この「悪夢」は、いつ覚める

「暗澹たる気分…」、ボクはどちらかというと“躁傾向”で落ち込んだり、憂鬱になることはあまりないのだが、最近やるせない気分になることが多い。
ボクの生活に切実する社会的課題が、「アベノミクス」の名の下でさまざまに政策化され、社会に現象している。ABEくんが首相として“史上最長”と言われて、「悪い冗談もいいかげんにしてもらいたい」という気分だ。

牧太郎の青い空白い雲/744
安倍首相“史上最長”を可能にした
「検察の不正義」
2019年11月19日:サンデー毎日

「桜を見る会」の前夜祭などについて記者団への応対を終えようとして、
さらに質問されて振り返る安倍晋三首相=首相官邸で2019年11月18日午前10時2分、川田雅浩撮影

 「意外にも」と言うべきか、「不運にも」と言うべきなのか、安倍晋三首相の通算在任日数が11月20日、憲政史上最長を記録する。
 大臣たちの不祥事などで、第1次政権を投げ出した「あの時」とは、想像もできない「安倍政権の長寿」である。
 それなりに「人気」もある。しかし「バカの一つ覚え」のように主張する「デフレからの脱却」は早々と頓挫。経済は長〜い停滞。所得格差が広がっている。
 貧乏国なのに、後進国にカネをばらまき、トランプ大統領の命令で「兵器爆買い」までしているのに、当のアメリカにも、ロシアにも、中国にも(「世界中から」と言ってよいほど)バカにされ、外交は「合格点」にほど遠い。
 その上、次々に起こる災害に何ら〝打つ手〟がない。
 なのに〝長持ち〟する。なぜだろう?
「長寿の秘密」を探すのはいとも簡単である。
 次々に不祥事が続く内閣だが、この8年間、国会議員は逮捕・起訴されていない。どれも立件されれば「政権の命運」が尽きるような大事件なのに、なぜか、検察は〝真っ黒けの悪党〟を無罪放免にしている。
 つまり、検察を味方にしたから安倍内閣は生き延びているのだ。
    ×  ×  ×
 逮捕されるべき国会議員はいた。例えば「甘利明・元経済再生担当相」である。甘利氏と元秘書2人は2013〜14年、千葉県の道路工事の用地をめぐり、工事を担う都市再生機構(UR)との間で補償交渉をしていた千葉県の建設業者から現金計600万円を受け取っていた。
 当方から見れば「ワイロ」である。正確には「あっせん利得処罰法違反」である。業者は「600万円は口利きの報酬だった」と正直に証言したが、東京地検は甘利氏の「政治資金としてきちんと処理するように指示した」という言い訳を認め、甘利氏と元秘書2人を不起訴処分(容疑不十分)にした。
 法務省の幹部が「口利きなんて常時、永田町界隈(かいわい)でやっていること」と、政権側に立って「捜査」に口をはさんだ!と雑誌などで批判されたが……その「不起訴」で安倍政権は助かった。
 下村博文・元文部科学相の政治団体「博友会」が学校法人「加計(かけ)学園」の秘書室長から政治資金パーティーの費用として200万円を受け取ったことを隠していた。これも捜査対象になったが、東京地検特捜部は不起訴処分とした。
「検察の正義」はどこへ行ってしまったのか?
    ×  ×  ×
「検察の正義」は風化した。「検察の独立」を守っていた人々が……文字通り「身体(からだ)を張って」守っていた検事たちが、突然「時の内閣の意向」を忖度(そんたく)する〝普通のお役人〟になってしまった。
 多分、原因は「人事」だろう。
「政治主導」という名目で、安倍政権は、霞が関の官僚群を「人事」で支配した。各省庁の局長級以上の幹部候補を官邸がリストアップ。各省庁の人事にことごとく介入。首相(官邸)が最終決定する。
 法務省も例外ではなかった。
 検察首脳人事は政治的中立の不文律から、政権の影響を排除した独自の序列で決める。例えば、国民の安心・安全を担う検察の顔「検事総長」選びは現職の検事総長が総長OBらの意見を聞きながら次の検事総長候補を最終決定する。
 ところが、安倍政権は違っていた。16年7月、当時の法務事務次官が、後任の事務次官の人事原案の承認を官邸に求めたところ、官邸はそれを拒否。原案では、地方の検事長に転出させることになっていた「安倍寄りの人物」を事務次官にした(事務次官は検事長を経て検事総長、というケースが多い)。
 安倍政権は「独立性」が求められるはずの「検察人事」を手に入れた。検察は、この日から「安倍政権の言いなり」なった。
    ×  ×  ×
 安倍政権は検察人事を握ることで長期政権を手に入れ、結果として「悪が栄える世の中」を作った。その最たるものが「森友学園への国有地不当廉売」事件である。
 いまさら、説明することもないだろう。大阪地検特捜部は国有地の大幅値引き売却に対する背任や決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成など全ての容疑について、財務省幹部ら38人全員を不起訴処分とした。
 改ざんを命令された職員は悩み続け、自殺したというのに……命令した財務省理財局長(当時)・佐川宣寿(のぶひさ)氏は嫌疑不十分!
「巨悪」に立ち向かうハズの検察が自ら「巨悪」になってしまったのだ。

 太郎の青空スポットは、今号はありません。

まき・たろう
 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある



首相「やっぱりずさんだったかな」
 歴代最長政権の陰り
2019年11月19日:朝日新聞

 安倍晋三首相の通算在職日数が20日、歴代最長になった。自民党内に有力なポスト安倍候補が見当たらず、野党もまとまりを欠くなかで、一定の世論の支持に支えられてきた。ただ、その足もとでは不祥事がやまず、長期政権ゆえのひずみもあらわだ。残り任期は2年を切り、求心力に陰りも見える。
 15日夜、都内の日本料理店でフジサンケイグループの日枝久代表と食事をした安倍首相は、神妙な言葉を口にした。「我々も悪いんだよな。長くやってきたから。やっぱりずさんだったのかな」
 その直前、首相は国の予算で毎年4月に主催する「桜を見る会」について、首相官邸で記者団の取材に応じていた。首相の地元有権者らが大勢参加していたことが「公私混同」などと批判され、自ら説明に立たざるを得なくなったのだ。「やっぱり長期政権になれば増えるんですよね」。首相は出席者の増加について、そうも語ったという。
 憲政史上最長となる在職期間の達成を目前に、首相の足もとではいくつもの問題が噴き出した。
 9月の内閣改造で初入閣した閣僚が週刊誌で疑惑を報じられて連続辞任。大学入学共通テストで導入を予定していた英語民間試験をめぐっては、側近の萩生田光一文部科学相による「身の丈」発言を契機に批判が沸騰し、土壇場で延期に追い込まれた。
 そこに追い打ちをかけるように浮上したのが、「桜を見る会」の問題だ。野党は首相に照準を定め、国会で実態を明らかにするよう迫る。だが、政府は招待者名簿などを「廃棄した」などとして詳細を明らかにしない。その構図は公文書の改ざんや廃棄が明るみに出た森友問題などにも重なり、野党は「長期政権のおごりとゆがみの表れ」(立憲民主党・安住淳国対委員長)と批判を強める。
 10月以降、朝日新聞など報道各社の世論調査では支持率は下落傾向にある。ただ、首相に近い党幹部は「桜を見ようが見まいが関係ない。もっと本質的な部分が大切だ」と強気だ。
 朝日新聞の調査で第2次政権以降の内閣支持率の平均は45%と、第1次政権の38%を上回る。歴代の自民党内閣でも指折りの高水準だ。
 好調な経済を前面に押し出して選挙を勝ち抜き、選挙後に特定秘密保護法、安全保障関連法など世論が割れる法律を押し通す。一方、アベノミクスの「3本の矢」や「1億総活躍社会」といった看板政策を次々と掛け替えつつ、株価や有効求人倍率などの指標を政策の正当性を裏付ける「証拠」に掲げ、再び選挙に挑む――。
 この「勝利の方程式」で自民支持層をしっかりつかみ、無党派層が離れてもまた引き寄せるという、長期政権の基盤を築いてきた。
 今月の世論調査では、自民支持層の支持率は80%と高止まりしたままだ。無党派層は23%と高くないが、それでも2次政権以降の平均と並び、全体を押し下げるような状況にはない。財務省の公文書改ざんなどの不祥事が続いた2018年の3月と4月には、12%まで下落した無党派層の支持を、7カ月後に20%台まで回復させたこともある。
 首相に近い政権幹部は「支持率は下がってもまたすぐ上がる」と、政権運営に自信を見せる。(石井潤一郎、磯部佳孝)



安倍首相が史上最長に
 「他にいない」はいつまで
2019年11月20日:毎日新聞

 安倍晋三首相の通算在任期間が、きょう、明治後半から大正時代にかけて計3度、首相の座に就いた桂太郎を超えて史上最長になる。
 2012年12月に政権に返り咲いた当初は、安倍首相自身、ここまで続くとは考えていなかったろう。
 確かに長期政権は安定的に政策に取り組める利点がある。ただし首相は国論を二分した安全保障法制などを強引な手法で実現させたものの、人口減少問題といった中長期的課題を重視してきたとは言えない。
 逆におごりや緩みが一段と目立ってきているのが実情だ。公金の私物化が指摘される「桜を見る会」が象徴的である。
 首相は自分を支持しない人は敵と見なして批判に耳を傾けず、支持する人は味方扱いで優遇してきたのではないか。公正さを忘れた今回の問題はそれが如実に表れている。衆参予算委員会の場でごまかすことなく丁寧に説明しないと次に進めない。
 自民党が国政選挙で連勝してきたのは、旧民主党政権に対する国民の失望が今も続いている事情も大きい。世論調査を見ても、内閣を支持する理由として格段に多いのは「他に良い人や政党がないから」だ。積極的支持とは決して言えない。
 おごりを捨てるとともに、内政、外交の厳しい検証が必要だ。
 アベノミクスは本当に効果を上げたのか。株価は安定し大企業の収益は総じて増えたが、賃金は上昇しない。景気回復の実感は乏しく、富裕層との格差が広がっていると感じている人は多い。社会保障政策は信頼されず、将来への不安も消えない。
 外交では、トランプ米大統領と良好な関係にあるのは事実だが、ロシアとの北方領土交渉では「日本固有の領土」という従来主張を封印するまで譲歩したものの、解決は遠のいている。最重要課題としてきた北朝鮮の拉致問題は糸口も見えない。
 首相の自民党総裁としての任期は再来年秋までだ。4選は考えていないと語っており、残る任期で憲法改正を実現して政治的遺産を残したいと考えているのかもしれない。
 だが政治への信頼回復が先だ。そして自民党も「ポスト安倍」を考え始める時だ。「他にいない」という1強状況は、むしろ政治の閉塞(へいそく)を招いている。



安倍首相、説明しないがヤジ飛ばす
 2つの責任を考える
2019年11月17日:朝日新聞

 閣僚の連続辞任に、首相主催の「桜を見る会」をめぐる疑念や疑惑。繰り返される不祥事にも、安倍晋三首相が進んで国会で説明する様子はうかがえない。議論する、説明する、責任を果たすとは、どういうことなのか。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)に語り合ってもらった。(構成 編集委員・高橋純子)

 杉田敦・法政大教授 日本が長く「お手本」としてきた英国の議会が、EU離脱をめぐって揺れています。9月には、離脱期限が迫るなか、約5週間にもわたって議会を閉会するという政府の決定の合法性が司法審査で問われ、最高裁が違法と判決した。高度に政治的な問題については判断しないという「統治行為」論に逃げ込む日本の司法を見慣れている身には、新鮮な驚きでした。
 長谷部恭男・早稲田大教授 政府側は、議会をいつまで閉会するかは政治判断で、裁判所が口出しする問題ではない「統治行為」だと主張しました。しかし最高裁は、国政上の重大問題について議会による審議を妨げる決定は、合理的な理由がなければ許されないと結論した。全員一致の判決だったことに、最高裁の覚悟を感じます。
 杉田 国民投票から3年、英国議会はのたうち回ってきましたが、政府の暴走に対して、審議を通じてブレーキをかけてきたのも事実です。与党議員が議場の真ん中を渡って野党席に移るという印象的な場面もあり、与野党が真っ向議論を戦わせています。民主主義は単なる多数決ではない。そこに至るまでのプロセスが大事なので、時間と手間がかかります。一方、日本の国会は、はぐらかしの答弁が横行し、与党議員は政府方針を追認するだけ。議論の場でなく表決だけの場と化しています。
 長谷部 安倍政権は、野党が憲法53条に基づき臨時国会の召集を要求したのに、無視しました。英国最高裁の判断に照らせば、臨時国会の開催拒否にはなんら合理的理由がなく、国会が政府の責任を問うことを妨げた、ゆえに違憲ということになるでしょう。
 杉田 国会軽視ということでいうと、国会承認がいらない「調査・研究」名目で、自衛隊を中東海域に派遣しようとしているのも問題です。攻撃に巻き込まれる可能性があり、外国の船舶が危険にさらされている時に、「見殺し」にしてしまうリスクもある。行政命令だけで派遣していいのか、大いに疑問です。
 長谷部 日本国憲法のもと、武力紛争が起こり得るところに自衛隊の艦船を派遣することは国政上の重要問題です。国民の代表からなる議会で十分審議し、派遣するか否かの決定を得るべきです。これは「重要事項法理」という考え方で、1994年にドイツ連邦裁判所が、NATO域外へドイツ軍を派遣するには連邦議会での審議・決定を経る必要があるとしたのも、この法理に基づくものです。

自民党内からの批判なぜない

 杉田 安倍政権は、武力紛争が発生しかねないところへの自衛隊派遣は、国政上の重要事項ではないと言うのでしょうか。他方で政権は4年前、近隣諸国との関係で一刻の猶予もならないと、根強い反対を押し切り安全保障関連法を成立させましたが、立法の根拠とされた差し迫ったリスクはありませんでした。
 長谷部 その後に提起された安保法制をめぐる違憲訴訟でも、国側は「存立危機事態」の発生はにわかには想定できないなどと主張している。語るに落ちています。
 杉田 それが今回は、リスクはあるのにないと言って派遣しようとしている。ご都合主義も甚だしい。
 長谷部 少なくとも国民の代表たる国会が納得する条件の下で派遣するということにしないと、自衛隊員も不安で仕方がないでしょう。議論を通じて国民の支持を取り付けもせず、とりあえず行ってこいというのはあまりに無責任です。
 杉田 議論を避けるという現政権の姿勢は、大臣の辞職をめぐっても見られます。疑惑が取りざたされた2人の大臣は委員会での質疑から逃げるように辞任し、その後、納得のいく説明もしていません。
 長谷部 日本の首相がもつ大臣の任命権は、比較法的にみるとかなり強力です。米国でさえ、政府の高官を任命するときには上院の承認がいる。スイスは政府の構成員を連邦議会で直接選挙するし、イタリアは、組閣後に議会の信任を明示的に求めなければならない。日本の憲法も、「マッカーサー草案」の段階では国会の承認を得ることになっていましたが、最終的には首相に集中させた。だから、任命責任は本当に重いのです。
 杉田 首相は、行政を前に進めることが任命責任を果たすことだと言っていますが、自民党内からもなぜ批判の声が上がらないのか、不思議です。権力に対して皆が従順だから権力がさらに強化されているのか、それとも権力が強すぎてもう闘えない、抵抗できないという状態に陥っているのか。
 長谷部 いまの政権が代わるという展望がないからではないか。そもそも、責任はレスポンシビリティー(行為責任)とアカウンタビリティー(説明責任)に分かれます。責任をとって辞めるのはレスポンシビリティー。辞めるかどうかは別にして、なぜこんな事態を招いたか、繰り返さないためにどんなシステムを作るのかを説明するのがアカウンタビリティーです。責任を追及する側は、その二つをきちんと腑(ふ)分けしないといけない。ごっちゃにして「どう責任を果たすんですか」と聞いたところで、「これから頑張ります」と言われて終わりです。

説明はしないがヤジは飛ばす

 杉田 いまの政権のやり方は、一種のレスポンシビリティーを果たしたような格好をつけることで、ことごとくアカウンタビリティーを棚上げしている。「桜を見る会」も同じです。来年は中止という決定で責任をとったかのように見せかけて、公職選挙法違反などの疑いについては十分に説明していません。しかも、参加者名簿は廃棄したなどとし、これまでの運用実態を隠そうとしている。
 長谷部 レスポンシビリティーとアカウンタビリティーはそれぞれ独立した問題です。辞めたから、中止したから説明しなくていいということには当然なりません。官僚は本来、政治家の行動が合法かつ正当な枠内に収まるよう働くべきですが、親分―子分関係に縛られたのか、「桜を見る会」の文書の所在も開催の実態もはぐらかそうとしているように見えますね。
 杉田 首相は説明はしませんが、ヤジは飛ばします。加計学園の獣医学部新設問題をめぐって出てきた文書は文科省が書いたのかと質問していた野党議員に対し、「あなたが作ったのでは」と自席から指をさして言った。質問者が文書を捏造(ねつぞう)した、あるいは出所不明の文書を使って質問をしているかのように印象づけようとしています。その翌々日にも、別の野党議員の質問中に「共産党」と、質問内容と関連しないヤジを飛ばした。国会を侮辱していると言わざるを得ません。
 長谷部 自分の職責を理解していないのでは。憲法の条文に、国務大臣はいつでも国会に出席して発言することができるとある。政府の政策を説明するために国会に出ているのです。だから、閣僚のヤジは許されない。議員一般のヤジと一緒にしてはいけません。
 杉田 メディアの報じ方を見ると、首相が答弁の中で相手を侮辱したのなら問題だが、しょせんヤジだからと軽く捉えている節がありますが、むしろ逆です。答弁する中で侮蔑的な表現をする方が、後で謝罪し撤回しなければならないにせよ、まだマシです。質問にヤジで応じるというのは、自分が説明責任の当事者だとわきまえていないことを示している。かなり深刻な事態です。
 長谷部 国会審議は、目の前の大臣や質問者だけを相手に議論するわけではない。その向こうには主権者たる国民がいます。国民の疑問を明らかにしているか、国民が納得する説明になっているかが問われます。もっとも、出発点は逃げ回らずに問題にまともに向き合うことです。「ぶら下がり」取材などでお茶を濁すのでなく、国会での本格的な審議が必要です。



「飲み放題」「歌手が5~6曲」
桜を見る会・5000円前夜祭の
詳細と「寄付の有無」
2019年11月19日:毎日新聞

今年4月12日に開催された桜を見る会の前夜祭=ケイ潤子さんのブログから

 5000円は安いのか、妥当なのか――。「桜を見る会」に安倍晋三首相の後援会関係者が多数出席していた問題に絡み、東京都内の有名ホテルで前日に開催されてきた「前夜祭」の概要が、出席者の証言などから明らかになった。立食パーティー形式で歌手が歌を披露する場面もあったというが、安倍首相側は前夜祭に関し「総額や内訳の分かる明細はない」としており、疑問は解消されたとは言えないのが現状だ。
 参加した複数の地元関係者によると、前夜祭の出席者は当日に会場で安倍事務所の関係者に会費5000円を支払った。関係者から受け取った領収書にはホテルの押印があった。参加者は数年前は500人程度だったが、今年は約850人に膨らんだという。
 パーティーは立食形式で、料理は銀色のプレートに並んだオードブルや炒め物、パスタなど。一つの丸テーブルを25~30人で囲み「どこの宴会場でもよく見る料理が多かった」(地元経済界関係者)が、「アルコールは飲み放題だった」(別の出席者)。
 会場内には、安倍首相と一緒に写真を撮るための行列ができた。「(撮影が終わって)戻ったら料理がなかったので、仲間と一緒に(東京の)新橋に移動して食事をした」と振り返る出席者もいた。
 5000円という参加費について安倍首相は15日、「(前夜祭の参加者の)大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格」とし、記者団に妥当との見解を示した。一方、18日には費用の総額などを示す明細書はないのかと記者に問われ、「そういったものはないと報告を受けている」と説明。野党側から「あり得ない」などの反発が出ている。
 今年4月12日に開かれた前夜祭では、シャンソン歌手のケイ潤子さんが歌を披露した。ケイさんは毎日新聞の取材に「以前から安倍首相後援会の知人に『歌いたい』と話していたら、実現した。ギャラ(報酬)はもらわなかった」と説明した。前夜祭開宴前の約20分間で、500~600人を前に5~6曲を歌った。ケイさんは翌日の桜を見る会の招待状を持っていなかったが、バス代を自己負担する形で参加できたという。
 前夜祭での歌について、国民民主党の原口一博国対委員長は18日の野党追及チームの会合で「具体的な物品や金銭だけでなく、こういうサービスも『寄付』にあたるのではないか」と追及している。
 ケイさんは通常の出演時にもらう報酬額については「個人的なこと」と明かさなかったが、政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)は「(報酬を受け取る)プロとしての活動実績がある場合、(今回の行為は)厳密に言えば公職選挙法や政治資金規正法の『寄付』に該当する可能性がある」と指摘。その上で「前夜祭についてはどれぐらいの人数に募集をかけ、ホテル側とどういうやり取りをしたのかなど明確になっていない部分が多い。首相が国会で一つ一つ丁寧に説明しないと疑問は消えないままだ」とした。【佐藤緑平、反田昌平、曽田拓】



桜を見る会、参加者は「共に政権を奪還した皆さん」? 首相あいさつに疑問の声
2019年11月19日:毎日新聞

「桜を見る会」で招待者に囲まれ、笑顔を見せる安倍晋三首相(中央左)と妻昭恵さん(同右)
=東京都新宿区の新宿御苑で2017年4月15日、竹内紀臣撮影

 この一言に、すべてが凝縮しているのではないか。「皆さんと共に政権を奪還して、7回目の『桜を見る会』であります」。騒動の渦中にある毎年恒例の「桜を見る会」、今年の安倍晋三首相のあいさつである。私たちの税金で開かれるこの会、実は首相と共に政権の奪還運動をした人たちの集まりだったのか?【吉井理記、大場伸也/統合デジタル取材センター】

首相のあいさつに疑問の声

首相主催の「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相
=東京都新宿区の新宿御苑で2017年4月15日、代表撮影

 ざっくり、首相あいさつを振り返っておこう。
 この日(4月13日)は連立を組む公明党の山口那津男代表も参加。首相は芝生に置かれた赤いひな壇の上から、にこやかに聴衆に語りかけるのである。
 「公明党の山口代表をはじめご来賓の皆様、お忙しい中、こんなにたくさんの皆様、足を運んでいただきました(中略)今回の桜を見る会、64回目ですが、山口さんや皆さんと共に政権を奪還してから、7回目の『桜を見る会』となりました」
 今月に入り、桜を見る会のあり方が問題視されると、ニュース番組が放映したこの場面を疑問視する声がSNSなどで次々と上がったのだ。
支援者や後援会の集会なのか
 情報番組などでニュース解説をする芸人、プチ鹿島さんは「『皆さんと共に政権を奪還してから』というあいさつがそもそも妙です。支持者や後援会を前提にしていて、桜を見る会の趣旨と劇的に異なります」とツイート。「『桜を見る会』は日本国の行事なのに」「『政権を奪還した皆さん』と桜を見る会だ」といった声も相次いだ。
 なるほど、「桜を見る会」は首相が「各界において功績・功労のあった方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待」(8日、参院予算委)し、慰労するのが趣旨である。思想・信条や支持政党は関係ないはずだが、あいさつを聞く限り、まるで安倍後援会や自民党の集会のようである。

「選挙運動の延長と勘ぐられても仕方ない」

西川伸一・明治大教授=2019年5月22日、山根浩二撮影

 政治学が専門の西川伸一・明治大教授が皮肉った。
 「明らかに会の趣旨に反します。あの時、会場にいた招待客らに向かって、首相は『皆さん』と呼びかけた。首相の『政権奪還』に功績・功労があった人々だ、ということなのでしょうか」
 そもそも、これは公平性が大前提となる公金を使っての催しである。
 「見方を変えれば、首相のあいさつが、あの会場に集まっていた人々や会の性格を図らずも言い当てているのかもしれません」
 首相や与党の支持者ばかりが集められ、首相もそんなノリであいさつをしたのではないか、との疑いだが、事実、安倍首相の事務所や官邸、与党議員などに、支持者を招待できる「枠」があったことが明らかになっている。
 「しかも、この時期は統一地方選(投開票は知事選などが4月7日、市区町村長選などが21日)の真っ最中です。行政トップとして、発言に細心の注意を払うべき時期なのに、選挙を連想させる言葉をたやすく発する。選挙運動の延長ではないか、と勘ぐられても仕方ない」

安倍晋三首相のフェイスブックに2016年7月6日に投稿された「桜を見る会」の写真。
自民党のロゴが入っている(首相のフェイスブックより引用。画像の一部を加工しています)

「桜を見る会」を選挙に利用?

 選挙といえば、参院選まっただ中の2016年7月6日、首相のフェイスブック上では「安倍総裁は【青森県】での街頭演説会に参加いたします。是非、街頭演説会にご参加頂ければ幸いです」などと演説会日程を案内する投稿とともに、この年の4月9日に開かれた「桜を見る会」で首相自身が参加者と写った写真を「自民党 この道を。力強く、前へ」と選挙公約のロゴマークを付けてアップする、なんてこともしている。
 桜を見る会という政府の公式行事を、自民党の選挙に利用していることにならないか? 毎日新聞はこの問題について安倍事務所に質問状を送ったが、19日午後5時までに回答はなかった。

「奪還」連発、響きが好き?

 付け加えれば、「皆さんと共に政権を奪還し……」といった発言、国政選挙のみならず、国会演説などに繰り返し登場するキーワードだ。「拉致被害者の奪還」(2月25日、衆院予算委)「国民総所得50兆円の奪還」(16年1月22日、参院本会議)といったバージョンもある。首相はもしかしたら「奪還」というマッチョな響きの言葉がお好きなのかもしれない。
 再び前出の西川さん。
 「『政権奪還』という言葉がお好きなのは勝手だが、いまだに7年前の、過去の政権交代の話題を公の場で繰り返すのも、安倍首相の性格を表しているような気がします」



桜を見る会
安倍首相の元秘書・下関市長はこう答えた…
定例記者会見・一問一答
2019年11月18日:毎日新聞


定例記者会見で、桜を見る会についての質問に答える山口県下関市の前田晋太郎市長
=山口県下関市で2019年11月18日午後0時26分、近藤綾加撮影

 安倍晋三首相の秘書を務めた山口県下関市の前田晋太郎市長は18日、定例記者会見で「桜を見る会」について質問に答えた。前田市長は安倍事務所における参加者の取りまとめについて言及を避けたが、「何十年も応援した代議士がトップを取り、招待状が届いて、今まで応援してきてよかったなって、いいじゃないですか」と述べ、安倍首相の地元支援者を招待することを擁護した。主なやり取りは次の通り。【近藤綾加】

山口県下関市の安倍晋三事務所。事務所が配布したとみられる申込書で、
地元市議も支援者を招待できた=山口県下関市東大和町で2019年11月18日午後2時ごろ、竹花周撮影

 ――一連の報道をどう受け止めているか?
 野党側のやりとりを見ていると、いよいよネタが尽きたのかなというところと、災害対応とか我々地方が今苦しんでいる状況を国会で議論していただきたい。それから、議論の軸が当日の桜を見る会から前夜祭(夕食会)に移ったりしているが、領収書などお金のやりとりは適正にやっていると本人や事務所が主張している以上、公職選挙法(違反)には当たらない。問題は人数が多くなったことなどになってくるのかなと。ただ、規定で上限ってあるんですか。ないでしょ? 税金でっていう言い方するんだったら、最初に開催した昔の首相からおかしな話なんじゃないですか。
 ――人選についてはどうか?
 そこらへんになるとあまり言わない方がいいね。
 ――規模が大きくなりすぎたという指摘については?
 私が行ってみて思うことは、やっぱり70、80歳のおじいちゃん・おばあちゃんたちがネクタイぴしっとしめて、着物着て、人生一番の大勝負で新宿御苑に向かうんですよ。あの時、あの喜んで行っている姿を見ると地方を元気にしてくれている会だなと思っていました。我々、地方の人間が新宿御苑に足を踏み入れることなんてなかなかできないんですよ。ものすごく名誉なことを受けている方が増えていくのは悪いことなんですかね。
 ――費用が増えていることが指摘されている
 主に飲食費と警備費だと(認識している)。警備は必要だと思います。飲食費って、焼き鳥がちょろっとあるだけ。僕なんて7、8回行って、焼き鳥1本しか食ってないですよ。お酒が出ているって飲み放題じゃないですよ。ちょこっとあるぐらい。外から見たら派手で豪華絢爛(けんらん)な雰囲気かもしれないが、意外と中は質素で過剰に振る舞っていないし、必要最低限だと思っていますし、私はそこに全く違和感はないですよ。で、総理主催でしょ? この国は民主主義ですよ。ある程度の権限が与えられておかしくないと思いますけどね。逆に私たちが民主党政権の時に、一歩も踏み入れなかったのも仕方ないと思ってますもん。自分たちの政策が国民の支持を得られなかったからでしょ? それはジェラシーでもなく、甘んじて受け入れた。選挙で勝って主催になって、多くの方に喜んでもらえるのって悪いことですか? そして総理大臣になったら我々有権者は会えませんからね。他の代議士みたいに。声を届けたくても届けられない。そういう方が地方で耐えて耐えて地方で歯食いしばって、自分が何十年も頑張って応援してきた代議士がトップを取って、招待状が届いて、やっぱり今まで応援してきてよかったなって、いいじゃないですか。そういうなんか、人情的な感覚というのは公金を扱ってルールにのっとって正しくやっていく中では、あまり言っちゃいけないのかもしれないけど、そういうのもあっていいんじゃないですか。そのおじいちゃんたちの家にいったら、桜の会の升を玄関に飾ってますよ。来年も行けるかなってもう1年、元気に生きなきゃいけんなって楽しみにしているわけですよ。そういう実情を、都会の国会議員はわかってんのかなって思いますけどね。特に野党議員。
 ――市長に就任した後も毎年行っているか
 行っています。3回とも政務で。
 ――どちらから招待が来たか
 総理大臣からじゃないですか。
 ――「功績・論功のあった方」が対象ですが、市長就任後はどのようなお立場で
 それはどうなんでしょうね。分かりません。
 ――参加したのにどういうお立場で参加したか分からないのか
 地元市長じゃないですかね。
 ――どちらからの招待か。安倍事務所か
 いえいえ。何ですかそれ。
 ――公務じゃなく政務なら、地元市長として参加したのか
 分かりません。元秘書かもしれませんね。
 ――中止の判断の受け止めは
 いろいろと今回、問題として取り上げていることを解決してもらい、再開してもらうことが日本にとってはいいことではないかと思います。
 ――園遊会と一本化したらいいのではなど桜を見る会の役割は終わったのではという意見がある
 そんなこと思わないですけどね。全然違うでしょ、趣旨が。もっと敷居が低く……。園遊会に出るって相当……何%の人が出られるんですか。私も自信ないですよ。桜の会なら地元の国会議員が将来活躍してくれて、そのためにするわけじゃないですけどね。僕はいいと思いますけどね。
 ――他の政権でもそう言えるのか。
 当たり前ですよ、そんなの。民主党がやっていた時は僕ら一歩も近づけなかった。この国はそういう制度で存在するわけで仕方ないですよね。もちろん安倍さん以外でもやるべきですよ。
 ――公私混同の指摘があるが、政治家としてどう思うか
 難しいですね。総理が判断していることで、私が言うことではないので。
 ――秘書時代、前田市長自身もいろんな方に声かけしていたのか
 うーん、それはちょっと事務所の中のことなので言えないですね。
 ――とりまとめについては言えないのか
 うーん。よく分からないですね。
 ――内閣府主催のものを政治家の事務所が仲介していることについてはどうか。どこが政権を取っていても市長の主張はぶれないか
 後半の部分はそうですね。前半は政治家でありながら、要は官の人間ですからね。そこの境目が難しいから公職選挙法が存在して、公私のファジーなところの取り決めがあるわけで。線を引いているようで今回のように難しいわけじゃないですか。足がピロッと出て指摘されたり。そこは私の浅知恵ではよく分かりません。あとは決める人が決めれば。桜を見る会は地方を元気にする、政治家が頑張っていける、有権者が信じていけるいい取り組みだと思っていますし、これからもそうあるべきだと思います。
 ――官房長官時代の秘書として行ったのか
 それまでも後援会として行っているが。初めて同行したのが官房長官時代の2006年。初回はよく覚えている。いろんな景色が新鮮だったのでよく覚えている。よく覚えているというのは皆さん同じで、名誉な思い出を胸に人生頑張っていけるわけですよ。
 ――官房長官時代に行った人に聞くと、市域ではこういう枠があったとか、郡部で何組という枠があったという話がある
 その人って誰ですか。事務所の関係者じゃないでしょ、皆さんそういう中途半端な情報をネタに議論するのやめましょうよ。それって組織の中でグループ分けで順番にお弁当食べる話ですよ。ルールが決まっているわけじゃないし、大したことじゃない。ある程度事務所も大変ですよ、人を選んでいくのがね。どちらかというと後半は行った人が……いや、やっぱりやめます。
 ――途中でやめるのやめましょうよ。言葉変えてもいいですから
 いや言えない。
 ――夕食会は参加費の妥当性が指摘されている
 すしなんか出たことないですよ。何なんですか、あのなんとかずしって。ああいう全くうその情報を流している野党を追及してくださいよ。変な伝票出てきたり。全部作りネタじゃないですか。おかしいですよ。
 ――前夜祭の参加費が安すぎるという認識はないか
 ないですよ。だって、豪華ですよニューオータニとか。分からないですよ、僕たちそんなの。できるでしょ? だって。できんっていうなら東京の価格基準おかしい。ほとんど食べませんからね。立食ですよ。皆さん勘違いしているかもしれないけど、席とテーブルがあって順番に料理が出てくるわけじゃなくて、立食で料理並んでるの取るだけですからね。5000円の考え方って存在するんじゃないですか。そういうシステムは。
 ――これまでに総理から数はどうこうとか、人選がどうとか何か言われたことは?
 そんなの分からない。秘書時代、僕下っ端ですから分からないですよ。
 ――この人は呼んでおいてくれとか
 ないですよ、そんなの。まめな方ですが、さすがにそこまでできないですよ。それは周りが考えることで。
 ――じゃあ人選は事務所?
 分かりません。
 ――事務所が考えていた?
 いや、分かりませんよ。そりゃ当然、総理と事務所とで考えるでしょうけど。分かりませんよ、僕、事務所長じゃないですから。そこ考えて皆さん出してくださいよ。
 ――市長は事務所のツアーに参加した?
 ない。政務で空いた時間に顔を出す。
 ――歴代で最長の政権になります
 胸張ってやりますよ。本当、よくここまで来られたなと。夢のよう。日にちよりも今は、つわものぞろいの世界中のトップの中で真ん中に立ってくれているのがうれしいですよね。プーチンと話できて、トランプと話できて、習近平と話ができてって安倍さんくらいじゃないですか。居てくれるだけでいいんじゃないかと思うんですけど。




新宿御苑、お酒ダメなはずなのに…
首相「桜を見る会」だけ特例?
2019年11月15日:毎日新聞

「酒類持ち込み禁止」を告げる新宿御苑・新宿門横の看板。
これを見てがっくりした花見客も多いのではないか=東京都新宿区で2019年11月14日、吉井理記撮影

 なぬーっ!と思ってしまった。例の、安倍晋三首相主催「桜を見る会」である。お酒大好きの記者、さまざまな疑惑もさることながら、招待客がサクラをめでつつ美酒を楽しんだ、と聞いたからだ。というのも、会場の新宿御苑(東京・新宿)は飲酒や酒類の持ち込みを禁止しているはずだから。首相たちだけずるい。どうして? 【吉井理記/統合デジタル取材センター】

大勢の花見客でにぎわう新宿御苑
=東京都新宿区で2015年3月29日午前11時49分、本社ヘリから喜屋武真之介撮影

記者は酒を抱えてほかの公園に移ったのに…

 毎日新聞が出席者に取材したところ、園内で公費で設営される会場では、酒や焼き鳥、おにぎりが振る舞われるらしい。招待客らも、SNSなどにたる酒や安倍首相の地元・山口の銘酒の写真をアップ。酒食の費用は「1人あたり1200円ほど」(政府高官)とのこと。
 ここにはソメイヨシノやヤエザクラなど約1100本ものサクラが植えられている。うららかな春、サクラをめでつつ楽しむ美酒は、さぞやうまかろう。でもくやしい。

今年の「桜を見る会」で乾杯をする安倍晋三首相(最後列右から2人目)
=東京都新宿区の新宿御苑で2019年4月13日、代表撮影

 なぜなら記者は以前、やはりお花見の時期に早朝からおにぎりや唐揚げを準備し、ワインやビールとともに家族でピクニックをしようとしたが、御苑の門前に掲げられた「アルコール禁止」の注意書きの前にしょんぼり、荷物を抱えてほかの公園に移った経験があるからだ。
 飲酒や酒類の持ち込み禁止は、園のホームページでもうたわれている。花見の時期には「持ち物検査」をすることもあるらしい。

禁止されたのは25年ほど前らしい

 どうして首相だけ? 法の下の平等はどうしたのだ、という私憤、いや義憤にかられ、新宿御苑を管理する環境省新宿御苑管理事務所を直撃した。
 「実は利用者からも同じ問い合わせをいくつかいただいているんです……」と明かすのは同所庶務科長の男性。経緯は複雑であった。
 もともと皇室の庭園だった新宿御苑、1949年に一般に開放され、旧厚生省(現在は環境省)の管理下におかれた。当時は酔客の騒ぎがひどい3~4月の花見の時期を除き、飲酒や酒の持ち込みはオーケー。だから52年に始まった「桜を見る会」でも、当然のように酒が振る舞われていた。
 「ところがはっきりした年月日は資料が見つからなくて不明なのですが、その後に園内全域で飲酒や酒の持ち込みが禁止になったんです。昔からいた職員に聞くと、93~94年ごろに各門に『飲酒禁止』の看板を立てたらしい。禁止になったのはそのころだと思われます」
 新宿御苑の管理規則(環境省令)では明確に飲酒や酒類の持ち込みを禁止する条文はないが、泥酔者や他人に迷惑を与える恐れのある人の入園を拒める、といった条文がある。これを援用し、公園管理者として飲酒を禁止した、というわけだ。それまでは、急性アルコール中毒で、救急車が出動する騒ぎも珍しくなかった、という。

「長年の慣習として」にモヤモヤ

 なるほど。ならばなぜ、「桜を見る会」では飲酒が許されているのか?
 「そこなんです。『桜を見る会』でお酒が出されているのは承知しています。しかし、これまた明確に『例外として飲酒や酒類の持ち込みは許可する』という明文化された規則や許可を与える文書などは存在しない。長年の慣習として『桜を見る会』が開かれている時間だけは、お酒を認めている、という形です」
 うーむ。事情は分からないでもないが、やっぱりモヤモヤ。慣習と聞いて、会の招待客について、与党などの「招待枠」の存在を事実上認めた菅義偉官房長官が「長年の『慣行』」(13日の記者会見)と話していたことを思い出した。

「首相たちだけはお酒いいの?」

 園を訪れる人は何と思うか? 折しも新宿御苑では色鮮やかなサクラならぬキクが並ぶ「菊花壇展」の真っ最中。「本当は(園内で)お酒を飲むことに目くじら立てることもないけどね、安倍さんが出てくると『何かおかしいのでは』と思っちゃうから」と苦笑するのは姉妹で訪れた都内の女性(67)。中年の男性は「首相たちだけはお酒いいの? ふーん、ちょっと変な話だね」と釈然としない様子。「まあ飲んでもいいんだけど、日本の指導者らしくしてほしいね。ヤジ飛ばしたり……。説明をきちんとしてほしいよね」
 前出の庶務科長の男性が結んだ。「今後、内閣府で『桜を見る会』の開催のあり方を見直すと聞いています。だからこちらも伝えます。どうして『桜を見る会』だけ酒が許されるんだ、といった問い合わせが来ている、と」
 思えば公園側もとばっちりである。花見は日本の古くからの風物詩だけど、慣習・慣行だって、改めるべきことは改めたい。おいしいお酒をスッキリ楽しむためにも。



【主張】
首相在職1位 緊張感保ち難局に当たれ
2019年11月20日:産経新聞

 安倍晋三首相の在職日数が20日、通算2887日となり、歴代単独1位となった。日英同盟の締結や日露戦争の戦勝、日韓併合、不平等条約の改正などにあたった明治、大正の宰相、桂太郎を抜いたものだ。
 平成24年12月の再登板からでも、安倍首相は約7年にわたり、国政を預かっている。長期政権が日本の政治を安定させ、外交を有利に導いてきたことは間違いない。
 安倍首相は、202年ぶりの譲位に伴う御代替(みよが)わり、集団的自衛権の限定行使容認を柱とする安全保障関連法の制定に加え、アベノミクス、自由貿易の推進などの経済活性化に取り組んできた。
 平成から令和にかけて安倍首相は国政選挙で6連勝し、与党の議席数は野党を圧倒している。野党の支持率は低迷し、内閣支持率はおおむね安定している。
 首相の自民党総裁任期は令和3年9月末まであり、記録の更新は続くだろう。
 一方で在職期間の長さが、首相の評価を定めるものではないことも事実である。過去の仕事に満足して肩の力を抜いているときではない。日本には、全力で対応すべき難題が山積している。
 「米中新冷戦」の開始は、米ソ冷戦終結以来約30年ぶりの国際構造の激変だ。安倍首相はトランプ米大統領と習近平中国国家主席の双方に笑顔をみせているが、危うい対応である。中国の脅威を見据え、自由と民主主義、「法の支配」、繁栄を守るべく、日本の舵(かじ)とりをしなければならない。
 また、平成29年の衆院選で訴えた少子高齢化と北朝鮮の核・ミサイル問題という2つの国難は、どう突破するのか。
 首相が「政権の最優先、最重要課題」と繰り返してきた拉致問題と、「政権の一丁目一番地」であるはずの憲法改正は一向に進展がない。「国家の基本に関わる極めて重要な問題」と語ってきた皇位の安定継承策のとりまとめも、まだである。
 9月の内閣改造から2カ月もたたないうちに、2人の重要閣僚が公選法をめぐる疑惑で辞任した。桜を見る会の運営では自身に批判が集まった。長期政権のゆるみが出ているのは極めて残念だ。
 首相の重任にある限り、惰性で務めることは許されない。緊張感を保ち、全力で難局に当たる姿を国民に見せてほしい。


歴代最長政権 惰性を戒め政策で結果示せ
2019年11月20日:読売新聞

 長期政権ゆえの惰性に陥ってはならない。足元を見つめ直し、政権運営にあたるべきだ。
 安倍首相の通算在職日数が20日で2887日となる。戦前の桂太郎氏を抜いて、憲政史上最長を更新する。
 2012年に政権に復帰して、推し進めたのが経済政策「アベノミクス」である。大胆な金融緩和や機動的な財政出動により、景気を回復軌道に乗せた。
 集団的自衛権の限定的行使を認めた安全保障関連法を15年に成立させ、日米同盟を強化した。自国第一主義のトランプ米大統領とも信頼関係を築いた。
 読売新聞の世論調査では、65%が仕事ぶりを評価している。経済政策や外交の実績が国民の支持につながったのだろう。
 自民党内に強力なライバルが見あたらず、首相の党内基盤は固い。国政選挙で連勝したのは、多弱の野党に助けられた面もある。
 長く政権の座にあった歴代の首相も困難な課題に取り組んだ。
 佐藤栄作氏は、米国と交渉を重ね、沖縄返還を成し遂げた。中曽根康弘氏は、戦後政治の総決算を掲げ、日米安保協力を強化し、国鉄民営化を断行した。
 両氏とも政策目標を設定し、実現に向けて周到に策を練った。
 首相の自民党総裁としての任期は21年9月までだ。残りの任期で、どんな政策を手がけるのか。自らの考えを明確にし、戦略を立てて臨むことが重要である。
 憂慮されるのは、政権復帰から約7年が経過し、安倍内閣に綻びが目立つことだ。
 9月の内閣改造後、わずか1か月半の間に、2人の重要閣僚が不祥事で辞任した。功労者を慰労する「桜を見る会」の趣旨に反して、首相の事務所は、地元の後援会員らを多数招待していた。
 長期政権の緩みや驕おごりの表れと言えよう。首相は、緊張感を持って政策に取り組み、一つ一つ結果を出さなければならない。
 内政、外交の懸案は多い。22年には団塊の世代が75歳になり始める。給付費の増加に備え、社会保障制度の見直しが急務だ。
 景気回復の実感は乏しい。底堅い企業業績を賃上げにつなげ、経済の好循環を実現したい。
 北朝鮮の非核化には、米国との緊密な政策協調が欠かせない。元徴用工問題で、韓国に粘り強く譲歩を促す必要がある。
 首相は在任中の憲法改正に意欲を示している。幅広い合意形成に向け、まずは、国会での憲法論議を活性化させることが大切だ。



(社説)
歴代最長政権 「安定」より際立つ弊害
2019年11月20日:朝日新聞

 日本の政治史には、「歴代最長政権」として、その名が残ることは間違いない。しかし、これだけの長期政権に見合う歴史的な成果は心もとなく、年を追うごとに弊害の方が際だってきたと言わざるを得ない。
 安倍首相の通算在任日数がきょう2887日となり、明治・大正期に3度首相を務めた桂太郎を抜いて最長となった。短命に終わった第1次政権の後、12年12月に発足した第2次政権は7年近くに及ぶ。
 自民、公明両党は、衆参の国政選挙で6連勝した。第1次安倍政権以降、6年間で6人の首相が交代。とりわけ、政治の変化への期待を背負って政権交代を果たした民主党政権の混迷を目の当たりにした世論が、政治の安定を求めたことが背景にあるだろう。
 確かに、アベノミクスの下で株高が進み、企業収益や雇用の改善につながった。しかし、賃金は伸び悩み、国民が広く恩恵を実感できる状況にはなっていない。また、安定した政治基盤を生かして、少子高齢化などの難題に、正面から切り込んできたとも言い難い。長期在任で育んだ外国首脳との個人的な関係も、どれほど具体的な成果につながったであろう。
 一方で、長期政権がもたらした弊害は明らかだ。平成の政治改革の結果、政党では党首に、政府では首相に、権限が集中したことが拍車をかけた。自民党内からは闊達(かったつ)な議論が失われ、政府内でも官僚による忖度(そんたく)がはびこるようになった。森友問題での財務省による公文書の改ざん・廃棄がその典型だ。
 森友・加計問題は、首相に近しい者が優遇されたのではないかという疑念を招き、政治や行政の公平・公正に対する信頼を深く傷つけた。最近の「桜を見る会」の招待者をめぐる問題も根っこは同じだ。一方で、異論を排除し、自らに反対する者を敵視する首相の姿勢は、社会の分断を助長する危険がある。
 さらに、これほどまでに日本国憲法をないがしろにした政権は、過去に例がなかろう。歴代内閣が維持してきた憲法解釈を一方的に変更して、集団的自衛権の一部行使に道を開いた。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求にも無視を決め込んだ。
 首相の自民党総裁の任期は残り2年である。個人的な信条から、長期政権のレガシー(遺産)を、強引に憲法改正に求めるようなことがあれば、政治の混乱を招くだけだろう。
 限られた時間をどう生かすか。国民が今、政治に求めていること、将来を見据え、政治が今、手を打っておくべきことを見極め、優先順位を過たずに、課題に取り組む必要がある。

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