“科学”という名の「神話」、または「政治」

「科学」という言葉はよく使われるが、「科学」という言葉を使って何かをごまかしたり、隠したり、扇動したりすることもままみられることだ。特に「科学的」というときには怪しいとボクは思っている。
昨年の千葉県教委定例会で、県教委の文化課課長が「チバニアン」が国際学会に地質時代区分の名として登録申請されているという報告があった。その時の教育委員の質問とそれに答える県教委文化課長の答弁には呆れた。
教育委員は「チバニアンが登録されると観光に役立つ、観光客誘致のため県としてはどのようなことを考えているのか」と質問、課長は「市原市の予算でパンフレットを作っている」と答えた。
そもそも、地磁気発生のメカニズムもわからない。主要な学説はあり、ボクは「地球核の電磁石」の立場だが、証明されているわけではない。昨年から地磁気の極は異常に移動しているが、いつも磁極は移動している。
つまり、「地磁気というものはわからない」ということがわからなければ議論も出来ない。県教委委員の見識の無さを改めて認識させられた。
話は違うようだが、“量子コンピューター”についても、世の中の人びとの理解や興味は不十分だろう。
21世紀の科学を考えるときに、量子論は大きなカギとなる。ボクも「量子地理学」を妄想しているのだが、地域と量子論とは相性がいいと思っている。地域を考えるときに、量子論の「ねじれ」や「かさね合わせ」は相性がいい、ボクはこれに「コヒーレンス」を加えて理論化できないかと思っている(「考えている」とまでは言えないのが残念…)。


「チバニアン」命名申請巡り
批判の看板、「立ち入り制限」…
学者対立深まる溝
「一部に別の地層データ」
2019年10月20日:東京新聞・こちら特報部

 千葉県市原市にある地層を巡り、騒動が起きている。一帯は地球の歴史の境を示す世界でも希少な場所だとして、地球史の一時代を「チバニアン(千葉時代)」と命名すよう、日本の研究チームが国際学会に申請中。だが、研究チームのメンバーだった学者が「ねつ造」を訴え、地元に困惑が広がっている。何が起きているのか。                                 (中山岳)

 JR千葉駅から南東に35㌔。市原市田淵の養老川沿いを歩くと、地層や岩石が露出している崖が見えてきた。興味深そうに眺める見学者のそばには、「科学の過信(思い上がり)、瑕疵(失敗)の壁」と書かれた看板がある。近くに住む石井あゆみさん(61)は「事情を知らない見学者が看板を見ると混乱するようです」と困ったような表情を浮かべた。
 この地層は「千葉セクション」と呼ばれる。どんな価値があるかというと、「地磁気の逆転」がポイントだ。
 地球が帯びている地磁気のN極とS極は、46億年の歴史で何度も逆転している。千葉セクションは約77万年前の御嶽山噴火時の火山灰層などが含まれており、磁力を帯びた鉱物などの堆積物を分析すると、地磁気の向きが現在の状態になったことを観察できる。こうした地層は、世界でもイタリア南部と日本の千葉セクションを含む房総半島しか確認されておらず、貴重な場所という。
 地球の歴史を表す地質年代では、時代ごとに境界のよく分かる地層が「国際標準模式地(GSSP)」として1カ所選ばれ、その地名にちなんだ時代名がつく。茨城大などの国内の22機関でつくる研究チームは、千葉セクションをGSSPに認めて約770000から126000年前を「チバニアン」とするよう、2017年6月に国際学会に申請した。現在は三段階ある審査のうち最終段階で、これを通過し、さらに学会役員による投票で認められれば決定する。
 そんな千葉セクションに「科学の過信」の看板があるのは、なぜか。看板を立てた茨城大名誉教授で「古関東深海盆ジオパーク推進協議会」(事務局本部・千葉県香取市)の楡井久会長(地質環境学)は「国際学会に申請する過程で、ねつ造、改ざんがあったからだ」と主張する。以前は研究チームのメンバーだったが、今は申請取り下げを求めている。
 どういうことか。話は15年8月にさかのぼる。
 当時、海外の学者らが参加して千葉セクションの現地見学会が開かれた。楡井氏を含めた研究チームは見学会前、地磁気の逆転を分かりやすく示すため、地層から採った鉱物などに残る古い磁気の分析データをもとに、色分けした複数の杭を打ち込んだ。
 くい打ちは、火山灰層の約50㌢近く上までは現地のデータを基に実施。だが、それより上部の約1・2㍍分は、実は1・7㍍離れた「柳川セクション」という別の地層のデータを使っていた。見学会当日、研究チームは参加者たちに、くいの一部に柳川のデータを用いたことを説明しなかった。楡井氏は「参加者は、全てのくいのデータが、千葉セクションのものだと誤解した。私も見学会まで、柳川のデータを使ったことH知らなかった。これは捏造に当たり、科学者の倫理上、やってはいけないことだった」と話す。

国際学会「問題ない」
登録願う地元困惑
「論文や図から確認可能」 町内会長「開かれた場に」

 千葉セクションのくい打ちに用いたデータ、研究チーム代表の茨城大の岡田誠教授(古地磁気学)が、楡井氏に提供した。岡田教授は「データを渡した際に意思伝達がうまくいかなかった。誤解を招き反省している」と話す。
 岡田氏によると。見学会前に千葉セクションから古い磁気を測定するため試料を採取していたが、しばらく放置していたが、しばらく放置した結果、劣化してデータが取れなくなった。そのため、見学会の際、一部に柳川のデータを使ったという。
 ただ、柳川のデータの使用に問題はなく、試料採取場所も含め「当時発表していた論文と付録の図から確認できる。捏造や改ざんには当たらない」と強調する。見学会で説明しなった点は「2016年に海外の国際学会や千葉大の学会で説明した。そもそも見学会は、GSSPの申請とは関係ない」とする。見学会後、千葉セクションの広範囲で試料採取し、別の論文でも発表しており、問題ないという。
 一方、楡井氏は昨年、GSSP認定をめぐる二次審査中だった国際学会に「研究チームの論文に改ざんがある」との文書を送付した。国際学会は審査の結果、「科学的に問題ない」と判断し、日本地質学会も「学術的に問題ない」と発表。岡田氏は「国際的に申請内容への科学的な疑いはなくなった」と話す。
 だが、楡井氏は「日本の学会などはチバニアンありきの全体主義に陥っており問題だ。このままGSSPに認められても、世界で千葉のイメージは悪くなり経済にも悪影響を与える」と語気を強める。不信を深め、昨夏、地層に行くために通る私有地の所有者と賃貸借契約を結び、他の研究者が無断で立ち入ることを制限した。
 一般の見学は制限されなかったが、弱ったのは市原市。千葉セクションがGSSPに認められるには、自由に立ち入り研究できることを証明する必要がある。市は地層周辺の私有地の所有者から買収する手続きを進めていたが、楡井氏側が交渉に応じず困難に。市は9月、必要な許可を得た研究者の試料採取なら、地権者らは妨害できないと定めた条例を制定した。
 ふるさと文化課の今泉敬士郎課長は「何とか和解できないか試みたが難しかった。調査研究できる環境を確保するのは、市の責任」と説明する。
 なぜ、ここまで問題が広がったのか。千葉セクションに詳しい東京農業大非常勤講師の会田信行氏(古地磁気学)は「そもそもは15年の見学会の際、現地で参加者に柳川のデータも使っていることを明示し説明すればよかった」と指摘する。
 会田氏によると、千葉セクションの調査研究は、1990年代から大阪市立大の市原実、熊井久雄両名誉教授(いずれも故人)や、楡井氏らが進めてきた。2000年代以降、GSSP申請を本格的に目指すことになり、英語の論文を多く発表する必要が出てきた。そのため、13年に古地磁気のデータ分析に詳しい岡田氏や他の研究者らを含めた研究チームができた。
 会田氏は「楡井氏は過去にも地層の価値を啓発する国際シンポジウムを開くなど長くリーダーを務め、縁の下の力持ちの役割もしていた。こうした先達の功績を引き継ぎつつ、みんなで協力できればよかったが…」と残念がる。
 困惑は地元住民にも広がっている。田淵町内会長の鈴木一成さん(66)は「過去の町内会役員には、楡井氏ががんばってきた姿を知っている人もいる。ただ、町会として今はチバニアンの申請に賛成だ。地層の価値は誰もが認めるのだから、研究者や見学者に広く開かれた場所であってほしい」と話している。

デスクメモ
 2008年の岩手・宮城内陸地震。ダム上流の崩落現場に向かう途中、道路を寸断した地割れの奥にしま模様の地層が見えた。関東でも、海岸などの崖で曲がりくねった地層を見掛ける。私たちの足元にもあるかもしれない地球の歴史、知識を得て、もっと注目していかなければ。           (本)


グーグルなどが量子超越性実証に成功
 従来型のスパコン上回る計算能力示す
2019年10月23日:毎日新聞


 米グーグルなど米独の研究グループは、量子コンピューターが現在のスーパーコンピューターより速く計算できることを示す「量子超越性」の実証に成功したと、23日付の英科学誌ネイチャーに発表した。スーパーコンピューターでは1万年かかっていた計算を、3分20秒で解くことができたという。
 量子コンピューターは、光など波と粒子の性質を併せ持つ「量子」を利用した、従来型と全く違う仕組みの計算機。現在のコンピューターは「0」と「1」のどちらかの状態を表す「ビット」を使って計算する。量子コンピューターは、「0」と「1」の両方の状態を同時に取れるという量子が持つ特殊な状態「重ね合わせ」を利用し、多数の計算を並列して処理する。
 量子コンピューターを巡っては、世界中で開発競争が激化。2011年にカナダのベンチャー企業「Dウエーブシステムズ」が世界で初めて限定的な用途に特化して商品化したほか、米IBMなども開発を進める。
 Dウエーブの量子コンピューターの基礎理論を1998年に初めて提唱した西森秀稔・東京工業大教授は「グーグルの主張が正しければ、マイルストーン(一里塚)として評価できる」と話す。グーグルなどは汎用(はんよう)性の高い量子コンピューターを目指しているが、「実現まではまだ長い道のりがある」と解説する。
 グーグルが今回解かせたとしているのは特殊な数学の問題で、通常のコンピューターで扱うような幅広い計算にそのまま用いられるわけではないという。
 IBMの研究者らは同社のブログで「従来のコンピューターにも強みがあり、『超越性』という言葉は誤解を招く。(グーグルの実験を)従来のコンピューターを『超越した』証拠と見るべきではない」と異議を唱えている。【信田真由美、須田桃子】


グーグルは本当に
量子コンピューターの開発に成功したのか?
Google Scientists Claim 'quantum Supremacy' With New System
2019年10月25日:ニューズウィーク







グーグルの量子コンピューターの1つとスンダー・ピチャイCEO
(カリフォルニア州サンタバーバラ) Google/REUTERS

<スパコンで1万年かかる計算を
たった3分20秒でやってのけたという仕組みは?>

グーグルの研究チームは、同社の量子コンピューターが、従来のスーパーコンピューター(スパコン)で約1万年かかる計算を「わずか数分」で解いたと発表した。
従来型のコンピューターに(実用的な時間内では)できない課題をクリアすることを「量子超越性」といい、今回の発表はそれを達成するための一里塚と受けとめられている(量子コンピューターの実用化はまだ数十年先の話だが)。
英ネイチャー誌に発表された論文によれば、研究チームは乱数を生成する問題をコンピューターに解かせる実証実験を行った。すると世界最高性能のスパコンでも1万年かかる計算を、グーグルの量子コンピューターは3分20秒で解いたという。
<参考記事>量子コンピューターがビットコインを滅ぼす日
米マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピューター科学者であるウィリアム・オリバー(今回の実証実験には関わっていない)は、ネイチャー誌に寄稿した解説で、グーグルの成果を「偉業」と称賛。「量子コンピューターの計算モデルが従来型コンピューターの計算モデルとは根本的に異なることを、実験によって証明した」と述べた。

量子力学の不思議を活用

量子コンピューターは、量子力学の奇妙な原理を利用して計算を行う。
従来型のコンピューターは「ビット」という情報単位を使っている。これは「0」か「1」のどちらかの状態しか表すことができないのに対し、量子コンピューターが使う情報単位「量子ビット」は、同時に「0」でも「1」でもあって、「0」と「1」の間のすべての値でもある。扱える情報量が大幅に増えるため、演算能力も大幅に高まるのだ。
そのため量子コンピューターは従来型コンピューターよりもはるかに速いスピードで課題をクリアする潜在能力を持っている。だが量子超越性を達成するには、メモリー容量が十分にあり性能が安定した量子プロセッサが必要だ。量子現象が予測不可能なものであることを考えると、その達成はとても難しい。
だがジョン・マルティニスとセルジオ・ボイクソが率いるグーグルの研究チームは今回、エラーの訂正能力が高い53量子ビットのコンピューターを使った。猛スピードで演算を行うそばから誤った答えを排除していくことで、量子超越性を達成したのだ。
グーグルの量子コンピューターは、「重ね合わせ」と「もつれ」という量子力学の2つの原理を活用している。どんなに距離が離れた場所にあっても、量子が異なる状態で同時に存在できる(たとえば「0」と「1」を同時に存在させる)原理と、量子同士が「もつれ合い」の状態になって互いに影響し合う原理だ。
<参考記事>量子コンピューターでの偉業達成を誇るGoogle、それを認めないIBM
今回の量子超越性の達成は快挙だが、量子コンピューターの実用化までにはまだ多くの研究が必要だとオリバーは主張する。
「特に、近い将来の実現が予想されている中規模量子コンピューターで作動させられるアルゴリズムの開発が必要だ」と彼は書いている。「それに長期的に耐故障性があり、エラー訂正能力の高い安定したプロトコルも実証する必要があるだろう」
「今回の成果は多くの意味で、ライト兄弟の有人初飛行に匹敵する。ライトフライヤー号は世界初の航空機ではなかったし、輸送に関する差し迫った問題を解決した訳でもない」と彼は書く。「航空機が広く導入されるきっかけにも、ほかの輸送手段の終わりのはじまりにもならなかった。ただ彼らの成功は、空気よりも重い航空機で動力飛行をするという新しい領域を示した。実際に達成したことよりも、その成果が持つ意味がとても重要だったのだ。量子超越性についての今回の論文も、それと同じだ」
だが既に、この快挙を疑問視する声もあがっている。サイエンス誌によれば、現在の世界最高性能スパコン「サミット」を開発したIBMは、グーグルは量子超越性の基準を満たしていないと主張。グーグルが実証実験で使った計算タスクについて、サミットで最適な方法を用いて行ったところ、1万年ではなく2日半で解くことができたとしている。
「こうした指摘は当然出てくるだろうし、精査するのはいいことだ。それも科学のプロセスの一環だ」とオリバーは本誌に語った。「だが初期段階にある量子プロセッサが、特定のタスクの処理において、世界最高性能のスパコンに匹敵するかどうか議論できるところまできた事実を見失ってはならない」
(翻訳:森美歩)


中国発の量子コンピューターショックに
世界は耐えられるか?
Are We Ready for a 'Quantum Surprise' From China?
2019年10月28日:ニューズウィーク







グーグルの量子コンピューターの一部とスンダー・ピチャイCEO(左) Google/REUTERS

<量子コンピューターは既存の暗号化技術をすべて陳腐化し
     機密も丸裸にしてしまうので、
国家間の開発競争がますます激しくなっている>

先ごろグーグルは、既存のスーパーコンピューターなら1万年かかる計算を200秒でこなす量子コンピューターを開発したとする論文を発表した。まさに驚くべき偉業だ。だが、量子コンピューターの性能が従来型コンピューターを超えるという重要な節目にたどり着いたとするグーグルの主張には、反論の声も上がっている。
ネイチャー誌に掲載されたこの論文のタイトルは「プログラム可能な超伝導プロセッサを利用した量子超越性」。「量子超越性」とは2012年にクァンタ誌のジョン・プレスキルが使い始めた言葉で、量子コンピューターの性能が従来型を凌駕することを指す。
だが量子コンピューター開発のライバルであるIBMの技術者からは、グーグルがこの言葉を使うことに異論が出されている。IBMの研究者らはブログで、グーグルの論文で取り上げられている実験は現実世界での応用につながるものではなく、量子超越性の段階に達したとは言い切れないと指摘した。
IBM側の言い分が正しいことを祈ろう。量子コンピューターには、データとインターネットに依存したこの世界にとって脅威となるような信じがたい能力を発揮する可能性があるからだ。
<参考記事>グーグルは本当に量子コンピューターの開発に成功したのか?
<参考記事>量子コンピューターでの偉業達成を誇るGoogle、それを認めないIBM

アメリカの機密が中国に流出?

専門家の多くは、今後10年かそこらは量子コンピューターがまともに使える日は来ないとみている。だがそれは単なる推測に過ぎない。量子超越性が本当に実現すれば、既存の暗号化の仕組みは時代遅れになる。量子コンピューターがあらゆる暗号を読み解いて国家機密を暴く力を手にするのはいつか、それを最初になし遂げるのは誰かなど、誰にも分からない。その潜在的な能力の大きさゆえに量子コンピューターの開発競争は過熱しており、どの国も一歩先んじようと必死だ。
アメリカの安全保障から見た悪夢のシナリオは、中国が実用に耐えうる量子コンピューターを手の内を見せることなく開発してしまうことだ。そうなれば中国は暗号通信を好き勝手に解読したり、アメリカの機密データにアクセスしたりできるようになるかも知れない。
「中国は秘密裏にかつ予想より早い時期に量子コンピューターの開発に成功する可能性がある」と、シンクタンクの新米国安全保障センターの報告書は指摘する。「そしてアメリカを出し抜いたり戦略の裏をかくために、機密通信に対してそれを使うかも知れない。そうした『量子ショック』の到来を評価・判断するのは難しいかも知れず、アメリカの情報機関の分析を攪乱することもできるかも知れない」
量子コンピューターが持つ破壊力は非常に大きなものになるはずだ。現在使われている暗号化の仕組みは1970年代に開発されたもので、数学的な複雑さに依存して解読を防止している。暗号化されたデータを復号するには、送り手と受け手のみが持つ「鍵」(桁の大きな数字)を使う。鍵がない場合、暗号の解読には大規模な計算が必要になるが、これには世界トップクラスのコンピューターであっても永遠に近い時間がかかる。
だが量子コンピューターの前では、現行の暗号化技術は過去の遺物になってしまうだろう。0か1かのビット単位で計算する従来型コンピューターと異なり、量子コンピューターで利用されるのは、1と0が同時に存在できるという量子の奇妙な性質だ。物理学者のエルビン・シュレーディンガーはこの「重ね合わせ状態」を、「同時に死んでも生きてもいるネコ」になぞらえたことで知られる。
例えば光の粒子(光子という)は、0と1を一度に表すような状態で存在することができる。量子コンピューターはこうした粒子を操作して多くの計算を同時に行う。暗号の解読のような複雑な問題を解くスピードも大幅に速くなる。

量子コンピューターだけは自前で

中国は量子コンピューターを戦略的な重要課題と位置づけている。過去には他国の技術を盗んだと非難されることもままあった中国だが、量子コンピューター研究に関しては自前であり、レベルも高い。安徽省の新しい研究施設には4億ドルもの資金が投じられたと伝えられている。
量子コンピューターを開発しているのは中国だけではなく、アメリカでも欧州でも、日本でも開発プロジェクトが進行中だ。米国家安全保障局(NSA)の開発プロジェクトの予算は8000万ドルで、エドワード・スノーデンの内部告発によってその存在が明らかになった。
国家機密を守るため、各国とも量子コンピューターでも破られない暗号化通信技術の開発に着手している。数字の鍵の代わりに光子のような粒子を使う暗号だ。
2017年に中国が行った実験では、1200キロ離れた2つの地上ステーションに向けて人工衛星から光子を発射。すると、一方の地上ステーションに送られた光子はもう1カ所に送られた光子と「量子もつれ」の状態になった。量子もつれとは量子力学におけるもう1つの奇妙な性質で、2つの粒子が何らかの形で相関を持つ状態を言う。アルバート・アインシュタインはこれを「不気味な遠隔作用」と呼んだ。量子もつれの状態にある粒子は、暗号化通信においてハッキング不可能な鍵として利用できる可能性がある。
この実験で使われたのは、中国の量子通信ネットワークを支えるために計画された衛星群の第一弾だ。中国はまた、北京と上海をつなぐ2000キロに及ぶ量子通信ネットワークの幹線の建設や、ネットワークの全土への拡大を計画している。
標準化機関はすでに、量子コンピューターでも解読が困難な新たな暗号プロトコルの策定を計画中だ。もっとも、桁数の大きな数字の鍵に依存しない新しい暗号化の仕組みに移行するには、データ通信インフラの大規模な更新が必要となる。
アメリカは第5世代(5G)移動通信システムの分野で、気がつかないうちに中国に追いつかれていたという苦い経験を持つ。だからアメリカの当局者や政治家は量子コンピューターの分野で同じ轍を踏むことを懸念し、ある種の産業政策が必要だと訴える。「アメリカには非常に強いテクノロジー企業がいくつもある」と、米国務省高官としてサイバーセキュリティ分野を担当していたクリストファー・ペインターは言う。「だがもしアメリカの強みを失いたくなければ、この分野を戦略的レベルで重大なものとして扱う必要がある」
(翻訳:村井裕美)


福島・木戸ダム 台風で大雨流入
底にたまる汚染土 心配
水道水の放射性物質 基準値以下と言うが…
2019年10月27日:東京新聞・ニュースの追跡

 台風19号の直後、福島県楢葉町の木戸ダムなどの水を使う同町や富岡町、大熊町、広野町の一部の水道水が濁り、一時、飲料水に利用できなくなった。ダムの底には、東京電力第一原発事故後に高濃度の放射性物質が蓄積。今回の濁った水から基準値以上の放射性物質は検出されていないが、住民からは不安の声が上がる。                                   (片山夏子)

 台風19号が福島県を襲った2日後の14日、楢葉町に住む木工業松永源実さん(68)は「水道水が濁っているので、飲まないでください」という町の防災無線を聞いた。「台風の大雨流入でダム底の放射性物質が混ざったのではないか」と非常に不安になったという。
 水道を管理する双葉地方水道企業団によると、泥が混ざり濁ったが、放射性物質は基準値以下だった。飲用禁止は21日までに解除された。

「信用できぬ 飲料水購入」

 もともと、木戸ダムの水に不信感を持つ松永さんは、普段から水道水を飲まず、ミネラルウォーターを買っている。「ダム底をさらうこともなく、行政の放射性物質測定は放射性セシウムだけだ。何十種とある他の核種はどうなのか。底に高濃度の放射性物質が沈んでいるのに、上澄みの水は基準値以下だから大丈夫というが、とても呑む気にならない」
 同町の運送会社社長の新妻定さん(81)と妻りつ子さん(67)も水を買う。「飲料水で1日2㍑の水を3~6本を使う」とりつ子さん。平均で月14000円を使う計算になる。定さんは「気持ち悪いし、信用できない。住民はみんな飲料水を買っている水を取る川の流域の山の除染もされていない」と言う。

除去すべきだが…行政「現状維持」

 木戸ダムは楢葉町の山間部にあり、現在、楢葉、富岡、広野の各町の一部で水道水として利用されている。福島県によると、ダム底には約400000㎥の土砂などがたまり、底部に原発事故直後の放射性物質が積もる。県や環境省の調査では、これまで最大で土砂1㌔㌘当たり約19000㏃を検出。一時期よりも下がったが、先月も約8000㏃が検出された。
 現状の木戸ダムについて、楢葉町暮らし安全対策課の川嶋諒主査は「底部の高濃度の土砂の上に日々新しい土砂が堆積しており、その数十メートル上にある水を利用している」と説明する。濁りの発生は大雨により湖底の土砂が巻き上げられた可能性を思わせるが、川嶋主査は「土砂の巻き上げの心配はほとんどない」という。
 それにしても、ダム湖底の土砂をさらえばこうした心配は少なくなるはずだ。実際、楢葉町は2015から16年に国や県や専門家と除染検証委員会を開催して検討した。だが結果は、現状維持となった。「さらった後の土砂をどうするかという問題がある」(川嶋主査)からだ。環境省の高木圭介参事官補佐も「さらうと土砂が巻き上げられて水が汚染される。そのままがいい」と説明する。
 京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「大型台風や豪雨が頻発している。大量に水が流れ込めば、ダムの底も動く。巻き上がらないとは言えない。取り除くべきだが、ダムの水を抜くにしても浚渫するにしても、新たな技術開発が必要で悩ましい」とする。

国の住民対応 不十分なまま

 大阪大の平山幸秀教授(科学技術社会論)は、山林は除染を行っていないため、雨が降るたびにダムや川に放射性物質を含む水が入ると指摘。「国は住民帰還を進めるが、住民の不安に対する対応が不十分。帰還前に、なぜダムをさらわなかったのか。また一度さらっても、台風はもちろん普段の雨や風でも、放射性物質が入る。ダムや川周辺の定期的な除染など、今からでも対策をすべきだ」


「日本が核廃絶の先頭というのは大うそ」
被爆語るサーロー節子さん批判
2019年10月27日:毎日新聞

自身の被爆体験について語るサーロー節子さん
=東京都渋谷区で2019年10月27日午後2時33分、牧野宏美撮影

 2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)と連携し、世界中で被爆体験を証言しているカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(87)が27日、東京都渋谷区で講演した。即位礼正殿の儀などの行事に参列するため来日。核兵器禁止条約に署名・批准しない日本政府を「被爆者として到底受け入れられない。唯一の被爆国として核廃絶の先頭に立っているというのは大うそだ」と厳しく批判した。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

ノーベル平和賞授賞式で、被爆者として初めて演説

 サーローさんは1945年8月6日、13歳の時に米軍が広島に投下した原爆に遭った。米国留学を経て結婚を機にカナダに移住し、70年代から本格的に反核・平和運動に取り組んだ。2007年からICANと活動を共にして禁止条約の成立に尽力。ノーベル平和賞授賞式では被爆者として初めて演説した。今回はカナダの日系人協会から正殿の儀への参列を依頼され、来日したという。

姉、おいの遺体「人間でなかった」 心の傷に

 サーローさんは「まずは私の原点の被爆体験から話したい」と、時折顔をゆがめながら74年前の夏を振り返った。爆心地から約1・8キロの学徒動員先で窓から入る青い光を見た瞬間に体が浮き上がり、意識が戻った時には暗闇の中で建物の下敷きになっていた。「もう死ぬんだ」と思った時、背後から男性の声で「あきらめるな。先に光が見えるだろう。あれに向かってはっていけ」と励まされ、なんとか抜け出した。病院に向かう途中だった姉とその息子の4歳のおいは即死。「遺体は人間ではなく、ただの肉のかたまりだった」。遺体が穴に放り込まれ、ガソリンをかけて焼かれる様子を見たが、「あまりに衝撃的で感情がまひしてしまい、涙も出なかった。最愛の姉があんな形で葬られたのに何も感じなかったという記憶が長い間私を苦しめた」と語った。

米国で核政策を批判し脅迫受ける 証言始める契機に

 54年、社会福祉を学ぶために米国へ留学。米国が南太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で第五福竜丸の乗組員が被ばくした事件の直後で、米メディアに感想を聞かれ「核戦争の準備はやめるべきだ。広島と長崎は核実験の終わりであるべきだった」と答えた。それが報道されると、留学先の大学に「核政策を批判する者は日本に帰れ」などと脅迫する匿名の文書が届くようになった。孤独と恐怖を感じたが、「核兵器が人間にどんな被害をもたらすか、目撃した私はなかったことにはできない。世界の多くの人に伝えることが私のミッションだ」と思い直し、証言を続けてきたという。

自身の被爆体験やこれまでの平和運動について語るサーロー節子さん
=東京都渋谷区で2019年10月27日午後2時42分、牧野宏美撮影

「核の非人道性」訴える若者中心の運動に希望

 国連などで証言し、軍縮交渉の現場に触れるうち、「核保有国は核を減らすための努力をしていない。苦しみや怒りを感じることが多かった」という。しかし約10年前から「核の非人道性」に注目する運動が起き、若者が中心に活動するICANと連携するようになって希望が持てるようになった。2年前に核兵器を違法とする禁止条約が成立した場にも立ち会い、「広島で亡くなった多くの被爆者に心の中で報告した。誇らしい瞬間だった」と笑顔を見せた。

「日本政府は被爆国の役割を果たしていない」

 一方で、禁止条約は核保有国や日本など核の傘の下にある国は不参加のままで、50カ国・地域の批准が条件となる発効には至っていない。サーローさんは昨年来日した際、安倍晋三首相との面会を求めたがかなわなかった。この日も「政府は唯一の被爆国として、核保有国と非核保有国の懸け橋になると言っているが、非核保有国や私たちの言い分を十分聞いておらず、役割を果たしていない」と指摘。「核兵器の使用は、世界の人たちの命に関係する。政府には命を守る責任を考えてほしい、いや考えなさいと言いたい」と強い口調で訴えた。

「アジアの国への過去の行為も直視を」

 サーローさんは「最後にこれだけ言わせてください」と、今回参加した宮中行事について触れた。「日本的な美しい建築やお堀を案内いただいて心が動かされた」と話した後、「ただ私はベルリンに行った時に、多くの人が通る中心地に虐殺されたユダヤ人のための慰霊碑があって感銘を受けたことを思い出していた。日本は過去に行ったことを直視し、東洋の兄弟姉妹のことを考えてきただろうか。みなさんで考えてみてください」と語りかけた。
 講演は編集・出版などを手がける「クレヨンハウス」主催。約200人が集まった。

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