日本の持続不可能性を象徴する「安倍一族」

10月4日に安倍晋三首相は国会で所信表明演説を行った。そのニュースで、ABEが「新しい時代の日本に求められるのは、多様性であります。みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を、根本から見直していく必要があります。」という場面を見て、「どの口が言うか!」と思わず口にしてしまった。「多様性」「違いを認める」ては真逆のことをし続けているのがABEだからだ。
自分の気に食わないものは認めず、切り捨て、潰しにかかる。安倍一族全体の思想だ。その首領であるABEが多様性を語る陳腐さは、昨日(10月8日)、愛知総合文化セターの「あいちトリエンナーレ2019『表現の不自由展、その後」の展示再開に会場前で、短時間の「座り込み」のパーフォーマンスを見せてドヤ顔の河村名古屋市長の「陳腐な正義感」に通底している。話題が違うが、兵庫県の小学校で中堅教員が若い教員をいじめたという幼稚な事件がニュースとなている。カレラも自分たちの“正義”を疑わず、若い教員へのいじめを認識できていない。こういう幼稚な知性がABEによって自信をつけて社会で大手を振るようになってきた。これのような傲慢で、縮小していく日本が持続できるわけがない。今、たいへんな未来が控えていることを実感し、悲しくなる。


安倍政権 長期記録更新 なぜ続く
実績「?」 でも「4選」の声
「標語」繰り出し都合よく修正
2019年10月2日:東京新聞・こちら特報部

 安倍晋三首相の通算在職日数が戦後最長となったことを祝う会が9月30日夜、自民党の二階俊博幹事長らによって開かれた。すでに8月24日に佐藤栄作を超え、来月20日には歴代最長の桂太郎を超える見通し。二階幹事長などは最近、「安倍首相の党総裁4選論」をぶち上げる始末だが、それに対する強い異論さえ出てこない。いったいこの政権はなぜここまで続くのか、いつ終わりが来るのか。
(片山夏子、安藤恭子)

 「皆さんの協力のおかげです。ありがとう」
 安倍晋三首相は9月30日夜の祝宴で、自民党の二階俊博幹事長や岸田文雄政調会長に、こう語ったという。これに先立つ党本部の記者会見で二階氏は「国際社会でこれほど実績を上げた首相は最近例を見ない」とし、最長記録の「理由」を上げた。
 二階氏の言が正しいかどうかは別にして、とにかく安倍首相の通算在職日数は長い。2006年の第一次安倍内閣は安倍氏が病気などによりわずか1年と1日で退陣したが、民主党政権を下野させた2012年12月の衆院選、第二次安倍内閣が組閣後から今月1日までは、2471日に上る。合計で2837日だ。
 戦後、これまでの最長記録は、安倍首相の大叔父である佐藤栄作の1964年11月~72年7月の2798日で、安倍総理はこれを今年8月24日に超えた。11月20日まで務めれば、明治~大正期に何度も首相を務めた桂太郎の2886日を超えて歴代最長の首相在職日数となる。
 在職日数で他にランク入りするのは初代首相伊藤博文の2720日(歴代4位)、吉田茂が2616日(同5位)とそうそうたる顔触れだ。功罪はもちろんあるにしても、それぞれに歴史の教科書に載るような「実績」を残している。
 伊藤博文は何しろ初代首相で、実質的には大日本帝国憲法をつくった。桂太郎は日露戦争で勝利した。吉田茂はサンフランシスコ講和条約に調印して独立を回復した。佐藤栄作は「非核三原則」を打ち出し、沖縄返還を実現した。
 そうした歴史上の政治家と肩を並べ、追い抜いたのが安倍晋三首相である。さて、その実績は。
 政治評論家の有馬晴海氏は「消費税の税率を5%から倍増させたり、特定秘密保護法や集団的自衛権行使を認める安保法制などは強行してきたが、全ての女性が輝く社会づくり、一億総活躍社会、アベノミクスなど選挙のたびに勢いよくぶち上げた標語は、批判や不都合があると修正してきた」と指摘する。
 それらの標語は、いつの間にか安倍首相は口にしないようになり、実現されたかどうかも分からないまま、新たな標語が繰り出される。「ひところ盛んに言われた『国内総生産(GDP)600兆円を実現』というのも最近、聞かなくなった。標語がどんどん変わり、実績がつくれていない」
 歴史に名を残す実績となれば、安倍首相が執念を燃やす憲法改正だが、有馬氏は「なかなかそれがうまくいかない中、もはや、歴代の首相の在職日数を抜き最長記録樹立で名を馳せようという方向になっているのだろう」と推測する。
 実際、二階氏は30日の党本部での記者会見で「国民の『支援しよう』と言う声が自然と起こってくる」として安倍首相の総裁選連続4選を期待した。こうなるといつまでやるのか終わりが見えない。

8月に「戦後最長」→来月で「歴代最長」に
民主批判 外患利用 報道統制 「正義」演出し選挙に勝利

 政権長期化の要因として大きいのは「国政選挙での強さ」と指摘するのは、中北浩爾・一橋大教授(政治学)だ。
 安倍首相は2012年12月の衆院選で、政権を奪還。その後の衆院選で三勝し、今年7月の参院選も前回選より議席は減らしたものの、自民、公明両党で改選過半数を確保した。「衆院の小選挙区制は、1票でも多ければ、選挙区を独占できる。勝者総取り制度。与党が下手をすれば、政権を奪われる緊張感があるから機能するというのが、本来の狙いだったはずが、今はそれが起きない。政権が暴走しても止められない」
 では、なぜ選挙に強いのか。「悪夢の民主党政権」という安倍首相の発言は、自民への支持を呼び込んできたが、実は旧民主党の政策を取り込んでいる部分もある。保育幼児教育や高等教育の無償化などはかつて「子育てを家族から奪い取る」と安倍首相も激しく批判した、子ども手当などの旧民主党政策と重なる。
 「右寄りの政策に振れた野党時代と違い、本来の自民は融通無碍。過去にとらわれず取り組む。組織でまさる自公と、選挙で共闘しても共産党を含む連立に否定的な野党側では、地力の差が大きい。まるでジャイアンとのび太」
 株高や企業利益などにより、アベノミクスは成功しているような印象を与えてきたが、小幡續・慶應大大学院准教授(企業金融)は「異次元の金融緩和などで、短期的な景気を追求したポピュリズム。世界のバブルの持続を背景に支持されてきただけ」とばっさり、「目先の株高より教育の質を向上し、人への投資を進めなければ真の経済成長は見込めない」と指摘する。
 一方、「外患」をうまく利用してきたとの見方もある。自民が大勝した17年衆院選では「北朝鮮のおかげ」と麻生太郎副総理兼財務相が吐露した通りだ。「安倍政権は『やってる感』を醸し出すのがうまい」と言うのは、遠藤誠治・成蹊大教授(国際政治学)。
 「米朝首脳会談を経て、北朝鮮批判が鳴りをひそめると、今度は徴用工問題などで韓国への強硬姿勢を見せるようになった。自らもめ事を起こしながら、対処姿を見せるというマッチポンプ的流れを、国民は見させられている」
 政権維持のため、国民の視線を外に向けるのは、権力者の常套手段でもある。遠藤教授は「安倍外交の現状を見れば、米国との貿易交渉は押し込まれ、朝鮮半島の非核化を目指す国際社会のプレーヤーにもなれず北方領土返還も遠ざかった。見せ掛けの安定に過ぎない」と批判する。
 さらに元NHKプロデューサーの永田浩二・武蔵大教授(社会学)は「安倍政権のメディアコントロールも、長期政権の要因としてある」と言う。14年の衆院選以降、安倍政権は「公平な報道」を建前にテレビ局などに圧力を加えた。16年には当時の高市早苗総務相が停波の可能性に言及した。「懐柔と圧力で批判的な報道は抑えつけ、リベラルなキャスターは事実上、交代させられた。異論を伝えられない不健全なメディア状況だ」。一方、17年の憲法記念日の読売新聞紙面は、改憲への意欲を語る安倍首相の単独インタビュを展開。安倍首相は国会で「読売新聞を熟読してほしい」と語った。

「ひずみ」広がり 地方から声も

 先月の共同通信世論調査の内閣支持率は55%。政権はなお盤石のようだが、永田氏は「長期政権のひずみが広がりつつある」と終わりの始まりを見出す。
 「消費税導入などの陰で、痛みを感じる人たちも増えている。辺野古新基地建設や、イージス・アショアの配備に反対し、地方の知事も声を上げている。我慢せず、現状を変えようと声を上げる動きも、広がるのではないか」

デスクメモ
 何か大宰相らしい器量が伝わるエピソードや、佐藤栄作の「人事の佐藤」のような二つ名はないだろうかと振り返っても、何も思い浮かばないのは、なぜだろうか。彼が大宰相ではないから?そんなことを言うと「非国民だ」と指弾されそうな空気をつくったことだけは、確かなのだが。      (歩)


自民に絶望「国が壊れる」
 25年の沈黙破った男の独白
2019年10月3日:朝日新聞

 かつて自民党で将来の首相候補と目され、汚職事件での逮捕、失職を経てメディアの取材に沈黙を貫いてきた中村喜四郎衆院議員(70)=当選14回=が朝日新聞のインタビューに応じた。無所属の立場で安倍政権に対抗できる「強い野党」づくりに心血を注ぐ理由を語った。自他ともに認める保守政治家を突き動かしたのは、今の自民党に対する「絶望」だった。

自民党は、おそろしく権威主義的になってしまった

 ――ゼネコン汚職事件で1994年に逮捕され、最高裁まで争いましたが、2003年に実刑が確定し、失職しました。この間、貫いてきた沈黙を破って、インタビューを受けた理由は何ですか。
 「刑事事件がありましたからね。事件のことをああでもない、こうでもないと語っても意味がない。だから20年近く何もしゃべりませんでした。だけど、日本はもう限界だなと思った。このままでは国が壊れてしまうと考え、野党に協力することにしました。有権者は、私を自民系の政治家だと見ています。野党にかじを切った理由を伝えなくてはならないと思いました。自民党は変わってしまった」
今の自民党に対する思いや野党が強くなるための戦略――。
――大学卒業後、田中角栄元首相の秘書になり、27歳で衆院議員に初当選しました。旧竹下派で将来の首相候補として嘱望され、40歳で初入閣し、その後建設相にも抜擢(ばってき)されました。自民党政治を体現してきた中村さんがいう党の変化とは何でしょう。
 「自民党は、おそろしく権威主義的になってしまいました。反対意見を排除して、敵とみなした者を厳しく攻撃する。総裁選で安倍晋三首相と争った石破茂さんは、参院選であまり応援演説を頼まれなかった。党がそういう雰囲気をつくっているように見えます」
 「政府内では内閣人事局に人事を握られた官僚が、首相官邸を向かざるを得ないシステムができあがった。森友・加計問題が象徴的ですが、忖度(そんたく)政治はますます強まるでしょう。政治にまともな議論がなくなったのは深刻です。消費増税や財政再建についても、先の見通しが立たないまま、言っていることがころころ変わる。一番問題なのは北方領土でしょう。2島返還、あれはない。自民党が長年主張してきた4島返還を突然変えた。領土問題は国の根幹で、譲ってはいけないところだ」
 ――なぜ自民党は変わったのでしょうか。
 「選挙制度が大きいでしょうね。衆院が小選挙区制になって、党本部の公認権が強まり統制力が増しました。議員は刺客を立てられることを恐れ、党執行部を絶対視するようになりました。首相が訳の分からない解散をしていることも大きい。消費税を上げないとか国難突破とか、有権者が選択しようがない理由で解散する。自民党にもおかしいと思っている人がいるが、そのまま通ってしまう」
 「権力を握る者は、権力に抑制的でなければならない。反対意見をきちんと聞く。失敗したら自己批判もする。昔の自民党はそういう大人の政党でした。良くも悪くも派閥均衡型で、全員野球をめざすことが党運営の基本でした。批判もありましたが、活気があったことは間違いありません。いまは権力への抑止力がなくなっている。非常に恐ろしいことです。民主主義が壊され、独裁的な体制にも入りかねないと思っています」

閉塞感の中で政治家たちは目先のことばかり

 ――衆院の選挙制度を小選挙区から中選挙区に戻すべきだということですか。
 「それをやれば政治が変わります。派閥が活発で金権問題があったと言われた中選挙区の時と今を比べたら、どっちがいいのか。今は政治家がものを言わない。小選挙区で落ちた人が比例区で復活してくる。閉塞(へいそく)感の中で、目先のことしか追いかけない。政治家の発言がまことに軽い。こんなことは中選挙区では絶対になかったことですよ。かつて我々は小選挙区に反対して守旧派と呼ばれたが、今度は改革派として『選挙制度を変えろ』と言う番が来たと思います」
 ――7月の参院選では競合する野党の調整をし、8月の埼玉県知事選では野党系候補の支援に回りました。野党に協力すれば政治は変わるのでしょうか。
 「野党が弱いことも、自民党がこうなっている理由です。自民党内から健全性を取り戻す考え方は絶望的です。野党を強くして対抗勢力を育てるのも、保守政治家の仕事ではないかと思います」

日本の再建につながる民主主義 無心で頑張るしかない

 ――どういうことですか。
 「国会が空洞化し、数の力で物事が決まっていく中で、国民の声が届かなくなってきた。私の目標は、国民が政治への関心を取り戻すことです。野党がしっかりとした主義主張、戦略を持って与党に迫っていく。一番良いのは、野党が政権を取ることです。ただ、政権交代しなくても、野党が50議席増やしたら政治に緊張感が生まれる。自民党に『このままでは生き残れない』と自浄作用が生まれる。保守に路線を切るばかりではなく、リベラルに切ろうという動きが生まれてくる。野党が自民党と本当のせめぎ合いをすることが、日本の再建につながる。それこそが民主主義です」
 ――無所属で活動中ですが、たとえば立憲民主党に入る可能性はありますか。
 「私はまだ無所属でいます。その方が選挙協力を野党の皆さんにお願いしやすい。刑事事件で有罪になった人間です。その間、地元の人や国民に迷惑をかけ通した。それを取り戻すには無心で頑張るしかない。日本再建に情熱を傾けたい気持ちは、最初に当選した時よりも、今の方が強いです」(聞き手・寺本大蔵)


安倍首相の所信表明 演説全文
2019年10月4日:毎日新聞

首相官邸に入る安倍晋三首相=首相官邸で2019年10月4日午前9時24分、川田雅浩撮影

 安倍晋三首相は4日、同日召集された第200臨時国会で所信表明演説を行った。演説内容は以下の通り
第200回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
令和元年10月4日

1 はじめに

第200回国会に当たり、所信を申し上げます。
 日本国憲法の下、第1回の国会、初の国会が開かれた昭和22年、戦争で全てを失った我が国は、いまだ、塗炭の苦しみの中にありました。
 しかし、この議場に集った先人たちのまなざしは、ただ未来にのみ向けられていた。ひたすらにこの国の未来を信じ、大きな責任感の下に議論を重ね、そして、力強い復興を成し遂げました。高度成長を実現し、平和で豊かな日本を、今を生きる私たちに引き渡してくれました。
 70年以上にわたる先人たちの歩みに、心から敬意を表します。
 本年5月、天皇陛下がご即位されました。即位礼正殿の儀をはじめとする各式典がつつがなく、国民がこぞって寿(ことほ)ぐ中で行われるよう、内閣を挙げて準備を進めてまいります。
 昭和、平成、そして令和。70年余りの間に、世の中は、世界は、一変しました。新しい時代を迎え、その変化のスピードはますます加速していくことでしょう。
 そうした中にあっても、先人たちから受け継いだ、我が国の平和と繁栄は、必ずや守り抜いていく。そして、新しい令和の時代にふさわしい、希望にあふれ、誇りある日本を創り上げ、次の世代へと引き渡していく。その責任を、皆さん、共に、果たしていこうではありませんか。

2 1億総活躍社会

(教育無償化)

 最大の挑戦は、急速に進む少子高齢化です。
 今月、3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現しました。小学校、中学校9年間の普通教育無償化以来、70年ぶりの大改革です。来年4月からは、真に必要な子どもたちの高等教育も無償化いたします。
 子育て世代の負担を減らします。そして、子どもたちの誰もが、家庭の経済状況に関わらず、自らの夢に向かって頑張ることができる。そうした社会を創り上げます。国難とも呼ぶべき少子化に真正面から立ち向かってまいります。

(1億総活躍社会)

 15年前、一人のALS患者の方にお会いしました。
 「人間どんな姿になろうとも、人生をエンジョイできる」
 全身がまひしていても弾くことができるギターを自ら開発。演奏会にも伺いましたが、バンド活動に打ち込んでおられます。更には、介護サービス事業の経営にも携わる。その多彩な活動ぶりを、長年、目の当たりにしてきました。
 令和になって初めての国政選挙での、舩後靖彦さんの当選を、友人として、心よりお祝い申し上げます。
 障害や難病のある方々が、仕事でも、地域でも、その個性を発揮して、いきいきと活躍できる、令和の時代を創り上げるため、国政の場で、共に、力を合わせていきたいと考えております。
 令和を迎えた今こそ、新しい国創りを進める時。これまでの発想にとらわれることなく、次なる時代を切り開いていくべきです。
 かつて採られた施設入所政策の下、ハンセン病の患者・元患者のご家族の皆様に、極めて厳しい偏見、差別が存在したことは、厳然たる事実です。そのことを率直に認め、訴訟への参加・不参加を問わず、新たな補償の措置を早急に実施します。差別、偏見の根絶に向けて、政府一丸となって全力を尽くします。
 「みんなちがって、みんないい」
 新しい時代の日本に求められるのは、多様性であります。みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を、根本から見直していく必要があります。多様性を認め合い、全ての人がその個性を生かすことができる。そうした社会を創ることで、少子高齢化という大きな壁も、必ずや克服できるはずです。
 若者もお年寄りも、女性や男性も、障害や難病のある方も、更には、一度失敗した方も、誰もが、思う存分その能力を発揮できる、1億総活躍社会を、皆さん、共に、創り上げようではありませんか。

(全世代型社会保障)

 1億総活躍社会の完成に向かって、多様な学び、多様な働き方、そして多様なライフスタイルに応じて安心できる社会保障制度。三つの改革に、安倍内閣は果敢に挑戦いたします。
 65歳を超えて働きたい。8割の方がそう願っておられます。高齢者の皆さんの雇用は、この6年間で、新たに250万人増えました。その豊富な経験や知恵は、日本社会の大きな財産です。
 意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保します。いつまでも健康でいられるよう、予防にも重点を置いた医療や介護の充実を進めます。同一労働同一賃金によって正規・非正規の壁がなくなる中で、厚生年金の適用範囲を拡大し、老後の安心を確保します。
 年金、医療、介護、労働など社会保障全般にわたって、人生100年時代を見据えた改革を果断に進めます。令和の時代にふさわしい、子どもからお年寄りまで全ての世代が安心できる社会保障制度を、大胆に構想してまいります。

3 地方創生

(成長戦略)

 先般の年金財政検証では、アベノミクスによって支え手が500万人増えた結果、将来の年金給付に係る所得代替率が、改善いたしました。安定した社会保障の基盤、それは、強い経済であります。
 正社員は130万人増えました。1人の正社員になりたい人に対し、一つ以上の正社員の仕事がある、という、雇用情勢の改善が、2年間、継続しています。
 この機を生かし、バブル崩壊により就職難で苦労した方々への、就労支援を拡大します。就職氷河期世代の皆さんの意欲、経験、能力を生かしていく。チャンスを広げることで、日本経済の次なる成長につなげてまいります。
 政権発足後、強力にコーポレートガバナンス改革を進めた結果、日本企業に対する海外からの直接投資残高は、5年連続で過去最高を更新し、10兆円以上増加しました。
 会社法を改正し、全ての大企業に社外取締役の選任を義務付けます。グローバルスタンダードに沿って、経営の透明性を一層高めることで、海外から成長の活力を取り込んでまいります。

(農産物輸出)

 ベトナムやシンガポールでは、最近、日本の粉ミルクが人気です。世界に目を向けることで、安全で安心な日本の農産物に、もっと大きな可能性が広がります。
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、EU(欧州連合)との経済連携協定によって、牛乳や乳製品の輸出は2割以上増加しました。ヨーロッパへの牛肉輸出は3割上昇しています。
 あらゆる農産品に、世界に羽ばたくチャンスが訪れています。全国津々浦々、それぞれの地方が誇る農林水産物の輸出を更に加速します。農産品輸出拡大法を制定し、各国の輸入規制緩和に向けた働きかけをオールジャパンで進めます。

(災害に強い故郷<ふるさと>づくり)

 昨年度、福島の農産品輸出は、震災前から4割近く増加し、過去最高となりました。外交努力により規制が撤廃されたマレーシアやタイへの桃の輸出が好調です。
 これまでに32の国と地域で規制の完全撤廃が実現いたしました。引き続き、風評被害の払拭(ふっしょく)に全力で取り組み、東北の復興を加速してまいります。
 各省庁の縦割りを排して、徹底した現場主義を貫き、政治の責任とリーダーシップの下、福島の再生、東北の復興に取り組んでいく。これは復興・創生期間後も変わることはありません。そのための司令塔となる復興庁の後継組織を設け、復興に全力を尽くします。
 今年も、全国各地で、地震、集中豪雨、記録的な暴風などにより自然災害が相次ぎました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
 台風15号による大規模停電では、多くの方々の生活に甚大な影響が出ました。今回の対応を徹底的に検証します。災害時における復旧の加速化、電力インフラ維持の方策について検討し、速やかに対策を講じます。
 復旧・復興を全力で支えるとともに、3年間集中の防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の緊急対策を着実に実行することで、災害に強い故郷づくりを進めてまいります。
 各地で発生が続く豚コレラについて、ワクチン接種をはじめ、あらゆる対策を総動員して、一刻も早い終息に努めます。

(中小・小規模事業者)

 地方への外国人観光客は、この6年で4倍を超えました。観光は、地方の新たな活力です。地方でも商業地の地価が28年ぶりに上昇に転じるなど、地方経済に活気が生まれています。
 海外で急速にキャッシュレス決済が普及する中、日本を訪れる外国人観光客の7割が、キャッシュレスがあればもっとお金を多く使ったと回答しています。大胆なポイント還元により、キャッシュレス化を進め、インバウンド消費の拡大を通じて、全国の中小・小規模事業者の皆さんの成長へとつなげます。
 下請け取引の適正化を、引き続き強力に進めます。近年の下請けいじめの実態を踏まえた新たな振興基準の順守を大企業に徹底します。
 一度失敗すると全てを失ってしまう個人保証の慣行を断ち切ります。事業承継の際には、先代経営者と後継者からの二重取りを原則禁止するなど、次の世代に個人保証を引き継ぐことのないよう、あらゆる施策を講じてまいります。

(経済最優先)

 これからも、安倍内閣は経済最優先です。
 消費税率引き上げによる影響には、引き続き十分に目配りしてまいります。教育の無償化に加え、軽減税率、プレミアム商品券の発行、更には、自動車や住宅への大胆な減税など十二分の対策を講じ、経済の大宗を占める国内消費をしっかりと下支えすることで、経済の好循環を確保してまいります。
 米中間の貿易摩擦、英国のEUからの離脱など、不透明さを増す世界経済の先行きにも、しっかりと注視してまいります。下振れリスクが顕在化する場合には、ちゅうちょすることなく、機動的かつ万全の対策を講じ、経済の成長軌道を確かなものとします。

4 外交・安全保障

(自由貿易の旗手)

 「下方リスクから守るために、全ての政策手段を用いる、との、我々のコミットメントを再確認する」
 大阪サミットでは、G20(主要20カ国・地域)の全ての国が、世界の持続的な成長を実現するため、協調していくことで一致しました。
 懸案の貿易摩擦についても、自由、公正、無差別など、自由貿易の基本原則を、首脳たちと明確に確認することができました。
 我が国は、これからも、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済圏を、世界へと広げてまいります。
 ASEAN(東南アジア諸国連合)に中国、インド、豪州などを加えたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)について、関税引き下げにとどまることなく、知的財産や電子商取引など21世紀の経済ルールを含めた野心的なものとなるよう、交渉を進めてまいります。
 日米の貿易協定が合意に至りました。昨年9月の日米共同声明に沿って、日米双方にウィンウィンとなる結論を得ることができました。それでもなお残る農家の皆さんの不安にもしっかり向き合い、引き続き、生産基盤の強化など十分な対策を講じます。

(地球儀を俯瞰<ふかん>する外交)

 日米同盟を基軸としながら、我が国は、英国、フランス、豪州、インドなど基本的な価値を共有する国々と手を携え、自由で開かれたインド太平洋を実現してまいります。
 沖縄の基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の全面返還に向けて、辺野古への移設を進めます。昨年度の牧港補給地区に続き、今年度末に予定されるキャンプ瑞慶覧の一部返還に向けて準備を進めます。沖縄の皆さんの心に寄り添いながら、一つひとつ、確実に結果を出してまいります。
 現下の北朝鮮情勢については、米国と緊密に連携し、国際社会と協力しながら、国民の安全確保に万全を期します。何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、私自身が、条件を付けずに、金正恩委員長と向き合う決意です。冷静な分析の上に、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動してまいります。
 日中新時代を切り開きます。来年の桜の咲く頃に、習近平国家主席を国賓としてお迎えし、首脳間の往来だけでなく、経済交流、青少年交流など、あらゆるレベルでの交流を拡大し、日中関係を新たな段階へ押し上げてまいります。
 北方四島での共同経済活動が動き始めました。航空機によるお墓参りは3年連続で実現し、長門合意は着実に前進しています。領土問題を解決して、平和条約を締結する。1956年宣言を基礎として、交渉を次の次元へと進め、日露関係の大きな可能性を開花させてまいります。
 韓国は、重要な隣国であります。国際法に基づき、国と国との約束を順守することを求めたいと思います。

(新たな時代のルールづくり)

 海洋プラスチックごみが、国際的に大きな課題となっています。大阪サミットにおいて、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す、新しいビジョンを共有いたしました。
 その実現に向けた具体的な実施枠組みにも、G20として合意しました。新興国も含めた世界全体での取り組みを、日本として、これからも、後押ししてまいります。
 第4次産業革命が急速に進む時代において、新たな付加価値の源泉はデジタルデータです。
 G20サミットでは、トランプ大統領や習近平国家主席をはじめ各国首脳が参加する中、WTO(世界貿易機関)の屋根の下、「大阪トラック」を立ち上げました。信頼性を確保しながら、国境を越えたデータの自由な流通を確保する。その大きな原則を掲げ、国際的なルールづくりを主導していきます。
 これからも、あらゆる分野で、新しい時代の世界のルールづくりを、日本が、力強くリードしてまいります。

5 おわりに

 「提案の進展を、全米1200万の有色の人々が注目している」
 100年前、米国のアフロ・アメリカン紙は、パリ講和会議における日本の提案について、こう記しました。
 1000万人もの戦死者を出した悲惨な戦争を経て、どういう世界を創っていくのか。新しい時代に向けた理想、未来を見据えた新しい原則として、日本は「人種平等」を掲げました。
 世界中に欧米の植民地が広がっていた当時、日本の提案は、各国の強い反対にさらされました。しかし、決してひるむことはなかった。各国の代表団を前に、日本全権代表の牧野伸顕は、毅然(きぜん)として、こう述べました。
 「困難な現状にあることは認識しているが、決して乗り越えられないものではない」
 日本が掲げた大いなる理想は、世紀を超えて、今、国際人権規約をはじめ国際社会の基本原則となっています。
 今を生きる私たちもまた、令和の新しい時代、その先の未来を見据えながら、この国の目指す形、その理想をしっかりと掲げるべき時です。
 現状に甘んずることなく、未来を見据えながら、教育、働き方、社会保障、我が国の社会システム全般を改革していく。令和の時代の新しい国創りを、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。
 その道しるべは、憲法です。令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないでしょうか。私たち国会議員が200回に及ぶその歴史の上に、しっかりと議論していく。皆さん、国民への責任を果たそうではありませんか。
 ご清聴ありがとうございました。


安倍首相 所信表明演説に7つの違和感
実態とかけ離れすぎ
2019年10月5日:東京新聞・こちら特報部

 安倍晋三首相が4日、改元後初の所信表明演説に臨んだ。衆参両院本会議で社会保障や経済、外交などについて語ったもの。聞き終えて残ったのは違和感ばかり、都合の悪いことには目をつぶり、まるでバラ色の世の中であるかのような発言の連続だった。7つのテーマに絞って内容を検証した。
(中山岳、石井紀代美)

1 多様性「みんなちがって…」→トリエンナーレ不交付

 「『みんなちがって、みんないい』。新しい時代の日本に求められるのは多様性であります」。序盤に引用したのは、地元・山口県出身の童謡詩人金子みすゞの詩句。野党から「多様性認めろよ」などとやじが飛んでも意に介さず、「すべての人がその個性を生かせる社会をつくることで少子高齢化も必ずや克服できるはず」と続けた。
 「表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク」世話人の竹内暁さん(71)は「言っていることと、やっていることが違う」と憤る。
 竹内さんがあべこべだと感じたのは、文化庁が、国際芸術祭委「あいちトリエンナーレ2019」で一度採択した補助金7830万円の不交付を決定したからだ。「萩生田光一文部科学相や官邸の意向が反映されたのではないか」と話し、政権が市民の多様性を狭める方向に進んでいると危ぶむ。「政権に対する行政の忖度や、表現の萎縮が広がりかねない。市民はこの息苦しさを跳ね返していかねばならない」

2 「70歳まで就業機会」→働き盛り不安

 安倍首相は、一億総活躍社会の実現に向けては多様な働き方を進めるとし、「意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保する」と強調した。
 ただ、今は働き盛りの世代でも雇用不安がじわりと広がる。東京商工リサーチによると、今年1月~6月、経営再建中のジャパンディスプレイなど少なくとも上場企業17社で約8200人の早期退職者募集があった。半年ですでに、昨年1年(4100人余)の2倍に達している。キリンホールディングスも今月1日、45歳以上の社員から早期退職の受付を始めた。
 雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「働き盛りの世代がこのまま高齢者になれば、今の高齢者よりも格差が広がるなど悲惨なことになる」と指摘。「働きたい高齢者に働く場を確保するのはいい」。今の社会保障制度が、高齢者でも働かないと生きていけないようになっているのが問題」と話す。

3 年金「支えて500万人増」→現役世代の負担限界

 8月末に公表された公的年金の財政検証を挙げ「アベノミクスによって支え手が500万人増えた結果、将来の年金給付に係る所得代替率が改善した」と安倍首相は力説した。
 これに対し、年金制度に詳しい特定社会保険労務士の庄司正昭氏は「支え手が増えても、高齢化で社会保障費が膨れ上がる問題の方が大きい。若い世代は負担が重く、将来、年金がどこまで受けられるか不安になっている」とみる。
 現役世代が払う保険料を高齢者の年金に充てる現在の「賦課方式」は限界に近づいているとし「財源をどう確保するかなど抜本的に年金制度のあり方を議論することが必要なのに、できていない」と批判した。
 
4 「正社員130万人増」→割合で見れば低下

 「正社員は130万人増えました」。成長戦略をアピールする過程で、そう言って胸を張った安倍首相。人差し指を立てながら正社員を希望する人1人に、1つ以上の仕事があると実績を強調した。
 しかし、都留文科大の後藤道夫名誉教授(現代社会論)は「安倍政権になった2012年から正社員が増えたのは確かだが、非正規はそれ以上の300万人増えている。威張れるような話では全くない」と断じる。全労働者に占める正社員の割合も低下している。
 しかも最近は、正社員でもかつてのように年齢に従って給料が上がるわけではない。工場や運輸・運搬、サービス業など、主に体を使って仕事をする「ブルーカラー系」は、どの世代も年収300~400万円の人が多い。後藤氏は、「安倍政権下で正規と非正規の差が縮んだ」と解説する。

5 福島「農産物が好調」→原発に触れず

 東日本大震災の被災地復興について話した時間はわずかだった。福島第1原発事故には一言も触れず、モモをはじめとする福島の農産品の輸出量は震災前の4割増と得意げに語った。
 福島県三春町在住で、事故当時の東京電力幹部の刑事責任追及を求める「福島原発告訴団」の武藤類子団長は「まるで原発事故の問題は解決済みかのような言いぶり。モモだけで福島を語らないで」と怒りを隠さない。
 事故は収束せず、汚染水問題は現在進行形。生活再建ができていないのに、避難指示の解除と同時に賠償金が打ち切られて困っている人も少なくない。「まだまだ解決できていない問題があると言ってほしかったのに、原発の『下』の字も出てこなかった。五輪を控え、復興したと印象づけたいのが見え見えだ」

6 「プレミアム商品券」→効果限定的

 消費税率引き上げの影響に関し安倍首相は「国内消費をしっかりと下支えすることで、経済の好循環を確保していく」と述べた。その対策として、教育の無償化や軽減税率と共に挙げたのが「プレミアム商品券」。20000円で25000円分の商品券と交換でき、プレミアム分は税金で負担する。
 14年に消費税率が5%から8%に上がった際にも登場した。1999年の「地域振興券」や、リーマン・ショック後の2009年の「定額給付金」も同様の趣旨だった。
 法政大の小黒一正教授(公共経済学)は「過去何回もやっているが、内閣府の調査では必需品を券で買うだけで、その分の多くは貯蓄に回った」と指摘。少なくとも経済効果は少ないとみる。

7 沖縄「心に寄り添う」→戦闘機の爆音増・受信障害も

 演説の後半、安倍首相は日米同盟を基軸にするという従来の外交方針を示す中で、沖縄の基地負担軽減に言及した。普天間飛行場の全面返還に向け辺野古移設を進めるとし「沖縄の皆さんの心に寄りそいながら、一つ一つ確実に結果を出してまいります」と語った。
 沖縄国際大の前泊博盛教授(基地経済論)は「負担の『軽減』という言葉を聞くと、沖縄の人は『加重』と思わざるを得ない。軽減と真逆のことが起きており、どの口が言うのか」とあきれる。
 政府は5年以内の同飛行場の運用停止を沖縄県に約束し、今年2月にその期限が過ぎた。同大は同飛行場に隣接し、前泊教授の研究室からは滑走路が見える。以前はヘリが主体だったのに、今は戦闘機も飛来する。爆音が激しくなり、テレビの受信障害も出ているという。
 前泊教授は「沖縄県が日米地位協定の改定を求めても、県民投票で辺野古反対の民意を示しても、無視。安倍首相は一度も沖縄に寄り添ったことがない。『寄り添う』とはパンチを食らわすという意味なのだろうか」と皮肉交じりに語った。

デスクメモ
 読者の皆さんにお知らせするのが遅くなりましたが、「本音のコラム」金曜担当の執筆者が、作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんからジャーナリストの北丸雄二さんに代わりました。佐藤さんには9年半の長きにわたり、執筆していただきました。改めて御礼申し上げます。         (千)

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