一生に何度も生活が破壊される国に暮らすボクたち

日本は、大陸の東側にあり、熱帯低気圧が発達して襲来する「台風」の常襲地帯にある。その台風が強力化して、今年は100年に一度という台風被害が毎週のように日本を襲った。
台風の強力化のメカニズムは気候変動による、海面温度の上昇だが、災害のバックグラウンドは、国土の脆弱化と政治の劣化だ。
なぜ、こんなひどいことが起こったのか、国民は現実を直視する必要がある。


地下鉄・地下街 浸水大丈夫?
温暖化 高まるリスク
「荒川氾濫で」81駅水没・経済活動まひ
2019年11月6日:東京新聞・こちら特報部

 大雨による被害に泣かされた今年の秋、各地で河川が氾濫し、鉄道が寸断された。そんな中でも真っ先に水が流れ込みそうな地下鉄、地下街み大きな被害はなかった。今後も大丈夫なのか。実は国は地下の大規模な浸水を想定。専門家は「災害は起こらないと楽観するのは、やめるべきだ」と警告する。
(安藤恭子、榊原崇仁)

「雨+風+高潮で想定を」

 荒川上流の3日間雨量が500㍉に達した午前4時、東京都北区で堤防が決壊。街にあふれ出た茶色い濁流は、地下鉄の駅入り口へと一気に流れ込み、巨大「水道管」と化した線路を伝って都心に到着。東京駅の改札は冠水は、中央区、千代田区のオフィス街はすべての機能を失った―。
 国土交通省荒川下流河川事務所が動画サイト「ユーチューブ」で公開中のフィクション動画「荒川氾濫」の一場面だ。
 2017年に公開され、再生回数は460000回超。足立区や江東区などの「海抜ゼロ㍍地帯」を中心に数10万人が孤立し、駅や車が水没する。CG映像でその様子を衝撃的に伝える。「不安を煽るつもりはない。最悪の場合を知ってもらい、自主的な行動につなげるのが狙い」(同事務所防災企画室)という。
 ただ、この映像は、決して大袈裟ではない。国の中央防災会議の「大規模水害対策に関する専門調査会」も09年、荒川が氾濫した場合の地下鉄の被害想定を公表している。
 それによると、北区志茂の荒川右岸で堤防が決壊し、た場合、約10分後に水が赤羽岩淵駅に到達。6時間で西日暮里駅、9時間後で上野駅、12時間で東京駅、15時間で銀座や霞が関駅などに達し、最終的には17路線の97駅(延長約147㌔)が浸水、うち81駅が水没する。
 元東京都職員の土木専門家で公益財団法人「リバーフロント研究所」(東京)技術参与の土屋信行氏は「東陽町駅など江東区の地下鉄駅の多くは、海抜がマイナスの所にある。北千住駅(足立区)も5㍍以上の浸水エリアだ。駅構内にいれば逃げるのも危うい」と予測する。地下鉄が水没すれば、地下鉄で縦横無尽につながる大手町や銀座の地下街も水没する。「オフィスビルの多くは地下に電気設備があり、復旧は長引く。日本経済は大損害だ」
 さらに不安視されるのは、台風に伴う高潮が、河川の洪水と重なった場合だ。
 都が18年3月に発表した高潮の想定によれば、墨田、葛飾、江戸川区の陸地の90%以上は浸水し、江東区では深さ10mになる場所も。「今年の台風はたまたま東京湾を直撃しなかっただけ。雨、風、高潮は3点セットで想定するべきだ」と土屋氏は述べる。
 温暖化の影響で海水温も上がり、巨大台風の危険性は高まっている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も警告している。
 環境保護団体「気候ネットワーク」東京事務所の桃井貴子所長は「荒川氾濫はいつ起きてもおかしくない。堤防などのハード整備に目が行きがちだが、化石燃料に依存してCO²排出を続ける現状を見直さなければ、想定を超える災害は繰り返される」と指摘する。

今回は大きな被害なし でも
「起こらない」楽観視危険
過去に死者 豪雨30年前の1・4倍
駅入り口の防水4割■「避難城風の共有に難」

 地下鉄や地下街の浸水は決して絵空事ではない。
 1993年の台風11号で冠水したのが、東京都心の地下鉄赤坂見附駅。線路から1・2mの高さにまで達した。99年には集中豪雨で溜池山王駅も水浸しになった。2004年の台風22号では、麻布十番駅に雨が流れ込んだ。15年には東急電鉄渋谷駅で地下2階にある改札付近まで水に漬かった。
 首都圏以外でも被害は相次いでいる。
 1999年と2003年には、JR博多駅近くを流れる御笠川の水が豪雨によってあふれた。駅周辺の地下街が、水浸しになり、99年は死者も出た。00年の東海豪雨で名古屋駅の地下鉄で浸水が起き、14年にも地下鉄名古屋駅で線路や改札付近が冠水した。
 1時間の雨量が60から100㍉に及んだ時に、浸水被害が目立つ。そんな豪雨が近年増えている。気象庁によると、1時間に50㍉以上の「滝のように降る雨」は2009年から10年の平均で年間311回。統計を取り始めた1976年空の10年間と比べ1・4倍に増えている。地下浸水のリスクは高まっている。
 関係機関は対策に追われる。東京メトロは、駅の出入り口と換気口、地上から地下へ向かうトンネルを通って水が入ると想定。駅の出入り口向けに止水版や防水扉を用意し、換気口には下から上にドアを閉めるような形になった浸水防止器を設置。トンネルには防水ゲートを設けている。
 ただ、駅の出入り口に関しては、予定の4割しか整備が済んでいない。官僚は2027年度の見通しだ。設置済みでも手作業で操作しなければならない設備もある。操作の遅れは、浸水被害につながりかねない。
 東京・八重洲地下街では、浸水対策計画をまとめている。「注意」「警戒」「非常」の三段階を想定し、それぞれに応じて情報収集や出入り口の警戒、利用者の避難誘導などを行うことにしている。
 出入り口の止水版は警戒段階で設置することになっている。広報担当者は「10月の台風19号では37カ所中、3カ所で設置した」と説明する。
 地下街特有の苦労もある。東京との小島俊之・都市基盤部担当課長は「店の入れ替わりが少なくなく、連絡先の共有が難しい。共有できていないと、利用者の避難が必要な場合でも、店に情報が伝わらないおそれがある。大きな台風によって横並びで休業する場合ならまだしも、ゲリラ豪雨のように突発対応が必要な時にどうするか」と語る。
 こういった対策に、厳しい目を向ける専門家がいる。関西大社会安全研究センター長の河田恵昭氏は「そもそも地下水没の危険意識が薄い、起こると思っていないから対策も詰め切れていない」と指摘する。
 「東京は駅とビルが複雑につながっている。全ての出入り口で浸水を防ぐことができるのか。バリアフリーが進む中で水自体が入りやすくなっている。これにどう備えるのか。資機材も用意している分で足りるのか。稼働させるための人出が本当に足りるのか。配水用のポンプや配管も十分とは思えない。復旧に時間がかかる公算が大きい」
 さらに河田氏は「深刻な事態が起きたらどうしようもないと考え、『そんなことは起こらない』とむしろ楽観視したがる。どこかで災害が起きても自分の地域で起こると真剣に考えない。政治家も一通りの被災者支援をして終わり、そんな体質を改めないと、深刻な被害に見舞われてからうろたえるだけだ」と、リスクに向き合おうとしない社会全体に危機感をあらわにする。

デスクメモ
 台風19号による浸水。武蔵小杉のタワーマンションでは、地価の電気設備が壊れた。同様に電気設備を地下に置くビルは各地にある。思い出すのは福島第一原発の事故だ。致命傷は地下の非常用発電機が津波で水没し、たことだった。どうやら、その教訓はあまり生かされていない。      (裕)



今世紀後半「風速70~80㍍級上陸」予測
平均風速67㍍超
スーパー台風増加
海面温上昇 大量の水蒸気が「燃料」に
2019年11月8日:東京新聞・こちら特報部

 甚大な被害が相次ぐ今週の台風災害。背景として指摘されるのが、強度が高まった危険な「スーパー台風」の増加だ。おりしも米トランプ政権が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を通告したが、原因はやはり温暖化による気候変動なのか。台風の目に飛び込む観測で知られる名古屋大の坪木和久教授(気候学)に、スーパー台風発生のメカニズムを開設してもらった。         (大野孝志)

 「これまでにない」「驚くような」―。坪木教授は何度もそう言って、今秋の台風の特徴を説明した。
 10月の19号は発生直後、中心気圧が1日に77hPaも下がり、急速に発達。その最大強度を3日間も維持して北上した。関東地方に上陸した台風としては、記録のある69年間で最強クラス。日本の南の海面温度が高く、発生域に大量の水蒸気があったためだ。
 そして、水蒸気の供給源となる南海上から南風に乗って水蒸気が入りつづけ、台風の北東側に湿った領域が広がった。台風の東側に「大気の河」と呼ばれる水蒸気の流れが形成されたからだ。その水量はアマゾン川の数倍、それが台風の進路上の関東から東北の上空に湿った空気を供給した。アマゾン川に匹敵する雨が降り続いたことになる。
 9月の15号は北緯20度という高緯度で発生し、3日で接近、上陸した。「対策を取る間がなく、非常に危険」。そして、丈六直前に最大の強度になった。坪木教授は、黒潮が大蛇行しており、その温かい海流に沿って北上したために成長した可能性があるとみる。
 雲の画像を見ると、台風の目の周りにそびえたつ「壁雲」がハッキリしている。台風にとって水蒸気は燃料、壁雲はエンジンで、その強さを示す。壁雲の中は最も風が強い。台風の反時計回りの渦が北上することで、目の東側でさらに風が強くなる。
 15号は東京湾のど真ん中を通過し、東側の千葉県で強風被害をもたらした。もし、進路が西に50㌔ずれていたら…。「東京都内で風の被害が起きていた。東京湾の奥で、伊勢湾台風の時と同程度の高潮が起きた恐れもある」

総雨量1000㌧

 近年は毎年のように大水害を持たらす台風が襲来している。地上の風速が1分間の平均で秒速67㍍以上に達した「スーパー台風」は、1951年から約30年間は全台風の8・9%だったが、1986年以降は17・6%に増えている。19号も、北緯25度まではスーパー台風だった。
 坪木教授は今世紀後半のスーパー台風の姿も予測している。気象庁の海面温度の予想データを基に、積乱雲の成長状況を一つづつコンピューターで計算。伊豆半島上陸の直前で中心気圧880hPa、風速70~80㍍、総雨量1000㌧という台風が見えてきた。「こんなことないだろうと思っていたけど、遠い将来の話ではないという気がしてきました。リスクが増大している現実の一端が、今秋の台風で現れた」
 リスクが高まっている背景には、地球温暖化、特に海面温度の上昇があるという。日本近海の海面温度はここ100年で平均1℃上昇した。海面温度が上がれば、強い台風が発生し、勢力を保ったまま日本に近づく頻度が高まる。

デスクメモ
 人工衛星とコンピューターによる台風の進路予測が発達し、表示される予報図も昔より見やすくなった。何日も前から準備や避難を呼びかけられる時代だが、気候変動はそれを超えて進んでいるのか。防災や治水で対処するだけでなく、異変の原因にも目を向けなければならない。      (本)

温暖化が誘発
このままだと未来は大災害続き

 「だから、パリ協定は非常に重要なのです。それなのに…」と坪木教授。米国は協定離脱を通告し、日本は温室効果ガスを出す石炭火力発電を続ける。「温暖化対策をいま考えている大人は、被害を受ける当事者じゃないんです。大災害が続く未来を、次世代に残して良いのでしょうか」
 温室効果ガス抑制以外の対策には、堤防の強化を長期的に進めるといったハード面と、非難のために具体的で詳しい情報を住民に伝えるといったソフト面を挙げる。さらに、現状を正しく把握し、予報に生かす重要性を説く。
 天気予報で見る機会の多い台風の強さは、実は「推定」だ。衛星画像から雲のパターンを見て、強さを判断している。だが、強い台風では、予測精度が落ちる。猛烈な台風を多く経験していないため、推定の基となる実測値が少ない。このため雲のパターンだけからでは、強度推定に限界が生じる。
 そこで坪木教授はコンピューター予測に加え、ジェット機で台風の目に飛び込み、気圧、気温、湿度を測る直接観測を2017年に始めた。目の中や周囲に「ドロップゾンデ」という小さな観測器を放出、落下する15分間でデータを集める。
 日本が位置する西太平洋は世界で最も多く熱帯低気圧が発生する台風の最前線だ。「沖縄にオールジャパンの台風研究拠点を設け、ジェット機での観測を続ければ、台風に対する国防だけでなく、東アジアの大きな国際貢献になると思います」

防止策乱れる足並み
ガス排出国の米、パリ協定離脱通告
日本は復帰の説得を

 スーパー台風の増加と地球温暖化が注目される中、トランプ米政権が4日に国連に通告した、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱。来年の大統領選挙に向け、国内の石油、石炭業界などの支持層にアピールするのが狙いだ。
 「協定全体にマイナスの影響がある」と話すのは、京都大大学院の諸富徹教授(環境経済学)。「パリ協定は、オバマ前大統領の時の米国と中国が握手をする形で主導し、世界のほぼ全ての国が参加する意義のある枠組みをつくった。その米国が抜ける影響はかなり大きい。しかも米国は温室効果ガス排出量世界二位。さらに連鎖的に抜ける国が出てきたら、協定の実効性が失われる」
 地球温暖化に対する国際的な取り組みの原点は、1997年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)で採択された京都議定書。だが、米国がブッシュ政権下の2001年にいち早く脱退したため、しりすぼみになった。
 そして今回のパリ議定書脱退通告となったわけだが、米国ではアップルやアマゾンなど民間主導の対策が先行。欧州でも、化石燃料分野から金融機関が投資を引き揚げるダイベストメントの動きが拡大している。世界的には温室効果ガスの排出抑制は既に趨勢だ。
 地球温暖化防止に市民の立場で取り組む非政府組織(NGO)「気候ネットワーク」の平田仁子国際ディレクターは「米国ではカリフォルニア州など自治体レベルでの取り組みが盛んなため、国内に限ればパリ協定離脱の影響はそれほど大きくならないのでは」と指摘する。
 日本政府は12年のCOP18で京都議定書の20年までの延長が決まると、不参加を宣言し、「議定書を殺すのか」と非難を浴びた。議定書の後を継ぐパリ協定でも批准が遅れ、16年のCOP22ではオブザーバーに甘んじるなど、議定書を取りまとめた時の評価は失っている。平田氏は「安倍晋三首相はトランプ大統領に、パリ協定に参加しないのはおかしいと、きちんとつてる必要がある」と求める。  (稲垣太郎)



千葉知事、台風翌日に30キロ動き
「帰宅」 県把握せず
2019年11月7日:朝日新聞

 千葉県の森田健作知事は7日、台風15号が県内を直撃した翌日の9月10日、災害対策本部のある県庁から約30キロ離れた同県芝山町の「自宅」に公用車で帰っていたことを明らかにした。自家用車に乗り換え、隣の富里市周辺を私的に視察したという。県内は大規模停電や電話の不通に見舞われていたが、県は本部長である知事の行動を把握せず、連絡手段も確保していなかった。
 森田氏はこれまで、9月9日は千葉市の公舎で情報収集し、翌朝、県庁に災害対策本部を設置後、富里市周辺で自家用車に乗り換えて同市内を私的に視察したと説明していた。今月7日発売の「週刊文春」で、9月10日に芝山町の別荘に行った疑惑があると報じられた。
 森田氏はこの日の会見で「別荘ではなく自宅」とした上で、「車の中でもいいから状況を見よう」と思ったが、県庁に自家用車を手配できず、公用車で帰宅したと釈明。運転手付きの自家用車に乗り換え、富里市周辺を車内から30~40分視察したと説明した。東日本大震災でも同様の視察をしたといい「前にもやって有意義だった。私の政治スタイルだ」と話した。
 台風15号の直撃後、千葉県内では最大約64万1千戸が停電し、5万6千棟以上の住宅が損壊する被害が出た。(古賀大己)

 千葉県の森田健作知事が7日の定例会見で語った主な内容は、次の通り。
 ――(週刊文春が報じた)芝山町の別荘に向かったという疑惑は事実か
 「芝山は私の自宅だ。別荘ではない。そこは明確にしたい。公用車で大変な時に行くと、(地元に)かえって足かせになる。車の中でもいいから、周りの状況を見ようと思った。時間的制約を考えると、東の方、酒々井(町)から富里(市)、あの辺を見たいなあと。私の車が芝山の自宅なら入れそうだというので、公用車で自宅まで行き(車を)チェンジした。木が折れたり電線に引っかかっていたりするのを見て、公舎に戻った」
 ――問題ないとの認識か
 「問題ないというか、そうだし、そういう風にやるのも、前にもやって有意義だった」
 ――富里市内の視察は聞いていたが、芝山とは明らかにしなかった
 「芝山というか、芝山って広い。(自宅のあるのは芝山町)岩山で、ちょっと行くと富里、酒々井だ」
 ――視察は誰とどこを回ったのか
 「運転手と私と、もう1人。私は警護対象者ですから。3人が事実。特定の場所(を見る予定)はなかったので車から見た」
 ――緊急時なので県庁で陣頭指揮をとるべきでは
 「それは違う。県庁で対策本部をやって、両副知事もいる。私ができることは、どういう形でお国にお願いできるか、県として言うことができるか、そういうことを考えている中で、多少なりとも視察しようと思った。これは私の政治のスタイルだ」
 「今やらなければならないことがある。それをご理解いただきたい。至らないところは謝ります」

森田健作知事の台風15号上陸後の行動

●9月9日
午前5時前 台風15号、千葉県に上陸
終日 千葉市の公舎で情報収集
●10日
午前9時15分 県庁に災害対策本部を設置し、本部会議開催
昼ごろ 県庁を離れて千葉市で公務。その後、県庁に戻る
午後3時すぎ 公用車で芝山町の自宅へ。自家用車に乗り換えて富里市周辺を視察後、公舎に戻る
(知事や県への取材から)



「私的視察だった」森田千葉県知事
“矛盾会見”に違和感!
 プリティ長嶋県議「コップを持つ手も震え
…追い詰められているのか」
2019年11月10日:夕刊フジ

 9月の台風15号で千葉県に被害が出るなか、災害対策本部長でありながら県庁を離れ、公用車で自宅周辺に向かっていた森田健作知事(69)。「私的視察だった」との釈明に異を唱えるのが、巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(83)のものまねで知られるタレントで同県議のプリティ長嶋氏(65)だ。議会での知事の発言と矛盾があるとし、「改めて謝罪会見を開くべきだ」と直言する。

 ■「改めて謝罪会見を」

 千葉県出身の長嶋氏はタレント活動のかたわら、2007年に市川市議に当選。拓殖大大学院で政治を学び、11年に県議に転じて現在3期目。
 防災士の資格を持ち、県議会では総務防災常任委員会に所属する長嶋氏は、「茂原市を視察したが、災害ゴミの山を見て、現場の大変さを肌で感じた」と話す。それだけに、7日の森田知事の記者会見を「大失敗だ」と指摘、会見の様子を「議会答弁でも見たことがない」と違和感を覚えたという。
 「水を頻繁に口に含む。コップを持つ手も震えている。口の周りを舌なめずりする。体をやたらあちこち触る。体調が変なのか、心理的に追い詰められているか、どっちなのかと思った」
 台風15号が通過した翌日の9月10日の知事の動向は、10月の県議会の委員会でも取り上げられていた。県秘書課は、森田知事が県東部の富里市方面への視察に行っていたと説明したが、森田知事は記者会見で初めて、芝山町の自宅に立ち寄ったことを明かした。
 「公用車の運転日誌にも書かず、説明も(議会と)違うことを言っている。議員に不正確で確信のない発言をしてはいけない」と苦言を呈した長嶋氏。「なぜ自宅に行ったことをはぐらかしたのか。なぜ富里市に行ったのか。時間的制約があるなら(県庁からの距離がより近い)市原市で被害が出ているのに、理論的におかしい」と話す。
 森田氏が知事選に出馬した09年の選挙では、市川市議として別候補の応援に回ったという長嶋氏。県議当選後も当初は批判的に見ていたが、徐々に印象が変わっていたという。「東京湾アクアラインの通行料金800円への値下げは地域活性化の起爆剤になっている。移動交番車へのAED(自動体外式除細動器)搭載や警察官への救命講習などもすぐやってくれた」と評価する。

 ■「行政が滞り、復旧・復興が遅れる」

 ただ、今回の会見を見て、「再び評価が変わった」と長嶋氏。視察問題が波紋を広げていることで、「行政機能が滞り、被災者救済と復旧・復興が遅れてしまう。知事は謝罪会見を開いて、認めるべきところは認めて真相を語り、『千葉県で一丸となり、任期残り1年4カ月、全力でやります』と宣言しないと終わらないと思う」と強調する。
 知事、どうでしょう。



論点 荒ぶる気象
2019年11月8日:毎日新聞

 台風19号が列島各地に深い爪痕を残した。各地で河川の堤防が決壊し、多数の死者・行方不明者を出した。さらに、台風21号による記録的な大雨に見舞われ、千葉県や福島県で被害が相次いだ。数十年に1度レベルの気象災害が相次ぐ日本。私たちはこのような災害にどう向き合うべきか。荒ぶる気象から学ぶことは何か。

防災「主客未分」の新段階に 片田敏孝・東京大特任教授

片田敏孝・東京大特任教授=永山悦子撮影

 台風19号は、極めて広範囲に大量に雨を降らした。その結果、東日本のいくつもの河川で流域全体が水であふれかえるという「流域型洪水」の様相となった。
 これまでの河川防災は、地域ごとに降雨量や河川水位を観測、分析し、対策をとってきた。しかし、流域全体になると、把握すべきデータが膨大になり、予測は極めて難しい。また、どんなにインフラを整備しても、それらを上回る災害は起きる。ゼロリスクはあり得ない。今回のように極めて広い地域に大量の雨が降れば、専門家も行政もメディアも、焦点を絞った情報を発信することが困難になり、情報とて完璧ではなくなる。
 台風21号も大雨をもたらした。私は、日本の気象災害は、これまでの経験則を超える新たなステージに入ったと考える。そのとき、私たちは災害にどのように対処すればよいのか。
 日本は1959年の伊勢湾台風以来、行政主導の防災を続けてきた。行政がインフラを整備し、ハザードマップを作り、避難所を準備する。それらが定着した結果、「災害過保護状態」になってしまった。住民の防災に対する主体性が失われ、「過保護な親(行政)の元で育ったひ弱な子ども(住民)」のような状態という意味だ。
 昨年の西日本豪雨も台風19号同様、広域に膨大な雨が降り、河川の堤防が次々と決壊した。行政サービスとして防災のレベルを上げることの限界が明らかになった。これを受けて、私も参加した政府の中央防災会議の作業部会は報告書をまとめた。防災を行政サービスから行政サポートへ転換することが要点で、「行政は主体的に避難行動をとる住民を全力で支援する」と記した。
 これは行政が何もしないということではない。一人ではどうしても逃げられない要援護者の支援を行政は徹底的にやるべきだと私は考える。西日本豪雨、台風19号のいずれも、高齢者の犠牲者が相次いだ。自分では主体的に動けない人の避難は行政が責任を持ち、それ以外の人たちは自分自身や地域で協力して逃げる、つまり自分の命は自分で守る――というメリハリをつけた対応が求められる。
 そのとき参考になるのが海外の事例だ。2017年9月、超大型ハリケーン「イルマ」が米国フロリダ州に上陸した。その際、実に650万人もの住民が広域避難した。彼らは、徹底的に自分のことを自分で守る行動をとったのだ。05年のハリケーン「カトリーナ」では、キューバの死者がゼロだった。キューバではハリケーンが近づくと官民挙げて対象地域から住民全員が避難する。日本で長く続いてきた防災の主体は「行政」、客体が「住民」という構図ではなく、「主客未分」の対応といえる。
 これらに共通しているのは、皆がきちんと防災、災害と向き合っているということ。災害大国に住む日本人は、きちんと向き合えているだろうか。日本の防災は大きな曲がり角にある。今の自分、家族、地域、この国のままでいいのか。防災には主体も客体もない。自分と大切な人の命を守るため、皆で考え直してみてほしい。【聞き手・永山悦子】

「30年に1度」いつ起きても
 中村尚・東京大先端科学技術研究センター教授

中村尚・東京大先端科学技術研究センター教授=大場あい撮影

 化石燃料の燃焼などによる大気中の温室効果ガス濃度増加に伴い、地球の気候は温暖化しつつある。気温はここ40年でほぼ右肩上がりだ。温暖化が起こらなくても一定の条件が整えば大雨は降る。偏西風の蛇行など自然の変動が原因となって異常気象は過去にも発生していた。だが、温暖化の影響が重なることで、これまで経験したことのないような豪雨や猛暑が起きやすくなっている。
 台風19号がこれほど広範囲に甚大な被害をもたらしたのは、台風そのものが大型で水蒸気を大量に含んでいたことに加え、上陸後も北上するスピードがゆっくりだったことなどが原因と考えられる。通常は10月半ばになると偏西風は本州の上空まで南下していて、台風を北東に流してくれるが、今回は偏西風が北に偏っていたため流す力が弱かった。
 さらに、日本の南海上や東海上の海面水温が高かった影響も大きい。台風は海面水温が26~27度以上あれば勢力は衰えにくい。南海上の海面水温は平年より1~2度高く、本州の沿岸近くまで26度もあった。関東沖から三陸沖にかけての海域も平年比で2~3度高かった。その結果、台風の東寄りの風に水蒸気が大量に供給され、関東北部や東北地方の降雨量をかさ上げしたとみられる。
 温暖化に伴い、日本の夏(6~8月)の平均気温は過去30年に約1度、近海の海面水温も0・7度くらい上昇している。大雨をもたらす積乱雲は大気下層の水蒸気を「燃料」にして発達するが、気温が上がるほど大気は水蒸気を多く含むことができるようになる。
 気象庁によると、7月の日本上空1500メートルの水蒸気量はこの30年で約1割増加した。仮に気圧配置など大気の条件がまったく同じなら、豪雨の際の降水量は30年前より1割増えることになる。「30年に1度」と言われていたような異常気象がいつ起きてもおかしくない。
 実際に1時間に80ミリ以上の「猛烈な雨」の発生回数は増加している。統計開始後の最初の10年(1976~85年)と比べ、最近10年(2009~18年)では1・6倍になった。猛暑や異常暖冬の頻度も増えている。これらの変化は過去になかった現象だ。
 降水量が1割増える程度なら「大したことはない」と思うかもしれない。だが、災害発生リスクも1割増で済む、という単純な話ではない。河川の水位が既存の堤防などが耐えられる限界を超えれば、広範囲に甚大な被害をもたらす。気候の変化が災害リスクをどの程度高めているかを、きちんと評価し、防災・減災に役立てる必要がある。
 国土交通省の有識者会議は今年10月、治水計画に関する提言を公表した。過去に起こった豪雨に基づく対策から、温暖化の影響予測を反映した対策への転換を求めるのが柱だ。科学的知見に基づき、将来起こりうる被害を踏まえた対策に移行することは評価したい。今回のような台風や豪雨の甚大な被害と、大地震、噴火が相次いで起こる「複合災害」を想定した備えも早急に検討する必要がある。【聞き手・大場あい】

近隣自治体と避難協定急務 多田正見・前東京都江戸川区長

多田正見・前東京都江戸川区長=岸俊光撮影

 台風19号は各地に大変な被害をもたらした。被災者の方はやりきれない思いでおられるだろうし、自治体の首長の皆さんの悩みもさぞ深いことだろう。私は東京東部の地元・江戸川区を心配したが、あに図らんや西部の多摩川が氾濫した。予測の難しさを痛感する。
 私ども江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川各区)が2015年10月に大規模水害対策協議会を設けたのは、05年に米国南東部を襲ったハリケーン「カトリーナ」が発端だった。ニューオーリンズ市が壊滅的被害を受けたが、市は災害後に全市民48万人が市外に脱出する計画を作った。それを聞いた私は、自分たちの問題でもあると考えざるを得なかった。同じような事態が起きたらどうするか、答えようがなかったからだ。
 ニューオーリンズにできるなら私たちにもできるはずと思ったが、併せて考えたのは一つの自治体が取り組むだけでは不十分だということだった。江東5区は荒川、江戸川という大きな河川の流域にあり、海抜ゼロメートル地帯が広がる運命共同体だ。他の4区に「一緒に勉強しませんか」と持ちかけた。防災教育により東日本大震災時に小中学生の生存率99・8%を実現した「釜石の奇跡」で知られる片田敏孝・東大特任教授らに指導を仰ぎ、広域避難を方針に決めた。18年8月に江東5区の大規模水害を想定した広域避難計画をまとめ、その後、今年5月に江戸川区独自のハザードマップを作った。
 このマップには、表紙の江戸川区の地図に「ここにいてはダメです」とインパクトのある言葉を記し、千葉や埼玉、東京西部などへの広域避難を訴えている。ここで考えたのは住民の意識改革の重要性だ。江東5区の浸水想定区域内の人口は250万人、居住者の9割以上にのぼる。高い建物に逃げてもライフラインが止まれば命の危険にさらされる。行政の対応には限界があり、自分の命は自分で守ってもらわなければならない。住民の行動を促すために率直に伝えるべきだ。行政の責任放棄ではなく、行政の責任として言わなければならない。そう信じて、この表現にした。今年5月に30万世帯に全戸配布して説明しているが、理解してくれる方は多いようだ。
 この地域は、これまで幾多の水害に見舞われてきた。1947(昭和22)年の「カスリーン台風」では利根川があふれ、浸水が半月以上続いた。49(昭和24)年の「キティ台風」は台風と東京湾の満潮が重なり、浸水域が広がった。その度に治水事業が実施されてきた。国民全体のコンセンサスを得るのはなかなか難しいが、必要な対策は今後も強力に進めるべきだ。
 避難対策としては、近隣自治体との提携が最大の課題になる。計画では、72時間後に猛烈な台風により堤防が決壊する可能性がある時に江東5区で共同検討を始め、48時間前には自主的広域避難を呼び掛ける。これを具体性ある計画にするために、私たちは近隣自治体が義務感を持って避難民を一定期間受け入れてくれるような協定を結ばなければいけない。国や東京都にはそれを先導してもらいたい。【聞き手・岸俊光】

102人死亡、6人行方不明
 台風19号は10月12日、大型で強い勢力を保ったまま伊豆半島に上陸、関東~東北地方を通過した。神奈川県箱根町で48時間に1000ミリを超える雨が降るなど各地で豪雨となり、東日本の広い地域に避難指示・勧告が出された。長野県の千曲川、福島県、宮城県の阿武隈川などの計140カ所で堤防が決壊し、浸水被害が拡大した。台風21号による記録的大雨でも各地で浸水が相次ぎ、台風19号と合わせ102人が死亡、6人が行方不明となっている。

 ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

 ■人物略歴
片田敏孝(かただ・としたか)氏
 1960年生まれ。豊橋技術科学大大学院博士課程修了。群馬大教授など経て2017年から現職。東日本大震災の津波から避難し、「釜石の奇跡」と呼ばれた住民への防災教育を担当。

 ■人物略歴
中村尚(なかむら・ひさし)氏
 1960年生まれ。ワシントン大大学院修了。東京大准教授などを経て、2011年から現職。17年から気象庁異常気象分析検討会長を務める。専門は気候力学。学術博士。

 ■人物略歴
多田正見(ただ・まさみ)氏
 1935年、愛知県生まれ。早稲田大卒。99年から今春まで東京都江戸川区長5期。内閣府の「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難検討ワーキンググループ」委員を務めた。



【主張】
気候サミット 情緒排して着実な削減を
2019年9月26日:産経新聞

 世界の首脳が地球温暖化を議論する気候行動サミットで、77カ国が2050年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロにする」と表明した。
 温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」が来年から本格的に運用されるのを控え、さらなる具体策を示すよう求めた国連のグテレス事務総長の呼びかけに各国が応えた。
 もっとも、77カ国の多くは発展途上国だ。協定から離脱した米国のほか、中国やインドなど主要排出国は削減目標の上積みや前倒しを示さず、従来目標を順守する姿勢にとどまった。日本も同じである。これでは温暖化対策が具体的に進展したとはいえまい。
 各国が高い目標を掲げて排出削減に取り組むことは重要だが、理念や理想論が先走るようでは実効性のある対策となり得ない。各国が現実を踏まえて着実に削減を進めることこそが肝心である。
 日本も安全性を確認した原発の活用に加え、これまで培った高い環境技術を海外に提供することなどで温暖化防止に貢献したい。
 パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前に比べて少なくとも2度未満、できれば1・5度以下に抑える目標を設定している。それには50年の排出量を実質ゼロにする必要がある。
 ただ、協定締結後も世界の気温上昇に歯止めはかからず、異常気象が頻発している。グテレス氏が「気候非常事態」と危機感を示して各国に計画上積みなどを求めたのはこのためで、短期目標の前倒しを表明した途上国もあった。
 気になるのは、グテレス氏が石炭火力の新設中止を提案したことだ。稼働中の老朽化した石炭火力を環境性能が高い石炭火力に建て替えれば、発電量を保ちつつ着実に温室効果ガスを減らせる。この現実を踏まえず一律に石炭火力を否定するのは適切ではない。
 サミット関連会合で、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)が「私たちを裏切るのなら、あなたたちを決して許さない」と各国首脳に厳しい規制を訴えたことも注目された。
 私たちには将来世代に対する責任がある。その責任には環境保護だけでなく、経済発展を通じた途上国の貧困撲滅や保健衛生、教育機会の提供などもあることを忘れてはならない。情緒に流されるのではなく、全体を俯瞰(ふかん)した冷静な取り組みが必要だ。



「青い地球が危機に」
 国連報告書が気候変動を警告
2019年9月26日:BBC

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は25日、気候変動が海や寒冷地をこれまでにない規模で脅かしているとする特別報告書を発表した。
報告書では、海面上昇や氷の融解に加え、人間の活動によって野生動物が生息地を追われていると指摘した。
さらに、永久凍土が溶け出していることで、二酸化炭素(CO2)がさらに増え、氷の減少を加速させているという。
一方、CO2排出量を大幅かつ迅速に削減すれば、最悪の影響は免れられるだろうとしている。
IPCCは過去12カ月に、今回のものも含めて3つの特別報告書を発表している。
昨年10月の報告書では、21世紀の終わりまでに地球の気温が1.5度上昇すると指摘。今年8月には、気候変動は地球の陸地と、農業や畜産業にも影響を及ぼしていると分析した。
ただ、気温上昇が海や雪氷圏(水が固体として地表面に存在している場所)に与える影響を示している今回の最新の報告書は、おそらく3つの中で最も気がかりで、気が滅入る内容だ。

何がわかり、どれくらい悪いのか

要約すると、地球の水温が上がり、氷が急速に溶け出していて、地球上のほぼすべての生物に影響が出ているということだ。
報告書の共著者であるジャン=ピエール・ギャットゥーソ博士は、「青い地球は今、深刻な危機にある。さまざまな方面からの多くのひどい扱いを受けていて、それはわれわれ人間のせいだ」と指摘した。
Image copyrightSPLImage caption 海面上昇により、海抜の低い島々には人が住めなくなる危険性がある
報告書では、地球の海が1970年から継続的に温まっていることは「疑いようがない」と分析している。
水は、人間が過去数十年で生み出した余分な熱の9割以上を吸収しており、吸収の比率は1993年と比べると2倍になっているという。
水は熱せられると質量が増えるため、過去には海面もこれが原因で上昇した。しかしIPCCは今回、現在の海面上昇の主要因はグリーンランドや南極大陸の氷が溶け出していることだと指摘した。
温暖化により、溶け出して液体になった南極の棚氷の量は、2007年から2016年の間に3倍に達した。同じ時期、グリーンランドの棚氷の減少量は2倍になっている。
報告書では、この現象は21世紀の間と、それ以降も続くとみている。
一方、南米のアンデス山脈や中欧、北アジアにある氷河については、CO2排出量が高い場合のシナリオで、2100年までに8割が消失すると予測。何百万人もの人に多大な影響を与えるとしている。
氷が溶けると何が起こる?
さまざまな場所の氷が溶け出し、すべてが海に流れ込めば、世界中で海面が上昇する。そしてそれは数十年にわたって続くと考えられる。
報告書では、最悪のシナリオでは、2100年までに世界の海面が最大で平均1.1メートル上昇するとみている。南極大陸での大量の氷の融解を受けて、前回の予測から10センチ増加した。
ギャットゥーソ博士は、「最も驚いたのは、海面上昇の最大予測値が上方修正され、1.1メートルになったことだ」と話す。
「7億人近くの人々が住んでいる沿岸地域に広範囲に影響が出るだろう」
報告書によると、一部の島国では2100年以降、人間が住めなくなってしまうことが明らかだという。
また、「もし安全な別の場所があるのであれば」、水没する可能性がある地域から住民を移住させることも視野に入れたほうがいいと指摘した。

あなたへの影響は?

報告書が語る重要なメッセージのひとつは、海や雪氷圏の温暖化は、将来的に何百万人に影響を与えるさまざまな悲惨な結末の一部だということだ。
CO2排出量が多いシナリオでは、ニューヨークや上海といった豊かな大都市や、メコン川流域の農業地帯なども、海面上昇で非常に高いリスクにさらされると予測されている。

Image caption CO2排出量が高いシナリオでの、海面上昇の影響を受ける大都市をまとめた図。ニューヨークやロンドン、バンコク、上海といった都市で、2050年までに1000万人が被害を受けるとされている。東京でも、500~1000万人が海面上昇の影響を受けるとみられている
また、水温が深刻に上昇した結果、世界各地でサイクロンの増加など、危険でやっかいな天候が急増する可能性があるという。
報告書では、CO2排出量が大幅に削減されたとしても、「歴史的にまれ(1世紀に1度)だった異常な海面上での現象が、2050年までに各地でより頻繁に(少なくとも1年に1度)起こるようになると予想される」と指摘している。

IPCCの第2作業部会を主導するデブラ・ロバーツ教授は、「今分かっているのは、前例のない変化が長く続くということだ」と話した。
「たとえあなたが内陸部に住んでいたとしても、海や雪氷圏での大きな変化によって引き起こされる気候体系の変化が、あなたの生活スタイルや持続的な発展の機会に影響を与えるだろう」
あなたの生活への影響はさまざまな形で現れる。例えば洪水被害は、被害の規模を表す水準で2段階から3段階上昇する可能性がある。CO2増加による海水の酸性化や、1.5度の気温上昇によって、地球上のサンゴの約9割が消失するとされている。

海水の温度が上がることで、魚が生息地を移動することが考えられる。また、化石燃料を使えばCO2が増えるだけでなく、河川や海に多くの汚染物質が流れ込む。これによって、魚や海藻に含まれる水銀や汚染物質の濃度があがり、海鮮食品の安全性が損なわれる危険性がある。
他にも、温暖化によって氷河が溶けることで水力発電に使える水の量が変わってしまい、発電に支障をきたす可能性もある。

永久凍土は永久ではない

シベリアやカナダ北部など恒久的に氷のある地域には、大量のCO2が蓄積されている。
しかし、CO2の排出が続き温暖化が進めば、地表面にある永久凍土の7割程度が溶け始めてしまうという。
その結果、2100年までに「数百億から数千億トン」規模のCO2やメタンガスが大気中に放出されると懸念されている。そうなれば、人間が向こう数世紀にわたって温暖化を食い止めるのは非常に困難になるだろう。

長期的には何が起こる?

重要な疑問だが、その答えは我々がCO2排出量を近いうちにどれだけ制限できるかにかかっている。
しかし報告書では、もはや簡単には覆せない気候の変化もあると警告している。南極大陸のデータによると、すでに「不可逆なほど棚氷が不安定」になり始めており、向こう数世紀で数メートルの海面上昇を引き起こす可能性があるという。
報告書にも参加しているネリリー・エイブラム博士は、「棚氷や海面上昇に与える影響には多くの変化が含まれているため、報告書では2300年までの海面上昇の情報を提供している」と説明した。
「なので、温室効果ガスを削減できるシナリオであっても、人類が備えなければならない海面上昇は訪れるだろう」
また、先住民族社会が食料としてきた魚が水温上昇によって消えれば、それに伴って文化的知識が広範囲で永久に失われてしまう可能性もあるという。

報告書は希望を示した?

もちろんだ。報告書では、海の未来はなお人間の手に委ねられていると強調している。
その方程式はすでに使い古されたものだ。IPCCが昨年の報告書で示したように、2030年までにCO2排出量を45%削減することが求められている。
IPCCの李会晟(イ・フェソン)議長は、「もし排出量を急速に減らしても、人間やわれわれの生活への気候変動の影響はなお苦しいものだが、それでも最も弱い人にとってはより制御できる範囲にとどまる可能性がある」と話した。
実際、報告書に携わった研究者の一部からは、国民から政治家への圧力が、気候変動に対抗する野心を広げる重要な役割を担うとの声が上がっている。
ギャットゥーソ博士は、「先週、若者たちが行った抗議デモを見て、彼らこそがわれわれにとって最高の頼みの綱だと思う」と語った。
「彼らは精力的で活動的だ。彼らが活動を続け、社会を変えてくれることを願っている」

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