「王様はハダカだ!」をフェイクと言い募る“王様”

DTは、正しい情報に「フェイクだ!」と嘘をつき、ABEは「安倍論法」で、問題を相対化して国民をごまかしている。「自分」しかない国のリーダーは、国を失うリスクを高め続けている。
全てのツケは国民に回される。

安倍首相「両国にとってウィンウィン」
日米貿易交渉合意
2019年9月26日:朝日新聞

 安倍晋三首相とトランプ米大統領は、米ニューヨークで25日午後(日本時間26日未明)に開いた首脳会談で、新たな日米貿易協定についての共同声明に署名した。日本は牛肉など米国産農産物への関税を環太平洋経済連携協定(TPP)の水準に引き下げる一方、米側が乗用車や自動車部品に課す関税の削減は先送りした。米政権が検討中の日本車への追加関税を発動しないとの「言質」も、従来と同じレベルにとどまった。
 来年の大統領選を気にかけるトランプ大統領は署名に先立ち、「米国の農家にとって巨大な勝利であり、それが私にとって重要なことだ」と強調。安倍首相は「両国の消費者あるいは生産者、勤労者全ての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった」と話した。
 米政権が検討してきた米通商拡大法232条に基づく輸入車への追加関税については、共同声明に「日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない」との一文を盛り込んだ。日本側はこの文言が追加関税の発動を控える趣旨だと説明、「(この日の)首脳会談で直接、安倍総理からトランプ大統領に確認した」(茂木敏充外相)としている。
 ただ、この文言は昨秋の共同声明の表現を踏襲したものにとどまり、日米首脳間での口頭の「確認」も昨秋と同じだ。トランプ氏はかねて将来の発動の可能性を示唆しており、ライトハイザー米通商代表は25日、記者団に「現時点では大統領も232条で日本に何かすることは全く意図していない」と説明。従来と同じように、将来にわたり発動しないとの確約は避けた。
 対米輸出額の約35%を占める自動車関連の関税について、TPP合意では、乗用車の関税率(2・5%)は15年目から削減を始め、自動車部品(主に2・5%)は8割以上の品目で即時に撤廃することになっていた。しかし今回の合意では、関税率をまとめた米側の表に「さらなる交渉による関税撤廃」を記すにとどめ、現段階では事実上、関税削減を断念した。
 一方、米国が特に重視する牛肉や豚肉への日本側の関税については、TPP水準まで引き下げる。牛肉では、現状の38・5%から段階的に削減し、最終的に9%とする。さらに、緊急輸入制限措置(セーフガード)による高関税がかからない事実上の低関税枠を約24万トンにする。
 日本側も牛肉など以外の農産物では、市場開放の範囲をTPPより狭めることを求め、米側も受け入れた。自由貿易を進める観点からは、日米双方の立場からみて後退した形となる。
 茂木氏は「日本にとって聖域とも言われるコメは完全に(関税撤廃・削減の対象から)除外という形になった」と話した。TPPで新設することになっていた最大年7万トンの米国からのコメの無関税輸入枠は、設定自体を見送った。酒類は、ボトルワインを8年目に関税撤廃するとしたTPPの合意水準に合わせる。清酒や焼酎など他の種類については関税削減の対象としなかった。
 日米は昨年9月の共同声明で、交渉を2段階で進めることで合意している。日本側が、農業界に配慮して「日米物品貿易協定」(TAG)と呼んだ物品交渉など「早期に結果を生じ得るもの」が第1段階。「他の貿易・投資の事項」が第2段階だ。今回の合意は第1段階にとどまり、日本は秋の臨時国会での承認を経て、年内の発効をめざす。
 茂木氏は、今後の「第2段階」について、今回の協定発効後、4カ月以内に何を交渉するか議論することを目指すと説明した。一方、トランプ氏は「かなり近い将来、日本とのさらに包括的な協定をまとめることになるだろう」と述べた。(ニューヨーク=北見英城、青山直篤、楢崎貴司)


安倍首相が日米貿易協定で
トランプに予想以上の国益差し出し!
「自動車の関税撤廃約束、追加関税回避」
宣伝は追従外交を隠す嘘
2019年9月26日:LITERA

 安倍首相によるトランプ大統領への国益差し出しが完全に確定してしまった。本日未明、ニューヨークで日米首脳会談がおこなわれ、日米貿易協定締結で最終合意し共同声明に署名。会談後の会見でトランプ大統領は、こう高らかに宣言した。
「きょう発表した協定のもとで、日本は70億ドル相当のアメリカの農産物について市場を開放する。日本では、アメリカ産牛肉や豚肉、小麦、チーズ、トウモロコシ、ワイン、その他多くのものに対する関税が大きく引き下げられるか、撤廃される。これはアメリカの農家や牧場にとって大きな勝利であり、私にとって非常に重要だ」
 このトランプによる“勝利宣言”を隣で聞いていた安倍首相は、都合の悪いときに見せるいつも見せるように、落ち着きなく目をキョロキョロ。自分に発言が回ってくると、「両国の消費者あるいは生産者、勤労者全ての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった」と述べた。

 だが、「ウィンウィン」なんていうのは明らかな大嘘だ。トランプは、70億ドル(約7500億円)と言っていたが、米通商代表部(USTR)によれば、日本がアメリカに売り渡す農産物市場はなんと約72億ドル(約7800億円)。これによって日本の農家が大打撃を受けることは間違いない。
 しかも、最悪なのが、農産物市場をアメリカに差し出す見返りとして、日本が求めていた自動車および部品の関税撤廃は完全に先送りにされてしまったことだ。協定には「さらなる交渉による関税撤廃」という言葉が書き込まれたが、具体的な時期は一切書かれておらず、政府関係者や通商政策の専門家も「言葉だけ、米政府が自動車の完全撤廃に応じるというのはありえない」と口を揃えている。
 ところが、安倍政権はあたかも、米政府が撤廃を約束したかのような嘘を振りまき、さらには「追加関税」を回避したことを手柄のようにPRをしている。安倍首相が記者会見で、「日本の自動車と自動車部品に対して追加関税を課さないという趣旨であることは私からトランプ大統領に明確に確認をし、大統領もそれを認めた」などと述べると、日本の忖度マスコミも一斉に「自動車の追加関税回避」と報道したのだ。
 いったい何を寝言を言っているのか。そもそも、オバマ前大統領との環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では、自動車および部品の関税撤廃が約束されていた。ところが、トランプにその約束をあっさり破られ、日本の対米輸出総額の3割強にあたるという5兆円超もの自動車分野の関税はそのままになってしまったのに、「追加関税されなかったから成功」って……。
 しかも、追加関税は完全に回避されたわけではない。安倍首相が成果のように語っていた「追加関税回避」だが、安倍首相のトランプへの確認は口約束に過ぎず、協定書の文言は「協定が誠実に履行されている間、共同声明の精神に反する行動を取らない」という極めて抽象的で曖昧なものに過ぎない。
 実際、ライトハイザー米通商代表部代表は両首脳の会談後、「日本車に追加関税を課す意図はない」と表明したが、「現時点で」という言葉をつけていた上、「自動車は今回の日米合意に含まれない」と説明している。
 この米政府の姿勢を見ていると、自動車の関税撤廃どころか、近い将来、米国通商拡大法232条を発動されて、関税を逆に大幅引き上げされる可能性も十分あると考えるべきだろう。

牛肉輸入でも低関税枠24万トン差し出して
「TPP水準維持」の約束を反故

 農産物の輸入関税引き下げをめぐっても、とんでもない条件をのんでいる。合意した農産物の関税引き下げによって、牛肉はいまの38.5%から段階的に9%まで引き下げられ、豚肉も1キロあたり482円の関税が最終的には50円まで引き下げられるが、牛肉をめぐっては、とてつもない量の低関税枠を押し付けられていた。
 この低関税枠というのは、アメリカ離脱前のTPPで決まった低関税を適用する輸入量のこと。TPPではアメリカを含む12カ国分で約60万トンの低関税枠が設けられているが、今回の貿易協定ではさらにアメリカ分として低関税枠を約24万トン設けることで合意したというのだ。日本政府はTPP加盟国にアメリカ分の削減を求めていくらしいが、〈米国と競合するオーストラリアなどが修正に応じるかは不透明〉(日本農業新聞9月15日付)。つまり、今回の貿易協定で、農産物の輸入緩和量についてTPP水準を死守すると言ってきた日本政府の国内向けの約束が反故にされる可能性が非常に高いのだ。
 そして、忘れてはいけないのが、アメリカで余っている合計275万トン、数百億円規模のトウモロコシを押し付けられた件だ。
 トランプ大統領は8月25日の首脳会談後、予定になかった記者発表を急遽、日本側に要請し、そこで得意気に「中国がやると言ったことをやらなかったから、国中でトウモロコシが余っている。代わりに日本の安倍総理が、すべてのトウモロコシを買うことになった」と発表。トランプ大統領は安倍首相にも「トウモロコシについても発言を」と催促し、一方の安倍首相はまずいと思ったのか、「買うのは民間、政府ではない」とやんわり訂正するという一幕があった。
 政府が買わずとも、買い上げ企業に補助金や税制優遇などをつけるのは目に見えているが、安倍首相のこの発言のあと、トランプ大統領には「日本では民間が政府の言うことをきくらしい。アメリカと違って」と言われる始末で、完全に“トランプの犬”であることが丸出しとなったのだ。
 しかし、「買うのは、政府でなく民間」と言ったものの、23日付の東京新聞によれば、主要な飼料メーカーなど6企業・団体に取材したところ〈追加あるいは前倒しで購入する予定があると回答したのは一社もなかった〉のだという。また、24日付の朝日新聞によれば、〈農水省には商社などから「トウモロコシを強制的に買わされるのか」などとの苦情の電話〉が相次ぎ、〈大手商社の間には「政府から『忖度(そんたく)』しろと無理強いされないか」との警戒感〉もあるという。

“トウモロコシ爆買い”を正当化するため、
菅義偉官房長官がついた嘘

 だが、この“トウモロコシ爆買い”を正当化するため、安倍政権はさらに嘘までついた。菅義偉官房長官は「害虫被害でトウモロコシの供給が不足する可能性がある」などともっともらしく説明したが、これはデタラメだった。実際、農水省は「現時点では通常の営農活動に支障はない」(植物防疫課)と回答(東京新聞8月27日付)。同社の9月23日付記事でも、全国農業協同組合連合会(JA全農)の担当者は「降って湧いた話に驚いている」「米国産トウモロコシは食害に遭う国内産と用途が異なり、直接代替できない」と語っており、24日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でも「それほど被害は出ていない」「影響はあまりない」という複数の農家のコメントを紹介していた。
 言われるがままに約7800億円もの農産物市場をアメリカに渡し、自動車分野の関税撤廃の約束が現状維持となり、その上、国民に嘘をついてまで余った大量のトウモロコシを爆買い。……どう考えても、今回の合意は「両国にとってウィンウィン」などと言える内容ではなく、アメリカに屈服した「不平等協定」と呼ぶべきものなのだ。
 このように、国益をアメリカに差し出す結果になったのは、トランプ大統領の恫喝にただただ怯えるだけで譲歩することしかできなかった“無能交渉”が原因だが、さらにもうひとつ、指摘しなければならないのは、参院選後まで貿易交渉の妥結を引き延ばしてもらったという問題だ。
 本サイトでは繰り返し伝えてきたように、今年4月におこなわれた首脳会談では、トランプ大統領は記者団がいる前で貿易交渉の合意時期について「かなり早く進められると思う。たぶん(5月末に)訪日するまでか、訪日の際に日本でサインするかもしれない」と答えたが、記者団が退室すると、安倍首相は 「7月の参院選があるから、それまでは無理だ。2020年秋の大統領選のことはきちんと考えている」と説明(読売新聞4月28日付)。そして5月末の来日時、トランプ大統領は安倍首相とのゴルフ後に〈日本の7月の選挙が終われば大きな数字が出てくる〉とTwitterに投稿、さらに首脳会談後にも「8月に良い発表ができると思う」と語った。
 つまり、参院選前に貿易交渉を妥結すれば日本国内の農業関係者から猛反発を受け、安倍自民党が地方票を大幅に失いかねないために、安倍首相は選挙が終わった「7月以降」に応じると約束したのである。これは選挙のために国益を差し出し、国民を欺くという信じがたい行為だ。
 だが、問題はメディアの報道だ。あからさまな“ケツ舐め外交”と選挙のために取引した結果、農家に大打撃を与えて莫大な国益を差し出したことを、どこまでしっかりと報じるのか。ここまで露骨な外交交渉の失敗が問題にならないようであれば、この国の報道は死んだも同然だろう。
(編集部)

(社説)
ゲノム食品表示 これで理解得られるか
2019年9月25日:朝日新聞

 役所の名称とは裏腹に、消費者・市民に寄り添っているとは言いがたい決定だ。
 ゲノム編集技術を使った食品について、消費者庁は先週、遺伝子の配列をわずかに変えただけなら、編集した旨の表示を事業者に義務づけることはしないと発表した。既存の品種改良との区別が難しく、たとえ義務化しても違反者を特定することができないため、としている。
 消費者団体などが批判の声を上げたのは当然だ。朝日新聞の社説は、科学的に安全か否かの議論とは別に、自分の判断で食品を選べる環境を整えることが大切で、その視点に立って表示のあり方も考えるべきだと主張してきた。今回の措置は、消費者の権利を尊重し、適切に行使できるようにするという、消費者行政の目的と相いれない。見直しを求める。
 消費者庁も、どんな食品かを知りたい消費者がいることを、当然認識している。そこで、厚生労働省に届け出があったゲノム編集食品については、事業者に対し、消費者への積極的な情報提供を呼びかけている。
 何とも中途半端な対応だが、そういうことであれば当面は食品を開発・販売する側に期待するしかない。ゲノム編集を施したことを明示し、問い合わせがあれば丁寧に答える。情報の公開と説明に前向きに取り組む姿勢を見せることが、信頼を生み、今後のビジネスにも役立つと考えてもらいたい。
 そのためにも、表示・公開の方法に一定の基準を設けることを検討すべきだ。
 どんな遺伝子に手を加えたのか、成分はどのように変化したのかなどについて、企業秘密を守りつつ、どこまで公にするか。ホームページに載せるだけでいいのか、購入時に認識できるようにするにはどうしたらよいか。事業者任せにせず、消費者庁も入って、工夫や研究を重ねてもらいたい。
 厚労省の責任も重い。業者が届け出るべき情報の中には、アレルギーの原因物質が新たにつくられていないことを確認する項目などもある。開発段階で十分な試験がなされているか、データは信頼できるか、入念なチェックが求められる。
 ゲノム編集は発展途上の技術だ。最新の動向を幅広く収集するとともに、懸念材料が出てきたときには、事業者にすみやかに対応をとらせ、安全性を検証できる仕組みをあらかじめ整えておくことが欠かせない。
 効率のいい品種改良を可能にするゲノム編集技術は、国内はもちろん世界の農林水産業を大きく変える可能性を秘める。それだけに、幅広い理解を得られるよう慎重に歩みを進めたい。


余るトウモロコシ、トランプ氏のウソ
 安倍首相は忖度?
2019年9月24日:朝日新聞

 中国が輸入しなくなって余ったトウモロコシを日本がすべて買ってくれる――。トランプ米大統領が8月25日の日米首脳会談後の記者会見で、唐突にアピールしたこの「商談の成果」。背景には、来年の大統領選に影響しかねない自らの政策転換があった。日本が成果の演出に一役買った可能性も浮かび上がってきた。
 トランプ氏は仏ビアリッツでの首脳会談の後、安倍晋三首相と会見し、「米国内の至るところでトウモロコシが余っている。中国がすると言っていたことをしていないからだ。日本はそのトウモロコシを全て購入する」と発言した。本来のテーマの日米貿易交渉を脇に追いやり、トウモロコシの成果ばかりを強調した。
 トウモロコシの価格はこのころ低迷していた。指標となる米シカゴ商品取引所の先物価格(12月物)は7月15日に一時1ブッシェル(約25キロ)=4・6ドルをつけた後、下落に転じ、8月23日には2割安い3・6ドル台で取引を終えていた。
 トランプ氏は日本がばくだいな量を買うと説明したが、会見後も価格は下がり続け、9月9日には3・5ドル台で取引された。日本が追加購入すると伝えた量の上限は約275万トン。米国の生産量(年3億6600万トン)の1%に満たず、需給への影響はほぼない。
 トランプ氏はトウモロコシが余った理由に、米中貿易摩擦による中国の買い控えを示唆した。だが、これも事実ではない。中国はトウモロコシをほぼ自給しており、米国からの輸入は年数十万トンとごくわずかだ。
 米国最大のトウモロコシ生産を誇るアイオワ州。地平線まで広がる畑を前に、農家のデビッド・ウィーバーさん(50)は9月上旬、冷ややかにこう話した。
 「大統領はいつでも、ものごとを捏造(ねつぞう)するからね」
 中国向け輸出が多い大豆は貿易摩擦で打撃を受け、農家の不満がたまっているのは確かだ。大豆も手がけるウィーバーさんは「トランプが貿易戦争を始めたとき、多くの農家は彼なら成功すると期待した。でも何の成果もない」と憤る。
 では、事実をねじ曲げてまでトウモロコシにこだわったのはなぜか。カギを握るのが、トランプ氏自らによる環境政策の転換だ。
 米国では、トウモロコシはエタノールをつくるエネルギー資源としての性格を強め、生産の実に4割がエタノールに回される。化石燃料による二酸化炭素排出量を減らすため、石油精製業者は燃料にエタノールを混ぜなければいけない規制があるが、米政権は8月上旬にその緩和を決めた。
 背景には、来年の大統領選に向けた支持層への配慮があった。トランプ氏は、米環境保護局トップに、支持基盤の石油業界に近い人物を起用するなど、温暖化対策に後ろ向きだった。コストがかさむエタノールの混合を求める規制も、石油業界で評判が悪かった。
 この規制緩和の発表後、トウモロコシ需要が減るとの見通しから価格が急落。今度は「多くのトウモロコシ農家は長くトランプ氏を支えてきたが、すぐに変わるかもしれない」(ネルド・ネブラスカ生産者協会長)と、トウモロコシ業界が猛反発した。ロイター通信によると、8月19日、前アイオワ州知事のブランスタッド駐中国大使がトランプ氏に会い、農家の支持が離れると懸念を伝えた。
 トウモロコシが余っているのは中国の買い控えのせいではなく、日本が買う量も全体からみるとわずか。業界の板挟みになったトランプ氏。何とか農家の怒りをなだめようとしたのではないか――。そう問うと、ミネソタトウモロコシ生産者協会のブライアン・サルマン会長は「そうかもね。大統領は言いたいことを誇張するくせがあるから」と答えた。(米アイオワ州グリーン郡=青山直篤)

忖度無理強い、警戒する商社

 「米国からのトウモロコシの購入は、何でこんな風に世の中に伝わってしまったのかわからないよ」
 日米首脳による会見の翌週、自民党幹部は首をかしげた。農林水産省によると、実は追加購入は首脳会談で決まったのではなく、すでに8月8日に決め、商社などが入る飼料の業界団体にも伝えていた。
 理由は「7月に国内で初めて害虫ツマジロクサヨトウが発見されたため」だ。この害虫のガは1日に200キロ飛ぶこともある。アフリカや中国、インドで農作物への被害が急拡大し、国連食糧農業機関(FAO)が注意を呼びかけている。
 主に乳牛が食べる青刈りトウモロコシが被害に遭う恐れがあるとして、商社が緊急輸入する際、倉庫の保管費用や購入代金の金利分を補助することにした。米国に示した約275万トンはこの上限で、最大32億円の税金を投じる計画だ。
 実際にどれだけ輸入されるかは商社の判断次第だ。被害が想定を下回って緊急輸入分が余れば、その後の輸入量が減り、総量では増えるわけではなくなる。
 だが、トランプ氏にとってこの「不都合な真実」に安倍首相は共同会見で触れなかった。
 トウモロコシの購入を予定していることに言及頂けないか――。トランプ氏から発言を促されると、首相は「緊急な形で購入をしなければならないと民間も判断をしているので、協力できるとは思います」と話した。トランプ氏は「日本の民間は政府の言うことをよく聞く」と上機嫌だった。
 政府関係者は「トランプ氏が喜びそうな話なので、日米首脳会談で話題にのせたところ、確信犯で事実関係をねじ曲げてアピールされた。そのトランプ氏のメンツを守るために、あえて首相は否定しなかったのではないか」と推察する。
 会見が終わると、農水省には商社などから「トウモロコシを強制的に買わされるのか」などとの苦情の電話が相次いだ。担当者は「政府間で追加購入の約束はしていない」と火消しに躍起だ。
 ただ、野党には「貿易交渉を有利に進めるための見返りではないか」との見方がくすぶる。農水省は「全く無関係だ」と否定するが、上限が約275万トンである理由は要領を得ない。
 害虫の被害は9月20日現在、九州を中心に18県に及ぶが、青刈りトウモロコシ生産の6割を占める北海道ではまだ見つかっていない。農水省によると、仮に国内の青刈りトウモロコシすべてが被害に遭っても、必要な輸入量は年100万トン強。上限枠の半分ほどに過ぎない。
 農水省は「枠が余る可能性は十分にあるが、農家が安心できる量を確保した」とした上で、「商社には3カ月分を購入する慣行の社が少なくなく、全社が参加できるよう昨年の輸入量(約1100万トン)の3カ月分の量にした。絶対に275万トンありきで商社に購入は迫らない」と強調する。
 だが、朝日新聞が大手商社に取材したところ、回答した4社すべてが「そんな慣行は聞いたことがない」と話した。大手商社の間には「政府から『忖度(そんたく)』しろと無理強いされないか」との警戒感も残る。(大日向寛文)


トランプ氏は上機嫌、
トウモロコシの商談 日米貿易交渉
2019年9月26日:朝日新聞

 大枠合意がなされた日米貿易交渉で、トランプ米大統領がことさらに喜んだのは、日本による米国産トウモロコシの大量輸入だ。会見に同席した安倍晋三首相と「もう一つ合意した」と強調。来年秋の大統領選を見すえ、支持層の農家にアピールした。
 「中国が約束を守らないせいで、我々の国にはトウモロコシが余っている。それを、安倍首相が代表する日本がすべて買ってくれることになった」。仏南西部ビアリッツで25日開かれた日米首脳会談後の共同会見で、トランプ氏は「商談」成果をこう発表してみせた。
 続けて発言した安倍首相の話が貿易交渉についてだけで終わると、トランプ氏は「トウモロコシについても発言を」と催促。安倍首相が「買うのは民間」などととどめても、「日本の民間は政府の言うことをよく聞く。米国と違う」と上機嫌だった。
 日本政府によると、国内のトウモロコシは一部で害虫被害が確認され、飼料用の供給に懸念が出ている。このため、米国産を3カ月分、前倒しで輸入することになったという。量は「年1千万トンの4分の1ほど」(政府高官)で、約250万トン規模になる見込みだ。
 首脳会談は主要7カ国首脳会議(G7サミット)の合間にあった。直前までG7出席を渋ったとも報じられるトランプ氏だが、米中貿易摩擦のあおりで苦しむ自国農家への「手土産」を勝ち取った。(ビアリッツ=和気真也)


クローズアップ
貿易交渉 防戦重ねた日本
 米、車関税で脅し
2019年9月27日:毎日新聞

 日米貿易協定は今年4月の交渉開始から約5カ月という異例の早さで決着した。日本は米国の農産品に対する関税を環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の水準に引き下げる一方、米国向けの自動車や部品に課される関税の撤廃は先送りされた。来年の米大統領選に向けて成果をアピールしたいトランプ政権に、日本は一定の譲歩を強いられた格好だ。一方、国内の消費者にとっては牛肉などの輸入品を安く買えるようになるメリットもある。
 「自動車と部品の関税撤廃が難しいことは最初から分かっていた」。日米貿易協定の交渉を担当する政府関係者は首脳会談が終わると、本音を語った。今回の交渉は、自国第一主義を掲げて市場開放などを迫る米国に対し、日本は防戦を強いられる構図で始まった。
 中国に貿易戦争を仕掛けたトランプ大統領は、日本車の輸入も安全保障上の脅威とみなし、通商拡大法232条を適用する可能性に言及。日本車に最大25%の追加関税が課される恐れがあり、「日本車メーカーだけでなく日本経済に深刻な打撃を与えかねない」(自動車業界関係者)との懸念が出ていた。
 米国が離脱したTPPでは、自動車や部品の関税を米国が撤廃することが盛り込まれていた。このため今回の交渉で日本はTPPに沿った関税撤廃を求めつつ、追加関税回避の「約束」を取り付けることを最優先課題に位置づけた。
 製造業の復活を訴えるトランプ政権にとって自動車分野は「聖域」で、米国側が実際に関税撤廃に応じる見込みは薄かった。そこで、経済再生担当相として閣僚協議にあたった茂木敏充・現外相は「さらなる交渉による関税撤廃」という文言だけでも合意文書に入れるよう要求。最後は米国も容認した。しかし、撤廃の時期は不明なままで、部品関税の即時撤廃などが盛り込まれたTPPから大きく後退した。
 首脳間の共同声明では「声明の精神に反する行動を取らない」と明記し、安倍晋三首相は記者会見で「自動車に対する追加関税を課さない趣旨で、トランプ大統領に確認した」と説明した。関係者によると茂木氏が「追加関税を発動したら日本は貿易協定から離脱する」と米国側に伝え、交渉妥結を急ぎたい米国から、ようやく発動回避の「約束」を取り付けたという。
 一方で日本は、トランプ政権が重視する牛肉や豚肉などの関税引き下げを容認。代わりに茂木氏が要求したのが、日本の農業の聖域であるコメ分野だ。TPPでは米国産のコメの無関税枠(最大で年7万トン)が設定されていたが、今回の交渉で設定見送りを求めた。
 コメの産地であるカリフォルニア州は民主党のナンシー・ペロシ下院議長の地元で、同党の牙城だ。議会対応でペロシ氏の協力が必要なため米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は日本のコメ市場の自由化を求めたが、最後は日本の要求を受け入れた。日本の与党関係者は「トランプ大統領は、大統領選でプラスにならないコメに関心が薄かった」と解説する。
 日米双方がそれぞれの「聖域」での成果をアピールし、安倍首相も「ウィンウィンの合意」と持ち上げた。しかし、日本が防戦を強いられた自動車・同部品は対米輸出の3割強を占める主要製品。追加関税発動という最悪の事態は回避したが、トランプ氏の大統領再選戦略に振り回された感は否めない。ライトハイザー氏は25日、記者団に「TPPよりも米国の代償は少なかった」と語った。【中井正裕(ニューヨーク)、神崎修一】

牛肉、ワイン安く、外食は値下げ慎重 消費者への恩恵は

 米国産の農産品にかかる関税が撤廃や引き下げとなることで、日本の消費者にとっては、牛肉やワインなどの対象品目を今よりも安く買えるようになる。昨年12月の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、今年2月の日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続いて、日米の新たな貿易協定が発効すれば、家計に一定の恩恵が広がりそうだ。
 米国産牛肉には現在38・5%の関税がかかっているが、2033年度に9%へ下がる。TPPは発効と同時に27・5%に下がりスーパー各社が還元セールを展開した。西友は今回の協定を「販売に追い風」と歓迎し、販促を検討する構え。ワインは日EU・EPAの発効で無税になった。米国産は25年度に撤廃されるが「近年人気が高まり、購入が伸びている」(メルシャン)といい、市場が活性化しそうだ。ハムやソーセージなどは原材料の肉だけでなく加工食品そのものの関税も下がり、消費者には恩恵だ。日本ハムは「国内で輸入食肉の需要拡大が期待できる」と受け止めつつ、米国産の安い加工肉との価格競争にも備える。
 一方、外食大手は値下げに慎重だ。吉野家ホールディングスは、使用する牛肉の9割以上が米国産。今回の協定を「関税が下がることは長い目で見てプラス」と歓迎しつつ「米国産の牛肉は独占契約ではない」として、他社との仕入れ競争の中、関税引き下げが調達コストの削減に直結するわけではないとみる。
 米国からフライドポテトに使うジャガイモなどを輸入する日本マクドナルドも「(今回の日米協定は)前向きなこと」(下平篤雄副社長)と受け止めるが、原材料の調達には価格以外にも品質や安定的な供給量の確保も重要で、現時点で値下げ効果は限定的という。外食も含めて幅広く消費者に恩恵が及ぶには、一定の時間もかかりそうだ。【本橋敦子、小坂剛志】

トランプリスクなお

 多くの農産品で関税引き下げを勝ち取った米国だが、乳製品業界からは不満の声が上がっている。米通商代表部(USTR)が早期の交渉妥結を優先し、バターや脱脂粉乳などTPP加盟国に設けられた低関税枠の要求を取り下げたためだ。酪農の盛んなウィスコンシン州の下院議員らはUSTRに抗議書簡を送り、「酪農産業を置き去りにしない包括的な貿易協定が必要だ」と訴えた。
 全米商工会議所は25日、「(貿易協定が)米農家やデジタル経済の発展を後押しする」と歓迎しつつ、「これでは不十分。サービスや知的財産などを含む包括的な協定を実現する」よう求めた。今回の共同声明で日米は追加交渉を行う意向も示し、米国側は最終的にTPP並みの包括的な貿易協定を目指す方針を掲げている。トランプ氏が業界に突き上げられ、理不尽な要求を再び日本に突きつけてくる可能性も考えられる。
 日本の産業界からは、今後の米国の対応を警戒する声も漏れる。政府は自動車の追加関税を当面回避できたと強調するが、業界関係者は「共同声明の表現はあいまいで、トランプ大統領が何を言い出すか分からない」と強調。USTRのライトハイザー代表も「現時点で」と断った上で、「日本車に追加関税を課すことは想定していない」と説明した。
 一方、今回の貿易協定は米国側の市場開放が不十分と指摘する声も出ている。世界貿易機関(WTO)のルールでは、2国間の貿易協定について貿易額ベースで9割程度の関税撤廃が必要とされる。日本の主要輸出品である自動車関連で「関税撤廃」の文言を入れたのは、WTOルール順守をアピールする狙いもあるが、細川昌彦・中部大特任教授(国際経済)は「期限を書かずに明記しても意味はない」と指摘。そのうえで「ルールを重視する日本にとって今後、他国との交渉で悪い前例になる懸念がある」と指摘した。【松本尚也】

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