構造的社会病理として理解する

10月10日の拙ブログで取り上げた神戸の小学校の教員間いじめは、この国の問題点を象徴する重大事件だ。このようないじめを生む構造がこの国には存在する。
基調は、考えずに同調することを調教された「良い子」たちが大量に存在することだ。ある意味、教育の成功・成果ということだが、小・中・高校と教員に支配されることになれ、自らの考えで行動することに怯える「良い子」、その成れの果てが今回の事件の若い教員をいじめた30・40代の男女教員たちだ。
ABEが図々しく「多様性」「みんなちがって、みんないい」などと演説しても、教育・学校にそのような自由は極めて少なくなっている。特別な教科「道徳」で心まで鋳型に押し込まれるような時代に、子どもたちが伸び伸びと自分を表現し、行動できるようになるはずがない。
この事件から学び、反省し、変えていくことは容易ではない。今後、数十年の課題として肝に銘じていく必要がある。


神戸の小学校
教員の若手いじめ 苦い教訓
いじめ事態「珍しくない」
2019年10月9日:東京新聞・ニュースの追跡

 小学校の教員が集団で後輩の若手教員をいじめる―。こんな信じ難い事態が神戸市で起きた。今回のケースでは、いじめは収束していないにもかかわらず校長が「解決済み」と市教育委員会に報告して発覚が遅れたほか、「教員同士のいじめは珍しくない」と指摘する専門家もいる。くみ取るべき教訓とは。
(稲垣太郎)

学校セキュリティ対策で閉鎖空間に

 いじめがあったのは私立東須磨小で、加害者は30~40代の男性3人と女性1人。同市教委の藤井秀典・教職員人事担当課長によると、いずれも「校内で中心的な力を持ち、経験の浅い教員を良い意味で指導しなければならない立場」だった。
 いじめの内容はあまりにもひどい。20代の男性教員を羽交い絞めにして激辛カレーを食べさせ、みみず腫れができるほど紙製の芯でしりをたたく、といったことを繰り返していたという。他の男性教員1人と女性教員2人も暴言やセクハラを受けており、市教委は加害教員4人を授業からはずし、事実上の謹慎にしている。
 こうした行為は昨年度に始まり、学校は今年6月に、いじめに関わっていない教員の申告で把握。校長は全教員から事情を聴き、20代の被害教員が「大丈夫です」と話したのを受け、市教委に「人間関係のトラブルがあったが収まった」と報告していた。結局、夏休み明けの9月2日に、被害教員が家族を通して出勤できなくなったと伝え、いじめが明るみに出た。
 藤井課長は「いじめをしてはいけないと教える立場の教員がこのようなことをするのは言語道断」と語るものの、市教委の対応も褒められたものではない。学校に「市教委の対策は必要ない」と言われ、そのまま何もしなかった。
 いじめは子ども同士だけで起こるものではない。教育評論家の尾木直樹氏は「指導力のない若手をリーダー的な教員がいじめることは珍しくなく、ほぼすべての授業を担当し、責任が集中しがちな小学校で特に多い。最近はセキュリティ対策が進んで出入りする人が減り、学校は外部の目が届かない閉鎖された空間になっている」と解説する。
 さらに尾木氏は「スクールソーシャルワーカーら教員以外の常勤者を入れ、PTAやサークル活動をする保護者らいろんな人に出入りしてもらい、教員の『市民性』を高めることが必要」と提言する。

校長など 事態矮小化し悪化する場合も

 いじめや学校事故などの調査・研究をしている一般社団法人「ここから未来」(東京都中野区)の大貫隆志・代表理事は「今回の教育の行為は暴行、傷害の犯罪」と指摘。その上で「『問題だ』と言うだけでなく、なぜそういうことをしたのかなど背景を十分に調べないと、再発防止策をつくっても的外れなものになってしまう」と訴える
 子ども同士のいじめでも、今回のように校長や教委が事態を重く受けとめなかったり、矮小化させようとしたりして状況が悪化するケースが少なくない。大貫氏は「学校や教委は、いじめが少ない方が評価が高くなると考えている」と分析し、こう唱える。
 「子どもが担任にいじめの相談をしても『悪ふざけ』とか『いじり』などの表現に変えられ、なかったものにされる。そうなると子どもは相談を諦め、深刻化する。いじめ防止対策推進法は、いじめ対策の常設の組織を置くよう学校に求めている。子どもたちにその存在を知らせることも改善に向けた第一歩になる」


教員いじめ、校長謝罪
「自分の責任大きい」 隠蔽は否定
2019年10月9日:朝日新聞

 神戸市須磨区の市立東須磨小学校の教員間で暴力や嫌がらせが繰り返されていた問題で、同校の仁王(におう)美貴校長(55)が9日、神戸市役所で会見した。学校側の対応の遅れについて反省の言葉を繰り返したが、「隠蔽(いんぺい)の意図はなかった」と強調した。
 仁王校長は冒頭、「関係者の皆さまに多大なご心配をおかけし、心からおわび申し上げます」と頭を下げ、学校として問題を把握した経緯や、その後の対応について説明した。
 仁王校長は今年4月に東須磨小の教頭から昇任。その直後から、加害教員4人について、複数教員から「同僚を侮蔑的なあだ名で呼んでいる」などと相談を受けていたと明らかにした。6月には市教委に教員間の人間関係の懸念を伝えたが、担当者は「何か手伝えることがあれば言って」と応じるにとどまった。
 7月に入り、被害者の一人である20代の男性教員が教頭との面談で「ハラスメント行為」を訴えた。校長は加害側教員にも聞き取り、ロール紙の芯で尻をたたく▽背中や脇腹をこづく▽男性教員の車の上に乗ったり車内で飲み物をわざとこぼしたりする――といった行為を確認した。
 加害教員らは「そこまで嫌がっていると思わなかった。悪ふざけが過ぎた」と説明。仁王校長は教員らを口頭で指導したが、市教委には詳細を伝えず、「教職員間のトラブルを指導した」と報告したという。
 しかし、9月から男性教員が学校を休み、家族からの相談で市教委が調査を開始。「激辛カレーを無理やり食べさせる」などの暴力行為の全体像が明らかになった。仁王校長は7月の時点で問題行為の内容を市教委に伝えなかったことが「(事態が深刻化した)一番の要因で、自分の責任が大きい」と述べた。
 ただ、その前から市教委に必要な相談はしていたとも強調し、「問題を隠蔽する意図は一切ありませんでした」と繰り返した。
 朝日新聞は男性教員が激辛カレーを食べさせられる様子を撮影した動画を関係者から入手した。「ごめんなさい。辛いの好きじゃないんです」と抵抗する男性教員を別の教員が羽交い締めにし、「はよ、はよ」とせかしていた。男性教員はカレーを口にした後、声をあげて室内を走り回り、加害側の教員らが笑いながら眺める様子も記録されていた。(川嶋かえ)

「大人のいじめ」相談、10年で倍増

 なぜ、一定の教員経験を積んだはずの30~40代の教諭たちが、若手への加害行為を繰り返していたのか。
 神戸市立中学校のある校長は「先生の担当教科が分かれていない小学校は、中学よりも先生同士の距離が近い」と分析。「学生サークルのような調子で先輩が後輩を扱い続けるうちに、『何をやっても許される』という勘違いがエスカレートしたのではないか。ただ行為の内容は論外で、原因は一人ひとりが教師としての資質を欠いていたことだとしか言えない」と話す。
 全教科を同じように教えているため「できる、できないの評価がつけやすく、力関係も生まれやすい」と指摘。「力がある人物を中心に据えたほうが、管理職としても学校運営がしやすくなる。こうした運営の中で、今回のような問題が生じる素地がつくられたのではないか」と言う。
 兵庫県の阪神地域で長く勤めた元中学校長は「管理職は若手をまとめる力のある中堅以上の教員を頼りにせざるを得ない。厳しいことを言うのは勇気がいる」と指摘。「校内で力を持つ教員が加害者側にいれば、周りの教員は声を上げづらい。子どものいじめの構図と同じでは」とみる。
 教育現場にとどまらず、働く人が職場で嫌がらせやいじめを受けたという相談は、ここ10年間で倍増している。厚生労働省によると、各地の労働基準監督署などに寄せられた相談数は、2009年度に3万5759件だったのが、18年度には8万2797件になった。同省雇用環境・均等局の担当者は「労働者が自分の受けている行為を、職場環境の問題としてとらえる意識が広がったことも大きい」と分析している。

教育評論家の尾木直樹さんの話

 学校管理職の認識が甘い。問題の兆しに気づいていたのに、事態を表面的にとらえ、根っこを探ろうとしなかった。学校外の人たちと関わる機会が少ない教師集団にはもともと内向きな体質がある。近年は教育現場にも成果主義が持ち込まれ、「タテ社会」の論理が強まっている。ともに助け合う意識が損なわれ、指導力の未熟な若手教員を見下す風潮がある。多くの学校で大なり小なり教員間のいじめはある。条件がそろえば、どの学校でも起こり得る問題とみて対処を考えていくべきだ。

教員間暴力問題の経過(会見での説明から)

2018年以降 被害教員への暴力や嫌がらせが相次ぐ
19年4月 仁王校長が教頭から昇任
19年4~5月 複数の教員が加害教員の言動について学校側へ相談
同年6月 校長が市教委に「教職員間の関係が心配」と伝える。市教委側は「手伝えることがあれば言ってほしい」
同年7月 被害教員が教頭に暴力被害を訴える。校長は加害教員を口頭で指導し、市教委に「人間関係のトラブルを指導」と報告
同年9月 被害教員の一人が出勤できなくなり、家族が市教委に「複数教員から長期間パワハラを受けていた」と相談。市教委が調査を始め、激辛カレーを食べさせていた行為なども判明
10月1日 加害教員が学校現場の指導から外される


「就活ばかり」
日本の若者が世界に取り残される
2019年10月9日:ニューズウィーク
大人の怠慢を糾弾するスウェーデンの少女トゥーンベリ PHILIPPE WOJAZER-REUTERS

<欧米のミレニアル世代が
グローバルな課題に声を上げるなかで日本は「ガラパゴス」>
この頃の世界を見ていると、何か新しいものがやって来るという予感がする。
アメリカは、トランプ大統領が来年の大統領選のライバルになり得るジョー・バイデン前副大統領の不正を調べるようウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけた、かけないで持ち切りだ。弾劾が成立することはあるまいが、あおりでバイデンが退場すれば、民主党ではエリザベス・ウォーレン上院議員が台頭する。彼女は金融界をはじめとする大企業のエゴを強く批判し、公平な分配を標榜する人物だ。困窮白人層をポピュリズムであおりつつ、その実、法人税の大幅引き下げで大企業の利益を図ってきたトランプは守勢に追い込まれるだろう。
ウォーレン自身は70歳だが、なれ合いや腐敗を許さない点で、1980年代から2000年代初頭までに生まれたミレニアル世代の旗手ともいえる。ビルとヒラリーのクリントン夫妻が代表するベビーブーマー世代は、日本の団塊世代と同じく学生時代は反ベトナム戦争、ロック音楽、ヒッピーの反権力勢力だった。ところが今では利権社会にどっぷりつかっている。
これに対しミレニアル世代は、アメリカが国外のことに過度に介入するのではなく、同盟国や国際機関と共に世界を良くしていくことをより好む。「国家」「自由の価値観」などのイデオロギーあるいは出世志向に取りつかれたこれまでの世代と違って、環境や自分たちの生活ぶり、人間としての生活を改善することに(それもグローバルに)、まず関心を示すのだ。

「トランプ後」を見据えよ

同様の変化は世界のいくつかの国でも見られる。ロシアでも、アメリカのミレニアル世代と同じ若い世代が新しい文化、政治運動を生んでいる。彼らは政府の腐敗を強く非難し、経済と社会の一新を求める。20年にわたって権力を独占するプーチン大統領と与党「統一ロシア」は失笑を買うだけの古くさい存在だ。若者は本を読まず、直感的かつ衝動的で、政治は未経験でもネットでフォロワーの多いブロガーやラッパーの周りに結集する。
ウクライナでも、テレビ界出身のゼレンスキーが腐敗政治といつまでも続く戦争に飽き飽きした国民の支持で、73%もの票を獲得して大統領になった。異常気象に危機感を募らせたスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリは国連で、「大人たちの怠慢を私たちは許さない」と演説。彼女の声にドイツなどの中高生が賛同し、金曜午後には学校を早退して環境保全を訴える運動を展開した。
毎週デモを続ける香港の青年たちも、「国家」を嫌い、自分たちの権利を大事にする点ではグローバルな流れに沿っている。ロシアの若者と同じく、彼らもSNSを多用して自然発生的、ゲリラ的な集会を繰り返す。
若者はいつの時代も反体制的なもので、現在の動きもベビーブーマー世代のように社会の現実にのみ込まれていくかもしれない。ところが今の日本では、若者の政権支持率が高く、最初から社会にのみ込まれている。
関西電力と原発所在地自治体の間で明らかになったような、隠微な「ずぶずぶ」の癒着構造は日本中に残っている。製造業には適していた終身雇用も、今ではITエンジニアの柔軟な処遇やスタートアップを阻害する。そして長期化した安倍政権は官邸一極支配を強め、内・外政とも警察出身者を重用する点で、ソ連回帰の傾向を強めるロシアとよく似たものになっている。就活以外にも若者がやること、声を上げるべきことは、いっぱいあるだろう。
世界の若者層に見られる脱・国家主義、人間重視、ボランティア精神などの新潮流は、実は日本の若者とも親和性が高い。安倍政権も、せっかくの長期政権の力を憲法改正など国としての守りを固めることばかりに使わず、「トランプ後」も見越した環境・エネルギーや格差是正、途上国・紛争国復興への援助強化などの政策を世界に先駆けて打ち出してほしい。東京五輪はその格好の場となるだろう。
<本誌2019年10月15日号掲載>


民間わずか6% 国家公務員は21% ただし「1か月以内」72%
男性育休 まだまだ
2019年10月8日:東京新聞・こちら特報部

 小泉進次郎衆院議員が「(取得を)考えている」と発言して注目を集めた男性の育児休業。昨年度、国家公務員は20%超が取得する一方、民間は一桁の6・16%にとどまり、「2020年度までに13%」とする国の目標達成は絶望的になっている。高齢化が進み、親の介護などに当たるケースも増える中、中長期の休みを取得しやすい社会環境にするにはどうすればいいのか。           (安藤恭子、中山岳)

 人事院は先月30日、昨年度に育休を取った男性の国家公務員は1350人だったと発表した。初めて対象職員の2割を超え、21・6%になった。
 人事院の村山大介・職員福祉課長補佐は「省庁は組織の規模が比較的大きく、業務分担の変更でカバーできることが大きい」と分析する。
 子どもが生まれる予定や育休取得の意向などを管理職が男性職員に確認するよう、内閣人事局が各省庁に推奨しているのもプラス材料。状況を書き込んだ面接シートは人事担当部署に伝わり、実際に育休を取得した際の業務分担や人員配置の準備に活用される。
 ただ、男性の育休取得期間は「1カ月以内」が72・1%で最多。平均は1・8カ月と、女性の16・4カ月と比べ隔たりが大きい。調査対象も常勤の一般職のみで、自衛官などの特別職を含めると、一昨年度の男性の取得率は10%になる。
 育休制度は、1992年施行の育児休業法に基づく。育児・介護休業法への改正を経て、現在は子が1歳になるまで取得可能で、保育所に入れないなどの事情があると最長2歳まで延長できる。休業中は、雇用保険から休業前賃金の最大67%(上限は月額約304000円)が給付される。
 国連児童基金(ユニセフ)が6月に出した報告書によれば、給付金などの制度がある先進国41カ国のうち、男性が取得できる育休期間の長さで日本は1位だった。ただし「実際に取得した父親はわずか」とも指摘された。
 上司が部下の育児や介護を後押しする「イクボス宣言」の広がりなど、意識改革に取り組む自治体や企業も増えている。国は2016年に「両立支援等助成金」を創設。社員の育休取得に積極的と認められる企業に、中小の場合、1人目は原則57万円、最大10人まで取得日数に応じて助成している。来年度予算の概算要求には前年度を29億円上回る65億円を計上した。
 とはいえ男性の育休取得率は、国の目標である13%には程遠い。女性の取得率が2007年度以降、80%以上で推移しているのに対し、男性は1996年度の0・12%から徐々に増えているものの、昨年度で6・16%。厚生労働省職業生活両立課の福田有香氏は「従業員の少ない企業ほど代わりの人がおらず、男性の育休取得のハードルが高い。助成制度が、取得しやすい風土づくりのきっかけになれば」と話す。
 昨年5月、当時自民党の幹事長代行だった萩生田光一文部科学省が乳児期の育児について「ママがいいに決まっている」と言って物議を醸したように、女性に育児を求める意識は日本に根強い。ニュージーランドの国会の男性議長が今年8月、別の議員が連れてきた生後6週間の赤ちゃんにミルクを与えながら議事を進行した一幕とは対照的だ。

デスクメモ
 10月19日は「10(トウサン=父さん)と19(イクジ=育児)」の語呂合わせで、「イクメンの日」だそう。各家庭で事情はそれぞれとはいえ、「家のことは妻に任せている」で済む時代ではとっくになくなっている。改めて育児や家事の分担について見直してはどうだろう。            (千)

成長を日々実感 日本の古い価値観 壁に
忖度せず どんどん

 男性の多くが育休を取ろうとしない理由はどこにあるのか。厚生労働省の委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティングは2017年、末子の育休を取らなかった約1600人の男性正社員に調査。複数回答で、「業務が繁忙・人手不足」が27・8%、「会社に育児休業制度が整備されていなかった」が27・5%、「取得しづらい雰囲気だった」が25・4%に上った。
 ただ、育休を取りづらい雰囲気があると感じるのは本人の思い込みだとする研究結果がある。九州大大学院の山口裕幸教授(社会心理学)らのグループは16年、20~40代の男性約300人にアンケート。育休に肯定的な人が7割超を占めた半面、うち半数超が「他者は育休に悪い印象を持っている」と捉えていたことが判明。育休を取るつもりがあるか尋ねると「どちらかというと取らない」と答える傾向が強かった。
 山口氏は「職場で確認すれば育休に肯定的な人が少なくないと分かるのに、否定的な人が多いと思い込んでいる。育休は自分に不利になると考えて控える傾向がうかがえる」と解説し、「働くことを重んじる風潮が強く、職場で普段から育休についてざっくばらんに話し合う雰囲気がないとも考えられる」と分析する。
 部下の男性に育休取得を促す動きが企業の管理職の間に鈍く「いまだに育児を女性の仕事とみる価値観が残っている人が少なくない」と唱えるのは、働き方改革などの研究をしている日本総合研究所スペシャリストの小島明子氏。「雇用の継続や収入減に対する不安から、取得に踏み切れない非正規労働者も多いだろう」と主張する。
 小島氏は「育休を取りづらい原因は、人手不足や周りにサポートする環境がないなどさまざま。まず課題を把握し、対策を取る必要がある。中小企業などはトップの号令で取得が進む傾向もある」と語る。
 そうした中で、男性従業員に積極的に育休を取らせようとする企業も出ている。三菱UFJ銀行は5月から、2歳未満の子どもがいる男性行員に約1カ月の育休を取得するよう強く推奨している。積水ハウスも昨年9月、男性社員は最短1カ月の育休を取る制度を導入した。
 実際に育休を取得中の会社員勝間信行さん(40)=横浜市神奈川区=は、昨年9月に生まれた三男の頭をなでながら「この子と一緒に過ごす時間が増えた」と話した。長男(6つ)と次男(4つ)の時は妻(41)にほぼ任せっきりだった。経験から「今回こそは」と考え、来年4月まで育休を取る予定だ。
 家事は同様に育休中の妻と分担し、食事は勝間さんが担当。長男と次男の保育所の送り迎えをしたり、三男の離乳食を作ったりしていると、あっという間に夜になっているといい、「ただ見ているのと、自分でやるのは大違いだった」と笑う。それでも「妻と話をする時間が増えたし、子どもの成長も日々確認できる。収入は減るかもしれないけど、全く後悔していない」と強調する。
 父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也代表理事は、性別を問わず企業の管理職を対象に、部下の育児と仕事の両立を支援する手法を教えるセミナーを開いている。「管理職の意識を変えれば、15~20年後には男性の育休取得が当たり前になるはずだ」
 見込める効果は、それだけではないという。「50代の管理職は、年齢的に親の介護に直面している人が少なくない。育児で当たり前に休める企業は介護休業も取りやすくなる。介護離職の防止にもつながる」


現役教師「内申制度が教育を歪めている」
 教育委が学校に乗り込んで
“取り調べ”の理由
2019年10月11日:AERA

 高校入試に影響を与える「内申書」。そのあり方をめぐって、中学生の子を持つ親や、教師から様々な声があがっている。AERA 2019年10月14日号では内申制度について特集。その実態を追った。

*  *  *
「内申」と聞くと、2年前のモヤモヤした気持ちが蘇る。都内に住む女性(51)の娘の中学は近隣でも通知表の評定点が厳しいことで有名だった。中2の塾の面談ではこう言われた。

「娘さんは模試の点だけ見れば地元の都立トップ高は十分狙える。だけどこの内申点だと合格は無理。あの中学は基準が厳しいから仕方ないですけどね」

 学期末、暗い顔で成績表を持ち帰った娘もポツリとこぼした。

「隣の学校だったら5をもらえたかもしれないのに」

 女性は、一時は転校すら考えたという。幸い娘はトップ校ではないが行きたかった高校に合格した。だが、来年は息子が同じ中学への進学を控える。

「内申点の1点の差で受けられる高校や合否までもが変わってくるのに学校による差は放置されている。気が重いです」(母親)

 アエラでは、「内申書」についてアンケートを実施した。回答については後述するとして、内申の基本を押さえておこう。

 学習の記録や部活動、出欠日数などが記載された「内申書」(正式には「調査書」)は親世代にもお馴染みだが、都道府県によって内申点の算出法が違うことはあまり知られていない。ベースとなる各教科の「評定」は2002年度以降、相対評価から絶対評価に変わった。現在は「関心・意欲・態度」や「知識・理解」など細かい観点に沿ってA~Cの3段階で絶対評価し、それをもとに5段階で評定を出す。原則としてAが多いほど5に近づくが、項目すべてがAであっても「総合的に評価」した結果、4になることもある。

 アンケートで目立ったのはこの評定への不満だ。冒頭の女性のほかにも「先生の主観や生徒に対する印象で決められてしまう」(神奈川県、44歳、保護者)「地域すべての学校で平等に成績がつけられているのか疑問」(東京都、58歳、保護者)といった声が多くあがった。
「内申制度がかえって子どもの意欲を削いでいるのでは」と疑問を投げかけたのは、神奈川県に住む女性(52)。公立中3年の息子は2年生の時、怪我のために体育の実技試験などを受けられない時期があった。腹痛で遅刻が続いたことも重なり、成績は目に見えて低下。それが3年生になってからは体調も戻り、受験への気合も高まって成績は急上昇した。ところが女性は「仮にこれからオール5を取っても、志望校は1、2ランク下げざるを得ない」と言う。

 同県では9教科×5段階評価で2年時を45点満点、3年時を倍の90点満点の計135点満点で計算する。2年時の成績が3分の1カウントされるため、3年で頑張っても、伸びには限界があるのだという。女性はこう言う。

「思春期の微妙な時期を、運よく乗り切れた子だけが高評価され、ちょっとでもつまずくと挽回できない。教育とは子どものやる気を促し、頑張りを評価すべきものなのに、全く逆になっている」

 内申制度が教育を歪めているという指摘は教師からも聞かれた。都内の公立中学の教員(35)は数年前のことが忘れられない。

「おたくの学校で全教科において1の評定が1人もついていない理由を知りたい」

 そう言って教育委員会が学校に乗り込み、全担任が評価基準について事細かに聞かれたのだ。「一人ひとりの確かな学力の定着」を目指して絶対評価が導入されたのだから、1がないことは本来喜ばしいことなのに「まるで取り調べのようだった」という。教員は憤りを隠せない。

「職員室で『うちの学年は今年1がついて良かった』という会話が交わされることもあります。公平性は大事ですが、それを外部に示す手段として何が何でも1をつけるなんて、どう考えてもおかしいでしょう」

(編集部・石臥薫子)

※AERA 2019年10月14日号より抜粋

コメント

こん

無事です。
台風19号(ハギビス)の直撃は免れ、築60年の我が家は強風に耐え無事でした。
現在は、風雨も収まり静かです。@千葉市中央区
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