アマゾン大火災

30年以上前から、熱帯雨林破壊について、特に建築材、パルプ原料などへの利用について、地理の授業で扱ってきた。当時、熱帯雨林の最大の輸入国は日本で、多くの熱帯雨林が伐採されて名古屋港などに輸入されていた。アマゾンのロンドニア州では、熱帯雨林の皆伐により少数民族が生活の場を奪われた。伐採業者は、「利用するために伐っているから、問題ない」と言って、伐採をやめようとはしなかった。伐採された熱帯雨林は輸出され、伐採された跡地は広大な放牧地となって肉牛が放牧されたが、牧草は貧弱で肉牛は肥えなかった。それでも牛肉は牛肉で、当時はビーフ100%のハンバーガー材料として利用されていた。
ボクも当時、教科書に書かれていたので、「アマゾンは地球の肺」と授業で話していたが、「地球酸素の60%を供給」というのは無理があると思って、自分なりにアバウトな数字として、「アマゾンの酸素供給量は30%程度で、多くは海洋の植物性プランクトンが担っている」と話していた。実際はもっと少なく、1割程度のようだが、現実はさらに厳しい。
問題は海洋環境の温暖化で、特に極地方の温暖化が進むと海流の大循環が止まり、生物の大絶滅が起こる可能性がある。気候変動のスイッチは既にonされているので、この傾向は10000年は続くだろう。


ブラジルの森林火災
 地球規模の課題に責任を
2019年9月2日:毎日新聞

 南米ブラジルでアマゾン川流域の熱帯雨林の火災が多発している。ブラジルのボルソナロ政権が、環境保護より開発を重視していることが背景にある。
 アマゾンの熱帯雨林は550万平方キロと世界最大で、二酸化炭素を大量に吸収している。このため地球温暖化の進行抑制に欠かせない存在として「地球の肺」とも呼ばれている。
 そこでの今年1~8月の森林火災件数は4万4000件を超え、昨年同期の約2倍になる勢いだ。二酸化炭素のみならず有害な一酸化炭素も排出し、環境問題となっている。
 これは農牧地拡大や鉱山開発のための違法な森林伐採や焼き畑が原因と見られている。先住民が多い熱帯雨林は本来、開発・利用が制限され、保護されてきた。
 ところが、低迷する経済の起爆剤にアマゾン開発を主唱するボルソナロ大統領が1月に就任して以来、規制は緩和され、監視は弱まり、森林破壊や乱開発が目立っている。
 欧州諸国は、森林火災が地球温暖化を加速させる「国際的危機」だと懸念している。先の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、マクロン仏大統領の主導で、消火活動支援のため2000万ドル(約21億円)の拠出を決めた。
 だが、ボルソナロ氏は森林火災を国内問題だとし、ブラジル抜きのG7で協議されたことが「誤った植民地主義的な思考だ」とまで言った。
 ボルソナロ氏は「ブラジルのトランプ」と呼ばれる自国第一主義者だ。地球温暖化対策に後ろ向きで、一時は国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱も説いていた。就任後、環境保護団体への補助金を削減するなど、国内でも批判を受けている。
 貧しい北部地区を開発し、国内の格差是正を図り、経済を発展させようとする国家としての権利はある。豊かさを先に得た先進国の口出しに対する不満もあろう。
しかし、各国が個別の利益にだけ固執していたら、地球温暖化という人類にとっての脅威に立ち向かうことはできない。地球規模の課題に向き合い、責任を持つことは、現代の国家指導者の務めだ。
 政権はようやく消火活動や防火策に乗り出した。環境への配慮を重んじてほしい。

「アマゾンは地球の酸素の20%を生産」は誤り
「地球の肺」も不正確、アマゾンを保護すべき本当の理由
2019年8月30日:ナショナルジオグラフィック

 アマゾンで猛威を振るう森林火災のニュースが先週から世界中を駆け巡っている。だが、アマゾンの熱帯雨林の重要性を伝える際に、誤解を招く主張が何度も繰り返された。それは、地球の酸素の20%をアマゾンが生み出しているというものだ。
 この主張は米CNN、米ABCニュース、英スカイニュースなどの報道で取り上げられたほか、フランスのマクロン大統領や、米上院議員で2020年の大統領選に出馬表明しているカマラ・ハリス氏、俳優で環境保護活動家でもあるレオナルド・ディカプリオ氏など、政治家や著名人のSNSでも散見された。また、アマゾンの森林は「地球の肺」という表現も、同じようによく使われている。
 アマゾンの火災によって世界の酸素供給が危機にさらされるとまで考える人もいた。元宇宙飛行士のスコット・ケリー氏は先週、「生き残るためにはO2が必要です!」とツイートした。
 だが、この20%という数字は、まったくの過大評価だ。むしろ、ここ数日で複数の科学者が指摘したように、人間が呼吸する酸素に対するアマゾンの純貢献量は、ほぼゼロと考えられる。
「アマゾンを保護すべき理由はたくさんありますが、酸素を理由にするのは的外れです」と米マサチューセッツ州にあるウッズホール研究センターでアマゾン・プログラムの指揮をとる地球システム科学者マイケル・コー氏は述べる。(参考記事:「アマゾン森林火災、原因は「過剰な伐採」と専門家」)

現在の酸素濃度は数十億年間に蓄積した結果

 コー氏によると、この主張は「物理的にありえない」という。理由は単純に、木が光合成により地球の酸素の5分の1を生成するには、大気中の二酸化炭素の量が足りないからだ。(参考記事:「発電する葉、自然に学ぶエネルギー」)
 大気中に含まれる二酸化炭素は0.5%未満なのに対し、酸素は21%だ。たとえ吸収した二酸化炭素分子と同じ数の酸素分子を木が排出するとしても、大気中の酸素の5分の1もの量をアマゾンが作り出すことは不可能だ。
 数人の科学者が、より正確な値を推定している。英オックスフォード大学環境変動研究所の生態系科学者ヤドビンダー・マルヒ氏は、熱帯林が陸上での光合成の約34%を担っていると推定した2010年の論文に基づき、計算を行った。面積を考えれば、アマゾンはその約半分を占める。つまりアマゾンは、陸上で生産される酸素のうち、約16%を作り出していることになる、と同氏は説明する。氏は最近、自身のブログに投稿した記事で計算の詳細を記している。
 だがこれは、あくまで陸上で生産される酸素での割合だ。海洋の植物プランクトンが生産する酸素を考慮に入れると、その数値は9%にまで下がる。気候変動対策を研究する非営利団体「プロジェクト・ドローダウン」のエグゼクティブ・ディレクターで気候学者でもあるジョナサン・フォーリー氏は、もっと控えめに6%と推定している。
 さらに、ここで話は終わらない。木は酸素の生産者であるだけでなく、消費者でもある。日中に蓄えた糖をエネルギーに変換する細胞呼吸の過程で、酸素を使用するからだ。したがって、光合成に必要な太陽がない夜間には、正味の酸素消費者になる。マルヒ氏の研究チームの計算では、木は生産する酸素の半分強を呼吸で消費しているという。
 その残りは、おそらくアマゾンに生息する無数の微生物によって使い果たされている。死んだ有機物を分解するときに、酸素を消費するのだ。
「アマゾンに限らず、あらゆる生物群系の(酸素濃度への)影響は、差し引きすればほぼゼロなのです」と同氏は説明する。
 このように酸素の生産と消費が釣り合っているおかげで、現代の生態系では、大気中の酸素濃度はほとんど変化しない。実際のところ、人間が呼吸している酸素というのは、海洋の植物プランクトンが数十億年にわたり着実に蓄積してきた遺産なのだと、米コロラド州立大学の大気科学者スコット・デニング氏は説明する。
 酸素を蓄積できるのは、プランクトンが分解される前に海底に閉じ込められた場合だけだ。その場合は、分解に必要とされる酸素が余ることになる。大気中の平均酸素濃度を左右するプロセスは、長大な地質学的タイムスケールで起こるものであり、現在進行中の光合成の影響はほとんどない、と同氏は学術系ニュースサイト「The Conversation」の記事で説明している。(参考記事:「光合成する微生物を地下深くで発見、定説覆す」)

保護すべき本当の理由

 それにもかかわらず、20%神話は何十年もの間、出回ってきた。その起源ははっきりしないが、マルヒ氏とコー氏の考えでは、光合成により陸上で生産される酸素の約20%をアマゾンが担っているという事実が、「大気中の酸素の20%」と誤って世間に広まったのかもしれないという。
 言うまでもないが、だからといって決してアマゾンが重要でないというわけではない。本来の状態であれば、アマゾンは大気中の二酸化炭素の吸収に大きく貢献する。コー氏は、アマゾンを肺ではなく、地球を冷却する巨大なエアコンになぞらえる。というのも、アフリカ中央部やアジアの他の熱帯林とともに、気候変動の緩和に最も強力な効果を発揮するものの1つだからだ。だが現在、アフリカ中央部やアジアの熱帯林でも火災が発生している。(参考記事:「森の再生で過去100年分のCO2を帳消しにできる」)
 またアマゾンは、南米の降雨サイクルの安定化に重要な役割を果たしている。それに、先住民や無数の動植物にとっては、替えのきかない家でもある。
「生物多様性について話す人はほとんどいませんが、アマゾンは、地上で最高の生物多様性を誇る生態系です。その豊かさが、気候変動と森林破壊により危機にひんしているのです」とブラジル、サンパウロ大学高等研究院の気候学者カルロス・ノブレ氏は述べる。(参考記事:「未曽有のアマゾン森林火災、動物への影響は」)
 世界にとっての重要性を考えれば、アマゾンを肺に例えるのは悪いことではなく、実際に森林破壊への対策を活性化するのに役立ってきたのかもしれない。だが、ほとんどの研究者にとっては、あまり筋の通らない比喩だ。何と言っても、実際の肺は酸素を吐き出すのではなく、吸い込むのだから。
「アマゾンの象徴として、安定性や生命、健康の維持をつかさどる重要な臓器に関連づけたいのならば、ある種の連想は可能でしょう」とノブレ氏は語る。「しかし、物理的に言えば、アマゾンは決して世界の肺ではないのです」

【主張】
アマゾン大火災 「地球の肺」の危機を救え
2019年9月3日:産経新聞

 ブラジル北部アマゾンの熱帯雨林で発生した大規模火災が気がかりだ。アマゾンでは近年、森林火災が多発しているが、今回のものは過去最大規模であるという。
 広大な同地の熱帯雨林は、強い太陽光を受けて大量の二酸化炭素を大気中から吸収し、それと引き換えに新鮮な酸素を吐き出している。
 「地球の肺」と呼ばれるゆえんである。また密生する原生林は豊かな降雨を蓄え、地球の水循環に大きなウエートを占めている。
 熱帯雨林には、さまざまな植物が繁茂し、微生物をはじめ昆虫や貝類、両生爬虫(はちゅう)類、魚類、鳥類、哺乳類などが生息している。生物多様性の宝庫なのだ。
 この貴重なエリアが、炎に包まれ、焼き尽くされ、灰になっていく。いったん地面が露出すると降り注ぐ雨によって土壌が削られ、回復困難な不毛の大地に変貌してしまう。
 大火災が引き起こす事態は、ブラジルの国内問題の範囲にとどまるものではない。地球規模の深刻な環境問題だ。
 同国のボルソナロ大統領は、火災の鎮圧に全力を集中すべきである。面子(めんつ)にこだわっている場合ではないだろう。
 先月末に開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)でもアマゾンの火災が議題に上り、2千万ドル(約21億円)の緊急支援が合意されたが、ボルソナロ氏は受け取りに背を向けたのだ。
 アマゾンの熱帯雨林伐採は、長年にわたって続いている。それが現政権の極端な経済活性化政策でさらに加速し、森林火災が多発するようになっていた。地下の鉱物資源も開発の目的だ。
 日本の気候変動観測衛星「しきさい」が、宇宙から今回のアマゾンの火災の様子を捉えている。
 フィッシュボーン・ディフォレステーション(魚の骨状の森林喪失)と呼ばれる、伐採に特異的な模様が地表に広がり、その各所から猛煙が空に上っている。人間の欲望が赤道直下の緑の大地に刻んだ愚行の傷痕に他ならない。
 菅義偉官房長官は先日の会見で「日本としても必要な支援を行いたい」と述べた。
 効果的な消火活動には「しきさい」からの情報提供が最良の支援となろう。放火や違法伐採の監視においても役に立つ。資金拠出だけが協力の道ではない。

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