学校だって、一般社会

日本の教育・学校・教員の「質」の問題が表面化している。
その背景には、教員のやりがい搾取といわれる、教育労働のダークサイドが存在している。
ボクが教員になった40年前、教育裁判では良く「特別権力関係」という言葉が使われていた。学校は一般とは違う場で、特別な権力行使(暴力や支配、人権の制限など)が認められるという、古い法理がまだ、主張されていた。
その後、学校も一般社会と同じ保護者・生徒と学校との契約関係によるという「在学契約論」というものが出てきたが、どうにも馴染まない感じがする。
学校を特別なものとして、学校・教員と子どもたちとの関係を一般化することが現実的だが、現実は学校・教員の子どもたちのDV的支配が行われているのが現状だろう。
こういうDV的空間では子どもたちの精神や成長が蝕まれるのはもちろん、支配する側の教員の精神の退廃も進んでいく。その挙句が今回の神戸の小学校の教員いじめ事件だが、この学校というDV空間を支えているのが、現代のこの国の社会だ。


教諭いじめ 暴行容疑で兵庫県警が捜査へ 
被害届提出、公務災害も近く申請
2019年10月11日:毎日新聞

 神戸市須磨区の市立東須磨小で20代の男性教諭が先輩教諭4人からいじめ・暴行を受けた問題で、男性教諭は11日、兵庫県警に被害届を提出した。首を絞められ呼吸困難になったり、激辛カレーを目にこすりつけられたりするなど約50種類の嫌がらせを受けたと訴えており、県警は暴行容疑などで捜査する方針。男性教諭は体調を崩して9月上旬から休職しており、公務員の労災にあたる公務災害も近く申請する

激辛カレーを目に付けられた被害者の男性教諭=関係者提供(画像の一部を加工しています)

 男性教諭の代理人弁護士によると、動画や写真で証拠が残っている行為を中心に被害状況をまとめ、県警に提出した。県警は加害者側の30代の男性教諭3人と40代の女性教諭のほか、同僚から事情聴取し、市教委に書類の提出を求めるなどして捜査を進める方針。


 弁護士の説明では、いじめは昨年春には始まり、毎日のように平手打ちをする▽熱湯の入ったやかんを顔につける▽ジーンズをビリビリに破る――などの被害に遭った。「お前の父親はろくでもない」といった暴言のほか、児童に配るプリントに水を垂らされたり、「教室が汚れるから来るな」と授業見学を断られたりしたという。
 いじめは校外でも続き、教員同士の飲み会でドレッシングや焼き肉のたれ、キムチ鍋のもとを大量に飲まされ、ビール瓶で頭をたたかれたこともあったと訴えている。
 こうした被害は先月以降、市教委に伝え、事実関係の調査や学校に残っている資料の提出を市教委に求めているという。久元喜造市長は10日、市長部局に設置する第三者チームで調査する考えを示しており、市教委教職員課の担当者は取材に「今後の調査で事実関係を明らかにしたい」と話した。
 弁護士によると、男性教諭は休職していることについて「子どもたちに申し訳ない」と話し、「子どもたちに会いたい」と復職を希望している。仁王美貴校長には先月以降、調査を求める手紙を何度も送っているという。【反橋希美、春増翔太、韓光勲】


【主張】
激辛カレーいじめ 子供たちもあきれている
2019年10月12日:産経新聞

 子供たちもあきれているだろう。あろうことか教員が集団で後輩教員をいじめていた。
 激辛カレーを無理やり食べさせるなど、程度の低さに目を疑う。いじめを許した学校現場は猛省し、背景などを検証してもらいたい。
 神戸市立東須磨小学校で40代の女性教諭1人と30代の男性教諭3人が、20代の男性教諭をいじめていた。ロール紙の芯で尻をたたくなど、市教育委員会が「嫌がらせ」と認めた行為だけでも、暴力や暴言、飲酒の強要など目に余るものがある。
 羽交い締めにし、激辛カレーを食べさせている動画もある。被害にあった教諭は、激辛ラーメンの汁を目などに塗られたとも訴えている。嫌がらせやいじめというより、犯罪行為に等しい問題が次々に発覚している。
 別の男女教諭3人も暴言やセクハラなどを受けていたことが分かっている。この学校に子供を通わせて大丈夫なのか、保護者の不信が募るのも当然だ。
 加害教諭は同校のリーダー的存在で、児童のいじめ防止の取り組みにも関わっていたという。中には教員いじめの様子を子供たちに語っていた者もいた。それで互いに敬う大切さなどを教えられるはずはない。
 学校側の対応の遅れも目立つ。別の教員を通じて教頭に相談があったが、市教委には「校内で解決した」と報告していた。被害者の男性教諭は今年9月から学校を休み、家族から市教委に相談があったという。
 校長は市教委に詳細な報告をしていなかった。「隠蔽(いんぺい)の意図はなかった」との弁明は通らない。事なかれ主義で問題に蓋をして隠す体質が、学校教育への不信を増していることに気づくべきだ。
 市教委は加害教諭4人を10月から休ませたというが、遅きに失した。文部科学省も副大臣らを派遣し、調査する。厳正に対処し、再発防止につなげるべきだ。
 現代の学校は校長が指導力を発揮し、学校内外のチームプレーが求められる。しかし教員社会は閉鎖的だ。他人の意見を嫌う独善的傾向がベテラン教員ほど強いといわれる。暴走する教員に対し、校長ら管理職が口を出せない。
 それが問題解決を遅らせ、悪化させる要因となってきた。学校の悪弊を変えなければ、公教育の信頼回復は遠い。


「恐怖の職員室」と化した
東須磨小 いじめと諸悪の根源
2019年10月12日:日刊ゲンダイ

 後輩教師いじめは一昨年から始まり、しかも先輩教師による暴力行為は教師に対してだけではなく、教え子にも及んでいた。

 神戸市立東須磨小の20代の男性教師が、女性を含む30~40代の先輩教師4人に陰湿ないじめにあっていた問題で、先輩教師らの“余罪”が次々と明らかになった。

 いじめの実態を市教委に説明せず、事態を悪化させた同小の仁王美貴校長(55)が9日、市教委の幹部職員と記者会見に応じた。仁王校長が教頭として東須磨小に赴任したのは、2018年4月。そのころから職員室では一部の教師が他の教師を呼び捨てにし、高圧的な態度でプリントを放り投げるなど、乱暴な言動が見受けられ、心ない言葉で精神的な苦痛に悩む教員もいたという。

 当時の校長は16年、東須磨小に教頭として赴任し、18年4月に校長に昇進。今年4月まで東須磨小に勤務していた。
「16年5月のこと。今回のいじめの主犯格の30代男性教師が体育の授業中、指示に従わなかった6年生の男児に『(バレーボールのコート内に)おまえは入ってくんな』と言って突き飛ばし、右腕を骨折させた。また40代女性教師に『あなたのことが嫌い』と言われたり、座っていた椅子の背もたれを後ろに引かれて転倒させられ、頭を打った児童もいた。

 昨年9月には男性教師が職員室で女性教師にセクハラまがいの発言をしたが、何のおとがめもなかった。さらに今年2月には、同い年の男性教師2人と女性教師の3人が職員室で被害教師をいじり倒し、見かねた同僚教師が『おふざけの度が過ぎる。3人の言動がふざけ過ぎている。見ていて気分が悪い』と校長に訴えた。校長は3人を1人ずつ呼び出し、指導したそうですが……」(学校関係者)

 今年4月から仁王校長に交代したが、前校長からは正確な情報が伝えられず、引き継ぎもなかった。加害教師4人のうち2人は前校長と親しい関係にあり、特に被害教師の車のボンネットに上っていた教師は以前、前校長と同じ北区の小学校で働いていた仲だった。
「だからなのか、前校長が隣の区の学校に転任してからも、まるで自分たちの学校と言わんばかりの横柄な態度で相手が女性であろうが、人格を否定するような暴言を浴びせ、人を小バカにしたような扱いをしていた。職員室は加害教師らに支配されたような雰囲気で、好き放題やっていた」(前出の学校関係者)

 加害教師の1人はこれだけのことをしておきながら「『謝れ』言うんやったら、謝ったるで」とほざいているというから、性根が腐っている。


先生は助け求められなかったけど
 いじめ被害教員の願い
2019年10月11日:朝日新聞

 神戸市須磨区の市立東須磨小学校の教員間で暴力や嫌がらせが繰り返されていた問題で、体調を崩して休んでいる被害者の男性教員(25)は10日、代理人の弁護士を通じて、児童と保護者あてのメッセージを市教育委員会に送った。周囲に助けを求められず、欠勤に至ったことをわびる内容。朝日新聞が弁護士からメッセージの全文を入手した。
 弁護士によると、男性教員は教員歴3年目。同校に赴任し、すぐに3年生の担任になった。これまで同じ子どもたちを受け持ち、この春からは5年生の担任に持ち上がっていた。
 児童向けのメッセージは「急に先生が変わってびっくりしたね。ごめんね」と始まり、仲がよく、前向きな子どもたちに「大好きですよ」と呼びかける。男性教員の誕生日に、児童らが手紙を本にとじたプレゼントを用意してくれたことを振り返り、「これからもずっとずっと君たちの笑顔は先生の宝物であり、生きがいです」とつづった。
 ふだんから「いじめられたら誰かに相談しなさい」と子どもたちに指導していたことにも触れ、「その先生が助けを求められずに、最後は体調まで崩してしまいました。『ごめんなさい』」。その上で「いつか、みんなの前でまた元気になった姿を必ず見せに行きます。その日を夢見て先生も頑張ります」と記した。
 保護者へのメッセージには「ご心配やご迷惑をお掛けしてすみません」とわびる言葉が並んでいる。受け取った市教委の担当者は「教員の職場復帰に向けて、最大限の支援をしたい」と取材に話した。
 また、関係者によると、男性教員は昨年末、前校長に加害側の教員4人の問題行動を直接相談しようとした際、「(4人に)お世話になってるやろ」「いじめなんかないやろ」と制止され、話を聞いてもらえなかったと訴えているという。市教委は前校長の対応ぶりについても調査する。(川嶋かえ)

君たちは宝物

 神戸市須磨区の市立東須磨小学校で教員間の暴行や嫌がらせ行為が繰り返されていた問題で、被害を受けた20代の教員が代理人の弁護士を通じて明らかにしたメッセージの全文は次の通り。
     ◇
 子供達へ
 急に先生が変わってびっくりしたね。ごめんね。
 私は3年連続して同じ子供達を担任してきた。初めは2年生から上がってきた小さい小さい子供達。それが最後は6年生に向かう大きくなった子供達。とても素直な児童で、行事にはまっすぐ一生懸命、学年の仲が良くみんな前向きな児童であった。「そんな子達が大好きですよ」
 学級通信を通じて子供のいいところを発信していたが、ほんとに毎日が成長であった。初めは小さな事で喧嘩(けんか)もありながら、ちゃんと自分で反省し、仲間に優しくできる子達である。職員室が怖かった分、毎日子供といる時間が幸せでたまらなかった。「ずっとこの子達と一緒にいたい」。そう思える子達だった。クラス全員で誕生日に手紙を本にしたプレゼントを用意してくれる温かい心も持っている。失敗しても「ドンマイ」と声をかけられる思いやりもある。どんな先生やお友達でも同じ目で、平等な目で見られる正義感のある子達である。運動場で「めんどくさい」とも言わず、クラス全員で遊ぶ無邪気な一面もある。これからもずっとずっと君たちの笑顔は先生の宝物であり、生きがいです。ありがとう。
 そして、一つ……
 先生はよく「いじめられたら誰かに相談しなさい」と言っていましたね。しかし、その先生が助けを求められずに、最後は体調まで崩してしまいました。「ごめんなさい」。今の先生だからこそ、お願いです。辛(つら)い時、悲しい時自分一人で抱え込まずに、誰かに相談してください。必ず、誰かが手を差し伸べてくれます、助けてくれます。いつか、みんなの前でまた元気になった姿を必ず見せに行きます。その日を夢見て先生も頑張ります。
 保護者様へ
 いつも温かく迎えてくださって感謝でいっぱいです。「3年目も先生で嬉(うれ)しいよ」。こんな声をかけてくださった方もいて僕の支えとなる言葉です。「先生痩(や)せられたんじゃないですか?」と気にかけてくださる優しい保護者の方達に僕もたくさん支えてもらいました。僕が作った学級通信や子供への手紙を宝物だと言ってくださった経験が今の僕の宝物です。最後に、たくさんご心配やご迷惑をお掛けしてすみません。

教員間暴力問題をめぐる経緯(市教委や校長の説明による)

2017年度以降 被害教員への暴力や嫌がらせが始まる
19年2月 被害教員への過度の「からかい」について、同僚教員が当時の校長に相談。校長は加害教員を口頭で注意し、市教委には報告せず
4月 現校長が教頭から昇任
4~5月 複数の教員が加害教員の侮蔑的な言動などを学校側へ相談
7月 被害教員が教頭に暴力被害を申告。現校長は加害教員を口頭で指導し、市教委に詳細を伝えなかった
9月 被害教員の一人が体調を崩して欠勤し、家族が市教委に相談。市教委の調査で、ほかに3人の20代教員の被害が判明
10月1日 加害教員4人が学校業務から外される
  9日 現校長らが会見し、対応の不十分さを謝罪
被害教員らが訴えている暴力や嫌がらせの例(市教委などの説明による)
・ロール紙の芯で尻をたたかれ、ミミズ腫れになる
・携帯電話を隠される
・家族をやゆするような発言をされる
・自分の車の上に土足で上がられ、車内でわざと飲み物をこぼされる
・激辛カレーを無理やり食べさせられる
・加害教員の送迎を強要される
・背中や脇腹を押したり、小突かれたりする
・「ボケ」「カス」などの暴言を吐かれる
・侮蔑的な呼び方をされる
・別の女性教員に対し、LINEでひわいなメッセージを無理やり送信させられる


「エログロ」漫画広告、野放しの謎
 露骨で不快…対策は
2019年10月11日:朝日新聞

 スマートフォンでアプリやサイトを見ていると、電子コミックの広告が不意に飛び込んでくる。露骨な性描写や残虐な内容でサイトへと誘う。子どもへの悪影響を心配する投稿が、身近な困りごとや疑問を募って取材する「#ニュース4U」に寄せられた。取材班が「エログロ」漫画広告のなぞに迫った。

娘の目に触れるかも…女性不安

 投稿をくれた東京都世田谷区の会社員の女性(43)は怒りに満ちていた。
 「単なるエロを超えて、エグくてグロい(残酷で気味が悪い)。なぜこんな広告が放置されているのか疑問。不快でなりません」
 芸能ニュースのまとめサイトをスマホで見ていると、電子コミックの広告が何度も出てきたという。広告の端にある「×」印をクリックしようとしても極端に小さいため、広告のサイトが開いてしまうこともあってイライラが募る。
 広告は作品中のコマで作られており、クリックすると電子書店の販売サイトに誘導される仕組みだ。
 女性は広告ブロック(排除)のアプリを試したが、完全には防げないという。加えて、小学5年の長女が心配だ。年明けにスマホを持たせたばかりで、こんな広告が娘の目に触れるかもしれない。コンビニ各社が成人向け雑誌の陳列取りやめを決めたが、スマホ上で性描写を「野放し」にする方が影響が大きいと感じる。「10代で性的な内容に興味を持つのは当たり前だと思うけど、監禁とか陵辱とか異常性が強調された性のイメージが入り口になるのは可哀想」と話す。

ブロガーも迷惑「ブロックした」

 困っているのは、サイト運営者も同じだ。2児を育てるシングルマザーの女性は1月、「エログロ」広告が自身のブログに掲載されているのに驚いた。
 「ほとんど服着てないじゃん」
 女性は子育てをテーマにしたブログを昨年6月に開設し、収入を得るために広告を表示することにした。笑い話を書いたブログの途中や終わりに、陰湿な描写の漫画広告が出ていて台無しにされたこともあったという。1日の広告収入は100円~300円だが、漫画広告はすべてブロックした。「広告収入が減っても、気持ちの上ではブロックしてよかった」と話す。
 香川県在住のプロブロガー、ヨスさん(43)は、不快な「エログロ」広告について、「ブロガーとしては顔に泥を塗られた気持ちになる。ただ、不快な広告があるからといって、すべてブロックされてしまえば、ブログ運営者、広告主、読者の全員が損する」と指摘。広告配信サービスを行う企業が厳しい規制をするよう求める。

法規制は難しい?

 不快な漫画広告は、法的には問題ないのか。
 ネット問題に詳しい板倉陽一郎弁護士は「表現の自由が重視され、ネット上のコミック広告の法規制は難しいのが現状だ。見たくないと感じる広告でも、クリックする人が多ければ企業は続ける。コミックの広告が多いのは日本独特だろう」と話す。
 現在のネット広告の多くは、広告主が指定した年齢や性別などの属性、検索履歴、位置情報などから表示先の狙いを定めて配信する「ターゲティング広告」だ。電子書店は電子コミックに関心がありそうな対象者に広告を表示してクリックしてもらい、自社の販売サイトに誘導する。
 その一方で、新たな顧客を掘り出す必要もあり、年齢を「20~30代」などと指定すれば、電子コミックを検索したことがない人でも、広告が表示されるケースもある。あえてターゲットを定めない場合もある。
 こうした広告手法は不快な思いをするサイト閲覧者が出る一因になる。もちろん、グーグルやヤフーなど広告を配信したり、掲載したりする企業は、性的描写や残酷な内容を排除する「ポリシー(方針)」を定めている。

ヤフーやグーグル、審査しているが…

 ヤフーはポリシーに基づいた広告審査に加え、昨秋から広告の表示理由を出すようにした。広告端の「Yahoo!JAPAN広告」と書かれた部分をクリックすると、「設定した性別が男性」「最近大阪府にいた、あるいは現在滞在しているため」などと表示され、広告についての意見や感想を聞く選択肢も設けている。担当者は「広告が表示された理由について関心が高まっており、透明性を上げることでユーザーの不安を軽減できると考えて導入した」と話す。
 グーグルも審査を通過した広告を掲載している。しかし、担当者は「すべては防ぎきれていない」と認める。ポリシー違反の広告が出てしまった場合は、再審査や外部からの指摘により、次からは同種の広告が出ないよう対応しているという。具体的な審査方法について尋ねると、同社は「悪意ある業者などがそれを見て、さらなるいたちごっこになってしまうので公表できない」と回答した。
 そもそも、漫画広告が大量に出回る背景には、電子コミックの好調さがある。
 出版科学研究所(東京)の調査によると、18年の電子書籍市場の売り上げは11・9%増の2479億円となり、過去最高を更新。そのうちコミックス(単行本)は1965億円で電子書籍全体の8割近くを占めている。17年には電子コミックスの売り上げが紙を初めて上回った=グラフ。
 また、書店に陳列されれば広告の効果がある紙のコミックと違い、電子コミックの周知にはネット上の広告が欠かせないのも、漫画広告が多い理由だ。
 電子書店各社は売り上げ増に伴い、広告量も増やしている。独自で電子コミックを先行発売し、出版社から声がかかって紙の単行本も販売するケースも相次ぐ。ネット広告から生まれたヒット作も出ている。
 場の空気を読み過ぎて無理して倒れてしまい、仕事も恋もSNSも全部やめた女性を描いた「凪(なぎ)のお暇」(秋田書店)は、16年に月刊誌に連載開始した当初は「認知度が低かった」(同社宣伝部)。しかし、翌年出した電子コミックの広告をきっかけに火が付き、紙の単行本も売れ始めた成功例だという。電子と紙のコミック販売の累計が250万部を超え、今年7~9月にはTBS系でテレビドラマ化された。
 この作品の広告は過激な描写はない。以前はエロだけでなく、児童虐待やホラー系の広告が多く見られたが、電子書店各社は不快だとの声を受け、数年前から自粛に取り組んでいる。

電子書店サイトの対策は

 大手サイト「めちゃコミック」を運営するアムタスの親会社インフォコム(東京)では、電子コミックの広告費に売り上げの3割を充てる。広報・IR室の田中新也室長は「アダルトやグロテスクな方が間違いなく注意を引く。ただ、不快と感じられる広告を届けるのは非効率。ターゲティングの精度を上げる工夫をしている」と話す。
 同じく電子書店を運営する「BookLive」(東京)でも、不快な広告を出さないよう広告で使う漫画のコマの内容の規定を2年前に見直したという。
 改善は進んでいる。とはいえ、広告をクリックした先にある電子書店サイトに「エログロ」漫画も数多く並ぶことに変わりはない。
 過激な表現を見られなくする設定「セーフサーチ」の機能を導入したサイトもあるが、中高生向けのTL(ティーンズラブ)でも露骨な性描写が目立ち、アダルト向けとの線引きがあいまいに見える。
 TLや男性同士の愛を描くBL(ボーイズラブ)、アダルト向けのコミックが全体の計7~8割を占める電子書店の広告担当者によると、広告を配信・掲載するグーグルやヤフーといった大手企業は審査が厳しいが、描写の審査が甘い企業もあるという。「『大人向け』作品の需要が減ったわけではなく、企業を選んで広告を出稿しているが、ネット上のどんなサイトも子どもが見ないとは限らない」と打ち明ける。

性の情報正しく伝えるには

 日本性教育協会(東京)の青少年の性行動全国調査(17年)によると、性交の情報源を「インターネットやアプリ、SNS」と答えた高校生は、男子約4割、女子約3割に上った。
 正しい性の知識を伝える講演活動をしているNPO法人ピルコン(東京)の染矢明日香理事長は「どれだけ対策をしても、過激な描写が子供の目に触れてしまう前提で考えていくことが大切。そのような漫画の表現は、現実の性生活を描いているわけではないことを子どもに教えることが今まで以上に必要になる」と話す。(波多野大介)
     ◇
取材班とLINEでやりとりできます

 「#ニュース4U」では身近な困りごとや疑問の投稿をお待ちしています。ツイッターでハッシュタグをつけてつぶやいてください。LINEはID「@asahi_shimbun」かQRコード、もしくはこちらのリンク(https://line.me/R/ti/p/%40asahi_shimbun)で「友だち追加」をお願いします。朝日新聞デジタルに特集ページ(https://www.asahi.com/special/n4u/)があります。


学校の備品購入にPTAのお金
 「おかしい」動く人たち
2019年10月12日:朝日新聞
 
 PTAをめぐる保護者の悩みは尽きない。
 「辞めると言ったら、『(卒業式の)まんじゅうはあげません』と言われた」
 「『問題だ』と言ったら、『協力しないの?』と村八分みたい」
 8月、神戸市で開かれた「PTAフォーラム」。集まった約100人は、現役の会員や役員、PTAを辞めた人、すでに子どもが学校を卒業した保護者など。様々な顔ぶれの参加者の多くに共通していたのは「PTAのおかしさを是正したい」という思いだった。
 私は主催者側として参加していた。「記事を書いているだけでは、PTAは変わらないのではないか」。そんな問題意識を共有した、北海道や熊本など各地の新聞社の記者らと実行委員会をつくって開いた企画で、5月の東京開催に続き2回目だった。
 設置を義務づける法令はないにもかかわらず、PTAは公立の小中学校を中心にほぼ存在することが「当たり前」になっている。入会することや活動することも「保護者の義務」という認識が強く、「PTAに入らない」「活動しない」という選択肢がなかったり、選びにくい雰囲気が作られたりしている。強い強制力を持って保護者、主に母親を動員する組織だ。
 フォーラムに参加した東京都内のある女性(46)は、そんなPTAを変えようとしていた。
 3人の子どもを通して13年間PTAに関わり、この春から中学校の会長になった。「PTAが大好き」で、いままでは、活動を敬遠する保護者がいれば「わたしがやるよ」と引き受けてきた。「それで問題は解決していると思い、それ以上考えてこなかった」
 だが、会長となって運営側に回った時に、「このままではいけない」と気がついた。
 振り返れば、入学式後に体育館の扉をしめて親たちを閉じ込め、役員を決めていた。委員をやらなかった人は、何年たっても「ずるい」と言われ続けた。
 「おかしなことが起こらないシステムにしたい」。そう考えた女性は、情報を集めて改善すべき点をノートに書きとめ、一つずつ取り組んでいる最中だ。女性がフォーラムに参加したのは、最初は情報収集のため、2回目は「自分がやっていることをブラッシュアップするため」だった。
 フォーラムには、PTAの「上部団体」の役員も何人も参加していた。上部団体には、郡や市区町村単位、都道府県と指定市単位、そして全国規模の組織がある。学校単位のPTAから市などの連合会へ、市から都道府県へ、都道府県から全国へと会費が「上へ」納められるシステム。逆に、研修会やイベントへの動員要請や連絡通達などは「上から下へ」流れていく。
 フォーラムと同じ日の昼ごろまで、PTAの全国組織「日本PTA全国協議会」の全国大会が同じ神戸で開かれていた。フォーラムの参加者100人に対し、全国大会の参加者は8千人を超えた。
 私は全国大会にも足を運んでみた。

歓迎アトラクションに元宝塚

 8月24日、神戸市の「ワールド記念ホール」に続々と人が集まってきた。PTAの全国組織「日本PTA全国協議会(日P)」が毎年この時期に開催している全国研究大会のメインイベントだ。
 参加費は1人5千円。参加者は交通費などもかかるが、上部団体から補助が出るケースが多い。歓迎アトラクションでは元宝塚歌劇団メンバーが「すみれの花咲く頃」を歌い、「記念講演」はメンタリストDaiGoが務めた。
 日Pは「国内最大の教育関係団体」を自任する。都道府県・指定市単位の64の連合会などが会員となり、児童・生徒1人当たり10円の会費を集める。「800万人の児童・生徒の保護者と先生から組織される」ともうたい、「保護者の代表」として国の教育施策にも意見する立場だ。だが、一般のPTA会員からは遠い存在で、日Pを知らない保護者は多い。
 8千人が集まった会場で、日P会長の佐藤秀行さん(46)が言及したのは「教員の働き方改革」だった。「先生が受け持っていたいろいろなものを、PTAや家庭が受け持つことで、役割分担をしなければいけない」。会場にいた神奈川県内のPTA会長の男性(51)はこの言葉に「予算をつけて対応すべきことなのに、無償でお願いできる便利なPTAに負担を押しつけるつもりでは」と危機感を抱いた。
 佐藤さんは取材に対し、PTA活動の負担軽減が必要としつつ、「(負担軽減と)矛盾しているが、先生の働き方を変えないと、将来先生になる子どもがいなくなって日本の教育が崩壊する危機的な状況だ」と理解を求めた。
 上部団体の存在意義に疑問を抱き、脱退した組織もある。
 奈良市PTA連合会がその一つだ。この春、奈良県PTA協議会を脱退し、自動的に日Pからも外れた。PTAのあり方などについて学ぶことや、子どもの教育環境向上のための活動を重視する中、行政に対して「情報提供」を求める県Pとの間に温度差を感じた。
 「情報は今の時代、自分で取れる。教職員数や学力向上についてもっと要望して欲しかった」と奈良市P連事務局長の岡田由美子さん(54)。上部団体が開催する大会にも「意義を感じなかった」。
 脱退で会費収入の約3分の1を占めていた、県Pへの分担金約60万円の支払いがなくなった分、独自の活動に集中できるようになり「悪影響は何もない」と言う。
 奈良市P連が力を入れる活動の一つが、市への要望だ。たとえば、PTAのお金が学校の備品などに使われている点。公教育なのに保護者負担が大きいことを問題視し、1975年にすでに市に対して負担軽減と公費の増額を要望した。「いつのまにか復活している」と気づき、今年8月、学校予算の増額を要求した。「『PTAが出すお金じゃなかった』と考えるきっかけになる」と、全会員に配る広報紙にも掲載している。
 事務局の駒川聡子さん(55)は話す。「最近は声を上げない雰囲気があるけど、訴えないと何も伝わらない。そのためのP連です」(田中聡子)

コメント

非公開コメント