疎外される教員、教育の人間性の回復を

「教員の働き方改革」などと言う前に、教員は人間として扱われず、人として生きることも難しい現実がある。ボクは長年、教職人生のダークサイドについてあちこちで話をしてきたが、そのダークサイドのフォースは教員自信から生成されているものと、そのフォースを利用している外部的要因との複合によると考えている。
教員自身がダークサイドのフォースに取り込まれることを選択しているということだ。ダークサイドに落ちた教員に、子どもたちはどのような影響を受けるのか…。健全な成長は、教員も子どもたちにも望むことができない現実がそこには存在する。


国際機関の勧告受け元教諭ら 政府に実施求める会発足
「日の丸・君が代」強制されれぬ自由を
文科省当事者意識薄く「交渉かさねていきたい」
2019年11月4日:東京新聞・ニュースの追跡

 入学式や卒業式の国旗掲揚に加わりたくない教員にも対応するように―。国際機関が出したこうした勧告を政府に受け入れさせようという会が、発足に向けて動き出した。日の丸・君が代訴訟で闘った元教諭が呼び掛け、来年2月末の活動開始を目指す。                 (稲垣太郎)

 「教員の枠を取っ払って市民として集まり、力を持ち寄って勧告を実施させる運動をやることになった」。先月31日夜、参院議員会館に30人ほどが集まった準備会。訴訟の元原告で、元都立特別支援学校教諭の渡辺敦子さん(68)が経緯を説明した。
 きっかけは2014年。渡辺さんがかつて所属していた教職員の組合「アイム89東京教育労働者組合」が国際労働機関(ILO)と国連教育文化機関(ユネスコ)の合同委員会に、「日の丸・君が代」に従わなかった教員への懲戒処分を巡り、強制が思想と良心の自由を侵害しているなどと申し立てた。
 合同委は「式典の規則に関し、教員団体と対話する機会を設ける」「規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものにする」「消極的で混乱をもたらさない不服従の行為への懲罰を避ける目的で、懲戒について教員団体と対話する機会を設ける」「懲戒審査機関に教員を関わらせる」などの勧告を含め報告書を採択。ILO理事会とユネスコ執行委員会がそれぞれ認め、今年5月に日本政府に送った。
 ところが、所管の文部科学省の反応は芳しくなかった。「法的拘束力を有するものではなく、わが国の実情や法制を十分斟酌しないままに記述されているところがある」。アイムが出した質問書に、こう回答してきた。
 さらに「国旗・国歌の指導は各学校が学習指導要領に基づき、適切に実施してもらいたい」「地方公務員は地方公務員法により職務上の命令従わなければならない。反した場合の懲戒は、任命権者が適切に判断するべきだ」と続き、当事者意識が感じられない内容になっている。
 渡辺さんがアイムのメンバーらと共に、文科省の担当者から直接話を聞いても同じ、渡辺さんは「勧告を真摯に受け止めず、徹底的に無視し、なかったことにしたいようだ」と痛感。アイムや日の丸・君が代訴訟に関わった弁護士や学者らに呼び掛け、準備会にこぎ着けた。
 「文科省は勧告を、教員団体と話し合えというところに集約しているようだ」。準備会の共同事務局長になり、31日の会合で渡辺さんに続いて発言した東京経済大の寺中誠客員教授(人権論)はそう批判した。
 準備会では会の名称を「『日の丸・君が代』ILO・ユネスコ勧告実施市民会議」と決めた。学者ら20人を呼び掛け人として参加を広く求め、来年2月末の発足を目指す。渡辺さんは「会ができたら文科省と交渉を重ねたい。最終的には交渉結果の報告書を国連人権理事会に提出し、勧告の実施につなげていく」と意欲を語った。



先生の働き方 まずは業務の削減から
2019年10月24日

 教員の勤務時間を年単位で調整することを可能にする法案が今国会で審議される。長時間労働が本当に改善されるのか、現場の疑念は強い。まずは教員が抱えすぎている業務の削減が必要だ。
 長時間労働が深刻となり、子どもの未来を育む仕事の魅力がかすんでしまっているのではないか。教員採用試験の競争倍率の低下や教員不足の現状を見るにつけ、懸念が膨らむ。
 国が働き方改革の一つの方向性として打ち出しているのが「変形労働時間制」だ。忙しい時期の勤務時間を延長した分、夏休みなどに休みをまとめ取りできるようにする。そう国は説明する。
 教職員給与特別措置法(給特法)を今国会で改正し、二〇二一年四月から自治体の判断で導入可能にすることを目指す。残業時間の上限を月四十五時間とする指針も法的に位置付ける。
 しかし教員からは夏休みも研修などがあってまとめ取りは難しいと批判の声が上がる。根底には国の方針で教員の仕事が増える一方だったことへの不信感がある。教える内容は増え、事務作業も煩雑となっている。業務削減の道筋を明確にすることが先決だ。
 小学校では長時間労働を是正できない根幹に学級担任制があり、中央教育審議会は高学年を教科担任制にすることなどを議論している。外部の人材が活躍しやすい免許制度も含め、早期の実現を目指すべきだ。
 中学校は部活だ。地域や外部指導員に助力を仰ぐとともに、生徒主体で改革の道筋を考えてみてはどうか。ラグビー強豪校の静岡聖光学院高校は、密度が濃い時短部活の実現に向け生徒が話し合う「部活動サミット」を開催している。公立中学校の参加や参加校以外の問いあわせもあり、練習日削減にもつながっているという。
 タイムカードなどによる在校時間の把握は四割にとどまる。実態把握が改革の第一歩であり、早急に全校で実施すべきだ。過労死した教員の遺族からは、外部の相談窓口の開設を求める声もある。神戸市の教員間のいじめなどから透ける学校の閉鎖性を考えれば、検討に値するのではないか。
 給特法が残業代を想定していないことが、学校が労働時間を管理してこなかった背景にはある。教員や、部活動指導員など支える人たちの増員には教育投資を手厚くしていく必要がある。疲弊した現場を救うため、国会には根本に踏み込んだ議論を望みたい。



残業月177時間、手取り18万円
 先生は使い捨てか
2019年10月28日:朝日新聞

 「働き方改革関連法」が成立し、残業時間に上限を設ける規制が今春から企業や団体に順次導入され始めました。私立学校も規制の対象になりますが、現場の対策は進んでいません。長時間労働を強いられ、残業代も十分に支払われない先生たちは少なくなく、労働基準監督署から是正勧告を出される私立高校も相次いでいます。(榊原謙)

「働き方改革」半年

 「部活動、寮の管理、体育祭や文化祭などの企画運営、学校ホームページや公式フェイスブックの更新。残業時間は毎月100時間ほど、ある月は170時間」
 「膨大な授業準備と分掌業務、深夜に及ぶ寮の管理は過酷そのもの。明日が来ることに絶望と恐怖を覚えた」
 「授業準備や定期考査の問題作成、採点はすべて時間外労働で手当も出ない。考査の前後は最低賃金以下で働いた」――
 千葉県鴨川市の文理開成高校で、元非正規教員として働いた2人と今も働く1人(いずれも20代)の手記には、過酷な勤務の実態が生々しくつづられていた。
 3人が加盟する労働組合「私学教員ユニオン」が8月、記者会見して示した。

先生兼「寮の管理人」

 3人のうち、常勤講師だった2人は教員としての本業に加え、生徒が入る寮の管理を住み込みで担っていた。
 どんな生活だったのか。
 午前7時、寮で生徒を点呼。生徒を学校に送り出し、自らも急いで登校し、授業。合間に寮を掃除する。午後4時に寮に生徒を迎え入れ、学校に戻って部活動や授業準備に追われる。夜は寮の夕食の配膳や皿洗い、点呼、管理職へのメール報告などが消灯時間の午後10時まで続く。
 消灯後も生徒が寮を抜け出せば、探し出して指導。生徒が体調を崩せば救急病院に連れて行く。深夜の寮内外の巡回などでほとんど眠れない日もあり、「24時間気が休まらなかった」。
 これだけ働いても、賃金は月約22万円、手取りは月18万円ほどにとどまったという。

過労死ライン超え

 学校側はどんな労務管理をしていたのか。
 同校にはタイムカードがなかった。教員たちは朝、出勤簿という帳簿に判子を押すだけ。教員の勤務時間を把握するしくみに乏しく、残業代も十分に支払われなかったという。
 耐えかねた3人は今年、私学ユニオンに加盟。パソコンの記録から割り出した時間外労働は多いときで「過労死ライン」を大幅に超過する月177時間、未払い残業代は年約250万円にのぼった、とユニオンは主張する。

業務にあらず?

 ユニオンと3人は改善を求めて、2月から学校側と団体交渉を始めた。すると学校側はこう反論してきたという。
 「寮と部活動は業務ではない」
 長時間労働の主要な原因になっている寮の管理と部活動について、学校側は「具体的な指示を出していない」と主張。労働時間にはあたらず、残業代の支払いの対象にもならないという論理だった。
 だが元教員の1人は、寮の規則を作った校長(当時)から「このルールを守らない寮生には厳しくしろ」、「生徒募集につながるから、部活動に力を入れるように」などと「指示」を出されていたとし、業務と受け止めていた。

労基署が認定

 同校を管轄する木更津労働基準監督署は調査の結果、労働基準法で定める労働時間を超える時間外労働や残業代の未払いがあると認め、今年6月に同校に是正勧告を出した。寮の管理と部活動も業務として認定されたという。
 同校の校長(当時)は翌月、「ご心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます。このような事態となったのは全て私の不徳の致すところ」などとする謝罪文を公表。9月に引責辞任した。
 残業代はなお未払いだが、学校側は取材に「相次ぐ台風で学校も相当に被害を受け、交渉が一時中断した。交渉再開のメドはついており、今後、最終決着に向けて前進すると思う」とした。
相次ぐ是正勧告
 5月には中高一貫校を運営する橘学苑(横浜市鶴見区)に、7月には商業高校などを運営する京華学園(東京都文京区)に対しても、残業代の未払いなどでそれぞれ労基署から是正勧告が出された。
 京華の元非正規教員は「教師として生徒を応援するのは当たり前。ただ、学校に12時間いるのは職務のためだと認めてほしかった」と話す。

2割が「要改善」

 教員の時間管理に特別な枠組みがある公立学校と異なり、私立学校には企業と同じように労働法制がかかる。教員に残業や休日出勤をさせるならば、労使で協定を結び、残業代を支払う必要がある。
 さらに、働き方改革関連法の成立で、どんなに忙しい月であっても残業を月100時間未満に抑えなければ、罰則が科される。大企業には今年4月、中小企業には来年4月から義務づけられる。私立学校も同様だ。だが、対応はなかなか進んでいないようだ。
 公益社団法人の私学経営研究会の2017年の調査では、回答した私立高の4分の1が教員の勤務時間の管理に関する調査を労基署から受けた。10・3%の高校が指導を受け、8・5%の高校には是正勧告が出た。2割弱の私立高が改善を迫られたことになる。

少子化が一因?

 なぜ学校現場の長時間労働は減らないのか。
 埼玉大の高橋哲准教授(教育法学)は「私学は少子化で経営が厳しくなる傾向にある。人件費削減のため教員数を減らし、結果的に残った先生の業務負担が増えている。経営者の力が強い学校も多く、経営陣に労働条件の改善などを要求しにくい雰囲気もある」と指摘する。
 そのうえで「教員は長く『聖職者』とされてきた。確かに一般の労働者とは違う専門性がある。だが、最低限の待遇や労働条件は守られるべきだ。校内に問題や不正があれば、先生たちも団体交渉をしたり、労基署など外部に是正を求めたりするべきだ」

埼玉大の高橋哲准教授(教育学法)の話

――私立高校の先生の長時間労働が問題になっています。
 「私学は少子化で経営が厳しくなる傾向にある。人件費の削減のために教員数を減らし、結果的に残った先生の業務負担が増えている。また私学でも学習指導要領の適用がほぼ前提になっており、プログラムの増大が多忙化につながっている。子どもの数を確保するための広報活動や、学校の特色を出すための補習授業、進学率を上げるための取り組みなど、プラスアルファの活動が増え続けている現状がある」
――私学特有の問題はありますか。
 「私学は経営者の力が強いことが多い。一族支配の場合、教員が組合に入ることを事実上抑制させたり、労働チャンネルを使って経営陣に労働条件の改善などを要求しにくい雰囲気があったりする」
――非常勤の教員が正規教員になるために、長時間労働に耐え忍んでいるという例もありました。
 「民間企業でも、身分保障が安定していない非正規労働者が、労働者の権利を主張しづらいケースはよくあり、それは教員の世界でも同じだ。私学の場合、採用の際に、学校側の裁量が大きいことが特徴で、理事会のさじ加減で労働条件が決まり、教員側には『嫌われたら正規になれない』というプレッシャーがかかってしまう」
――長時間労働の大きな要因である部活動について、労基署が「労働時間」と認定するケースが出ています。
 「部活動も学校の指揮監督下で業務としてやられており、労働時間と当然に見なされるべきだ。公立校では、部活動が校長の指揮監督下ではなく教員の『自発的な活動』とされ、文部科学省は労働時間として認めてこなかった。だが、私学で部活動が労働時間と認められているのに、公立では認められない、では理屈に合わない。労基署が部活動を労働時間と認めたことは当然だと考えるが、一方で、公立の部活動の問題に照らして考えれば画期的だ」
――是正勧告が私学に相次いで出されていることの受け止めは。
 「当然のことだ。教員は長く『聖職者』とされてきた。確かに教員には一般の労働者とは違う専門性がある。だが、最低限の待遇や労働条件は守られるべきだ。校内に問題や不正があれば、先生たちも団体交渉をしたり、労基署など外部に是正を求めたりするべきだ」

私立学校には企業と同じ規制がかかる

○残業に関わる罰則
 企業   月100時間以上の残業など※
 私立学校 月100時間以上の残業など※
 公立学校 規定なし
 ※大手は今春、中小は来春導入
○残業代
 企業   所定の割増賃金
 私立学校 所定の割増賃金
 公立学校 月額給与の4%
○主な根拠法
 企業   労働基準法
 私立学校 労働基準法
 公立学校 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法



学校と教員に何が起こっているのか
-教育現場の働き方改革を追う-
2019年10月27日:BestT!mes

今もまだ世間の注目を集める「東須磨小学校いじめ問題」を筆頭に、学校や教員にまつわるトラブルが世間を騒がすことに対して、いつしかみんな慣れてしまった。
それらを引き起こす様々な原因は複雑に絡み合い、とても一言で片付けられるものではないだろう。しかし、一つだけ確実に言えるのは「教員の働きすぎ」が問題の中心にあることだ。

「働き方改革」という言葉が聞かれるようになった昨今、教員の現場はどうなっているのか。
先日、閣議決定された「給特法」の改正は、その解決の第一歩となるのか。
教育現場への取材を続けるジャーナリスト・前屋毅氏が考察する。

■教員の残業代はどうなっているのか

 「給特法を知っていますか?」と訊ねると、学校関係者以外からは、ほぼ間違いなく「なに、それ?」という返事が戻ってくる。そんな人たちも、「教員の働き過ぎ」が社会問題化していることは知っている。
 「教員だけじゃなくて、オレたちだって働き過ぎだよ」という反応も少なくない。自分たちも働き過ぎているのだから、教員だって働きすぎで当然じゃないか、ということらしい。働き過ぎを正当化する、おかしな理屈である。

 しかし、「教員には残業手当がつかない」と説明すると、それに対する反応は、これまた間違いなく「エーッ!」である。会社員である自分たちの残業には手当がつくように、教員にも残業代が支払われていると思っているのだ。
 一般の会社員にすれば、残業に対して残業手当がつくのは普通のことでしかない。働き過ぎも残業手当も普通なのが、普通の会社員の「常識」なのだ。残業手当もなしに過労死寸前まで働くなど、世の会社員からすれば「常識外」でしかない。

 その「常識外」が、教員の働き方の実態である。残業手当なしで労働時間だけがうなぎ登りに増えている教員の働き方は、「定額働かせ放題」とまで呼ばれたりもしている。
 そして、その根拠になっているのが「給特法」である。給特法は正式名称を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という。

 この給特法の改正案が10月4日に招集された臨時国会で審議テーマのひとつとしてあがっており、改正案は10月18日には閣議決定されている。「いよいよ教員にも残業代が支払われる時代到来か」と思うかもしれない。
 しかし結論から言ってしまえば、改正案が国会で成立しても、一般の会社員と同じように教員に残業代が支払われるようにはならない。教員の待遇は、普通のビジネスマンとは同じにはならないのだ。

 なぜなのか。
 それを知るためには、給特法が制定された経緯を振り返ってみる必要がある。

■当事者不在だった給特法の成立

 戦後、教員にも労働者の一員として労働基準法(労基法)が適用され、32条によって8時間労働制となった。36条と37条も適用され、残業には超過勤務手当(残業手当)が支払われることにもなっていた。
 しかし、実際には残業手当は支払われていなかった。文部省、労働省、人事院も各自治体に対して支払の指導を繰り返したが、支払われない事態が続いた。

 これに対して日本教職員組合(日教組)は1960年代に、各地で超過勤務手当の支給を求める訴訟、いわゆる「超勤訴訟」を展開していった。教員にも労基法が適用され、それによって超過勤務手当の支払いは法的にも認められていたのだから、当然ながら訴訟では教員側の勝利が続く。
 そのため文部省(2001年の中央省庁再編で文部科学省となる)は、1967年8月に教員給与改善措置費の予算要求を行う。残業手当を支払うための予算要求である。そのままいけば、教員にも会社員と同様に残業手当が支払われるようになっていたかもしれない。

 しかし、この事態に当時の自民党文教部会は黙っていなかった。超勤訴訟で日教組が次々と勝利し、それに屈するように超勤手当を支払うことは、日教組の「勝利」を認めるものでしかなかったからだ。日教組と対立関係にある自民党文教部会としては、この事態は放っておくわけにはいかなかったのだ。
 そして自民党文教部会が文部省に働きかけて提出させたのが給特法案であり、1971年5月に自民党の強行採決によって国会で成立し、翌年1月に施行された。これによって、一般のビジネスマンとは違う、残業しても超過勤務手当(残業手当)が支払われない「異常」な状態が始まっていく。

■教員に残業代は支払われているのか?

 「残業手当が支払われない」と記したが、実は正確ではない。給特法では、残業代が支払われない代わりに、基本給の4%にあたる額が「教職特別手当」として支給されている。給特法施行当初は、この教職特別手当を、「ありがたい」と受けとる教員は少なくなかったという。

 4%は、1966年度に1年間かけて行われた全国的な教員の勤務状況調査を基にして算出されたものだ。その調査の結果、月あたりの教員の平均残業時間は「8時間」だった。その8時間の残業手当に相当する額が、基本給の4%というわけである。
 平均だから、月8時間の残業をしていない教員も多かった。最近では若手ほど残業させられる傾向にあるようだが、当時は若手ほど残業する必要がなかった。残業もしないのに基本給の4%が割り増しされるのだから、「ありがたい」以外の何ものでもなかったはずである。

 いまも教員の残業時間が平均月8時間のままであれば、給特法の見直しは臨時国会の議題になどあがらなかったはずである。教員の働き過ぎも社会問題化しなかった。

 臨時国会で改正案が審議されようとしているのは、4%の根拠となっている平均月8時間という教員の残業時間が大きく変わってきたからである。

■教員の残業時間は月100時間超えも…

 文部科学省による「教員勤務実態調査(2016年度実施)」でも、厚生労働省が「過労死ライン」としている月80時間以上の残業をしている教員は、小学校でも57.8%で、中学校では74.1%にもなっている。これは文科省調査なので、実態そのまま反映されているかどうかについては疑問もある。文科省調査に対して学校は「忖度」するからだ。実際、教員と話しをしていると、「月100時間以上は残業している」と聞くことも珍しくない。

 ともかく、給特法で基本給の4%の元になっている「平均月8時間」の残業時間は、いまでは10倍以上になっていることになる。8時間で4%ならは、単純に計算しても40%になっていなくてはならないはずだ。
 ところが、残業時間は10倍にもなっているのに、教職特別手当は4%のまま据え置かれている。これでは、残業手当が支払われていないに等しい。だから、「定額働かせ放題」なのだ。その状況は、普通の会社員の感覚からしてもおかしいはずだ。

 前述したように、臨時国会で給特法改正案が審議されることになっているが、それは「残業手当を払う」という改正ではない。

 超勤訴訟に敗北した政府・自民党が、巻き返しをはかったのが給特法である。つまり給特法は、教員に一般常識でいうところの残業手当を支払わないための政府と自民党による「苦肉の策」だった。給特法の根本的な狙いは、「教員に残業代は支払わない」ことでしかない。
 教員に残業手当を支払うことにすれば、もはや改正ではなく、給特法そのものの存在意義がなくすことになる。「廃止」ではなく「改正」がテーマとなっているのは、給特法の狙いである「教員に残業代は支払わない」方針を貫く姿勢のあらわれでしかない。

 ここを出発点にして、これから給特法と教員の働き方改革について考えていきたいとおもう。



(社説)
神戸教員間暴力 「強行」処分の危うさ
2019年11月4日:朝日新聞

 許しがたい行為をした職員は厳正に処分すべきだ。しかし、急ごしらえの規定をあてはめ、有識者審査会の反対を押し切った処分は危うく、公正の原則を揺るがしかねない。
 神戸市立東須磨小での教員間の暴力・暴言問題で、市教委は加害側の4人を「分限休職」処分とし、給与の支払いを止めた。4人が問題発覚後、教委の指示で有給休暇をとる形で謹慎していたことに市民らから批判が殺到。久元喜造市長は職員処分に関する条例の改正を打ち出し、市議会が可決、施行と適用へ1週間で手続きが進んだ。
 地方公務員法は、職員の処分に関して「分限」と「懲戒」を定める。公務執行の観点から行う分限処分で休職とできるのは、職員が心身の不調のため長期の休養が必要な場合と刑事事件で起訴された場合で、条例で事由を追加できる。
 神戸市は、条例改正で「起訴のおそれがあり、職務の続行で公務遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合」を追加し、4人に適用した。「給与の支給に市民の理解は得られない」と強調する久元市長は、「事由の追加に慎重であるべきだというのは平時の考え方。今回の事件の重大性を考えれば平時の考え方は適当ではない」と語った。
 疑問を禁じ得ない。市民の声に耳を傾けることは大切だが、公務員の身分保障を軽んじてよいわけではない。新設した規定の内容にはあいまいさが残り、乱用への懸念もある。
 外部の弁護士らでつくる分限懲戒審査会も、そうした点を指摘した。4人の行為に軽重があって一律には論じられず、起訴される蓋然(がいぜん)性が高いとは言えないとして、処分について「不相当」と判断。「職員に重大な不利益を及ぼすだけに、正確な事実認定と厳格な判断・解釈が必要。そうした判断は懲戒処分として行うべきだ」とした。
 まっとうな指摘と言えるだろう。しかし、市教委は休職処分を決定し、久元市長は審査会を批判する声明を出した。
 いったい、何のための審査会か。これでは結論ありきと言われても仕方あるまい。市教委と市は、処分と条例改正について再考するべきだ。
 市議会も問われる。条例改正案の採決時の付帯決議で、恣意(しい)的運用を防ぐため審査会に諮るよう求めた。審査結果に拘束力はないとはいえ、それを無視した市側の対応を見過ごすのか。
 当面は暴行・暴言の実態とその背景を調べている第三者委員会の活動に協力する。一方で、緊急に職員の出勤を差し止める必要が生じた際の制度について、腰をすえて検討する。それが市や市議会の役割である。



時代の風
教員の働く環境改善急務
 子供と向き合う教育を
=城戸久枝・ノンフィクションライター
2019年10月27日:毎日新聞

城戸久枝氏=根岸基弘撮影

 美術が大好きな小学3年生の息子に、どうしても葛飾北斎の本物の北斎漫画を買いたいとせがまれて、東京の神保町にある浮世絵をあつかう古書店をおとずれた。積み上げられている本はどれも古く、高価なものばかり。最初は萎縮していた息子は、勇気を出して店主の女性に声をかけた。
 「北斎漫画の本物が見たいのですが、ありますか?」
 店主の女性はしばらく考えたあと、奥の棚から2冊の古い本を出してきた。同じ北斎漫画だが、1冊は明治時代に刷られたもので値段は数万円、もう1冊は江戸時代のもので、数十万円だ。2冊を同時にパラパラめくりながら、店主は息子に同じ本でも値段が違う理由を解説してくれた。さらに、「実際に触ったほうがわかりやすい」と、息子に高いほうの本を手渡し、紙の質などをたしかめさせてくれた。破らないかと心配する私をよそに、息子は緊張しながらも丁寧に、目をかがやかせながらページをめくっていく。そんな息子の姿を、店主はやさしく見守っていてくれた。子供の知りたいという思いに、真正面から向き合ってくださった店主の対応がありがたかった。結局、北斎漫画は買えなかったが、店主が息子の小遣いで買える値段にまけてくれ、江戸時代の薄い絵手本を買った。息子はその本を手本に、毎日絵を描き続けている。
 真剣に自身と向き合ってくれる親以外の大人と出会うことは、子供たちの心に大きな力を与えてくれることもある。一人の人間として認められることは、子供の自信にもつながるはずだ。息子にとって、この古書店の店主との出会いはほんの短い時間だったが、彼の心の中に何か深く印象を刻まれた出来事だったように思う。彼を信じられず、失敗を心配してしまっていたことを反省した。
 私自身、真正面から向き合ってくれた大人として思い出すのは、小学校5、6年の担任の先生だ。当時新卒2年目の若い男の先生だった。私はあまり大人に心を開かない生意気な子供だったが、ほかのクラスメート同様に、一人ひとりに正面から向き合って接してくれた。特に印象深かったのは、戦争に関する授業だった。「はだしのゲン」のアニメを、授業時間を割いて見せてくれた。目をそむけたくなるような場面も多かったが、戦争のこと、平和について、クラス全体で考えた。子供なりに戦争と向き合ったあの経験は、書き手として、戦争体験者の方々と向き合ってきた今でも、自分の大切な原点になっている。
 今年の夏に30年ぶりに小学5、6年のクラス会に参加した。50代半ばを過ぎた先生とも、お会いすることができた。私の仕事の原点が先生だと伝えると、先生はこうおっしゃった。
 「君らを教えたとき、おれも若かったし、面白かった。でもな。面白いけど、教師は大変な仕事だよ」
 今も現役の先生の言葉には、私たちが卒業してから数十年の苦労がにじんでいるように感じた。
 保護者として、学校と関わることも多いが、最近感じるのは、教師を取り巻く環境の変化だ。長時間労働、休職する教師の増加、教師の数の不足、教員採用試験の倍率の低迷……。教師が疲弊しているということもよく耳にする。先月19日に発表された日本民間放送連盟賞のテレビ報道部門の審査に審査員として参加した。最優秀となったのが、教師の現状をあつかった福井テレビの「聖職のゆくえ」という番組だった。過労死ラインを超えた労働時間を強いられた中学教師のドキュメンタリー。実際に職員室にカメラが入り、教師の実態にせまった作品だった。教師の疲弊は、少なからず子供たちに影響を与える。子供たちの未来のためにも、教師の労働環境の改善は急務だと感じた。
 教師たちの疲弊が解消され、笑顔が増えれば、きっと子供たちの笑顔へと結びつく。取材先のある中学教師は、教育現場が「めっちゃ楽しい」と言った。つらいこともあるが、仲間とともに子供たちと向き合った先に、子供たちの笑顔を見ることができたとき、最高に幸せを感じるのだと。
 子供は育つ環境を自分で選ぶことはできない。しかし周囲が環境を変えることは可能だ。真正面から向き合ってくれる大人との出会いが、子供の大きな力となるならば、その出会いを守ることも、私たち大人の責任だと思うのだ。



【主張】
いじめで給与停止 教員組織の体質改革急げ
2019年11月5日:産経新聞

 教諭のおぞましいいじめ行為に、厳正な処分は当然である。組織の体質改革にも真剣に取り組まなければならない。
 神戸市立小学校で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、市教育委員会は加害教諭への給与を差し止める分限休職処分とした。
 当たり前だろう。4人は10月1日から有給休暇の扱いで休んでいた。市民らから批判の声が出たのはもっともである。懲戒処分にする前に給与を停止できる制度がなかったため、市が改正条例案を提出し可決された。
 被害教諭の訴えでは、激辛カレーを食べさせられるなど、およそ聞くに堪えない低次元のいじめが繰り返されている。教育者というにまったく値しない。給与を払うなど理解は得られない。改正条例の適用には異論もあったが、常識を大切にすべきだ。
 教育現場に与えた影響は極めて深刻である。問題が明るみに出てショックで学校を休んだ児童もいる。被害教諭からは兵庫県警に被害届が出された。警察も厳しく対処し、社会全体でいじめを許さない姿勢を示さないといけない。
 注意したいのは、神戸の件が明らかになってから、各地でいじめなどに遭ったとする教師の存在が表面化していることだ。
 奈良県大和郡山市の市立小学校では、教諭4人が同僚のいじめやパワーハラスメントを訴えて休んでいることがわかった。兵庫県姫路市では、市立小学校の男性臨時講師が同僚教員らから暴言や暴力を受けるなどして退職していた。表に出ない事案は全国で多いのではないか。
 神戸のいじめは1年以上続いていた。周囲が気付かないわけがない。校長が協議して教員の異動案を決め、市教委が追認する「神戸方式」という人事が校長の権限を強め、隠蔽(いんぺい)体質を助長していたとの指摘もある。昨年には、自殺した中学生へのいじめを記したメモを神戸市教委と校長が隠蔽していた事案も明らかになった。
 学校は往々にして閉鎖的な場となり、問題を隠して事なかれ主義ですませてしまう。被害を受けた教師が、立場や身分を心配することなく訴えていける場や環境を築かないといけない。
 大人がいじめを行っているようでは、子供間のいじめを根絶できるわけがない。体質改革が必要なのは神戸だけではない。



増える「カスハラ」 現場任せにしていないか
2019年11月5日:毎日新聞

 悪質なクレームなどで店員や従業員に大きなストレスを与えるカスタマーハラスメント(カスハラ)が、社会的な問題になっている。
 厚生労働省のデータによると、顧客や取引先からのクレーム対応で精神障害の労災認定を受けた人が過去10年間で78人に上り、うち24人が自殺していた。見過ごせない事態だ。
 厚労省の企業ヒアリングでは、暴力的な行為や金品のゆすり、執拗(しつよう)な叱責や営業時間後にも退去しない行為などが、カスハラの例として挙げられた。過去には、コンビニの店長を土下座させ、恐喝罪で有罪になった事例がある。
 クレームは本来、企業が丁寧に耳を傾けるべきものだ。サービスに至らない点や商品の不具合などがあれば改善する。結果的に業績向上につながる可能性もある。
 一方で、カスハラは苦情を伝えるにとどまらない著しい迷惑行為である。顧客と企業のあるべき関係から逸脱している。
 小売業などの産業別労組が実施した調査では、組合員の約7割が「迷惑行為に遭遇した」と回答した。民間企業の調査では、苦情対応担当者らの半数以上が最近3年でカスハラが増えたと感じている。
 接客対応を批判する投稿が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で拡散されるようになり、従業員が受けるストレスが強くなっている面もあるだろう。
 背景には、バッシングなど他人に不寛容になった社会があると指摘する心理学の専門家もいる。企業の「顧客第一」の姿勢が誤って伝わり、「客なら何でも許される」という風潮につながっているのかもしれない。
 企業には労働者への安全配慮義務がある。カスハラに対する姿勢を明確にし、現場の個人任せにせず、組織として対応すべきだ。
 国際労働機関(ILO)は6月にハラスメント禁止条約を採択した。対象にはカスハラも含まれる。
 厚労省も、パワーハラスメント防止のための企業向け指針を策定している。だが、素案は、カスハラ対策について相談体制の整備などが望ましいと指摘するにとどまっている。企業任せにするのではなく、カスハラへの具体的な対応の判断基準を指針で示すべきだ。



セブン「24時間」見直し
 コンビニの変革に本腰を
2019年10月28日:毎日新聞

 24時間営業の便利さを売り物に成長してきたコンビニエンスストアが変革を迫られている。
 最大手のセブン―イレブン・ジャパンは11月から8店舗で時短営業に移行する。午後11時から翌日午前7時まで閉める店もある。
 セブンはこれまで24時間営業の見直しに慎重だった。限定的とはいえ、時短を容認したのは、深刻な人手不足を背景にフランチャイズチェーン加盟店の中で24時間営業に耐えられないところが出てきたからだ。
 加盟店は契約で売上高から商品原価を差し引いた粗利益の一定割合をロイヤルティー(加盟店料)としてコンビニ本部に支払う。24時間営業を維持した方が売上高が減らず、本部はもうけを確保できる。
 一方、加盟店は残った利益から人件費や光熱費などを賄わねばならず、薄利だ。最近は人件費の高騰で深夜営業が困難になっている。
 今年2月には本部と対立した大阪府内の加盟店が時短営業に踏み切り、経営のゆがみが浮き彫りになった。大手コンビニへの批判が高まり、経済産業省も是正に乗り出した。
 セブンは4月以降、約230店で時短営業を実証実験し、売上高や物流への影響を調べてきた。永松文彦社長は「24時間営業の是非は最終的に加盟店オーナーの判断」と語る。
 ただ、セブンには米国発のコンビニを日本に導入し、24時間営業を武器に国内最大の小売業に育てた成功体験がある。
 時短店舗が広がり、長年かけて築いた収益モデルが崩れることへの警戒感も強い。実際、新たな加盟店支援策も24時間営業店を優遇した。
 しかし、セブンのアンケートでは、2000以上の加盟店が「時短を検討する」と回答した。セブンは「顧客の24時間営業へのニーズは根強い」と強調するが、消費者の意識や生活スタイルも変わりつつある。
 24時間営業の見直しは、ローソンなど他社が先行した。だが、全国約2万1000店を抱え、集客力で圧倒するセブンが本腰を入れなければ、時短営業は定着しないだろう。
 加盟店がこれ以上疲弊すれば、生活に不可欠なインフラでもあるコンビニの全国展開は続かなくなる。セブンには、盟主として時代に合ったコンビニ像を示す責任がある。



人口減と自治体
 身近な行政維持する方策探れ
2019年11月5日:読売新聞

 人口減社会でも、暮らしを支える行政サービスを維持する。市町村は、その体制整備を急がなければならない。
 政府の地方制度調査会が、市町村の合併を支援する合併特例法の延長を求める答申をまとめた。政府は、来年3月までの期限を10年延長する改正案を通常国会に提出する。
 財政基盤を安定させ、必要な施策を進めていくうえで、合併は有力な選択肢と言えよう。合併特例法の延長は妥当だ。
 1999年からの「平成の大合併」で、国は財政上の手厚い優遇措置を設けて、市町村を合併に誘導した。全国に3232あった市町村は、ほぼ半減した。
 2010年度以降は、手続きを円滑化する措置にとどめ、自主的な合併を促している。
 合併により総務や広報部門などの人員削減につながり、技師や栄養士、防災の専門職員を配置しやすくなった。利用できる公共施設が増えたという評価もある。
 一方、市街地から外れた周辺部の意見が行政に届きにくくなったとの指摘や、地域の祭りや行事の継承を危ぶむ声もある。住民の不安を和らげるため、政府は自治体を後押しするべきだ。
 市町村を取り巻く状況は、今後深刻さを増していく。
 人口1万人未満の小規模自治体は512あり、全体の3割を占める。40年ごろには630以上に増えると推計される。
 首都圏も人口減に直面する。埼玉や千葉では15年に比べて、人口が20%以上減る市町村もある。
 道路や橋など交通インフラの維持、福祉や教育、災害対応など市町村が担う施策は多い。各市町村がすべてのサービスを提供するのは無理があろう。
 調査会は、必要な行政サービスを維持する方策として、合併のほか、市町村間の広域連携や都道府県による補完を提案した。
 人口見通しや地理的条件を踏まえ、それぞれの市町村が具体策を探ることが大切だ。
 人口20万人以上の都市を中心に近隣市町村が参加する「連携中枢都市圏」(圏域)は、すでに32地域で組織され、公共施設の相互利用などを進めている。
 奈良県では、市町村から委託を受けて、道路の維持管理を担っている。医療や消防でも県が調整役を担う。山間部が多く、合併が進まなかった事情もある。
 政府は、自治体が最適な方法を選択できるよう、制度を整えていくことが欠かせない。



「幼児教育無償化、朝鮮学校をなぜ外すのか」
…在日コリアン、異例のデモ行進
2019年11月3日:ハンギョレ新聞

東京都心で2.3キロメートル街頭行進 
「消費税引き上げ分で支援すると言いながら 
同じように税金納めているのになぜ差別するのか」 
赤ちゃんを抱いた母親も声上げる
朝鮮学校の幼児教育無償化除外措置に反対する在日コリアンと日本市民が2日、
「朝鮮学校の幼稚園を差別する政策を許すな」と書いた横断幕を持ち市街を行進している
=チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

 「『違ってもいい』。子供たちが幼稚園の学芸会で歌った歌詞に感動を受けたことを今でも忘れません。(在日コリアンの)子供たちが差別を受ける理由は一つもありません」
 2日、東京都千代田区の日比谷公園野外音楽堂で赤ちゃんを負ぶって舞台に上がった在日コリアンの母親1人が、涙まじりに訴えた。この日、日比谷公園では朝鮮学校幼児教育無償化排除措置に抗議する大規模集会が開かれた。5500人が参加(主催側集計)した集会の後、参加者たちは1時間かけて2.3キロメートルの街頭行進をした。日本では大規模な街頭行進自体が珍しいが、在日コリアンが大規模街頭デモを行うことは一層異例のことだ。
 街頭行進には子供の手を握った母親や父親、ベビーカーに乗せた子供を連れた家族たちの姿も目についた。銀座を経て東京駅まで、東京都心を横切る行進に、通りすがりの日本の市民も何事かと驚いていた。在日本朝鮮人総連合会(総連)のチョ・ソンオ国際統一局副局長は「在日コリアンによるこの程度の大規模な街頭行進は、以前の朝鮮学校高校無償化除外措置抗議集会以来、7年ぶり」としながら「今後は無償化から除外された他の外国人学校とも連帯し問題提起を拡大していく予定」と話した。
 在日コリアンが街頭に繰り出した理由は、安倍晋三政権が先月1日に消費税率の引き上げと共に幼児教育無償化政策を始めて、日本の法律上「各種学校」に該当する外国人学校は対象から除外したためだ。日本政府は、幼稚園と保育園の教育費を政府が一部支援する幼児教育無償化政策の対象から朝鮮学校を含む外国人学校は「多種多様な教育をしている」という理由で排除した。教育の質を担保できないという論理だ。
 外国人学校の付設幼児教育機関は、日本全国に約90カ所余りがあるが、その半分に近い40カ所余りが朝鮮学校の付属施設だ。朝鮮学校幼児教育無償化除外措置に対して、日本各地の朝鮮学校の父母と日本の市民が「生まれる時から差別することだ」と一貫して批判してきたが、日本政府は耳を傾けようとしない。しかも、日本政府が幼児教育無償化の財源として年間7千億円以上を策定したが、財源は在日コリアンも日本人も区別なく徴収される消費税引き上げ分を充当している。ある参加者は「消費税は(日本人と在日コリアンの)子供たちまですべて賄うお金ではないのか」として声を高めた。抱っこ紐を着けて壇上に上がった母親は「子供たちが自身に対して自信と誇りを持って生活できるよう声を上げる」と誓った。在日コリアンのある保護者は「子供たちの胸を刃物で刺すようなことがどうしてできるのか」と訴えた。
 集会後、参加者たちは「子供たちの教育を受ける権利を奪うな」と叫んで行進した。一部の参加者は、朝鮮学校の幼稚園の子供たちが小さな手で描いた絵の横断幕を掲げた。「友達を仲間はずれにしてはならない」と書かれた横断幕を持った人もいた。街頭行進の過程で極右と見られる人が拡声器を持ち行進参加者を非難する場面もあった。だが、嫌韓反対運動の活動家(カウンター)が出て「ヘイト・スピーチ(嫌悪発言)はやめろ」と書いた横断幕を持ち、その人物を取り囲み行進参加者と切り離した。
在日コリアンと日本市民が2日、東京都千代田区の日比谷公園で朝鮮学校幼児教育
無償化除外措置に反対する集会に参加している=チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

朝鮮学校幼児教育無償化除外措置に反対する在日コリアンと日本市民が2日、
街頭行進をしている。朝鮮学校の幼稚園の子供たちが描いた絵で作った横断幕も見える
=チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

東京/チョ・ギウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/915596.html

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