ポンコツ文科省、それでもボクはABEを守る

萩生田文科相の「身の丈」発言が物議を醸している。上から目線の「『身の丈』で我慢しろ」的な発言は教育行政のトップとしてはあり得ない発言で許すことができないが、メディアの報道をイロイロと眺めているうちに、「これは、ポンコツな炎上商法」ではないかと思えてきた。
「身の丈」発言は、萩生田が「大学入試英語民間検定」をつぶすため、ABE案件の「大学英語民間試験導入」を安倍晋三に迷惑をかけずに葬る“作戦”なのではないか?
多分、文部官僚からも、「この英語民間検定制度の大学入試への利用については制度上無理があり、強行すれば、さらに大きな批判が起こることが予想される」とレクチャーされていたのだと思う。加計学園問題でも身を挺して、ABEを守った萩生田の学習成果の一つだろう。実施強行でも、延期でも、振り回される現・高校2年生は可哀想だ。


大学英語民間試験 萩生田文科相「身の丈」発言
家庭の経済力や居住地で不公平
若者憤慨「自分が貧しくないからでしょ」
2019年10月29日:東京新聞・こちら特報部

 萩生田光一文部科学大臣が24日、2020年度から大学入学共通テストに導入される英語民間検定試験をめぐり、「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と民放番組で発言した。民間英語検定導入には、経済的、地理的な不公平を招くとして、現役高校生はもちろん広く反対論があり、不公平を是認するかのような今回の発言は、開き直りともとれる。およそ正解とは思えない萩生田センセイの「受験指導」を問う。
(片山夏子、石井紀代美)

 萩生田光一文科相がBSフジの番組で、来年度から大学入学共通テストの英語で導入される民間検定試験について発言したのは24日夜だ。
 検定試験は、受験年度の4~12月までに受けた英検やTOFELなどのうち、事前に発行された入試用IDを使って受けた最大2回分の成績が大学に通知され、合否に反映される。ただし、金銭的に余裕があれば事前に何度も試験を受けて慣れることもできるなど、地理的や経済的な格差が出ると指摘されている。
 番組で司会者がその点を尋ねると、萩生田氏は「それを言ったら『あいつ予備校行ってずるいよ』というのと同じだ。裕福な家庭の子が回数を受けて、ウォーミングアップできるようなことはあるかもしれないが、そこは自分の身の丈に合わせて2回を選んで勝負してもらえば」と答えた。さらに地方などで検定試験が受けられない場合については「人生のうち1回や2回は故郷から出て試験を受ける、そういう緊張感も大事」と語った。
 根性論めいた萩生田氏の「受験指導」だが、高校生や大学生は、どう感じたのか。東京都練馬区の高校3年の男子生徒(17)は「今の試験は、同じ内容の試験をみんなが同時に受けているから平等。でも検定試験は試験によって内容も違うし、受験生の家庭の経済的な点でも、地方など住む場所によっても変わり、不公平。教育を平等にすべき、国の上に立つ立場の人の発言としてよくない」と話す。
 芝浦工業大4年の鈴木勇佑さん(22)は「自分が貧しくないから、こういう発言をするのだろうな」と一言。検定試験について「東京と地方では、試験の受けやすさも、かかる費用や労力も違う」と言う。導入するなら、「高校生に限り無料で受けられるようにしたり、地方でも試験を受けられるようにしたり、相応の対応をすべきだ」と述べた。
 一橋大大学院博士課程1年の早川黎さん(26)は、JR国立駅の前で高校生らが「経済的に恵まれていない受験生にチャンスを」と訴えているのを見て共感した。「どこの家に生まれるかは選択できない。(大臣の発言は)裕福な家に生まれなければ、それを受け入れろという話。生徒が自助努力で解決できないのに、国が責任を押し付けている」
 早川さんの周りにも、奨学金を受けバイトをしながら大学に通う学生がいる。「検定試験導入は、大学に入る前から経済的な重圧が掛かるということ。教育の機会均等の理念を守り、格差是正をすべき国が、さらに格差が広がることをしている」と述べた。
 萩生田氏の発言は、民主党や国民民主党などでつくる衆院の野党新会派と共産党が、英語検定試験の導入を延期する法律を提出した当日に出た。立民の枝野幸男代表は26日、記者団に「文科相としてあるまじき発言だ」と批判。臨時国会でも追及すると構えだ。
 萩生田氏は28日「不安や不快な思いを与えかねない説明不足な発言だった」と説明した。

国が是正すべきなのに
格差押しつけ自己責任論
官邸主導で決定 導入に固執

 そもそも、英語民間試験は、主に英語を話す能力が「現行のセンター試験でははかることができない」という理由で導入されることになった。ただ、これまで、さまざまな問題が指摘されている。
 共通テストに参加する検定試験は、英検のほか、ベネッセコーポレーションが実施する「GTEC」など計6団体7種類ある。都市部でしか行われていないものもあり、地方や離島の受験生は交通・宿泊費も移動時間もかかる。
 裕福な受験生は受験年度の前から何回も受けて、試験の雰囲気に慣れておき、検定策をしておくことが可能だが、そもそも、経済的、地理的にそれがかなわない生徒には無理だ。
 全国高等学校校長協会は生徒らが希望通りに受験できない恐れがあることなどを問題視し、「公正・公平性が依然として担保されていない」と、新制度導入の延期と見直しを求める要望書を提出している。
 そうした明らかな不公平に対して、萩生田氏の発言は「ガタガタ言わずに根性を見せろ」と開き直ったとしかとれない。
 「教育基本法の『差別禁止』理念を基も尊重しなければならないのに。あまりにも強烈な発言だった」。中京大の大内裕和教授(教育社会学)はあきれ返る。
 萩生田氏は、番組の中で、受験生の経済的な環境によって不公平になる可能性について、「あるかもしれないが」と認めた。この点を大内氏は「経済・地域格差を容認し、それを受け入れろと迫っているわけだ。まさに自己責任論の典型」と指摘する。さらに「故郷から出て試験を受ける。そういう緊張感も大事」という発言について、大内氏は「感情の問題ではない。格差があれば、それを無くしていくのが彼の仕事だ」と批判する。
 京都工芸繊維大の羽藤田美教授(応用言語学)も「そもそも制度が不公平で欠陥がある。擁護しようとすれば、こういうとんでもない失言が出てくるのは当たり前だ」と断じる。
 単に英語の能力を調べる検定と、進路にダイレクトに響く大学入試とでは、受験生にとっての重みが違う。「入試を甘く見てはいけない。少しでも不当なことが起きれば、みんな黙っていない。スケジュールありきでこのまま実施に踏み切れば、受験生を大混乱に巻き込む」と懸念する。
 これほど問題山積なのに、文科省はなぜ導入に固執するのか。
 関西学院大の寺沢拓教教授(教育政策)は「延期さえできない理由がわからない」と首をひねる。
  新制度がスタートするのは現在の高校2年生から。まだ特定の民間検定に向けて対策している受験生は少ない。廃止とは違い、延期は「大人のメンツ」をつぶすこともない。
 寺沢氏は「文科省の官僚も問題があることは分かっているはず」とした上で、「首相官邸レベルで意思決定がされていて、『やる』という枠が上からはめられ、やらざるを得ないのだろう」とみる。
 国民間の格差を当然として、我慢しろだの頑張れだのと上から目線でのたまうという点で、今回の「身の丈」発言は、1950年の池田勇人蔵相(当時)による「貧乏人は麦を食え」発言を彷彿とさせる。政治評論家の森田実氏は、こう批判する。
 「池田氏は吉田茂首相により大蔵官僚から初当選の身でいきなり蔵相に抜擢されたエリート。『麦を食え』はそういうエリート意識から出たものだ。同じように安倍首相に抜擢された側近中の側近たる萩生田氏だからこういう発言が出る。庶民の生活から離れたおごり高ぶりだ。『説明不足だった』などと釈明されるものではない」

デスクメモ
 英語民間検定試験が大学受験に直結するならば、裕福な層の子どもは高校はおろか中学生あるいは小学生から、検定対策の塾に通い、検定をどんどん受け、慣れていくことになるだろう。そうでない子との差はどんどん開く。回復不能な格差になる恐れがある。                (歩)


大学入試の英語民間試験は
何が問題なのか
 文科相「身の丈」発言で与党に延期論
2019年10月30日:毎日新聞

 大学入試センター試験に代わり来年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語民間試験を巡り、「身の丈に合わせて勝負を」と発言した萩生田光一文部科学相は30日、衆院文科委員会で発言について謝罪した。高校現場から「経済・地域格差に不安が残る」として異例の反対論がわき起こる中、感情を逆なでしかねない失言に政府・与党は沈静化に躍起だが、一部延期論も浮上している。

失言の萩生田氏は首相側近 批判は政権を直撃

 「国民の皆さま、特に受験生の皆さまにおわびする」。萩生田氏は30日の文科委で改めて陳謝した。浮上している試験の延期論について「文科省としては承知していない」と述べ、「受験生の不安や懸念を一つ一つ解消し、2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組みたい」と予定通り実施する意向を示した。
 今回の対応を誤れば政権への打撃になりかねない。自民、公明両党の幹事長、国会対策委員長は30日、東京都内で会談し、受験生や関係者に不安を与えることのないよう対応するよう文科省に求めることで一致。自民の森山裕国対委員長が同省に申し入れた。会談に出席した与党幹部は「延期も仕方ない、という雰囲気だった。いずれにせよ混乱がないようにしてほしい」と語った。首相官邸幹部も「萩生田氏発言で問題が浮き彫りになった。実施を急がないのも一つの考えだ」との見方を示した。
 ただ、自民党の文科相経験者は「準備を進めているから今さら延期はできない」と指摘。世論の動向をにらみつつ、現時点では格差が生じないような準備に努める方針とみられる。
 大学入試に英語の民間試験を導入する新方針は、17年7月に文科省が決定した。対象の試験は「英検」「GTEC」など7種類。高校3年時の4~12月に2回まで受験し、その成績が志望大学に提供される。「練習」で受けられる回数には制限がない。このため家庭の経済力、地域格差による影響が指摘されていた。与党幹部は「法律でなく行政の決定なので、党内で議論していなかった」と議論不足を認める。
 そもそものきっかけは、13年に安倍晋三首相が設置した教育再生実行会議の入試改革の提言を受け、文科相の諮問機関「中央教育審議会」が14年12月に出した答申だ。読む・聞く・書く・話すの4技能をみることが必要として民間試験導入を打ち出した。「教育再生」は政権の肝いり政策で、萩生田氏は首相側近。批判が広がれば政権を直撃する。自民党の世耕弘成参院幹事長は「極めて政策的な問題」と強調し、官邸幹部も「官邸で引き取る話ではない」と、政権運営に直結しないよう予防線を張る。


 これに対して、立憲民主党など野党4党の国対委員長は30日の会談で、既に衆院に提出した試験導入の延期法案の審議を与党に求める方針で一致した。延期要求の街頭運動を全国で始めることも決め、世論を盛り上げたい考えだ。来月5日に予定される衆院文科委の参考人質疑で、試験実施団体からも状況を聴取する方針も確認した。

文部科学省前には「大学入試改悪やめろ」などと書いたプラカードを掲げる市民が集まり、
英語民間試験導入に抗議の声を上げた=東京都千代田区で2019年9月6日、中川聡子撮影

 立憲の安住淳国対委員長は会談後、「萩生田氏がわびて終わる問題ではない。(試験を)延期するか、しないかの問題だ。もし強行するなら、多大な犠牲と多大な傷を我が国の教育に残すことになる」と強調した。【村尾哲、野間口陽】
全国高校長協会は延期・見直しを要望
 英語民間試験を巡っては、9月に、主に公立高校の校長らでつくる全国高校長協会(全高長)が受験生の不安が払拭(ふっしょく)されていないとして延期や制度見直しを求める要望書を文科省に提出した。
 全高長が指摘する懸念はまず、受験開始まで残り半年を切った現時点でも試験会場がはっきりしない点だ。文科省は六つの試験実施団体に対し11月1日までに公表を求めているが、実施団体の中には具体的な施設名でなく、「北海道に5会場」というように都道府県名と会場数だけにとどまるところもあるとみられる。
 受験の申し込みは今後本格化する。ある実施団体の担当者は「受験生の申し込みがあってすべてが動く。受験者数がわからないまま、会場を予約すると、費用が発生する。無料で利用できる提携先の施設だけを公表することになる」と事情を明かす。
所得格差が結果に直結も 高校生は「実験台」と不快感
 受験料の問題もある。現行のセンター試験は1万8000円。新たに導入する大学入学共通テスト(2021年1月)は同額が維持される見通しだが、別途受ける英語民間試験はその都度受験料(5000円台~2万5000円台)がかかる。制度では2回受けられるが、家庭の事情で1回であきらめる受験生も出かねない。試験会場は都市部が多くなるとみられ、離島やへき地の受験生は試験会場が近くになければ交通費や宿泊費がかかる可能性がある。最初の受験生となる、現高校2年のある男子生徒は「実験台にされている感じがする」と不快感をあらわにする。
 文科省は実施団体に低所得世帯の受験料の減免や、へき地の受験生のための会場の増設を求め、来年度予算の概算要求に交通費などを補助する支援策を盛り込んだ。一方、全国の私立中高でつくる日本私立中学高校連合会は全高長の要望書提出後、「生徒は準備を進めている」として「確実な実施」を求める要望書を文科省に提出した。文科省幹部は「延期すればその影響も大きい。できるだけ公平・公正な制度を作って理解を求めるしかない」と話している。【成田有佳、千脇康平、水戸健一】


失言続々、長期政権の緩み?
 党幹部「大したことない」
2019年10月29日:朝日新聞

 安倍政権の閣僚や自民党幹部から問題発言や失言が止まらず、謝罪・撤回が相次いでいる。萩生田光一文部科学相は29日、英語民間試験をめぐる「身の丈」発言を撤回。河野太郎防衛相も「私は雨男。就任後台風が三つ」との発言を謝罪した。野党側は追及の好機ととらえ、勢いづいている。
 29日午前、文部科学省。萩生田氏は閣議後の記者会見で「(身の丈発言が)不安や不快感を与えることになった」と謝罪した。そして「(昨日の会見で)あの発言を撤回したうえで真意を説明したと受け止めていただいて結構」と述べ、発言を撤回した。
 問題発言は24日の報道番組で飛び出した。2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語民間試験について、受験機会に不公平が生じる点を問われ、「自分の身の丈に合わせてがんばってもらえば」などと語った。
 教育格差を容認するような萩生田氏の発言に、受験生や教育関係者からSNSなどで「地方の貧乏人は身の程を知れという姿勢?」「教育担当大臣として、あり得ない発言」と批判が集中。萩生田氏は28日、緊急のぶら下がり取材で謝罪した。
 ただ発言撤回は明言しなかった。批判は収まらず、その翌日、撤回に追い込まれた。萩生田氏は29日の会見で「見下したり切り捨てたりするようなことを念頭に発言したのではない」と改めて釈明。国会で「きちんと真意を説明していきたい」と語った。

「言語道断」野党追及の構え

 その国会では、「敵失」に勢いづいた野党が待ち構える。「言語道断。撤回では済まない」(立憲民主党の安住淳国会対策委員長)と、徹底抗戦の構えをみせる。
 攻防の主舞台は、衆院文部科学委員会だ。審議日程を話し合う29日の同委理事懇談会は紛糾。野党側が「教育格差の是正を目的とする文科省の大臣の姿勢として、ありえない発言だ」と批判を強め、野党が求める参考人質疑を与党は受け入れた。
 野党側は、安倍晋三首相の最側近として知られる萩生田氏を矢面に立たせて政権にダメージを与えるとともに、英語民間試験に世論の逆風が起きるのを狙う。「経済的な状況や居住地域に左右される」として、導入を延期する議員立法を衆院にすでに提出。この日の理事懇後、野党理事の城井崇氏(国民民主党)は記者団にこう強調した。「発言を撤回したからといって姿勢は変わるのか。大臣の辞任と英語民間試験制度の撤回はセットだ」(宮崎亮、矢島大輔、井上昇)

党幹部に危機感なし

 閣僚の辞任や失言が相次ぐ事態に、自民党内からも長期政権による緩みを指摘する声が出始めた。ただ内閣支持率は堅調で、党幹部は政権運営への影響は限定的とみている。
 安倍首相は29日昼、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談。「閣僚の発言で心配をおかけして申し訳ありません。引き締めて真摯(しんし)に取り組んでいきます」と謝罪した。
 安倍政権は9月の内閣改造から1カ月半、不祥事や失言が続く。
 公職選挙法が禁じる寄付疑惑のさなかに菅原一秀経済産業相が辞任し、萩生田文科相は「身の丈」発言で批判を浴びる。28日には河野太郎防衛相が自身の政治資金パーティーで豪雨被害に触れ、「地元で雨男と言われた。防衛大臣になってからすでに台風が三つ」と述べ、29日に謝罪した。
 大臣経験者の一人は「長期政権による『慣れ』が出ている」と指摘する。自身も台風にまつわる失言で釈明を迫られた二階俊博幹事長は29日の会見で「批判の対象になることはできるだけ避ける努力をすることが大事」と戒めた。
 それでも、政権・与党全体で危機感が共有されるまでには至っていない。背景には、堅調な内閣支持率がある。朝日新聞の10月中旬の世論調査では支持率45%。今月25日の菅原経産相辞任後の別の報道機関の調査でも横ばいが続いており、党幹部は「影響はたいしたことない」と漏らす。(石井潤一郎、大久保貴裕)


萩生田氏・身の丈発言
 「本音」が不信増幅させた
2019年10月30日:毎日新聞

 教育行政の理念に関わる問題と捉えねばならない。
 来年度から始まる大学入学共通テストの英語民間検定試験について、萩生田光一文部科学相が「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言し、撤回に追い込まれた。
 検定試験は7種類ある。高校3年時にその中から2回まで受験した成績が志望大学に提供される。それまでに「練習」で受けられる回数に制限はない。試験によっては検定料が高額だったり、会場が都市部に偏ったりする。このため、経済、地域格差が生じると指摘されている。
 発言は民放のテレビ番組で飛び出した。「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるようなことはあるかもしれない」と認めたうえで、「そこは自分の身の丈に合わせて2回を選んで頑張ってもらえれば」と語った。
 問題はまず、新制度が受験生の格差を拡大しかねないことを事実上容認している点だ。
 萩生田氏は「どんな環境下にいる受験生も頑張ってもらいたいという思いだった」と釈明し、「説明不足だった」と謝罪した。だが、撤回では済まない。発言は萩生田氏の本音ではないかという疑念が消えないからだ。
 高校側からは検定試験導入の延期を求める声が上がっている。文科省は検定料軽減などの配慮を検定団体側に求めているが、格差解消の見通しは立っていない。それでも、来月1日には試験で受験生が使うIDの発行申し込みが始まってしまう。
 より深刻なのは、萩生田氏が教育基本法の定める「教育の機会均等」を理解していないことだ。テレビ番組で格差の指摘を受けて「『あいつ、予備校に通っていてずるい』と言うのと同じだ」とも述べた。
 だが、予備校に通うかどうかは主に本人の判断であるのに対し、家庭や居住地を受験生は選べない。そうした事情で検定試験の「練習」ができなければあきらめるしかない。これらの不公平をなくすのが教育行政の役割のはずだ。「身の丈に合わせて」と言うのは開き直りに等しい。
 今回の発言で、新制度への不信感がいっそう広がっている。制度の不備に目をつぶったまま見切り発車してしまうのでは責任の放棄だ。


(社説)英語新入試 身の丈発言が示すもの
2019年10月30日:朝日新聞

 制度が抱える構造的欠陥と、担当閣僚の不見識、無責任ぶりを示す発言と言うほかない。
 来年度から始まる「大学入学共通テスト」に英語の民間試験が導入されることによって、家庭の経済状況や住む地域による不公平が生じるのではないか。報道番組で問われ、萩生田光一文部科学相はこう答えた。
 「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」
 民間試験は英検など7種の中から受験生が自分で選ぶ。入試として受けられるのは2回までと決まっているが、別途、腕試しは何度でも自由にできる。
 受験料(1回約6千~2万5千円)に加えて会場までの交通費、場合によっては宿泊費もかかるため、都市部の裕福な家庭の子とそうでない子とで条件が違い過ぎると、懸念の声があがっている。生徒の側に「受けない」という選択肢はなく、予備校通いと同列に論じられる話でないのは明らかだ。
 入試には貧富や地域による有利不利がつきまとう。その解消に努めるのが国の責務であり、ましてや不平等を助長することはあってはならない。それなのに教育行政トップが「身の丈」を持ちだして不備を正当化したのだ。格差を容認する暴言と批判されたのは当然である。
 萩生田氏はきのう発言を撤回した。だが大臣として急ぎ取り組むべきは、改めて浮き彫りになった新制度の欠陥の是正ではないか。少なくとも受験料負担と試験会場をめぐる不公平の解消を図らねば、受験生や保護者の納得は得られまい。
 民間試験に関しては、異なるテストを受けた者の成績を公平に比較できるかなど、他にも課題は多いが、萩生田氏は今月初め、「初年度は精度向上期間」と述べて物議をかもした。
 改革の方向性は正しいのだから、多少問題があってもやるしかない。氏に限らず今回の入試改革の関係者には、そんな開き直った態度が見え隠れする。
 文科省のまとめでは民間試験を活用する大学・短大は6割にとどまる。中には一部の学部でのみ使う例もあるので、実際の使用率はもっと低い。また、求める得点レベルを極端に下げ、事実上成績不問とする大学も珍しくない。入試で最も大切な公平・公正に対する不安と不信の表れにほかならない。
 改革の目玉である民間試験への懐疑は、共通テスト制度そのものの信頼を揺るがす。矛盾を放置したまま実施を強行し、本番で問題が噴出したらどうなるか。文科省にとどまらない。そのリスクを政府全体で共有し、対策を講じるべきだ。


英語民間試験、政府内に延期論
 土壇場で先行き不透明に
2019年10月31日:朝日新聞

 2020年度から始まる大学入学共通テストで使われる英語の民間試験について、政府内で延期論が出ていることがわかった。ただ、文部科学省では予定通り実施すべきだという考えが根強いことから、延期されるかどうかは依然不透明な情勢だ。
 英語の民間試験活用をめぐっては、萩生田光一文部科学相が24日、BSフジの番組で、「自分の身の丈に合わせてがんばってもらえば」などと発言。教育格差を容認しているなどと批判が集中し、謝罪、撤回に追い込まれた経緯がある。
 こうした中、制度の問題点も改めて注目され、野党が延期を求めているだけでなく、与党の一部からも「延期した方がいい」(自民党幹部)との声があがっている。
 一方、大学や高校、試験団体も実施に向けて準備を進めている。11月1日には、受験に必要な「共通ID」の申し込みも始まり、実際に延期すれば混乱が予想される。今後、政府は生徒らへの影響などを考慮し、対応を慎重に検討するとみられる。
 大学入学共通テストは、主に現在の高校2年生が受験する入試から実施される。英語は民間試験で「読む・聞く・話す・書く」の4技能を評価。7種類の試験が活用される。原則として受験生が高校3年の4~12月に受けた2回までの成績が、国のシステムを通じて出願先の大学に提供され、合否判定などに使われる。


首相の危機を救い文科相に駆け上がった
萩生田氏自身の「身の丈」を探る
2019年10月30日:毎日新聞

衆院文部科学委員会の冒頭、大学入学共通テストで導入される英語民間試験に関する
自身の発言について陳謝し、着席する前に一礼する萩生田光一文部科学相
=国会内で2019年10月30日午前9時1分、川田雅浩撮影

 大学入学共通テストで導入予定の英語民間試験について、萩生田(はぎうだ)光一文部科学相が「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言。格差を容認するかのような表現に、ネット上などでは批判が噴出し、萩生田氏は「説明不足な発言だった。おわび申し上げたい」と陳謝した。安倍晋三首相の側近として知られる萩生田氏とは、どういう人物なのか。【吉田卓矢/統合デジタル取材センター】

面倒みよく人心掌握にたける

 発言があったのは24日のBS番組。大学入試センター試験に代わり2020年度に始まる大学入学共通テストで導入予定の英語民間試験について、金銭的・地理的な条件で不公平が生じるとの懸念に対し、「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と話した。直後から、ネット上では「教育の機会均等を否定する発言だ」などと批判が相次いだ。
 萩生田文科相は、1963年東京都八王子市生まれ。地元の小中から早稲田実業高に進学し、明治大卒。八王子市議時代の同期、萩生田富司・自民八王子総支部長などによると、学生時代から当時八王子市議だった黒須隆一・元八王子市長の秘書となり、27歳の若さで八王子市議に初当選した。富司総支部長は「頭の回転が速かった。若かったので将来、政治の世界で伸びると思った」と振り返る。

加計学園獣医学部新設に関連し、萩生田光一氏の指示について記された関連資料
=東京都千代田区で2017年6月15日、竹内紀臣撮影

 2001年に都議へ転身後、03年に衆院議員に初当選、2期目には自民党青年局長などを務めたが、09年の衆院選で落選。12年の衆院選で返り咲いて現在5期目だ。3期目以降は、党筆頭副幹事長、内閣官房副長官、党幹事長代行などを歴任し、今年9月、第4次安倍再改造内閣で文科相に任命された。
 政界を順調に駆け上がる秘訣(ひけつ)はどこにあるのか。「上から目線の発言が目立ち、野党にも挑発的」(政治ジャーナリスト)との声がある一方で、市議時代を知るある現職市議は「自分が落選した時に、党の違う私を心配する電話をくれた」と話す。萩生田氏には面倒見がよく人心掌握にたけた面があるようだ。

拉致問題通じ安倍氏と交友、支え続ける

 特に、安倍晋三首相の「最側近」と目されている。安倍首相との関係について、萩生田氏は、雑誌「正論」(19年7月号)の中で、「八王子市議の時、拉致問題を通じて縁ができた」としている。ジャーナリストの鈴木哲夫さんによると、「第1次安倍政権後、安倍首相の政治生命はもう終わりだとまで言われた。多くの人が離れる中、萩生田氏と稲田朋美氏の2人は、安倍さんのところに通って励まし、支え続けた」と明かす。第2次安倍内閣の発足後、終戦記念日には、靖国神社に自民党総裁として私費で玉串料を奉納する安倍首相の代理を何度か務めた。保守系雑誌では、たびたび安倍首相を擁護する論文などを寄稿。保守支持層の安倍支持をつなぎ留める役割を果たしたという。ある関係者は「萩生田氏は、安倍首相への近さと保守派の支持を取り付けることで、自分の存在感を出している」と明かす。

衆院文部科学委員会の冒頭、大学入学共通テストで導入される英語民間試験に関する自身の
発言について陳謝する萩生田光一文部科学相=国会内で2019年10月30日午前9時、川田雅浩撮影

「事務所に教育勅語の大きな掛け軸」

 萩生田氏は、「誇りある国づくり」などを掲げる保守団体「日本会議」を支援する日本会議国会議員懇談会のメンバーの一人だ。教育勅語を重んじていることで知られ、前川喜平・元文科事務次官は自身のツイッターで「彼の議員会館の事務所には、教育勅語の大きな掛け軸が掛けてあった」と明らかにしている。大臣就任会見でも教育勅語について問われ、「内容について政府としてコメントするのは差し控えたい」としつつも、個人の意見として「親孝行だとか、友達を大切にするとか、日々の暮らしの中で一つ参考になることもある」と述べた。
 一方、失言は過去にも問題となっている。16年11月、都内のシンポジウムで野党の国会対応について「田舎プロレス。ある意味、茶番だ」などと発言。野党の反発を受けて、発言を撤回・陳謝した。

加計理事長、首相とバーベキューでも「指示ない」

 萩生田氏が、最も注目されたのは「加計学園問題」。安倍首相の友人の加計孝太郎氏が理事長を務める学園が、愛媛県今治市で獣医学部を新設する計画を巡り、首相官邸が何らかの働きかけをしたのではないかとされた問題だ。この問題では、17年に当時官房副長官だった、萩生田氏が文科省幹部とのやり取りを記録したとされる二つの文書「萩生田副長官ご発言概要」が見つかった。文書の中では、萩生田氏が、安倍首相の指示で文科省に対し、獣医学部の早期開学に向けた手続きを進めるよう迫っていたと読み取れる発言があり、連日、野党やマスコミが追及した。
 こうした問題について、萩生田氏は「首相からの指示も、文科省への指示もない」と否定。ただ、13年の萩生田氏のフェイスブックには、バーベキューをしている安倍首相と萩生田氏、加計理事長の3人が親しそうに談笑する写真が掲載されており、関係の深さをうかがせた。

「ブラックジョーク」と批判ある文科相就任

 そんな萩生田氏が、文科行政のトップに就任した。政治アナリストの伊藤惇夫さんは「加計問題の渦中の人が文科大臣になるなんて、ブラックジョークかと思った」と振り返る。その上で、今回の発言については、発言自体が格差を前提としたものであること▽文科相という立場での発言であること▽制度が変わる節目で受験生らが神経質になっている時期の発言だったこと――から、「『言って良いこと・悪いこと 言って良い人・悪い人 言って良い時・悪い時』という故田中角栄元首相の名言があるが、このすべてに反しているありえない発言だ。受験生全員に影響を与える問題だけに、安倍首相の任命責任が問われる」と批判した。


熱血!与良政談
慣れっこになる怖さ=与良正男
2019年10月30日:毎日新聞

安倍晋三首相=首相官邸で、川田雅浩撮影

 もしかすると安倍晋三首相は「任命責任は私にある」と言いさえすれば、責任を取ったことになると勘違いしているのではないか。本気でそう思えてくる。
 第2次安倍政権発足以降、閣僚の辞任は先週、経済産業相を辞めた菅原一秀氏で9人目。その都度、首相は任命責任を口にするが、後の人事に反省が生かされたようにはとても見えない。
 しかも、菅原氏は有権者に金品を配った疑惑を認めたわけではない。辞任の理由に挙げたのは国会審議や行政の停滞である。これもいつもながらのパターンだ。
 首相は任命者として、せめて菅原氏にいったん約束した国会での説明を尽くすよう命じるべきだと思うが、それもしない。こうして疑惑はうやむやになっていく。
 心配するのは、こんな大失態も国民は「またか」と慣れっこになって怒りもわいてこなくなっているのではないかということだ。
 実際、菅原氏の辞任後に実施した毎日新聞世論調査では安倍内閣の支持率は前月からほぼ横ばいだった。支持する理由で群を抜いて多いのは「他に良い人や政党がない」で、この傾向も変わらない。
 安倍首相はさぞほっとしていることだろう。しかし、「他にいないから……」という閉塞(へいそく)状況こそ深刻なのだと私は思う。
 閣僚の言葉は軽くなる一方だ。野党議員が政府に事前通告した国会質問の内容が外部に流出したとされる問題では、所管の北村誠吾地方創生担当相が「(事実なら)責任を取る」と国会で答弁した。ところがその後「一般論として必要な対応を取るとの趣旨」とあっさり修正する始末だ。
 大学入学共通テストに導入される英語の民間試験は、家庭の収入や住んでいる地域により不公平が生じる懸念がある。この指摘に対し、萩生田光一文部科学相は「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と語った。
 批判を受け結局撤回したが、実は格差の容認は本音ではないかと感じたのは私だけではないだろう。こうした、あまりにも思慮に欠ける発言も日常茶飯だ。
 もちろん最も慣れっこになってはいけないのは私たち新聞やテレビだ。ただし、その時々の世論調査は政権に警告を与える効果は間違いなくある。仮に内閣支持率が5ポイント程度でも下がれば、首相もあわてて、少しは反省してもらえるはずだ。(専門編集委員)


菅原経産相辞任 疑惑渦中でも 寄付 なぜ?
「義理堅い」ととらえる有権者も
苦しい釈明「『金品』は現金だと」
2019年10月26日:東京新聞・こちら特報部
秘書が支援者の通夜で香典を渡したとする週刊文春報道で辞任に追い込まれた菅原一秀経済産業相。有権者にカニやメロンを渡した疑惑が国会で追及されている最中に、公職選挙法違反の「寄付」と疑われる行為をしていたことが、世間を唖然とさせた。評をカネで買っているとも取られかねないのに、政治家の同様の疑惑は近年も繰り返されている。そうまでして、なぜ「寄付」をするのか。
(石井紀代美、榊原崇仁)

 「秘書が香典を出した。そのことをよく確認せず、翌日、私も香典を持っていった。遺族から『二つ届いている』ということで、一つ戻って来た」
 25日に経産相を辞任した菅原氏。直後の記者会見で、こわばった表情のまま、疑惑を持たれている香典について説明した。
 早稲田大卒業後、大手商社「日商岩井」(現・双日)へ入社。東京都練馬区議、都議を経て、2003年の衆院選で初当選し、現在6期目だ。菅義偉官房長官の「側近中の側近」と言われ、9月の内閣改造では安倍晋三首相の政権運営の中核を担う経産相に起用された。
 そんな華やかな経歴を一転させたのが、10日発売の週刊文春。地元・練馬の有権者に高級メロンやカニ、イクラなどを贈っていた行為が、公選法で禁じられる「寄付」に当たる恐れがあると報じた。
 野党は10日の国会で疑惑を追及。「有権者に金品を渡したことはないか」と問われた菅原氏は「そのようなことはございません」ときっぱり否定した。
 だが、15日に野党議員から「イクラ、すじこ、メロン。これだけ大量に配っていたなら、覚えていないはずがない」「金品を渡したことがないと断定的に言っていたが、配った記憶はありませんか」と問い詰められると、「金品と言えば、通常は現金のことだと思って、それはありませんと答えました」と苦しい釈明に追われた。
 24日発売の週刊文春によると、17日夜、地元有権者の通夜で秘書が香典を渡した。2006~07年とされるカニやメロンの贈与と違い、ほんの1週間前の公選法違反の可能性が報じられた。
 元検事の若狭勝弁護士は「政治家本人だろうが、本人から頼まれた人だろうが、寄付はダメというのが公選法の基本スタンス。ただ、議員も葬儀に出席するとき、手ぶらで行くわけにもいかないから、例外的に許されている」と説明する。つまり秘書はだめということ。複数人で同時並行的に葬儀で香典を出すことが、票の買収につながりかねないからだ。
 それにしても、なぜ、疑惑がもたれている最中に「寄付」と取られかねない香典を渡したのか。練馬区議で「オンブズマン練馬」代表の土屋俊測氏は「そういう意味では練馬はまだ田舎で、香典は当たり前という雰囲気がある。悪いことと考えず、『義理堅い』と捉える人も多い」と話す。
 土屋氏は「いつかこうなるとは思っていた。昔からカニやメロンの話はあった。有権者の自宅に産地直送された、とか」と振り返る。菅原氏は同じ大学の後輩に当たり、見かけるたびに「クリーンにしなさいよ」と言ってきたが、聞く耳を持たなかったという。
 今後、事件に発展する可能性はあるのか、若狭氏は「秘書が香典を渡す姿が写真にもばっちり撮られており、事実は明らか。誰かが告発すれば、刑事事件として捜査することになるだろう」とみる。

うちわ、ワイン…後絶たず 議員辞職・書類送検も
自民体質 議員は「殿」 秘書は言いなり
自信なく焦り 安心感求めやめられず

 政治家が関わる「寄付」が問題になるケースは後を絶たない。
 例えば小野寺五典元防衛相。初当選から間もない1999年に有権者に線香セットを配ったとして書類送検され、翌年に議員辞職した。その後に罰金40万円、公民権停止3年の略式命令も受けている。
 近年で言えば、2014年に閣僚を辞任した松島みどり法相と小渕優子総務相(以下、大臣の肩書は当時)が記憶に新しい。松島氏は名前入りのうちわを盆踊り会場などで配布。小渕氏の場合は地元事務所関係者がワインを贈ったとされる。
 15年にカレンダー配布が報じられたのは、島尻安伊子沖縄北方担当相。高木敦復興担当相も同年、自身が代表の自民党支部などが選挙区内の葬儀に香典などを支払ったと政治資金収支報告書に記載していたと伝えられた。昨年は茂木敏允経済再生担当相が政党支部を通じ、地元の有権者に線香や衆院手帳を無償配布したと認めた。希望の塔の玉置雄一郎代表(現国民民主党代表)は同時期、支援者の葬儀に秘書らが香典を持参したと認めた一方、政党支部の活動で違法性はないと釈明した。
 地方政治では、茨城県かすみがうら市長だった宮島光昭氏が11年に香典などを、東京都議に就いていた内田茂氏が13年にビール券を配ったとして書類送検された。15年には府中市議だった備邦彦氏が地元の祭りの際に現金を寄付したとして有罪判決を受けた後、失職した。
 政治家はなぜ、こうした「寄付」に頼るのか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「メロンだけで票が集まることはないだろう。狙いは政治家自身が安心感を得るためだ」とみる。
 「国会での活動や支持固めに自信が持てないと、有権者とのつながりを強めなきゃいけないと焦る。そんな中でやろうとするのが寄付。金品をもらった有権者の中には「あの人は頑張ている」と褒める人もいる。それが政治家を安心させる」
 さらに「金品を渡した方も受けとった方も『お互い、分かっているいるよね』『同じ穴のムジナだね』といびつな絆が生まれやすい」という事情もあるという。「東京などの都市部は人と人とのつながりが実感しにくく、政治家は不安を抱きがち。寄付に向かう下地がある」
 政治家を支える事務所にも問題はないのか。
 ある国会議員の現役秘書は取材に「きちんとした議員事務所なら番頭格の古参秘書がいて、どんな行動が問題になり得るか議員に伝える。ただ議員自身の資質が疑わしいと、良い助言をしてくれる秘書が働きに来てくれない」と打ち明ける。「自民党は『議員がお殿様』という体質があり、議員の独断が通りがち。秘書の方も議員を目指す人が多く、『あわよくば後釜を』と狙っているとイエスマンになる」
 千葉商科大の田中信一郎准教授(政治学)は、今も「寄付」の歯止めがきかない背景に「自民党の政治文化がある」と断じる。
 「自民の候補が何人も出て金品合戦になったのが衆院の中選挙区時代だった。それを改める目的で小選挙区制にしたのに、金品合戦は今もある。国政で多数派を占めてきた自民党が本気で改める気がないからだ」
 田中氏は、自民支持層の業界団体などは自らの利益になることに甘く、「政治とカネ」に厳しく取り組めば集票に支障が出かねないため、カネと決別できないと指摘する。
 「不適切な寄付は国会議員としての問題なのに議員辞職は求めず、閣僚の辞任だけで済ませてきた。厳し処分がなければ抑止効果にならない。菅原氏のケースがまさにそう。議員辞職しないのはおかしい」

デスクメモ
 小判や金塊を受け取っていた関西電力の問題が時代劇みたいと話題になったが、こちらのカニやメロン、イクラも相当時代がかっている。大都会の東京だが、正解には古いものが残っているのか。しかも、こちらは公費を使い、立法を担う公職者。有権者が監視するしかない。           (本)


高校の国語 文学に親しむ機会失わせるな
2019年10月30日:読売新聞

 2022年度から始まる高校の新学習指導要領の国語が、波紋を広げている。科目の再編で、文学作品に触れる機会が減るのではないかとの懸念が出ているためだ。
 現在の高校生は、1年生で必修科目の「国語総合」を学び、2~3年生で選択科目の「現代文」と「古典」を履修するのが一般的だ。夏目漱石や森鴎外などの文学作品は主に現代文で扱う。
 新指導要領では、「現代文」が実用的文章を学ぶ「論理国語」と、文学を題材にする「文学国語」に分かれる。論理国語の方を選択し、近現代の文学を素通りする高校生が出ることを、日本文芸家協会などが心配するのは無理もない。
 論理国語が設けられた背景には、高校生の読解力が低下し、リポートなどを書く力も乏しいという現状がある。評論文を読みこなし、筋道の通った文章を作成する能力を育むことは必要だろう。
 ただ、こうした力だけが豊かな国語力を形作るものではない。
 価値観や思考のベースを、文学作品から学ぶことは多い。感受性豊かな高校生の時期に、様々な人間の生き方が凝縮された文学に接する意義は大きい。
 高校生の半数近くが、電子書籍も含めて月に1冊も本を読まなかったという調査結果もある。国語の授業は、高校生が本を読むきっかけになるかもしれない。
 あたかも、「論理か文学か」という選択を学校現場が迫られるような指導要領の科目再編は適切だったのか、疑問が拭えない。
 大切なのは、実践的な言語能力と、幅広い教養をバランス良く身につけさせることである。
 指導要領に定められた選択科目の標準授業時間数は、教育委員会などの裁量で増減が可能だ。例えば、論理国語の時間を減らし、その分を文学国語に振り向けるといった対応もできる。
 学校が柔軟なカリキュラムを組めるよう、教委は弾力的な編成基準を示してほしい。
 大学の入試では、文学作品が出題されることは少なくなっている。近現代の文学は多様な解釈が可能で、模範解答を作るのが難しいといった理由からだという。
 入試に出ない分野の勉強は、敬遠されがちだ。だが、文学を通じて、人の気持ちを理解する力を高めれば、長い人生のどこかで役立つ場面は来るだろう。将来を見据えた教育が求められる。
 高校では、文学の魅力を生徒たちが主体的に感じ取れるような授業を工夫してもらいたい。

コメント

非公開コメント