」である。この言葉をつくったのは、米カリフォルニア工科大学で素粒子理論と量子計算理論を研究するジョン・プレスキルだった。「一般に、マクロな世界を説明する古典システムはミクロな世界を成り立たせている量子システムを真似できないだろう。数十個程度の少ない量子ビットしか持たない弱々しい量子コンピューターでも、古典コンピューターが真似できないなら、それは量子コンピューターのほうが強力だということになる」という主張である。

 この「量子超越」を実現させた、というのが今回のマルティニス率いるグーグルチームの主張である。

 ジョセフソン接合素子を組み込んだ超伝導量子ビット53個(並べたのは54個だったが、一つ故障したという)を二次元的に配列し、ネットワーク状に結合させた量子コンピューター「シカモア(米国でよく見られるスズカケノキのこと)」に何をさせるか?
 ほぼ絶対零度に近い温度の冷凍機の中に設置されたシカモアは、取り付けられた200本のワイヤーにマイクロ波を送り込んでコントロールするが、できることといえば、それぞれの値(0か1)を53個並べた列を作ることくらいである。簡単なことだが、その数は0から2の53乗までの約9千兆個と莫大だ。こういう「数」をランダムにどんどん作っていくその動作「ランダム量子回路サンプリング」を古典コンピューターで真似られるか(シミュレートできるか)が課題であった。

●スパコンが1万年かかる計算を200秒で解いた

 量子力学に特有の干渉効果で、ランダムに数を作ってもある種の偏りが出るという。これをチェックすればシミュレートしているかどうかわかる、というわけだ。量子コンピューターの動作を真似る古典コンピューターとして、米テネシー州のオークリッジ国立研究所の「サミット(Summit)」というスーパーコンピューターを使った。9千個の処理装置と2万8千個のグラフィックプロセッサーを使った世界最高レベルのコンピューターだ。しかし、それでも複雑な量子コンピューターの計算をそのまま当てはめることは難しく、シカモアの性能をフルに使わずに計算させた結果も使い、サミットによる計算の結果を比較してみた。すると、シカモアが200秒でできた計算をするのにサミットでは1万年かかるだろうという結果が出た。これこそ、「量子超越の証拠」とマルティニスらグーグルチームは主張した。

 この結果を受け、プレスキルはウェブサイト「ワイアード」のコラムで「グーグルによる実用的な量子コンピューターへの画期的出来事だ」と評価、「しかし、量子計算が本当に難しいことはこの仕事からもわかる」という。

 しかし、この計算機に使えるプログラムはほとんど皆無で、当分、役に立つことはない。さらにこの成果が本当に量子超越を実現しているかどうかの判断は、すぐにはつかない。IBMの研究グループは「同様の古典コンピューターによるシミュレーションを違うプログラムでやったら2日半でできた」と、ブログで発表した。量子コンピューターに並ぶあるいは超える古典コンピューターのアルゴリズムがないという証拠はないのである。日本の量子計算理論研究者の中でも、53量子ビットの計算を実行したことは評価するものの、本当に量子超越の実現であったかということに疑問を投げかける声も聞こえる。

 それにしても、グーグルチームの量子技術力にはなかなか追いつけるものではないかもしれない。日本の量子コンピューター開発は、グーグルやIBMの挑む「まっとうな路線」を必ずしも走っていないし、若手も育ちにくい状況だ。欧米と勝負できる厚い研究者層が求められる。(文中敬称略)(科学ジャーナリスト・内村直之)

※AERA 2019年11月25日号



量子コンピューター、
2039年以降に実用化 予算倍増
2019年11月28日:朝日新聞

 スーパーコンピューターをはるかに超える次世代の「量子コンピューター」について、政府の有識者会議は27日、20年後となる2039年以降に実用化させるとするロードマップ(行程表)を盛り込んだ国家戦略案をまとめた。
 政府は量子コンピューターなど量子技術をAI(人工知能)やバイオと並ぶ重要分野と位置づけ、有識者会議が国内の専門家80人以上に聞き取りをして重点項目を絞り込んだ。
 行程表では、5年以内に一部の計算でスパコンを超え、10年後に性能をさらに倍にし、20年後以降に幅広い用途に使える本格的な量子コンピューターを実用化させるとした。開発拠点となる大学や研究機関を5年間で5カ所以上指定するほか、10年以内に量子関連のベンチャーが10社以上創設されるよう促す。
 量子技術は米中などが開発に力を入れており、米政府は約1400億円を投じる方針を決めたほか、中国も約1200億円をかけた研究拠点を来年完成させる予定。民間企業でも、米IBMがここ5年間で約3300億円を投資。米グーグルは先月、特殊な用途に限った量子コンピューターながら、スパコンで1万年かかる計算を3分ほどで終えたとする論文を発表した。
 日本は、年約160億円だった開発予算を来年度に倍増させる予定だ。内閣府の担当者は「日本にはコアな技術と、それを支える研究者がいる。実用化の目標が早まることもありうる」と語った。(合田禄)


AIの二の舞いになるな
 量子コンピューター競争激化
2019年11月18日:朝日新聞

【科学力】
 スーパーコンピューターの性能をはるかに上回る量子コンピューターをめぐり、産業界と大学、国による研究開発協力が始まった。実用化まで時間がかかるが、世界を一変させる可能性のあるこの技術で日本がリードするため、国は現在の年間150億円の研究投資を倍増させて支援する方針だ。
 都内でこのほど、一般社団法人「量子ICTフォーラム」の設立総会が開かれた。東京大、大阪大、NEC、東芝や国の研究所の研究者らが参加し、特許などの知的財産の戦略や、技術の標準化で世界をリードする態勢などに向けた協力を確認した。
 量子コンピューターは「0」であり「1」でもある「重ね合わせ」という量子論の不思議な状態を利用して、多くの計算を瞬時にこなす。人工知能(AI)の性能向上や新素材の開発のほか、インターネットを通じた通信や商取引といった社会インフラに大きな変革を促すとみられる。実用化まで20年以上とされるが、各国で開発競争が激しくなっている。
 米国では、政府が今後5年間で1400億円を基礎研究に投資するほか、IBMが5年で3千億円以上を投資するなど企業も力を入れている。米グーグルは専門の研究所を作り、世界の一線の研究者を引き抜くなど競争をリードする。10月には、「開発した量子コンピューターで、現在のスーパーコンピューターで1万年かかる計算を約200秒で終えた」とする論文を、英科学誌ネイチャーに発表。量子力学的な効果を使う特別なチップを使い、スパコンの15億倍にあたる計算速度を出したという。ネイチャー誌はライト兄弟による動力飛行機の初飛行になぞらえ「量子コンピューティングが離陸する」とする解説記事も同時に掲載するなど、世界に衝撃を与えた。
 また、欧州は10年間で1300億円の投資をするほか、中国も「重大科学技術」に位置づけ、来年までに1200億円をかけた研究センターの建設を進めている。
 量子ICTフォーラムの代表理事、富田章久・北海道大教授は「特許などを他国に押さえられると、『情報通信』という社会の基幹部分を奪われることになる。いまオールジャパンで臨まないと負けてしまう」と話す。
 内閣府が量子コンピューターを含めた関連技術の研究開発戦略を年内をめどに策定中で、来年度予算で今年度の倍の300億円を要求、補正予算でさらに100億円規模の上積みを模索する。自民党も先月、量子議連を発足させ、予算化を後押ししている。
    ◇
(視点)安定した投資と人材確保のしくみ作り必要

 量子コンピューターの開発は、この数年で一気にブレークした人工知能(AI)の研究史と重ねることができる。
 三十数年前、世界でAI研究のブームが起き、現在の技術の源流となった新理論が実用化への期待を抱かせた。だが、インターネットやスパコンなどのハードウェアが未発達だったため、期待された成果は生まれず、研究は世界的に「冬の時代」を迎えた。
 日本の冬はとりわけ厳しかった。ブームのさなか、通産省(当時)がAI研究の国策プロジェクトを立ち上げ、破格の500億円の予算をつけた。欧米による「基礎研究ただ乗り」批判に反論する政治的な狙いがあったが、社会の過大な期待を集めた反動は大きく、国はその後予算をつけなくなり、多くの研究者が去った。「人工知能」という言葉自体がタブーとされる時代が続いた。
 現在のAIブームの火付け役は、この冬の時代にも息長く基礎研究を続けた米国やカナダの研究者たちだ。米軍を始めとする国家投資が支えた。一方、日本は出遅れ、ビジネス展開だけでなく、プライバシー対策など規制の議論でも欧米に主導権を握られている。
 量子コンピューターに対する世界の研究開発投資はこの数年、伸び続けている。海外ではグーグルやIBMなど企業投資が目立つが、景気に左右されやすく、株主重視が求められる企業に過大な期待は寄せられない。国の役割は重要だ。
 日本は世界で初めて、制御が可能な量子コンピューターの素子を開発するなど研究の蓄積がある。とはいえ、実用化まで20~30年とされ、研究が停滞する時期もありうる。まずは基礎研究の目標を明確にした上で、研究を長く続けられる安定した投資と人材確保のしくみ作りが必要だろう。(嘉幡久敬)



地球が「臨界点」超える危険性、
気候科学者が警鐘
「私たちに残された時間がどれほど短いか、
人々はわかっていません」
2019年11月30日:ナショナルジオグラフィック
海とサンゴは気候変動による激しいストレスにさらされていて、
すでに回復が不可能になるレベルのダメージを受けている可能性がある。
(PHOTOGRAPH BY ALEXIS ROSENFELD, GETTY IMAGES)

 地球は緊急事態にあると、気候科学者らが警鐘を鳴らしている。複数の地球システムが連鎖的に「臨界点」を超えることで、地球全体が後戻りできなくなる可能性があるという。
 これは「文明の存亡の危機」だと英エクセター大学の気候科学者ティム・レントン氏らは11月28日付けで学術誌「Nature」に寄せた論説に書いている。
 地球システムが崩壊すれば、世界は「ホットハウス・アース(温室地球)」状態になりかねない。つまり、気温は5℃上昇し、海面は6〜9m上昇し、サンゴ礁とアマゾンの熱帯雨林は完全に失われ、地球上のほとんどの場所が居住不可能になる世界だ。
「臨界点はずっと先のことだろうと思われてきましたが、すでに差しかかりつつあるのです。恐ろしいことです」とレントン氏は言う。
 例えば、西南極の氷床は徐々に崩壊が進んでいるが、最新のデータによると、東南極の氷床の一部も同様に崩壊が起きている可能性があると同氏は説明する。両方の氷床が融解すれば、今後数百年で海面は7mも上昇する。(参考記事:「南極の棚氷が危ない、「両面」攻撃の脅威、研究」)
 地球の気候に多大な影響力をもつ要素のうち9つが、後戻りできない臨界点に近づいている。そのうちの2つが西南極と東南極の氷床の融解であり、他にはアマゾンの喪失、広範囲での永久凍土の融解などがそうだ。

かつての理論は今や現実に

 臨界点の概念は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって20年前に導入された。ひとたび臨界点を超えると、一気に不可逆的な変化が起こる。斧で20回打っても耐えて立っていた森の大木が、21回目の打撃でついに倒れるようなものだ。
 かつては、気候が臨界点を超えるのは5℃以上の温暖化が起きたときだと考えられていた。しかしIPCCは2018年の報告書で、それが1〜2℃の温暖化でも起こりうると警告した。気温がわずかに上昇するたびに、30の主要な臨界点のいずれかを超えてしまうリスクが高まる。1℃温暖化した現時点で、すでに9つの臨界点を超えようとしているのだ。次の斧、つまりさらなる気温上昇で何が起きるかは、誰にもわからない。(参考記事:「地球温暖化の影響は想定より深刻、IPCCが警告」)
 各国がパリ協定で約束した温室効果ガス排出量の削減に取り組んだとしても、気温はさらに3℃以上も上昇すると予想されている。
 11月26日に発表された国連の報告書によると、世界の炭素排出量は年々増加していて、気温上昇を1.5℃程度に抑えるためには2030年までに毎年7.6%ずつ排出量を減らす必要があるという。
 太陽からの熱エネルギーを受けた大気や海洋、氷床、森林などの生態系、土壌は、地球の熱循環に影響を及ぼす。それらは相互作用しているため、いずれかの要素が大きく変化すれば、ほかの要素にも影響が及ぶ。21回目の斧で倒れた森の木は、ほかの木を巻き込み、ドミノ倒しを引き起こすかもしれない。(参考記事:「解説:気候変動、IPCC最新報告書の要点は?」)

北極から全世界へ広がる影響

 科学者たちは今、別々の臨界点が互いにゆっくりとドミノ倒しを始めている可能性があると警告する。例えば、北極海では過去40年間、夏になるたびに海氷が失われているが、そのせいで熱を吸収しやすい水面の面積が増え、熱を反射する氷が40%も減ってしまった。その結果、北極地方の温暖化が進み、永久凍土が融解することで、大気中に二酸化炭素やメタンが放出され、それがさらなる地球温暖化を引き起こしている。(参考記事:「北極海の海氷面積、観測史上2番目の小ささに」)
 また、北極地方の温暖化により、木を枯らす昆虫が猛威を振るったり森林火災が増加したりした結果、北米の北方森林が広い範囲で枯れた。これらの森林は、今では吸収する以上の二酸化炭素を放出している可能性がある。(参考記事:「気候変動 瀬戸際の地球 消える北米の森」)
 さらに、北極の温暖化とグリーンランドの氷床融解により、北大西洋に流入する淡水の量が増えている。そのことが、近年「大西洋南北鉛直循環」(AMOC)という海流の流速が15%遅くなった原因になっている可能性がある。AMOCは熱帯地方から熱を運んで、北半球を比較的温暖に保つ役割を果たしている海流だ。(参考記事:「グリーンランドの氷床で異変が拡大、流出加速」)
 臨界点超えの多くはスローモーションで起こる可能性が高いという。例えば、南極の氷床の崩壊は数百年から数千年かけて進行するだろう、とノルウェーの国際気候センターの研究ディレクター、グレン・ピーターズ氏は説明する。「臨界点の多くは、どこが始まりなのかがはっきりしません」。なお氏は今回の論説には関わっていない。(参考記事:「永久凍土はもはや永久ではない、何が起きるのか」)












世界最大の島グリーンランド――この島で暮らす6万人のイヌイットは
「カラーリットヌナート」と呼ぶ――は、荒々しい自然美と冒険にあふれている。
幻想的な独特の風景を写真で見ていこう。(写真=KEITH LADZINSKI)

気候の緊急事態宣言

 世界の気温は、人間による炭素の排出だけで上昇するわけではない、と論説の共著者であるデンマーク、コペンハーゲン大学の生物海洋学教授キャサリン・リチャードソン氏は指摘する。森林、北極と南極、海洋といった自然システムも大きな役割を果たしているからだ。「こうした要因にも、もっと注意を払わなければなりません」
 リチャードソン氏は、現時点で少なくとも9つの臨界点を超えつつあることを裏付ける証拠があることから、すでにいくつかは手遅れだと言う。ここから連鎖的に変化が起きて地球全体が不可逆的に変化し、人類の文明に甚大な被害を及ぼすリスクがあることから、同氏は気候の緊急事態宣言を出すべきだと考えている。
 リスクを最小限に抑えるには、炭素排出量をゼロにして温暖化を1.5℃程度に抑える必要がある。炭素排出量をゼロにするには少なくとも30年はかかると言われているが、それでも「これは最も楽観的な見積もりです」とリチャードソン氏は言う。
「私たちに残された時間がどれほど短いのかを、人々はわかっていないのだと思います」と論説の共著者であるスウェーデン、ストックホルム大学ストックホルム・レジリエンス・センターの地球持続可能性アナリスト、オーウェン・ガフニー氏は憂慮する。「10年か20年で気温が1.5℃上昇すると予想されているのに、炭素排出量をゼロにできるのは30年後なのですから、危機的状況にあることは明らかです」
「ただちに対策を打たなければ、我々の子どもたちは危険なほど不安定化した地球を受け継ぐことになります」とガフニー氏は言う。

優先される経済

 最近の国連などの報告書によると、米国、中国、ロシア、サウジアラビア、インド、カナダ、オーストラリアなどの国々は、依然として化石燃料の生産を増やそうとしている。こうした国々はパリ協定の下で温暖化を1.5℃未満にとどめることに合意しているが、自国の経済成長の方が大切であるようだ。(参考記事:「化石燃料生産量、2030年にパリ協定目標値の220%」)
 ガフニー氏らは、文明が存亡の危機に直面している今、いくら経済的なコストと利益を天秤にかけたところで意味がないと指摘する。政府は経済学者の助言に大きく左右される。だがほとんどの経済学者は、研究や学問において気候変動を無視してきたため、人類に多大な害を与えたと氏は非難する。経済学の学術誌で気候変動を論じる記事や論文は非常に少ない、とガフニー氏は言う。
 米ニューヨーク州にあるコロンビア・ビジネス・スクールの経済学者ジェフリー・ヒール氏は、気候政策の経済分析では気候が臨界点を超えるリスクは考慮されていないと認める。「考慮していたら、分析結果は大きく違ったものになるでしょう。おそらく、気候政策を大幅に強化することを提案するはずです」
「臨界点を超えることは、資産や経済安定性、それに今の私たちの暮らしにとって非常に大きなリスクです」と「気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)」のステファニー・ファイファー最高経営責任者(CEO)は言う。IIGCCは30兆ドル(約3200兆円)以上の資産を運用する投資家グループだ。氏は温暖化の影響をまともに受けるより、さらなる温暖化を防ぐほうがはるかに安上がりだと主張する。
「気候変動対策には、もっと大規模で、もっと切迫した行動が必要です」と氏は言う。(参考記事:「北極圏の温暖化による経済損失、最大7500兆円」)










2018年11月、米国カリフォルニアで州史上最悪の山火事が発生し、
多数の犠牲者を出した。燃え盛る住宅を見つめるカリフォルニア州森林保護防火局の消防士。(PHOTOGRAPH BY JUSTIN SULLIVAN, GETTY IMAGES)

明るい兆しも

一方で、世界の脱炭素化は2010年以降加速しており、このままいけば温暖化を2℃以内にとどめることができそうだとする論文もある。12月2日に学術誌「Environmental Research Letters」に発表されるこの論文によると、炭素排出量そのものは増加したが、脱炭素化により増加量は低く抑えられていて、もうすぐ減少に転じそうだという。
「すべての経済分野で積極的に行動すれば」、エネルギー効率の向上、再生可能熱、太陽光・風力発電などにより、パリ協定の目標を達成することも可能になったと論文の共著者である米カリフォルニア大学バークレー校のエネルギー学教授ダニエル・カンメン氏は考えている。
 ガフニー氏は、前向きな臨界点もあると言う。例えば、再生可能エネルギーの市場価格が化石燃料を下回れば、一気に変化が訪れる可能性はある。「再生可能エネルギーの価格は下がり続け、性能は向上しています。最強の組み合わせです」
 政治的に転換を図る国も増えている。例えば英国は2050年までに炭素排出量をゼロにする目標を表明した。「その目標が達成可能で、経済的にも問題ないという確信ができたのです」とガフニー氏は説明する。米国でも、2020年大統領選挙の候補者たちが、野心的な気候変動対策を発表している。
 グレタ・トゥンベリさんの効果もあって、この12カ月で広く社会的な意識が変化したようだとガフニー氏は言う。数百万人の学生がストライキを行い、多くの人々が緊急の気候変動対策を求めた。金融機関やビジネス界や都市も、高い気候目標を掲げるようになっている。
「こうした社会的な変化が1つの大きな動きになることで、2020年代は人類史上最も急速な経済的転換期になるかもしれません」とガフニー氏は期待する。
文=Stephen Leahy/訳=三枝小夜子



(社説)
気候変動会議 パリ協定へ機運高めよ
2019年12月1日:朝日新聞

 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が来年動きだすのを前に、脱炭素の機運を高める舞台にしなければならない。あすから始まる25回目の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)である。
 議長国チリが反政府デモで開催を断念し、スペインが代替地に手をあげた。協定の円滑な運用に向け、ルールにほころびがないよう話し合ってほしい。
 パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度までに抑えることをめざしている。だが、いまの時点で1度も上昇しており、各国が温室効果ガス削減の国別目標を達成できても今世紀末の気温上昇は3度に達する。
 すでに、異常気象や自然災害など気候変動の影響が目に見えるようになってきた。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「気温上昇が2度未満でも深刻な被害がある」と警鐘を鳴らしたため、「1・5度未満をめざすべきだ」という声が強まっている。
 そのためには各国が取り組みを強め、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにしないといけない。9月の国連気候行動サミットでは、削減目標の引き上げを表明する国が相次いだ。その多くは小さな島国や途上国だが、国際社会の機運が高まる兆しともいえる。
 「1・5度未満」へのうねりを大きくできるかどうかは、排出量の多い国々の行動にかかっている。しかし、世界最大の排出国である中国や3位のインドの動きは鈍く、2位の米国にいたっては先日、トランプ政権が来年11月の協定離脱に向けて手続きを始めてしまった。
 これらの大国は、自分たちを含む主要20カ国・地域(G20)が全世界の排出量の約8割を占めている事実から、目を背けてはならない。率先して取り組みを強める責務があるはずだ。
 5位の日本も責任は重い。
 脱炭素をめざす自治体や企業は増えているが、「今世紀後半のできるだけ早期に排出を実質ゼロにする」という政府の目標は踏み込みが足りない。小泉環境相がCOP25でいかに言葉を尽くそうと、本当に危機感を共有しているのか疑われよう。
 いま野心的な数字を示せないなら、近い将来、必ず目標を引き上げるという意思だけでも明らかにするべきだ。
 とりわけ重要なのは石炭火力との決別である。脱石炭をめざす国が増えているいま、主要7カ国(G7)で日本だけが石炭火力の新設を続けている。石炭に依存しながら排出ゼロへの決意を示しても、むなしく響く。本気で脱炭素をめざすには、脱石炭にかじを切るしかない。



インフルエンザ早くも流行なぜ
マスギャザリング
多数の国から観客結集 W杯影響?
2019年11月20日:東京新聞・こちら特報部

 例年より1カ月早く、全国でインフルエンザが流行し始めた。ところが東京では9月半ばから多数の患者が発生。ラグビーW杯の影響を指摘する専門家がいる。「マスギャザリング」。多くの人が1カ所に集まることを指し、感染症が広がるリスクが高まるというのだ。すると来年の東京五輪・パラリンピックも心配になる。対策はどうなっているのか。                 (安藤恭子、榊原崇仁)

 インフルエンザといえば、真冬に流行する印象が強い。ところが今年は今月15日、全国で流行期に入った。厚生労働省によると、昨年と比べ4週間早く、新型インフルエンザが流行った2009年に次いで過去2番目の早さという。
 ちなみに、流行入りの目安は、全国約5000カ所の医療機関で、1カ所当たり患者報告数が各週で「1人」を上回ったとき。第45週(11月4日~10日)に報告された全国患者数は5084人。1カ所当たり「1・03人」となった。同省の梅田浩史感染症情報管理室長は「地域ごとのばらつきが大きい」と語る。患者が多いのは沖縄だ。
 第38週(9月16日~22日)に1カ所当たりの報告数が52・22人になり、警報が発令された。沖縄県結核感染症班の岡野祥主任技師は「近年は春になっても1人を切らず、ほぼ1年中流行している。台湾など亜熱帯地域も年中流行していると聞く。感染経路は分からない」と嘆く。
 もう一つ特徴的なのが東京。9月中に医療機関1カ所当たりの患者報告数が1人を超えた。東京都は例年より2カ月ほど早い9月26日に「流行入り」を宣言。今月10日までの累計で、都内の幼稚園や高校を含めた学級閉鎖は137校に上った。
 なぜ、こんな時期からインフルエンザが流行したのか。原因ははっきりしないが、同時期に開催されていたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に注目する専門家がいる。
 「8,9月、ニュージーランドやオーストラリアといった南半球の強豪の国々では、インフルエンザ流行期の冬を迎えていた。影響した可能性がある」。NPO法人医療ガバナンス研究所(東京)の上昌広理事は語る。
 ただ、患者の多い沖縄ではラグビーの試合は行われていない。上氏は「グローバル化が背景にある。インフルエンザウイルスは世界を循環している。沖縄では昨年、海外からの観光客に端を発したはしかの流行も起きた。人口に比して、海外との往来が多い地域ほど感染症のリスクは高まる」と、国内外から訪れる観光客を理由に挙げる。
 キーワードは「マスギャザリング」。イベントなどで多数の人が集まることを指し、医療の専門家は集団感染などを懸念する。時季外れのインフルエンザはマスギャザリングで生じた可能性がある。
 上氏は「観光客だけでなく、外国人労働者の受け入れも拡大している。東京の満員電車を考えれば、日常的にマスギャザリングは起凝り得る。それも含めてグローバル化ということだ。子どもや高齢者といった弱者ほどワクチン接種を心掛けてほしい」と語る。

東京五輪 対策は
国際イベント感染症リスク 検疫強化・情報共有
ホストタウン、合宿 地方の準備も万全に

 マスギャザリングによる感染症の広がりは、世界中で心配されてきた。
 その一つが、2014年に中国の南京であったユース五輪。14~18歳の選手を対象にした世界大会で、「感染症の持ち込み」を巡ってトラブルが起きた。
 当時、西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっていた。大会組織委員会の特別措置により、ナイジェリア選手団は南京入り後、他国チームと隔離された施設で練習することを強いられた。選手団はその後、参加自体を取りやめており、関係者が「差別を受けた結果、辞退を決めた」と述べたことが報じられた。
 五輪では16年のブラジル・リオデジャネイロ五輪で感染拡大が問題になった。大会前、中南米でジカ熱が流行し、世界保健機構(WHO)は緊急事態を宣言。ゴルフの松山英樹選手やテニスのトップ選手らがジカ熱を理由に出場を辞退した。世界の研究者や医師ら150人は「大会の延期か移転を」と呼びかける文書をWHOに提出した。
 日本も無縁ではない。
 15年に山口市で開かれたボーイスカウトなどの国際大会「ボーイスカウトジャンボリー」では、英国とスウェーデンの計4人が髄膜炎感染症と診断された。
 この病気はせきやくしゃみで感染し、発熱や頭痛などの症状が出て、重症化することもある。前出の厚労省・梅田氏は「国内で感染した可能性が高い例だった」と振り返る。
 厚労省によると、今月2日に閉幕したラグビーW杯日本大会の観戦などで来日したオーストラリア在住の50代男性も、今月10日にこの病気を発症した。梅田氏は「潜伏期間は平均4日なので、閉幕後に感染したと思われる」とみる。
 来年には東京で五輪、パラリンピックが開かれる。ラグビーW杯とは比較にならないほど多くの国から人が日本にやってくる。対策はどうなっているのか。
 厚労省は「感染症の持ち込み」の監視を強めるため、検疫所の人員を15年度の966人から本年度は1158人増やした。17年には自治体向けに感染症対策の手順書を用意した。さらに各都道府県がリアルタイムで状況把握できるよう、個別定例の情報共有システムを整え、9月から運用を始めた。
 関係省庁による連絡会議も今春に始まった。8月にまとめた感染症対策の推進計画は「国内では風疹やはしかの患者が増えている」と記し、大会関係者らに予防接種を求めた。事務局を務める内閣官房の秋元雅裕参事官補佐は「感染症の媒介にならないようにするための手立て」と説明する。
 ただ、事は簡単ではない。国際医療福祉大の加藤康幸教授(感染症学)は「感染症対策は東京だけの問題ではない。他の自治体も取り組んでいかなければならない」と求める。
 競技大会は東京都内だけではなく、外国選手らは各地を訪れる。だから加藤氏は地方に対応を促す。「外国人の選手らと交流する『ホストタウン』になったり、事前合宿を受け入れたりする自治体は各地にあり、日本にはない感染症が広まるリスクがある」
 加藤氏は「そもそも地方の医療機関は、海外旅行の経験者や外国人が受診することが少ない。どの感染症か診断が遅れることが心配される。診断用キットを準備しているかという問題もある」と語る。
 そして、加藤氏は「東京五輪は競技場などのインフラが『レガシーになる』と強調されているが、バラ色な側面ばかりではない。医療機関の国際化をどう進めるかが改めて問われている」と続けた。

デスクメモ
 かつて所属した記者クラブ。会社ごとの小部屋が廊下の両側に並び、計100人ほどの記者が詰める。インフルエンザの時期、遠くの部屋から咳が響く、その咳が隣、また隣にと、日に日に近づいてくる。数日後、自社の記者も咳をし、熱を出す。これもマスギャザリングだろうか。       (裕)



単純だった生命が進化重ね複雑に…
仮説を支持する発見
2019年11月19日:朝日新聞

 東北大や北海道大、米航空宇宙局(NASA)などの研究チームが、隕石から生命の材料に必要な糖を見つけた。米科学誌に19日発表されたこの発見は、原始の生命が、リボ核酸(RNA)を主役に生命活動を維持していたのではないかという仮説を支持するデータだ。
 地球上で現在いるほとんどの生き物は、DNAの情報をコピーしたRNAをもとにたんぱく質をつくっている。一方、太古の生き物はこのような複雑なシステムを持っておらず、DNAとたんぱく質の両方の役割をRNAが担っていた、というのが「RNAワールド仮説」だ。単純だった原始の生命が少しずつ進化を重ね、複雑になっていったという考え方で、多くの研究者が支持している。
 研究チームの古川善博・東北大准教授は「隕石から見つかったのが、DNAでなく、RNAを構成する糖だった。これが宇宙でできていた証拠を得たことは、RNAワールド仮説を支持する結果だ」と話す。
 研究チームは今後、さらに複数の隕石(いんせき)を分析し、地球外から地球にどれだけの糖が飛来していたのかを調べていく予定という。
 この成果は米科学アカデミー紀要(PNAS)に
論文(https://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1907169116)として掲載される。(合田禄)

地球生命誕生の材料か
 隕石から「糖」を初めて検出

 隕石(いんせき)からリボ核酸(RNA)を構成するのに必須な糖を検出したと、東北大と北海道大、米航空宇宙局(NASA)などのチームが19日、米科学誌に発表する。これまでにもアミノ酸などの有機物が見つかったことはあったが、生命の根幹を担うRNAを構成するのに必要な糖が見つかったのは初めて。地球で生命が誕生したときの材料となった可能性があるという。
 この糖は「リボース」と呼ばれる物質。豪州などで見つかった隕石を粉砕し、特殊な方法で気体にして成分を分析したところ、見つかった。地球の生物由来の糖とは炭素の同位体の割合などが違っており、隕石が地球に落下してから混ざったのではなく、もともと隕石内にあって宇宙から飛来したと考えられるという。
 この隕石は地球で生命が誕生したより昔の40億年以上前に形成されたらしい。地球でも当時、この糖がつくられた可能性はあるが、証拠は見つかっていない。(合田禄)

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