大人げない…、大人たち

スウェーデンの16歳の高校生、グレタ・トゥンベリさんへの大人げない大人からの発言が続いている。
「高校生のくせに」「16歳で専門家でもないのに」云々と言いがかりをつけている。そして、「彼女は大人にコントロールされている」「左翼に利用されている」などと批判したり、彼女が自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)であることを問題とするトンチンカンまで存在する。
ボクはトゥンベリさんをカリスマとして祀り上げることに違和感があるし、彼女を貶めようとすることも許すことができない。
16歳の高校生の必死の訴えに耳を傾け、誠実に向き合うのが成熟した「大人」というものだ。
トゥンベリさんの言う「地球の危機」は現実だ。大人の都合で、ないものにできるものではない。この10年、20年でなく、100年後を見通した行動が求められていることから逃げてはいけない。


「青い地球が危機に」
 国連報告書が気候変動を警告
2019年9月26日:BBC

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は25日、気候変動が海や寒冷地をこれまでにない規模で脅かしているとする特別報告書を発表した。
報告書では、海面上昇や氷の融解に加え、人間の活動によって野生動物が生息地を追われていると指摘した。
さらに、永久凍土が溶け出していることで、二酸化炭素(CO2)がさらに増え、氷の減少を加速させているという。
一方、CO2排出量を大幅かつ迅速に削減すれば、最悪の影響は免れられるだろうとしている。
IPCCは過去12カ月に、今回のものも含めて3つの特別報告書を発表している。
昨年10月の報告書では、21世紀の終わりまでに地球の気温が1.5度上昇すると指摘。今年8月には、気候変動は地球の陸地と、農業や畜産業にも影響を及ぼしていると分析した。
ただ、気温上昇が海や雪氷圏(水が固体として地表面に存在している場所)に与える影響を示している今回の最新の報告書は、おそらく3つの中で最も気がかりで、気が滅入る内容だ。

何がわかり、どれくらい悪いのか

要約すると、地球の水温が上がり、氷が急速に溶け出していて、地球上のほぼすべての生物に影響が出ているということだ。
報告書の共著者であるジャン=ピエール・ギャットゥーソ博士は、「青い地球は今、深刻な危機にある。さまざまな方面からの多くのひどい扱いを受けていて、それはわれわれ人間のせいだ」と指摘した。
Image copyrightSPLImage caption 海面上昇により、海抜の低い島々には人が住めなくなる危険性がある
報告書では、地球の海が1970年から継続的に温まっていることは「疑いようがない」と分析している。
水は、人間が過去数十年で生み出した余分な熱の9割以上を吸収しており、吸収の比率は1993年と比べると2倍になっているという。
水は熱せられると質量が増えるため、過去には海面もこれが原因で上昇した。しかしIPCCは今回、現在の海面上昇の主要因はグリーンランドや南極大陸の氷が溶け出していることだと指摘した。
温暖化により、溶け出して液体になった南極の棚氷の量は、2007年から2016年の間に3倍に達した。同じ時期、グリーンランドの棚氷の減少量は2倍になっている。
報告書では、この現象は21世紀の間と、それ以降も続くとみている。
一方、南米のアンデス山脈や中欧、北アジアにある氷河については、CO2排出量が高い場合のシナリオで、2100年までに8割が消失すると予測。何百万人もの人に多大な影響を与えるとしている。
氷が溶けると何が起こる?
さまざまな場所の氷が溶け出し、すべてが海に流れ込めば、世界中で海面が上昇する。そしてそれは数十年にわたって続くと考えられる。
報告書では、最悪のシナリオでは、2100年までに世界の海面が最大で平均1.1メートル上昇するとみている。南極大陸での大量の氷の融解を受けて、前回の予測から10センチ増加した。
ギャットゥーソ博士は、「最も驚いたのは、海面上昇の最大予測値が上方修正され、1.1メートルになったことだ」と話す。
「7億人近くの人々が住んでいる沿岸地域に広範囲に影響が出るだろう」
報告書によると、一部の島国では2100年以降、人間が住めなくなってしまうことが明らかだという。
また、「もし安全な別の場所があるのであれば」、水没する可能性がある地域から住民を移住させることも視野に入れたほうがいいと指摘した。

あなたへの影響は?

報告書が語る重要なメッセージのひとつは、海や雪氷圏の温暖化は、将来的に何百万人に影響を与えるさまざまな悲惨な結末の一部だということだ。
CO2排出量が多いシナリオでは、ニューヨークや上海といった豊かな大都市や、メコン川流域の農業地帯なども、海面上昇で非常に高いリスクにさらされると予測されている。

Image caption CO2排出量が高いシナリオでの、海面上昇の影響を受ける大都市をまとめた図。ニューヨークやロンドン、バンコク、上海といった都市で、2050年までに1000万人が被害を受けるとされている。東京でも、500~1000万人が海面上昇の影響を受けるとみられている
また、水温が深刻に上昇した結果、世界各地でサイクロンの増加など、危険でやっかいな天候が急増する可能性があるという。
報告書では、CO2排出量が大幅に削減されたとしても、「歴史的にまれ(1世紀に1度)だった異常な海面上での現象が、2050年までに各地でより頻繁に(少なくとも1年に1度)起こるようになると予想される」と指摘している。

IPCCの第2作業部会を主導するデブラ・ロバーツ教授は、「今分かっているのは、前例のない変化が長く続くということだ」と話した。
「たとえあなたが内陸部に住んでいたとしても、海や雪氷圏での大きな変化によって引き起こされる気候体系の変化が、あなたの生活スタイルや持続的な発展の機会に影響を与えるだろう」
あなたの生活への影響はさまざまな形で現れる。例えば洪水被害は、被害の規模を表す水準で2段階から3段階上昇する可能性がある。CO2増加による海水の酸性化や、1.5度の気温上昇によって、地球上のサンゴの約9割が消失するとされている。

海水の温度が上がることで、魚が生息地を移動することが考えられる。また、化石燃料を使えばCO2が増えるだけでなく、河川や海に多くの汚染物質が流れ込む。これによって、魚や海藻に含まれる水銀や汚染物質の濃度があがり、海鮮食品の安全性が損なわれる危険性がある。
他にも、温暖化によって氷河が溶けることで水力発電に使える水の量が変わってしまい、発電に支障をきたす可能性もある。

永久凍土は永久ではない

シベリアやカナダ北部など恒久的に氷のある地域には、大量のCO2が蓄積されている。
しかし、CO2の排出が続き温暖化が進めば、地表面にある永久凍土の7割程度が溶け始めてしまうという。
その結果、2100年までに「数百億から数千億トン」規模のCO2やメタンガスが大気中に放出されると懸念されている。そうなれば、人間が向こう数世紀にわたって温暖化を食い止めるのは非常に困難になるだろう。

長期的には何が起こる?

重要な疑問だが、その答えは我々がCO2排出量を近いうちにどれだけ制限できるかにかかっている。
しかし報告書では、もはや簡単には覆せない気候の変化もあると警告している。南極大陸のデータによると、すでに「不可逆なほど棚氷が不安定」になり始めており、向こう数世紀で数メートルの海面上昇を引き起こす可能性があるという。
報告書にも参加しているネリリー・エイブラム博士は、「棚氷や海面上昇に与える影響には多くの変化が含まれているため、報告書では2300年までの海面上昇の情報を提供している」と説明した。
「なので、温室効果ガスを削減できるシナリオであっても、人類が備えなければならない海面上昇は訪れるだろう」
また、先住民族社会が食料としてきた魚が水温上昇によって消えれば、それに伴って文化的知識が広範囲で永久に失われてしまう可能性もあるという。

報告書は希望を示した?

もちろんだ。報告書では、海の未来はなお人間の手に委ねられていると強調している。
その方程式はすでに使い古されたものだ。IPCCが昨年の報告書で示したように、2030年までにCO2排出量を45%削減することが求められている。
IPCCの李会晟(イ・フェソン)議長は、「もし排出量を急速に減らしても、人間やわれわれの生活への気候変動の影響はなお苦しいものだが、それでも最も弱い人にとってはより制御できる範囲にとどまる可能性がある」と話した。
実際、報告書に携わった研究者の一部からは、国民から政治家への圧力が、気候変動に対抗する野心を広げる重要な役割を担うとの声が上がっている。
ギャットゥーソ博士は、「先週、若者たちが行った抗議デモを見て、彼らこそがわれわれにとって最高の頼みの綱だと思う」と語った。
「彼らは精力的で活動的だ。彼らが活動を続け、社会を変えてくれることを願っている」


経済観測
グレタさんは地球を救えるか
=東洋大学国際学部教授・横江公美
2019年9月26日:毎日新聞

 今月20日、地球温暖化の危機を訴える最大規模の若者たちのデモが世界各地で起きた。16歳のスウェーデン人、グレタ・トゥーンベリさんが一人で始めた金曜の「学校ストライキ」は、国や宗教、イデオロギーを超えて世界中に広がっている。デモには150カ国の400万人が参加したという。世界秩序の混乱の中で、グレタさんの環境運動はその一角に入ってきたのだ。
 ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、米国の国際政治専門家に修正主義者と呼ばれるほど懐古的で、古き良きアメリカを目指すトランプ米大統領もしかりだ。混乱する中東ではイランもイスラエルも軍事拡張に走っており、欧州政治は中東からの移民問題で分断している。世界秩序の混乱と民主主義国家の分断の先行きは予測し難い時代になっている。
 そんな中、グレタさんは、地球軍として人類共通の敵と戦おうと声を上げた。日本には驚異的な台風が襲いかかり、米国でも夏のハリケーン被害は甚大だ。北極の氷は解け、生態系にも変化が及んでいる。ハリウッド映画の「デイ・アフター・トゥモロー」が描いた温暖化による地球規模の危機が現実になろうとしており、「アベンジャーズ」さながらに、グレタさんを先頭に世界中の若者が立ち上がったのだ。
 さて、オールド・グループの代表であるトランプ氏は今のところ、環境問題に興味も持っていないどころか、米国産業の敵と見なしているほどだ。だが、いつの世でも問題解決はビジネスの最大の種だ。世界規模の問題と戦うことが、利益を上げることにつながっていくはずだ。そうなるとグレタさん率いるアベンジャーズの戦いが地球の病を癒やしながら、同時に「国際的分断」を融和し、新たな国際秩序を形づくっていくかもしれない。


[大弦小弦]トゥンベリさんの演説から
2019年9月26日:沖縄タイムス

 「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子ども時代を奪い去った」。国連の気候行動サミットで演説したスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)の言葉が胸に突き刺さった。声を震わせながら各国の代表を強く非難し、早急な温暖化対策を求めた叫びは、私たち大人へ向けられたものだ
▼トゥンベリさんは昨年、毎週金曜日に学校を休んでスウェーデン議会前に座り込む活動を始めた。たった一人の行動は「未来のための金曜日」運動として共感を集める
▼世界各国で20日にあった行動には400万人以上が参加。大人の無関心と無策に、手遅れになるという若者の危機感がある
▼世界では異常気象が多発。沖縄でも、海水温上昇で強大化する台風や生態系への影響などの脅威が増している。さらに健康被害や食料への深刻な影響も指摘されている
▼若者の行動を背景に、サミットでは77カ国が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする長期目標を表明したが、日本は加わらなかった。もう、環境先進国を自称する資格はない
▼「絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金と永遠の経済成長というおとぎ話だけ」「私たちを裏切ることを選べば、あなたたちを絶対に許さない」。トゥンベリさんが語った言葉は、私たちの子や孫たちの叫びでもある。(吉川毅)


大人への怒りで震えた声
 反響呼んだ16歳の国連演説
2019年9月29日:朝日新聞

 16歳の声は、大人たちへの怒りで震えていた。
 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん。昨年8月、同国議会前で一人で「学校ストライキ」を始めた。多くの若者がグレタさんに続き、今月20日には日本を含む160カ国以上で400万人以上がデモに加わった。
 そして迎えた23日、ニューヨークの国連本部であった気候行動サミット。グレタさんは各国政府代表をにらみつけ、拳を振りかざし、強い口調で責めた。目には涙が浮かんでいるように見えた。
 「間違ってる。私はここにいるべきじゃない。海の向こうの学校に戻るべきだ」
16歳の発した大人たちへのストレートな怒り、そして失望。どう受け止めるのか、いま私たち自身が問われています。演説の翻訳全文とともに振り返ります。
 国連で最も広い総会議場に声が響き、演説は続く。
 「あなたたちは私の夢を、子ども時代を、空っぽな言葉で奪ってきた」
 「苦しんでいる人たちがいる。死にゆく人たちがいる。生態系は破壊され、多くの種の絶滅が始まっている。そして、あなたたちはお金の話や、終わりなき経済成長のおとぎ話ばかり」
 グレタさんがこれまでの演説で度々批判してきたのは、科学が危機感を伝えてきたのに、政策を決める権力者が見て見ぬふりを続けてきたことだ。
 この日も「科学は30年以上にわたり、極めて明白だった」とし、「あなたたちは私たちを見捨てている」と指摘。十分な温暖化対策を取ってこなかった大人たちを痛烈に非難した。
 5分ほどの演説の間、グレタさんは何度も椅子から身を乗り出し、マイクに口を近づけた。
 「若者たちはあなたたちの裏切りに気づき始めている。もしあなたたちが私たちを見捨てる道を選ぶなら、私はこう言う。絶対に許さないと」
 グレタさんは直後に近くのビルで会見に臨み、そこでも大人への怒りをあらわにした。「子どもの権利条約ができて30年、世界のリーダーたちは私たちの権利を守るという約束を破り続けてきた」
 グレタさんらが取った策は、国連子どもの権利委員会への救済の申し立てだった。8~17歳の12カ国の少年少女16人が、「気候危機は子どもたちの権利の危機だ」と訴えた。
 申立書は「産業革命以前より(世界の平均)気温は1・1度上昇し、地球は壊滅的な結果をもたらす転換点に近づいている。これは事前に予測できていたことだ」と指摘。「子どもは肉体的、精神的に、気候危機による脅威に最もさらされやすく、大人たちよりも大きく、長期にわたる負担がかかる」と訴えている。
 グレタさんらは、金銭的な補償を求めているわけではない。アルゼンチン、ブラジル、ドイツ、フランス、トルコの5カ国に対し、気候危機に関する法律や政策を見直し、最大限の努力をするよう要請している。この5カ国は委員会への直接の申し立てを認める議定書を批准し、「長年気候変動対策に消極的だった」という。日本や米国は議定書を批准していない。委員会は今後、受理するかを決め、必要に応じて勧告などを行う。(ニューヨーク=香取啓介、藤原学思)

グレタさんの演説全文

 私たちはずっとあなた方を見張っている、これが私のメッセージです。
 すべてが間違っています。私はここで登壇しているべきではありません。海の反対側にある学校に戻るべきなんです。それなのに、あなた方はみんな、私たち若者に希望を求めて集まってきています。よくも、そんなことができるものです。
 あなた方はその空っぽな言葉で、私の夢も子ども時代も奪ってしまいました。ただ、それでも、私は幸運な人間の1人です。苦しんでいる人たちがいます。死んでいく人たちがいます。生態系全体が崩壊しようとしています。私たちは大規模な絶滅の始まりにいるというのに、あなた方が話すことといえば、お金や永遠の経済成長というおとぎ話ばかり。よくも、そんなことができるものです。
 30年以上にわたって、科学はとっても明快でした。あなた方は目を背け続けて、「十分にやっている」と言ってここにやってきています。よくもそんなことができますね。必要な政策や解決策が、まだ全く見えていないというのに。
 あなた方は、私たちの声を聞いているし緊急性も理解しているのだと言います。でも、どんなに私が悲しく怒りを感じたとしても、あなた方を信じたくありません。なぜなら、もしあなた方が本当にこの状況を理解していて、それでもなお行動していないなら、あなた方は悪です。だから、私は信じることを拒否します。
 今後10年間で(二酸化炭素の)排出量を半分にするという考え方では、世界の気温上昇を1・5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません。人間のコントロールを超えた、後戻りできない連鎖反応が引き起こされる危険があります。
 あなた方にとって、50%というのは受け入れ可能なのかもしれません。しかし、これらの数字には、ティッピング・ポイント(重大な変化が起きる転換点)やフィードバックループ(温暖化が原因となり、さらに温暖化を引き起こす現象)、有毒な大気汚染に隠されたさらなる温暖化、公平性や温暖化対策の公平さという面が含まれていません。その数字もまた、あなた方が出した何千億トンもの二酸化炭素を、まだ存在していないような技術によって私の世代が吸収することをあてにしたものなのです。
 ですから、私たちにとって、50%のリスクは決して受け入れられるものではありません。私たちは、その結果とともに生きなければならないのです。
 地球の気温上昇を1・5度以下に抑える可能性を67%とする「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の最も良い見込みでも、世界は2018年1月1日時点であと420ギガトンの二酸化炭素しか排出できない計算でした。今では既に、あと350ギガトン未満にまで減っています。
 いつものように取り組めば解決できるとか、技術的に解決できるとか、よくそんなふりができますね。今の排出レベルでは、8年半以内に残りの二酸化炭素の排出量すべてを使い切ってしまいます。
 今日この場では、これらの数字と一致した解決策や計画は何も提案されないでしょう。なぜなら、これらの数字はあまりにもやっかいなものだからです。そして、あなた方はまだ、それをそのように口にできるほど成熟していません。
 あなた方は私たちを見捨てようとしています。でも、若い人たちはその裏切りを理解し始めています。すべての将来世代の目は、あなた方に向けられているのです。そして、もし、あなた方が私たちを見捨てることを選ぶのなら、私は言います。あなた方を絶対に許さないと。
 このまま逃げ去ることは許しません。まさにここで、まさに今、私たちは一線を引いたのです。世界は目覚めつつあります。そして、変化が訪れつつあります。あなた方が好むと好まざるとにかかわらず。
 ありがとうございました。


欧米で広がる学校スト、
日本では「グレタのようには…」
2019年9月21日:朝日新聞

 23日に米ニューヨークで開かれる国連気候行動サミットを前に、若者が政治家に気候危機への対策を求める世界一斉デモが20日、日本を含む163カ国・地域で行われた。デモに先駆けて、欧米では昨夏から大学生や高校生が授業をボイコットする「学校ストライキ」が続いているが、日本では広がっていない。運動を呼びかける若者たちは、気候危機の認識を共有してもらえないことに悩んでいる。
 20日の世界一斉デモは欧米やアジア、アフリカなどの各国で行われ、主催者によると400万人以上が参加した。日本では東京、大阪、京都、名古屋、福岡などであった。東京では渋谷の国連大学前に約2800人が集まり、「地球はみんなのシェアハウス」「私たちの家が燃えている」などと書いたプラカードを掲げて行進した。
 東京のデモを主催したのは、有志の若者でつくる「Fridays For Future Tokyo(FFFT)」(未来のための金曜日 東京)。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)の訴えに共感する都内の大学生や高校生が今年2月に立ち上げた。
 FFFTのメンバーで、立教大4年の宮崎紗矢香さん(22)は今年5月から今回のデモを準備してきた。2月にスウェーデンを旅行してバイオガス発電に取り組む企業などを見学したことをきっかけに、環境問題に取り組もうと決めた。
 宮崎さんは今春、大学の授業でグレタさんの動画を上映する機会を得た。動画は、グレタさんが「わずかな人々のぜいたくを支えているのは、多くの人々の苦しみ」と語り、「私たちのような国々に暮らす豊かな人々」は行動を変える必要があると訴えるものだ。上映後、宮崎さんは自分たちにできることとして、プラスチックごみを減らすよう呼びかけた。
 ところが、聴講した学生から「何も思わない」「何が問題かわからない」と感想をぶつけられ、言葉を失った。「私もグレタのように人々の意識を変えたかったが、できなかった」
 欧州や米国では、グレタさんに共鳴した高校生や大学生が授業をボイコットして、気候危機への対応を訴える「学校ストライキ」が続いている。だが、日本では広がっていない。
 FFFTのメンバーで、国際基督教大1年の梶原拓朗さん(18)は、今回のデモの準備のために金曜日の必修授業を2週続けて休んだ。授業を欠席する際、担当教員にデモの準備が理由と伝えたが、「理解してもらえなかった」と嘆く。
 今回の世界一斉デモの英語圏での名称は、「Global Climate Strike(グローバル気候ストライキ)」だ。FFFTと日本の関連団体はその名称を「グローバル気候マーチ」にし、集合時間も放課後の午後5時にした。FFFTのメンバーで都立国際高1年の岩野さおりさん(16)は「『スト』や『デモ』のような激しい言葉は避け、開始時間も放課後にして、誰でも気軽に参加できるイベントにしたかった」という。
 日本での世界一斉デモ実施を支援する国際環境NGO「350.org」日本支部によると、日本以外でもデモの名称を言い換えたケースは多い。例えば、インドネシアでは「気候のための休憩」、太平洋諸国では「強い風」となっている。同NGOメンバーの荒尾日南子さん(37)は、「気候変動問題に関心がない人にも参加してもらおうと、どの国も工夫している」と話す。
 国連気候行動サミットに先立って、21日にはニューヨークで国連ユース気候サミットが開かれる。国連はユース気候サミットに世界から18~29歳の若者を募集し、100人を招いた。日本から選ばれた横浜市出身の佐藤真弓さん(24)は、タイを拠点に温暖化と森林破壊の影響を調査してきた。
 佐藤さんは、気候危機をめぐる抗議運動で目立つ日本と欧米の違いは、「対立を避ける文化」が影響していると感じる。「若い世代は声を上げることをためらわないでほしい。10~20年後に社会の決定者になる若い世代が、気候危機の取り組みを引っ張るべきだ」(宋光祐、ワシントン=香取啓介)

NY、行政も親も後押し

 一方、米国では、気候危機への取り組みを訴える若者を、親や行政がサポートしている。
 20日の世界一斉デモは全米1千カ所以上で行われ、ニューヨークでは6万人以上(市発表)が参加した。「地球は二つとない」「地球の扇風機になろう」などと書かれたプラカードや紙を掲げた若者たちが、グレタさんと一緒にマンハッタンの繁華街を練り歩いた。
 デモに参加したニューヨーク市の公立高校3年オリビア・ウォルゲムスさん(17)は、今年5月から毎週金曜日は学校を欠席し、グレタさんに共鳴する仲間たちと国連本部前で「温暖化対策に取り組むべきだ」と訴えてきた。当初は学校を休むことに抵抗があったが、通い続けるうちに「命、未来、そして次の世代を守るために、私たちは抗議する責任があると実感するようになった」と語る。両親も学校ストをサポートしてくれるという。
 米紙ワシントン・ポストなどの今年7~8月の世論調査によると、米国の10代の57%は気候変動に不安を感じ、学校ストに参加したことがある割合は15%に上る。ニューヨーク市教育局は今回の世界一斉デモを前に、管轄する公立校1840校の児童・生徒110万人が「デモに参加するために学校を休むことを認める」と発表した。
 ニューヨークのデモに6歳の長男と参加した団体職員エスター・ロビンソンさん(49)は7年前、米東海岸に上陸した大型ハリケーン「サンディ」の被害を目の当たりにし、「一刻も早く温暖化対策に取り組むべきだ」と意識が変わったという。「多くの市民が温暖化の影響を身をもって感じる時代になった。学校ストは意義ある活動だ。私たち親や教師も、若者への連帯を示さなければならない」(ニューヨーク=藤原学思)

 〈学校ストライキ〉 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が昨年8月、地球温暖化に対する政府の無策に抗議するため、一人で学校を休んでストックホルムの国会議事堂前に座り込み、気候危機の影響を受けるのは若者だと主張した。グレタさんの行動はSNSで世界に拡散。共感した世界各地の高校生や大学生が「未来のための金曜日」と称して、毎週金曜に授業をボイコットする「学校ストライキ」を始めた。グレタさんは今年のノーベル平和賞の候補になるなど、気候危機への対応を訴える象徴になっている。


憎悪の個人攻撃、「激しさ増している」
 気候変動訴えるトゥーンベリさんが反発
2019年9月30日:BBC

スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)は怒っている。それは、気候変動についてだけではない。
トゥーンベリさんは26日、ソーシャルメディアに「ヘイター(憎悪をまき散らす人)が今まで以上に活発になっている」と投稿した。トゥーンベリさんによれば、ヘイターたちは気候危機について話す代わりに「私の見た目、服装、癖、他の人との違い」などを追いかけているという。
それが彼女の活動を止めるわけではない。トゥーンベリさんは翌27日、カナダ・モントリオールで行われた大規模な気候変動ストライキを先導し、大手航空会社にカーボン・フットプリント(企業活動による二酸化炭素(CO2)などの排出量)を減らすよう求めた。
しかし、トゥーンベリさんが非常にいらだっているのは確かだ。自分を非難する人のことを、うそや陰謀論を使って気候変動への注目をそらそうと「あらゆる一線を越えてくる」と批判している。
もちろん、彼女に注目が集まっていることは驚くに値しない。過去1年、グレタ・トゥーンベリさんは他の誰よりも、気候に関する世界的な活動を盛り立てるために動いてきたのだ。
そして、人々を物怖じさせるようなその言葉の力が、トゥーンベリさんの若さから来ている面があるのは間違いない。
トゥーンベリさんが23日に発した「How dare you! (よくもそんなことを)」というメッセージが強烈だったのは、冷房のきいたニューヨークの国連本部という場所に、彼女はあまりにもそぐわない存在だったからだろう。
若者が大人の世界に対してこれほど強引に、これほど公に責任を求めることは珍しい。そして明らかにこのことを嫌がっている人たちがいる。
ドナルド・トランプ米大統領がその一人だ。トランプ氏はツイッターで、トゥーンベリさんは「輝かしい素敵な未来を楽しみにしているとても幸せな少女に見える」と述べ、トゥーンベリさんをからかおうとした。
これに対しトゥーンベリさんは、スウェーデンのテレビ番組で「何か私について言おうとしたのは分かった」と話し、大統領の皮肉を笑い飛ばした。
もっと攻撃的な人は、トゥーンベリさんが怪しげな勢力に操られていると指摘する。
イギリスの大衆紙サンは、そうした勢力には「大手エネルギー企業や、強引なセレブリティーの両親も含まれる。(トゥーンベリさんの)母親は名声を欲していて、かつてユーロヴィジョン(欧州で人気の歌合戦番組)にも出ていた」と報じた。
また、オーストラリアのヘラルド・サン紙は、トゥーンベリさんは「大きな精神疾患を抱える地球温暖化をめぐる活動の救世主」だと書いた。
コラムニストのアンドリュー・ボルト氏は、「こんなに多くの精神疾患を抱え、こんなに多くの大人にグルとして扱われている少女を見たことがない」とつづっている。
では、グレタ・トゥーンベリという少女は本当にこうした批判者の言うような、精神疾患を抱えた陰気で危うい子どもなのだろうか。
私はトゥーンベリさんに、彼女がアメリカへ渡るためのヨットに乗り込んだプリマスで会ったが、陰気な人物では全くなかった。
トゥーンベリさんはちょうど強風の中、防波堤の先までヨットで行って帰ってきたばかりで、明らかにその体験にワクワクしていた。
そして本人に会ったことで、トゥーンベリさんが誰かから気候変動について話せと強制されているという考えが、空想だということが分かった。
トゥーンベリさんは8歳の時に世界の気候が変わっているということを聞き、ほとんど対策がなされていないことが理解できなかったと語った。
11歳の時までにトゥーンベリさんは、非常に強い不満と不安を抱えるようになった。食べるのをやめ、成長が止まり、誰とも話さなくなったという。
「私だけが気候や生態系の危機を心配しているように感じていた。両親も、クラスメイトも、親戚も、誰もこれについて心配していなくて、私だけだと思っていた」
トゥーンベリさんはこの事実を変えようと決意し、まず家族を相手に、気候変動に対する活動を開始した。
初めに、肉食をやめるよう両親を説得した。それから著名なオペラ歌手であり、仕事で旅行が欠かせない母親のマレナ・エルンマンさんに、飛行機の利用をやめさせた。
その次に行ったのが学校ストだった。ちょうど1年ほど前の2018年8月20日の金曜日、トゥーンベリさんは1人でスウェーデン議会の建物の前に立ち、今ではすっかり有名になった「Skolstrejk För Klimatet(気候のための学校スト)」というプラカードを掲げた。
その後に起きたことは歴史的といっていい。トゥーンベリさんはたちまち、世界で最も称賛され、同時に嫌悪される人物となった。
トゥーンベリさんはそれから、気候学者や活動家など、助言をくれるネットワークを構築した。でも采配を振るのはトゥーンベリさん自身だ。トゥーンベリさんの近くにいる人々は、彼女が演説の内容を全て自分で書いていると認めている。プリマスで会った時、トゥーンベリさんは大西洋をわたる2週間の旅の間に、国連気候サミットで何を話すかを考えると話してくれた。
「危機が迫っていることを伝え、サミットの参加者こそが責任者なんだと言いたい。リーダーシップを見せろ!と」
23日の演説でトゥーンベリさんはそれを果たした。世界の指導者らに対して「私の夢と子ども時代を奪った」と批判し、「未来の世代の目はあなたたちに注がれている。もし私たちを失望させる道を選んだら、『絶対にあなたたちを許さない』と言うだろう」と警告した。
では、トゥーンベリさんの心の健康については? そもそも、それについてコメントする権利のある人はいるのだろうか?

トゥーンベリさんのすごいところは、科学に照らし合わせた上で、すぐにでも対策を取ることが必要だと冷静に述べている点だ。
トゥーンベリさんが、自身の精神状態が疑問視されているのを怒るのは当然だ。
「人と違うことは病気ではないし、現時点で手に入れられる最も科学的なものは意見じゃない。事実だ」と、トゥーンベリさんは述べている。
トゥーンベリさんは、過去にとても苦しい思いをしたことを認めているが、気候問題に立ち向かったことで、絶望から浮き上がったと話した。
「闘っているのが私独りじゃないというのは嬉しい。私の人生が後から何か意味のあるものになる、私のやっていることは意味があると感じている」
トゥーンベリさんは自身のアスペルガー症候群を、雑音を排除し、問題の中心が見えるようになる「超能力」と呼んでいる。


「大人が裏で操ってる」集まる批判、
グレタさんの答えは
2019年10月1日:朝日新聞

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が発端となり行われた「グローバル気候ストライキ」に、185カ国で760万人以上が参加したと、主催した国際環境NGO「350.org」が発表した。「史上最大規模のデモの一つ」という。
 グレタさんが演説した国連の気候行動サミット(23日)に合わせ、デモは20~27日の8日間で実施された。イタリアの150万人が最も多く、ドイツの140万人、カナダの80万人と続いた。日本は5千人。グレタさんは27日、50万人が参加したカナダのモントリオールのデモに参加した。
 サミットでは、77カ国が温室効果ガスを2050年に実質排出ゼロにすると誓う一方、排出量で世界最大の中国や3位のインドは具体的な目標を示さなかった。2位の米国、5位の日本には登壇機会すら設けられなかった。
 グレタさんはモントリオールでの演説で「世界の指導者たちはまた私たちを失望させた」と批判した。「彼らは子どもは子どもらしく、と言う。その通り。責任を私たちに置き去りにせず、役割を果たしてほしい。そうすれば、私たちは子どもに戻れる」と述べた。
 温室効果ガスを出さないヨットに乗り、大西洋を横断して米国に来たグレタさん。北欧のトーク番組「スカブラン」で語ったところによると、北米での移動について、米俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーさんから電気自動車を貸し出すとの提案があった。
 同番組でグレタさんは「ベストな提案」と語り、米ニューズウィーク誌によると、受諾したという。

「私自身も驚いた」

 動画共有サイト「ユーチューブ」に投稿された同番組でグレタさんは、大きな反響を呼んだ国連演説についても語っている。6月下旬から「何を伝えたいのか」を考え始め、いくつかの文章を書きとめていたという。ただ、それから長らく言葉が出てくるのを「待っていた」。最終的に出来上がった演説文は、科学者に間違いがないか確認してもらったという。
 演説では怒りをあらわにし、目に涙を浮かべ、声を震わせた。感情的になったことについて、「私自身も驚いた」とし、「演説前まではそれほどナーバスじゃなかった。ステージに上がって話し始めたとき、感情がわきあがってきた」と説明した。
 グレタさんについては、「大人が裏で操っている」などの批判が寄せられている。この点について司会者から問われると、グレタさんは「いらだたしいけど、いつだってあら探しをする人たちはいる。でっち上げをする人だっているし、それに対して何かをすることはできない。仮にうわさ話や陰謀論に時間をかけて答えたところで、そういうことは続くでしょう」と流した。
 気候変動はグレタさんの演説によって、世界的に注目度が高まった。一方でグレタさんは「結局何も変わらないこともありうる」と指摘。「やりたいと思う限りのことを、できるだけ長く、やっていくしかない。それで何か(変化)が起きることを願うしかない」と話している。
 ニューヨークに滞在中、グレタさんはある女性の家で多くの時間を過ごしていたという。洋服などの買い物については「本当に必要になるまで、私は買わないことにしている」とし、グレタさんと同行している父親も同様という。(ニューヨーク=藤原学思)

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