国民疎外のABE的徳仁即位式

今日(10月22日)は、徳仁天皇が高御座から、即位を闡明し、臣民を代表して安倍晋三が高御座の下で万歳をするという、憲法違反の即位儀式が行われる。
メディアも主権者国民の多くも、この国民に対して不遜な儀式に疑問を持たないようだ。
ささやかな反対集会やデモが予定されていて、ボクも参加する予定だ。


金言 愛国心の相対化=西川恵
2019年10月18日:毎日新聞

<kin-gon>
 ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会が準々決勝に入る。外国出身選手も日本代表として参加できるラグビーのシステムは、「共同体に生きる者同士の連帯」という、従来の日本社会では薄かった意識を育んでいるように思う。
 最近の酒席はラグビーの話で盛り上がる。友人が、知人の感想として「日本人だけのチームでないから応援に力が入らない」という話を披露してくれた。ネットで見ると、確かに31人の代表選手の約半数が外国出身者であることに否定的な意見がある。
 しかし私は肯定的だ。日本人と外国出身者が連携協力してゴールを目指す面白さ、そして人種に関係なく日本という共同体で生きる者同士が力を合わせて連帯の精神をたぎらせる格好良さだ。試合前に「君が代」を一緒に歌っている姿を見ると、いい意味で「愛国心(ナショナリズム)の相対化」という言葉が浮かんでくる。
 日本人は世界の中でも国籍や民族の純粋性へのこだわりが強い国民だ。「日本人は単一民族」信仰は長らく続いたし、島国のおかげで独自の文化を築いたという話が、かつて真面目に議論された。
 外国出身者が半分を占めることの不満には、この日本人の心性が揺さぶられたこともあるだろう。ラグビーで国籍は二義的だ。「出生地が日本」「両親および祖父母のうち1人が日本出身」に加え、「日本で3年以上、継続して居住」の条件を満たせば日本代表になれる。
 「でも結局は野球の外国人選手の助っ人と同じではないか」との意見があるが、正しくない。外国でかつて代表になった選手は日本代表にはなれない。強力だからといってスカウトはできないのだ。いま日本代表にいる外国出身者の多くは、日本の中で自ら鍛えて代表になったか、W杯参加に向けて日本に懸けた人のいずれかだ。
 五輪に見られるように、スポーツは一見愛国心をかきたてるが、大きく見渡してみればむしろ逆で、愛国心を相対化する方向に作用している。サッカーW杯の時もそう感じた。日本人選手たちは日本の名誉のために戦っているが、欧州の所属チームに戻れば、戦った相手は同僚であり、好敵手である。そこでは国籍といった属性は二義的で、愛国心は相対化される。
 米欧ではナショナリズムを背景とした極右政党の台頭やポピュリズムがにぎにぎしい。グローバリズムへの危機感の反動だろうが、一方で核拡散や地球温暖化などに伴い地球市民意識も静かに浸透している。愛国主義の相対化もこの流れにあると、日本代表の活躍を見ながら思う。(客員編集委員)


即位の礼パレード延期、被災者配慮
 11月10日で調整
2019年10月17日:朝日新聞

 政府は、天皇陛下の即位に伴う22日の祝賀パレード「祝賀御列(おんれつ)の儀」を延期する。台風19号で東日本の広い地域で被害が出ており、被災者に配慮した。政府関係者によると、11月10日の開催で調整している。
 祝賀御列の儀は、憲法で定める天皇の国事行為として22日に行うことが閣議決定されており、18日に閣議決定をやり直す。
 安倍晋三首相は17日、視察先の宮城県で記者団に問われ、「今回被災状況を踏まえて延期する方向で検討している」と話した。菅義偉官房長官は17日午後の記者会見で「諸般の状況を総合的に勘案」したと語った。
 パレードは、天皇陛下が即位を国内外に宣言する22日の「即位礼正殿(せいでん)の儀」の後、同日午後3時半からを予定。オープンカーで皇居を出て、赤坂御所までの約4・6キロの道のりを約30分で進む計画だった。
 11月14、15日には代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」の中核行事「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」が控えており、その前の休日にあたる10日を新たなパレードの開催日とする。道のりは変更しないが、寒さ対策で開始時間は早めることも検討する。
 一方、即位礼正殿の儀と、10月22~31日に4日間に分けて行う祝宴「饗宴(きょうえん)の儀」、23日の首相夫妻主催の晩餐(ばんさん)会は、予定通りとする。海外の首脳らを招待しており、変更は難しいと判断したとみられる。22日は今年限りの祝日と、祝日法で定めており、パレード延期に伴う変更はない。
 皇室の慶事は、災害の被害の影響で過去にも延期されている。昭和天皇は皇太子時代の1923年、関東大震災発生を受けて香淳皇后との結婚を翌年に延期した。04年に婚約内定した上皇ご夫妻の長女の黒田清子さん(紀宮さま)は、同年10月の新潟県中越地震で内定発表が約1カ月半近く延期され、さらに高松宮妃喜久子さまの逝去で再延期された。(松山尚幹)


被災者「仕方ないかも」
宮内庁「お気持ちを酌んだのでは」
即位パレード延期
2019年10月17日:毎日新聞

 天皇陛下の即位に伴って22日に予定されていたパレード「祝賀御列の儀」が11月に延期されることになった。台風19号による甚大な被害に直面している被災者は複雑な心境で政府の判断を受け止め、宮内庁や警視庁はスケジュールの見直し作業に入った。
 1階が浸水した自宅の片付けに追われる宮城県丸森町小斎の無職、郡司孝子さん(88)はパレードの延期について「国の象徴として早く盛大にやってほしいとは思うが、被災者としては複雑な気持ち。本当の気持ちで祝えるかと言われれば難しいかもしれず、延期判断は仕方ないかもしれない」と打ち明けた。高齢の夫婦だけでは作業には限界があり、ボランティアの応援を待っている。「被災者の多くは毎日が本当に大変で、一刻も早い復旧を一番に願っている」と話した。
 全域が断水し復旧作業が続く福島県相馬市の男性(49)は「政府が、パレードを延期して被災地対応を優先してくれるのはありがたい。全力を傾けてほしい。我々も頑張りたい」と話した。
 一方、儀式の準備を進めてきた宮内庁のある幹部は「突然でびっくりした」と漏らした。同庁の西村泰彦次長は15日の記者会見で、天皇、皇后両陛下が大雨被害についてお見舞いと哀悼の気持ちを持っていることを明らかにしていた。別の幹部は「延期を決定するのは政府だが、両陛下のお気持ちも酌んだのでは」と推測。パレードで使われるオープンカーの担当部署の職員は「万全な状況で臨めるよう、引き続き準備を粛々と進めるだけだ」と気を引き締めた。
 過去最大規模の警備態勢を敷く予定の警視庁幹部は「多数来日する要人の警護や、即位礼正殿の儀が行われる皇居周辺などの警戒が必要なことは変わらない」と淡々と受け止めた。同庁は全国から大規模な特別派遣部隊を受け入れる方針だったが、台風被害を受けた地域は派遣が難しいとみられ、別の幹部は「部隊配置の調整も必要になる」と話した。【井川諒太郎、高橋秀郎、和田武士】


10月22日は今年限りの祝日
 国旗を掲揚してお祝いしませんか
2019年10月14日:夕刊フジ・PR

 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日は今年限りの祝日になります。御代替わりを機に、祝日に国旗を掲揚してみませんか。産経ネットショップではさまざまな種類の国旗を販売中。10月14日までの注文で21日までにお届けできます。<産経ネットショップ>
 2019年は国旗を掲揚したり、目にしたりする機会が増えます。5月に天皇陛下がご即位されて平成から令和に元号が代わり、9~10月はラグビーのワールドカップが開催。さらに、10月22日は天皇陛下のご即位を公に宣明される「即位礼正殿の儀」のほか、天皇皇后両陛下のパレードも行われます。その後も11月9日に超党派の国会議員が「国民祭典」を開催する予定です。
 産経ネットショップでは、玄関ホールや応接間などでの掲揚に最適な高級セットから、マンションの玄関にも設置できるタイプ、スポーツ観戦用、さらに手旗用100本セットなど、さまざまな用途に合わせた国旗を販売しています。
 一番人気が高いのは、強力マグネットで玄関などに取り付けられるマンション設置用セット。「大」は50センチ×75センチ、ポール80センチ、金色玉付き、「中」は25センチ×37.5センチ、ポール47センチ、金色玉付き、「小」は16センチ×24センチ、ポール35センチで卓上用スタンドも付属します。
 フォーマルな場所に最適なのが、「日本国旗 高級三脚セット」(70センチ×105センチ、ポール200センチ)。スポーツの日本代表チームの応援にぴったりなのが、1枚タイプの国旗(70センチ×105センチ)。大勢でパレードやスポーツの応援に出かけるときには手旗用国旗100本セット(紙製、26センチ×34.5センチ)がおすすめ。1本当たり43円とお手頃価格です。


衛藤沖北相が靖国参拝、閣僚は2年半ぶり
2019年10月17日:産経新聞

 衛藤晟一沖縄北方担当相は17日、東京・九段北の靖国神社を秋季例大祭に合わせて参拝した。閣僚の参拝が確認されたのは約2年半ぶり。衛藤氏は産経新聞の取材に「国民の幸せと平和をお祈りするために参拝した。国のために尊い命を犠牲にされた方をお参りするのはどこの国でも当然のことだ」と語った。


【主張】
愛知の企画展閉幕 朝日はヘイトを許すのか
2019年10月18日:産経新聞

 ヘイト(憎悪)表現が罷(まか)り通った愛知の企画展が終わった。
 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」である。問題のある作品が展示されたのは異様だった。
 昭和天皇の写真を何度も燃やし、最後にその灰を土足で踏みにじる動画がそうである。昭和天皇とみられる人物の顔が剥落した銅版画の題は「焼かれるべき絵」で、解説には戦争責任を「日本人一般に広げる意味合いがある」とあった。
 韓国が日本非難に用いる、「慰安婦像」として知られる少女像も並んだ。英文の解説には、史実でない「性奴隷制」とあった。
 「時代の肖像-絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳-」という作品は、出征兵士への寄せ書きのある日の丸が貼り付けられていた。作品名の英文などを直訳すれば「馬鹿な(間抜けな)日本趣味の円(まる)い墓」だ。
 「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」である天皇や日本人へのヘイト表現といえる。だから多くの人々があきれ、憤った。
 一方で、憲法が第21条で保障する「表現の自由」を守れという主張があった。だがヘイト表現は、国民は自由と権利を濫用(らんよう)してはならず、「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とする憲法第12条と両立しない。
 朝日新聞は16日付社説で「『日本へのヘイト』との批判」を「あきれる話だ」と難じた。ヘイト行為に目をつむる朝日の主張には心底あきれる。社説は「規制すべきヘイト行為」は「社会全体で議論を重ね、定義づけ、一線を引いてきた」とし、「それに当たらない作品をヘイトと指弾する」のは「暴論でしかない」とした。
 どこに一線を引くかこの社説は語っていない。平成28年成立のヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法に依拠するつもりなら乱暴な話で説得力はない。同法は、日本以外の出身者やその子孫への不当な差別的言動の解消を目指している。その解消自体は当然としても、同法には日本人を守るべき対象としていない大きな欠陥がある。
 そもそも法律以前の話でもある。左右どちらの陣営であれ、誰が対象であれ、ヘイト行為は「表現の自由」に含まれず、許されない。この当然の常識を弁(わきま)えず、天皇や日本人へのヘイト行為を認める二重基準は認められない。


「即位礼」厳戒、ドローンなど新たな脅威
 全国から警護担当の応援
2019年10月20日:産経新聞

 「即位の礼」の中心儀式「即位礼正殿(せいでん)の儀」などが皇居で行われる22日、警視庁は厳戒態勢で臨む。正殿の儀には多数の海外要人の参列が見込まれ、対応強化のために初めて全国の警察から警護担当の派遣を受けた。多数の要員を必要とするパレード「祝賀御列(おんれつ)の儀」は延期されたものの、皇室に反対する勢力など懸念材料はあり、警戒度は依然高い。

 海外からの参列者数は17日現在で、170を超える国や機関の首脳ら約400人の見込み。海外要人は自国内の情勢不安などで日本でも襲撃対象になる危険があるため、空港や宿泊先、皇居への移動などで密着する警護担当には専門性が求められる。

 警護対象が多数に上るため、警察当局は全国から応援要員を集める必要があると判断し、事前に国内トップの経験値を誇る警視庁警護課員を指導役として各地に派遣して人材育成を進めてきた。応援要員は東京都内に到着しており、移動が想定されるルートでリハーサルを実施している。

 皇居や各国大使館、主要駅などの周辺で警戒に当たる警備にも全国の機動隊員らが入る。関係者によると、台風19号の被害県の警察は災害対応を優先し、招集されない見込み。天皇、皇后両陛下がオープンカーで移動される「祝賀御列の儀」が延期になり、沿道警備を担う予定だった警視庁の機動隊ら約6千人の配置変更などで対応するとみられ、「態勢は十分確保できる」(同庁関係者)。

 上皇さまのご即位に伴う正殿の儀があった平成2年当時は、極左暴力集団によるゲリラが続発。警察当局によると、年間で143件に上り、正殿の儀当日だけでも、皇居に向けて迫撃弾が撃たれるなど都内で34件が発生した。

 この年で最多の124件に関与したとされる過激派「中核派」によるゲリラは15年を最後に起きていない。だが、警視庁公安部などは今年1月、同派が製造したとみられる飛翔(ひしょう)弾8発を埼玉県内の倉庫から押収。同庁幹部は「ほかにも殺傷能力を持つ飛翔弾を多数隠し持っている」との見方を示す。

 関係者によると、正殿の儀当日は同派や、ほかの皇室反対の団体がそれぞれ都心部でデモを予定。2年当時はみられなかったドローン(小型無人機)や車両突入によるテロといったリスク要素もあり、同庁は対処部隊や資機材を配置するなどして警戒にあたる。


即位の儀式 象徴天皇にふさわしく
2019年10月21日:東京新聞

 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」が皇居で二十二日に行われる。皇位継承に伴う重要儀式と位置付けられるが、「憲法にそぐわない」との声も。伝統儀式であれ、憲法との整合性に配慮が求められる。
 昭和天皇の即位礼は一九二八年に京都御所内の紫宸(ししん)殿で行われた。旧皇室典範第一一条に「即位ノ礼及大嘗(だいじょう)祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ」との規定があったためだ。昭和天皇は高御座(たかみくら)から即位を宣明し、当時の田中義一首相は庭に立って、「万歳」を唱えた。
 むろん明治憲法の下である。では、国民主権となった日本国憲法下ではどうか。四七年には皇室典範も改正され、第二四条で「皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う」と定めた。そのため九〇年の上皇さまの即位礼は東京の皇居宮殿で行われた。
 当時の海部俊樹首相は宮殿「松の間」の床上で「万歳」を唱えている。天皇が高御座から首相ら三権の長を見下ろす形で即位を宣言する形式は、国民主権に反するとの指摘があり、「庭」から「床」へと上がった経緯がある。
 西欧の戴冠式に相当する儀式で、自らの即位を国内外に宣明する意味があるといえども、憲法と天皇の関係がきちんと捉えられないと、国民に誤解を与えかねない。その注意は必要である。
 そもそも天皇の存在は、憲法で「日本国民の総意に基づく」と根拠を示している。天照大神の天孫降臨の神勅による古い時代の天皇とは、根本的に異なる。だが、即位礼は神話に由来する玉座「高御座」から即位を宣言する形式を採る。「憲法の国民主権、政教分離の原則と両立しない」とする声も出てくるゆえんだ。
 「万歳」の光景も単なる祝福の意ばかりなのか。戦前回帰と受け止められないよう細心の気遣いを要する。来月の大嘗祭も神道形式で行われる宗教色の濃い儀式であり、政教分離原則との整合性に疑義が示されている。
 皇位継承という伝統の重さは十分に理解する。それでも天皇と神道との接近、あるいは天皇の権威を高める効果がないかも考慮すべきだ。象徴天皇制にふさわしくありたい。
 上皇さまは戦争の慰霊、災害での被災者への祈りに各地を旅で回られた。今回、台風被害により、即位礼当日のパレードは延期されたが、被害の深刻さを考えれば、祝賀一色にもなれまい。祈りで被災者に寄り添う象徴天皇のいとなみが継続されることを望む。


神器、首相の万歳…
前例を次々踏襲 あす即位礼正殿の儀
2019年10月21日:朝日新聞

 天皇陛下が内外に即位を宣言する国の行事「即位礼正殿の儀」が22日に行われる。平成の代替わり時、宗教色を指摘される高御座(たかみくら)や剣璽(けんじ)が使われることが、憲法が定める国民主権や政教分離の原則に反するなどと議論になったが、今回、政府は早々に「前例」踏襲を決めた。だが、そもそも「前例」とはどういうものなのか。残された課題や問題点を整理した。
 「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う」。皇室の決まりを定めた皇室典範には、こう記されているだけだ。儀式の細目を定めた旧登極令が戦後廃止され、それに代わる規定がなかったため、昭和から平成への代替わり時は同令にならった。
 だが、この規定は天皇主権国家となった明治末期につくられた。高御座に置かれる剣と璽(じ)は、鏡も合わせて「三種の神器」と呼ばれ、日本書紀や古事記の天孫降臨の神話に結びついている。戦前の旧典範には皇位継承の際に「神器を承く」と明記されていたが、宗教色があるとして戦後の典範からは削除された。高御座も、天孫降臨の神話を具象化したものと言われる。
 天皇主権下の規定をもとに、前回、初めて新憲法下での即位礼正殿の儀(1990年11月)の細目が検討された。そこには、憲法への抵触を避けるために様々な苦心の跡がみられた。
 ▽高御座に剣や璽(まがたま)とともに、公務に使う天皇と国の印(御璽(ぎょじ)と国璽(こくじ))を置いた。政府は、剣璽について皇室経済法で規定されている「皇位とともに伝わる由緒物」として、国事行為に使うことは問題ないとの立場だ。その一方で「少しでも儀式の宗教色を薄めたい」(当時の内閣法制局幹部)との狙いがあった。
 ▽首相が立つ位置を、天皇陛下が上る高御座と同じ宮殿松の間にした。先例にならい、首相は部屋から庭に降りて万歳することを求める声があったが、「戦前と違う国民主権の民主主義国家であることを示そうと努力した」(当時の海部俊樹元首相)。
 ▽首相の万歳発声は「天皇陛下、万歳」の前に「ご即位を祝して」との一節を加えた。戦時中の記憶を想起させるとの指摘もあり、万歳の趣旨を限定した。
 ▽宮殿中庭の旗類から、八咫(やた)烏(がらす)など神武神話に基づくものは外した。
 即位礼正殿の儀に先立って行われた昭和天皇の葬儀(89年2月)でも、検討が進められた。宗教色のある皇室行事「葬場殿の儀」と、国の儀式である「大喪の礼」に切り分けたが、連続して行われるため、葬場殿の儀にも鳥居を建てるわけにはいかない。当初はその方針だったが、自民党保守派らの反発が強かった。そこで思いついたのが、いったん葬場殿の儀で建てた鳥居を大喪の礼の前に取り外すために、鳥居に滑車を付けるという作戦だった。
 こうして一連の代替わり行事が行われたが、政教分離や国民主権の規定をめぐって疑念は残り、即位の礼・大嘗祭(だいじょうさい)への公費支出差し止めを求める違憲訴訟が相次いだ。大阪高裁は95年3月、請求自体は退けたが、剣璽や高御座について「宗教的な要素を払拭(ふっしょく)していない」「政教分離規定に違反するのではないかとの疑いを一概に否定できない」と指摘。天皇が主権者代表の首相を見下ろす位置に立つことには「現憲法の趣旨にふさわしくない点がなお存在することも否定できない」と述べた。即位の礼自体についての最高裁の憲法判断は示されていない。
 これが、「前例」の実態だ。ほぼ戦前にならった皇位継承の形が、象徴天皇にふさわしいのか。憲法との整合性で苦心した当時の政府関係者は「本来なら、戦後の早い時期から国会で議論して細則を作るべきだった」と振り返った。
 そして、今回。皇位継承を実現する退位特例法の成立(2017年6月)後も検討する時間があったのに、政府の式典準備委員会は、3回合わせて1時間余りの会合で「前例」踏襲を決めた。
 皇室研究者の高森明勅さんは指摘する。「登極令に代わる規定を作らなかったのは、政治の怠慢だ。今後を見据え、皇位継承や退位とともに代替わりの儀式についても国会で議論し、憲法にふさわしい規定を定めるべきだ」(喜園尚史)


知的な父が晩年ネトウヨに
 喪失感・孤独が「嫌韓」に?
2019年10月20日:朝日新聞

 日韓関係が泥沼化するなか、ネットやテレビ、雑誌などでは嫌韓論が広がっている。事実に基づかず、隣国を面白おかしく叩(たた)くような現象は、なぜ生まれているのだろうか。
父のPCはネトウヨサイトだらけ 鈴木大介さん
 今春、がんのため77歳で亡くなった父は晩年、ネット右翼的な言動が著しく増えました。韓国や中国への批判や女性を軽視した発言が多く、韓流ドラマは「くだらない」。僕の取材テーマだった若者の貧困については、「自己責任だ」と眉を寄せました。
 末期には、ベッド脇のパソコンから流れるユーチューブのテキスト動画の音声を延々と聞いていました。デスクトップには「嫌韓嫌中」というフォルダーがあり、ブックマークは右寄りニュースのまとめサイトで埋まっていました。

すずき・だいすけ 1973年生まれ。著書に「最貧困女子」、脳梗塞(こうそく)の体験を書いた「脳が壊れた」「脳は回復する」。

 名門とされる大学の出身で企業戦士だった父は、ノンポリでしたが、知的好奇心にあふれていました。在職中は同年代との交友関係が薄かった父ですが、62歳で退職すると地域活動や大学の同窓会に熱心に参加し、同世代の友人がたくさんできたようです。その頃から、言葉の端々に右翼的な物言いが増え、枕元に右派の雑誌が置かれるようになったように思います。
 父の世代は、典型的な高度成長期のサラリーマンです。父もまた、トイレや炊事場が共同だったアパートで新婚時代を過ごし、がむしゃらに働いて一軒家を建てました。
 隣人愛に満ち、働けば報われた素朴な社会。父には古き良き時代の日本はどこにいったのか、という喪失感があったように思います。世論調査では、年齢が高くなると嫌韓派が増す傾向があるといいます。ネトウヨの排外主義的言説に色濃く含まれる「古き良き日本は失われたのではなく、何者かに奪われた」という論調に、父の世代は救いを求めたのかもしれません。
 一方で父の発言には憲法9条改正や核武装が必要といったオピニオンはありませんでした。靖国神社にも行かず、祝日に日の丸を掲げることもありません。父や周囲の同世代男性にとってネトウヨ的言説は酒の肴(さかな)的な共通言語であり娯楽だったのでしょう。
 父の友人たちは高学歴でネットにも詳しい。ネトウヨ言説は新奇に富み、真偽は別にしても「ネタ」として盛り上がります。ネットを使わない友人も、テレビのワイドショーを見て「そういえば、あいつが話していたことだ」と納得するのかもしれません。
 「嫌韓ビジネス」にとって、高齢者以上の上客はいません。出版社は生き残りをかけて扇情的な見出しをつけ、ネット媒体もページビュー稼ぎに必死です。父たちがそうしたビジネスに踊らされている被害者ではないかと思うと、あまりにも残念です。
 ただし父の偏向については、息子の僕が父を孤独にしたことにも重責があります。テレビに毒づく父を無視せず、「その言葉はどうかと思うよ」とのひとことが言えれば、父の変節を阻めたかもしれない。今、それを強く悔やんでいます。(聞き手・桜井泉)
「面白さ」優先しがちなワイドショー 安倍宏行さん
 韓国をめぐる報道のあり方は表層的で、刹那(せつな)的ではないか――。私は一部メディアの姿勢について、こんな懸念を抱いています。

あべ・ひろゆき 1955年生まれ。元フジテレビ報道局解説委員。ウェブメディア「Japan In-depth」編集長。産業能率大学客員教授。

 たとえば、民放各局が毎日放送している情報番組。いわゆるワイドショーは今、かなり勢いがあり、中心的な視聴者層である中高年に影響力があります。ただ、韓国の混乱をその場限りで面白おかしく伝える内容に視聴者が扇動され、嫌韓ムードをあおる一因にもなっていると思います。
 硬派なニュース番組は昔に比べて視聴率が取れず、どのテレビ局も苦戦しています。一方でワイドショーは局によっては朝だけでなく、正午から夕方まで枠を広げるなど好調で、時事問題も多く扱うようになりました。芸能人が司会をするなど、気楽に「ながら視聴」しやすいことが人気の背景かもしれません。
 その結果、新聞を読まないような人も時事的なニュースを手軽に入手できるようになりました。これはワイドショーのプラス面だと思います。
 一方で、マイナス面もあります。ニュースの本質よりネタの面白さが優先されるのです。例えば曺国(チョグク)前法相を「タマネギ男」などといってその人物像まで取り上げるなど、微細な話に入りがちです。文在寅(ムンジェイン)大統領がなぜ彼を法相に任命したのかといった深掘りがありません。朴槿恵(パククネ)政権の時も、大統領の友人とのスキャンダルが盛んに取り上げられ、朴前大統領叩きに終始しましたが、その後の展開はほとんど扱われませんでした。
 日韓問題は本来、二国間の関係だけをみていてもわかりません。北朝鮮をはじめ、背後にいる中国、ロシア、米国の動き、日米韓という同盟関係の行方などを大局的・複眼的に捉えなければなりません。韓国内には「親北」「反北」という戦後から続く対立があることを踏まえ、理解することも必要です。
 懸念するのはワイドショーをよく見る中高年だけではありません。若い世代はテレビをほとんど見ませんが、ネット上のニュースサイトに接するのは、30~40代のビジネスパーソンが中心です。それより下の世代は、LINEニュースなどで、見出しのみを見ている人が多いと思います。
 ネットを通じて大量の情報に接している若い世代は、中高年世代よりは韓国をニュートラルに見ていると感じます。とはいえ、大量に入ってくる情報を整理し、読み解こうとしている人は少ないのではないでしょうか。
 嫌韓現象の先に何が起こるのか、複雑な国際関係のもとで日本はどんな外交を展開すべきなのか。いまの日韓問題を自分の問題として捉え直す姿勢は、中高年であれ、若者であれ必要です。情報を受け取る側のリテラシーも、問われていると思います。(稲垣直人)
韓国が「追い抜かれたくない国」代表に 木村幹さん
 「嫌韓」言説が注目されるようになって10年以上。この間の変化として、攻撃対象の絞り込みが挙げられます。

きむら・かん 1966年生まれ。専門は比較政治で、韓国政治に詳しい。著書に「日韓歴史認識問題とは何か」など。

 以前は中国、北朝鮮、韓国の3カ国が「反日トライアングル」と呼ばれていました。しかし中国については、相手の国力の方が強くなり、攻撃が消えました。北朝鮮についても「日本が叩けば相手が折れるはず」との想定が外れ、効果がないことが分かると、あきられてしまいました。
 韓国だけが残っているのは「日本が叩けば折れるはず」といまだに思っているからでしょう。韓国をさげすむ言説の裏に見えるのは「日本は(韓国とは違って)先進国だ」と自負したい心情です。アジア最大の経済大国という地位を失い、中国に抜かれた日本にとって、いまや「追い抜かれたくない国」の代表が韓国でもあるのでしょう。
 しかし、韓国はいまや世界12位の経済大国です。G20のメンバーで、OECDに加盟してもう23年。軍事費や1人当たりのGDP(購買力換算)では、日本は遠からず韓国に抜かれるでしょう。
 かつては韓国の対外貿易額の40%近くを日本が占めた時代がありましたが、今では7%前後。韓国にとって日本の存在感が薄れるのは当然です。「韓国は日本を気にしているはずだ」と信じている人もいますが、そうした韓国は無くなって久しいのです。
 この夏、新たな嫌韓言説として、「断交しろ」という主張が台頭しました。そこでは、従来あった「韓国が謝ってくる→再交渉に応じる」というシナリオが放棄されています。叩いても韓国を単純に屈服させることはできないという現実に日本社会が気づき始めた表れだと思います。
 「強気に出ていれば何とかなる」と思い込み、自らの力の限界に気づかない面は、もちろん韓国側にもあります。今は、日韓双方が新しい関係性を学習しつつある過程なのでしょう。「韓国はワケの分からない国だ」という言葉を免罪符に自らの不勉強を正当化すべきではありません。
 歴史問題をめぐる対立は韓国だけで終わりません。台湾やフィリピン、ベトナムなども国力を高めるにつれ、日本に権利を主張してくるでしょう。もし韓国との間で解決に失敗したら、この先もつまずきが続くだけです。日韓関係を「歴史問題に終止符を打つステップ」と考え、アジア諸国との問題を解決していくためのモデルを作るべきです。
 そのためには「譲らざるを得ない現実に直面してあきらめる」作業を日韓がともに重ねる必要があります。話し合いで進めるのが難しければ、国際的な司法の場に出るのも手です。法律的な議論の場では「互いの切れるカードは何か」が見えやすく、自他の実像を認識しやすいからです。(編集委員・塩倉裕)


22日「即位礼正殿の儀」
竹田恒泰氏が大村知事に最終警告!
「大村知事は皇居の濠を渡るな」
2019年10月21日:夕刊フジ

 天皇陛下が即位を正式に宣言される「即位礼正殿の儀」が22日、行われる。国内外から約2000人の賓客が参列を予定している。国内では自然災害が多発し、わが国を取り巻く国際情勢は厳しさを増すなか、皇位が安定的に継承されることの意義などについて、明治天皇の玄孫(やしゃご)で、作家の竹田恒泰氏が緊急寄稿した。昭和天皇の写真をバーナーで焼いた映像作品が、愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で公開されたことをめぐり、愛知県の大村秀章知事への「最終警告」も発した。

 一連の即位関連の行事のなかでも、「即位礼正殿の儀」は、新天皇陛下がご即位を内外に宣明なさる儀式で、三権の長をはじめ各界の代表者、各国元首級などが参列して行われる。結婚にたとえるなら、披露宴に該当する。
 両陛下はもとより、参列なさる皇族方は平安装束をお召しになる。女性皇族方の十二単は必見であろう。一部の宮内庁職員も装束をまとう。
 これは雛人形の実写版といってもよく、ぜひ注目してほしい。まさに日本国にとっての「晴れの日」であり、国民挙げて祝福したいものである。
 天皇陛下は第126代であらせられる。これだけ君主が代数を重ね、悠久の歴史を歩んできた国は他にない。日本書紀によれば今年は建国から2679年であり、また考古学では約2000年王朝交代がないことが学問的に証明されている。
 わが国は現存する国家のなかでは、世界最古の国家である。
 これほど国家体制が安定している国が他にあろうか。アジア周辺を見渡しても、選挙をする度に戒厳令が敷かれる国や、大統領がまともな死に方をしない国など、安定には程遠い国が多い。明日の即位の礼は、日本の安定感を世界に示す機会にもなると思う。
 しかし、2000年に及ぶ国体の継承は、困難の連続でもあった。先の大戦でポツダム宣言を受諾したことを筆頭に、数々の試練を乗り越えてきた。いずれも、国民が国の存続を願い、天皇を守り通してきた。
 それは、いつの時代も、天皇が国民に絶大なる関心を向け、その幸せをお祈りになってきたからと思う。
 今月、日本列島を襲った台風19号により多くの方が亡くなり、いまだ行方不明者の捜索が続く。
 上皇陛下がそうであったように、天皇陛下も深く悲しんでいらっしゃることを国民は知っている。せめて明日は、晴れやかなお気持ちで高御座にお登り頂きたいと思う。
 こうしたなか、昭和天皇の写真を焼いて灰を踏み付ける動画を展示した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」(14日に閉幕)の最高責任者だった愛知県の大村知事が、どうやら即位の礼に出席する準備をしているらしい。
 写真を焼いて灰を足で踏み付けるのは最高レベルの侮辱である。一体、どのツラを下げて皇居の濠を渡るつもりであろうか。皇室を敬愛する圧倒多数の日本人は、絶対に許さない。


即位の礼・恩赦も官邸主導
天皇政治利用の悪政ゴマカシ
2019年10月21日:日刊ゲンダイ

 22日の午後1時から、天皇が即位を国内外に宣言する「即位礼正殿の儀」が国事行為として行われる。海外からの賓客や各界の代表ら約2000人が参列する中、高御座に天皇が登壇して「お言葉」を述べる。その後、安倍首相が「寿詞」と呼ばれる祝辞を読み、万歳三唱の発声をする段取りだ。即位関連儀式のハイライトであり、安倍にとっても大舞台である。


 同日に予定されていたパレード「祝賀御列の儀」は台風19号の甚大な被害を考慮して11月10日に延期になったが、11月14日から15日にかけては皇位継承の伝統儀式「大嘗祭」が皇室行事として行われる。一連の儀式は来年4月まで続く。

「慶事に水を差すつもりはありませんが、安倍政権は皇位継承を必要以上にイベント化しているのではないか。天皇即位の関連費は総額166億円に上る。平成の即位関連費と比べて3割も増額されています。台風19号の被害対応には7億円しか支出しないのに、即位イベントや東京五輪に巨額の血税をつぎ込むことに国民の理解を得られるでしょうか。そもそも、即位の礼や大嘗祭は皇室神道の祭祀であり、公費の支出は、憲法が定める政教分離の原則に反するという見方もある。当の皇室からも、大嘗祭を国費で賄うことに異論が出たほどです」(政治評論家・本澤二郎氏)

 昨年11月、誕生日会見での秋篠宮の発言が注目された。政府が国事行為として行う即位の礼については立場上、意見を言えないが、宗教色が強い皇室行事の大嘗祭は、国費ではなく「内廷費」で賄うべきだと訴えたのだ。「宗教行事と憲法との関係はどうなっているのかという時に、私はやはり内廷会計で行うべきだと思っています」と、憲法の政教分離原則との関係に踏み込み、内廷費の範囲で、身の丈に合った形で行うのが本来の姿ではないかと指摘。「すっきりしない感じというのは、今でも持っています」と語った。

 この秋篠宮の発言について、憲法学者の水島朝穂早大教授は昨年12月のネットコラム「直言」で、こう書いていた。 

<天皇(現上皇)は簡素なものを望んでいるというが、それは単に費用的なものだけでなく、自らがかかわった昭和天皇からの代替わりとは違った形、すなわち、日本国憲法の純粋象徴天皇制らしい形を考えているのではないか。

 安倍首相(背後にいる日本会議など)は限りなく戦前型の天皇を求めているので、そこでも現天皇が描く「天皇像」とは距離が出てくる>

 皇室行事と政教分離については、平成の大嘗祭の際にも議論があった。当時は昭和天皇の崩御にともなう即位だったこともあり、十分な議論の時間がないまま前例を踏襲した格好だが、今回の即位関連行事には官邸の意向が色濃く反映されているように見える。

明治憲法の天皇像復活は改憲の助走か

「本来は皇室の私的な宗教行事である即位や大嘗祭を国の行事にして、国家主義的な意義を強調したのが明治時代の長州閥です。安倍政権は、明治の天皇像を復活させようとしている。今回の即位関連行事を大がかりなイベントにして天皇の権威を高めることは、神格化を進めて改憲につなげる助走のようにも見えます。外交は八方塞がりで、日韓関係の悪化は日本経済にも悪影響を及ぼしている。景気低迷は深刻で、経済指標の数字もごまかせなくなってきました。地震や台風の被災者に冷淡な政権に対する不満もたまっている。そうした諸問題にフタをする奥の手が天皇の政治利用ですから、あまりに悪辣と言うほかありません」(本澤二郎氏=前出)

 同じことは、即位礼正殿の儀に合わせた実施を強行した恩赦にも言える。19日の朝日新聞が、26年ぶりの恩赦がどのように決まったか、その内幕を書いていた。法務省は当初、「合理性がなく、恩赦は実施すべきではない」と反対していたという。恩赦は、行政権による司法権の介入になる。2004年には犯罪被害者等基本法が施行されるなど、被害者感情を重視する社会の流れも強まっている。
 現憲法下では、恩赦は天皇の国事行為だが、実施は内閣が決める。そのため法務省は「皇室の慶弔と恩赦実施の関連性はない」と指摘。一律に罪を免じる政令恩赦は「社会への影響が大きく、三権分立を揺るがしかねない」と訴えた。だが、官邸側には恩赦を実施しないという選択肢はなかった。まず「恩赦ありき」で、どういう内容なら国民が納得できるかという方向で「令和の恩赦」が決まったというのだ。


 恩赦の対象になる55万人すべてが安倍支持者になるとはかぎらないが、政権の人気取りには違いない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)もこう言う。

「歴史的に見て、恩赦は権力者による支配の手段として使われてきました。大日本帝国憲法では、天皇の大権事項とされていた。戦前の天皇と同じことを政府が実施するわけです。天皇の名を政治利用しているという批判は免れません。しかも、閣議決定の直前まで恩赦の具体的な内容は知らされなかった。どのような議論があり、どうやって対象基準や規模を決めたのか不透明なままです。国民主権の原則から言えば、政府がやることはすべて国民に明らかにしなければなりません。恩赦の対象者には公選法違反者も含まれています。そこに政治的判断が働いていないと言い切れるのでしょうか。国民への丁寧な説明がないまま、官邸主導で何でも決めてしまう。残り任期が少なくなってきたことで、安倍政権の独裁体質に拍車がかかってきたように感じます。ここへきて、緊張が高まる中東地域への自衛隊派遣を検討すると言い出したことも危険すぎる。憲法を無視する独裁政権が、いよいよ総仕上げにかかってきました」

■調査目的の自衛隊派遣という裏口に唖然

 菅官房長官は18日の会見で、中東地域での航行の安全確保に向けて、自衛隊の艦船などを派遣する検討を始めると明らかにした。18日に開かれた国家安全保障会議で安倍が検討を指示したという。

 米国が参加を求める「有志連合」とは別に、「ホルムズ海峡周辺に調査目的で自衛隊を独自に派遣する」というのだが、実に姑息で危ういやり方だ。

 官邸が考えているのは防衛省設置法に基づく「調査・研究」を根拠にした派遣で、国会の承認を必要としない。民間船舶の護衛もできないが、自衛隊法に規定された「海上警備行動」に比べて武器使用の権限は不明確。現地で軍事衝突に巻き込まれれば、一気に憲法が禁じる交戦状態に陥る可能性もある。自衛隊関係者から「隊員の安全確保への不安は拭えない」という懸念の声が上がるのは当然だ。

「米国とイラン双方の顔を立てる苦肉の策なのでしょうが、その場しのぎの対応は、今後に大きなツケを残しかねません。いよいよ戦争への参加が迫ってくる。かつてのPKO協力法案は審議が大紛糾し、3国会かけて成立しました。それより危険な中東への派遣を“裏口入学”のような手法で官邸が独裁的に決めてしまうのは恐ろしいことです。国会軽視が甚だしいし、政権の最後にやりたかったことを全部やってやろうと居直り、あらゆる角度から戦後民主主義を壊しにきているとしか思えません。長期政権が7年目になり、その横暴は目も当てられなくなってきました」(金子勝氏=前出)

 マリリン・モンローの白いドレスがめくれ上がるシーンで有名な映画「七年目の浮気」の原題は「The Seven Year Itch」といい、浮気の虫を「7年越しのうずうず感」と表現している。政権も7年目となると「独裁うずうず感」に歯止めが利かなくなってきたということか。

 それと同時に、関電の原発マネー還流事件や、有権者買収疑惑などが報じられた菅原経産相を筆頭に醜聞まみれの新閣僚、マラソン・競歩会場の変更を余儀なくされる東京五輪の大誤算など、嘘で塗り固めてきた政権の綻びも次々と露呈している。

 不穏なムードはラグビーW杯や即位儀式のお祭り騒ぎで蹴散らし、即位の儀礼にともなう外交アピールで国民の目をごまかす算段だろうが、もくろみ通りにいくかどうか。

 ここまで問題が積み重なると、どんなに取り繕ったところで悪あがきで終わるのではないか。7年目を迎えた政権の黄昏は濃くなる一方だ。


田原総一朗
「安倍首相悲願の憲法改正に提言
 全政党で憲法勉強会を」
2019年10月16日:週刊朝日

 ジャーナリストの田原総一朗氏が、憲法改正を目指す現政権にやるべきことを提示する。

*  *  *

 安倍晋三首相は10月8日に国会で「与野党の枠を超えた議論を深める中で、令和の時代にふさわしい憲法改正原案を作成していただくことを期待する」と強く呼びかけた。

 安倍首相は何としても憲法を改正したいと願っているのである。

 現在の憲法は、9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記している。

 実は、自衛隊が生まれたのは1954年で、翌55年に自民党が結成された。そして、初代総裁・首相の鳩山一郎は、自衛隊と憲法が相矛盾していると捉えて、自主憲法の制定、つまり憲法改正を唱えた。岸信介首相も憲法改正を主張した。だが、その後の池田勇人以来、佐藤栄作、田中角栄、そして小泉純一郎、麻生太郎に至るまで、自民党のどの首相も憲法改正を唱えていない。なぜなのか。

 昭和時代に、軍が暴走して無謀な戦争を起こし、日本を無残な敗戦に導いたことを強く反省し、歴代首相はいってみれば「軍からの安全」、つまり自衛隊の統制に神経とエネルギーを注いできたからである。

 だが、いわばハト派中のハト派である井上達夫氏(東大大学院教授)は「9条2項があるために、安全保障政策についての実質的議論が棚上げされ、9条解釈の『神学論争』にすり替えられてきた。さらに2項で『戦力を保持しない』と明記しているために『戦力統制規範』、つまり戦力が乱用されないように、戦力の編成方法や行使手続きを統制する規定が、憲法に盛り込まれておらず、現状のままで自衛隊を戦場に送り出すのは危険極まりない」と強調している。井上氏は、安倍首相と方向は相当異なっているのであろうが、憲法改正論者なのである。
 ところで、憲法改正より前に、実は自民党が発足して以来、国会で全政党が憲法について論議したことは、一度もないのである。

 率直に言って、現在の憲法には少なからず問題がある。だから、憲法改正について論議する前に、まず、全政党が国会で憲法についての考え方を述べ合うべきだ。

 だが、たとえば立憲民主党などは、自民党が呼びかける審議への参加を拒むはずである。その要因は、自民党がこれまで野党をだましすぎたためだ。自民党は、野党をだました揚げ句、数にものをいわせた強行採決で、思い通りの法を成立させてきた。だから、審議に参加すれば、いずれ自民党の思い通りの憲法改正を強行採決でやられてしまう、と恐れているのである。自民党側は、審議を拒むのは責任放棄だと批判したいかもしれないが、だましにだまして強行採決では、野党としては、自民党の提案に乗れないのは理解できる。

 私は、もしも自民党が、本気で憲法改正に取り組むつもりならば、1年か2年、審議会ではなく、本当の勉強会として全政党に呼びかけて、憲法について論議する場を国会に設けるべきだ、と提言したい。

 憲法改正を考えるのではなく、あくまで憲法について論議する勉強会である。私は国会議員たちと触れ合うことが多いが、与野党ともに憲法のことをよく知らない国会議員が少なからずいる。憲法について勉強する機会がほとんどないからだ。

 そこで、全政党で1年、ないしは2年、憲法について論議する。そして与野党が納得できるまで論議をしてから、全政党で憲法改正についての審議を始めるべきではないか。

※週刊朝日  2019年10月25日号

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