この国の誤魔化しは、いつまで続くのか?

政府の嫌韓感情と国民のそれとは大きな乖離がある。安倍晋三首相と麻生太郎副総理が悪の枢軸として、嫌韓ヘイトを煽っているように思えてならない。
日本は、韓国植民地被害に誠実に向き合うことをせず、いつもの“安倍論法”で問題を細かく切り出して、もっともらしいことを言う日本政府は、国際的孤児となりつつある。
そもそも、民間企業と被害者個人との賠償の話が、国際的な政治問題へとフレームアップされ、いつの間にやら強制徴用、慰安婦問題が相対化されてしまっている。
拙ブログで何回も書いているが、日本の東アジア外交に欠けているのは、東アジアの平和構築の哲学だ。
ヒロシマ・ナガサキの戦争被爆の悲惨を世界に訴える日本が、なぜアジアの人びとの悲惨に同情できないのか不思議だ。


日本“反韓内閣”スタート…
閣僚ら先を争って“韓国叩き”
2019年9月16日:ハンギョレ新聞

閣僚19人中18人が右翼関連団体会員 
茂木外相「個人請求権は消滅していなくても救済されない」 
河野防衛相「日本の輸出管理に韓国が感情的反応」












河野太郎新防衛相が12日、東京の防衛省で開かれた就任式で儀仗隊を査閲している
=防衛省ホームページより//ハンギョレ新聞社

 日本の安倍晋三政権の新内閣が11日に出帆するやいなや、新たに任命された閣僚たちの韓国に対する強硬発言が相次いでいる。
 茂木敏充新外相は13日の記者会見で、韓国最高裁(大法院)の強制動員賠償判決に対する考えを尋ねられるとすぐに、「日韓請求権協定の第2条は、財産請求権の問題は完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認した」と述べた。茂木外相は「したがって、一切の個人請求権は、消滅していないとしても救済されない。また国としては救済できない」と話した。歴代の日本政府が否定できなかった個人請求権に対しては、消滅していなくても行使することはできず、強制動員賠償判決は1965年の韓日請求権協定違反である、という既存の日本の主張を繰り返したのである。
 「韓国最高裁の判決は、日韓請求権協定でも反人道的性格の強制動員被害に対する慰謝料請求権まで否定することはできない、という内容である点を理解しているか」という質問が出ると、すぐに茂木外相は「分かっている。理解している」と答えた。しかし彼は「日韓請求権協定に基づいて、日本は無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を行い、これと同時に同協定によって日韓両国、そして国民の財産請求権問題は完全かつ最終的に解決済みだ」と主張した。日本政府は無償3億ドル・有償2億ドルの提供を強調するが、この資金は現金で支給されたのではなく、日本政府が用役と物品を提供する形式で行われた。茂木外相は「国際法違反の状態を一刻も早く是正することを(韓国に)に要求する」とも言った。
 菅原一秀経済産業相は就任初日の11日夜の記者会見で、韓日関係について「旧朝鮮半島出身労働者問題(強制動員被害問題)をはじめ、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権側で否定的な動きが相次ぎ、非常に難しい状況が続いている」と韓日関係悪化の責任を韓国に向けた。外相から防衛相に席を移した河野太郎氏も11日夜の記者会見で「日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)や日本の輸出管理について、やや感情的と思われる(韓国側の)リアクションがある」と主張した。
 日本国内でも、安倍首相が内閣改造を通じて韓国に対する強硬姿勢が変わらないことを示していると解釈されている。時事通信は15日、「茂木外相は記者会見で一歩も引かない姿勢を強調した」と解釈した。匿名の自民党関係者は、外相、防衛相、経済産業相の人事について「対韓国外交は今後も官邸が主導する」との見方を示したと同通信は伝えた。
 安倍首相を含む閣僚19人中18人は、日本の右翼団体である日本会議と神道政治連盟の国会議員懇談会の会員であると、日本共産党の機関紙である赤旗が伝えた。唯一、両団体のどちらにも加入していないのは小泉進次郎環境相だが、彼もやはり毎年、第二次大戦の敗戦日である8月15日にA級戦犯が合祀されている東京の靖国神社に参拝している。
 韓国の次官に相当する政務職である各省庁の副大臣と政務官の人事には、過去に問題を起こした人物が起用された。義家弘介・新法務副大臣は、文部科学副大臣であった2017年6月、安倍首相の友人が理事長を務める私学法人である加計学園に恩恵を与えたという疑惑と関連して、この事件の内部告発者を狙って機密規定違反の可能性に言及した。当時、口止めを試みたとの批判を受けた。農林水産副大臣に任命された伊東良孝氏は去年、少子化問題に関連して「夫婦は必ず子どもを三人以上を産んでほしい」と話した後に批判を受け、発言を撤回した人物だ。
東京/チョ・ギウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/909567.html


安倍首相「みじんも変わらない」
 韓国に対し強硬姿勢
2019年9月16日:朝鮮日報







 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今月下旬、米ニューヨークを訪問する予定であることが発表され、韓日首脳とも国連総会に出席することが確定した。しかし、両国の首脳会談が開催されるかどうかは今回も不透明だ。今月11日に右翼強硬派を前面に押し出して内閣改造を実施した安倍内閣は、対韓政策に全く変わらぬ姿勢を見せている。
 強制徴用問題と輸出規制問題により両国関係が冷え込んでいる状況で、両国間の首脳会談も1年間開催されておらず、韓日確執は「固着局面」に入ったという懸念が出ている。

■米朝に集中するという青瓦台

 青瓦台関係者は15日、国連総会を契機とした韓日・韓米日首脳会談の開催計画を問われると、「選択と集中をしなければならない。さまざまなことをすべて解決しようという場だと言うよりは、選択された日程を中心に進められるのではないかと思う。韓米首脳会談に集中すると解釈すればいいだろう」と語った。韓日関係の改善ではなく、米朝問題に集中するということだ。
 ソウルの外交消息筋は「韓日首脳が『会うことによる実益がない』と判断しているだけに、今回も会談の可能性は低い。両国の確執がさらに激化している中、6月末の大阪での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)時の『8秒間握手』のような場面もないかもしれない」と言った。これは、遭遇形式の略式会談も難しいという意味だ。両国首脳会談は昨年9月の国連総会時にニューヨークで行われたのが最後だ。来月22日に行われる天皇即位式(即位の礼)にも文在寅大統領が出席する可能性は低いと言われている。
 韓国政府は、早ければ今週にも日本を韓国の輸出手続き優遇国(ホワイト国)リストから除外する「戦略物資輸出入告示」の改正告示を発表する予定だ。ただし、外交当局間のチャンネルはそのままつなげておく方針だ。政府関係者は「国連総会期間中の外相会談の可能性は開かれている」と語った。

■安倍首相「みじんも変わらない」

 日本の安倍晋三首相は23日にニューヨーク入りする予定だ。ニューヨーク滞在期間が文在寅大統領と少なくとも三日間重なるものと見られるが、日本国内でも両国首脳会談は取りざたされていない。日本政府が、韓日確執を触発・増幅させた日本の強制徴用賠償問題と輸出規制措置に関する強硬姿勢を曲げていないからだ。
 安倍首相は11日、内閣改造後の記者会見で、韓国に対する外交政策について「新しい体制の下でもみじんも変わるものではない」「韓国には国と国との約束を守っていただきたい」と要求した。茂木敏充外相は「(韓国の)判決は(韓日請求権)協定に明確に違反している」「国際法違反の状態を一刻も早く是正することを引き続き強く求めていく」と述べた。菅義偉官房長官も12日、「協定で最終的かつ完全に解決済みだ」と語った。
 日本の外務省関係者は先日、東京駐在の韓国特派員たちに会い、「問題解決の兆しが見えなければ、安倍首相に首脳会談をしようと言えない」「両首脳が会ってうまくいかなければ、その次はない」と言った。「韓国側の立場の変化」がない状態では首脳会談を推進しないことを明らかにしたものだ。東京の外交消息筋は「日本としては2011年12月に李明博(イ・ミョンバク)大統領と野田佳彦首相による京都首脳会談の失敗が翌年の李大統領の独島訪問につながったという記憶があるため、(首脳会談推進に)いっそう慎重になっている面がある」と話している。
東京=李河遠(イ・ハウォン)特派員


風知草 徴用工、中・韓の違い=山田孝男
2019年9月16日:毎日新聞


 秋の内閣改造劇。
 表の主役が小泉進次郎環境相なら、陰の主役は菅義偉(すがよしひで)官房長官だった。
 初当選以来マスコミの厳重監視下に置かれ、開演前から公私とも勝手放題の論評にさらされる環境相に同情する。が、本日の主題は陰の方の人である。
      ◇
 今月2日、菅の記者会見でこんな質問が出た。
 「中国人の元徴用工に日本企業が和解金を払っている。韓国人の場合も政府間で争わず、民間同士の解決策を探れないか」
 菅はこう答えた。
 「政府の立場で発言は控えたいと思います」
 この応答について「中国と韓国で対応が違う理由を説明できず、理不尽」(しんぶん赤旗4日付)などの批判が出た。
 政府は逃げ腰――と見えたことは否めない。
 官房長官は、こう答えるべきではなかったか。
 「韓国の問題と中国の問題は似て見えるが、経緯や背景を見れば異質だ。分けて考えたい……」
 どこが異質か。
 まず、最近の外交関係の安定度である。昨秋、韓国の国家機関の一部である大法院(最高裁)が、日本企業に新たな賠償を命じた。
 日韓は1965年の日韓基本条約と請求権協定で戦後賠償を解決し、国交を結んだ。韓国側は判決に伴う矛盾を国内で解決せず、協定を顧みないので日韓関係が不安定化した。
 一方、中国の元徴用工も訴訟を起こしているが、国家の最高レベルで日中共同声明(72年)や平和友好条約(78年)を否定する動きはなく、日中関係はとりあえず安定している。
 それに――。韓国の元徴用工には既に個人補償がなされているが、中国はそうではない。中国は日中共同声明第5項で戦争賠償請求を放棄している。
      ◇
 半世紀前、日韓は個人補償を綿密に話した。
 61年の協定交渉議事録を見ると、韓国側は「被徴用韓人の未収金、補償金」を含む個人補償を要求。日本側が個人への支払いを提案したが、韓国側は「韓国が請求し、国内措置として支払う」と主張した。
 実際、日本は、1ドル=360円の当時、3億ドル(1080億円。今の物価に換算して10倍の1兆800億円という)の無償資金を韓国へ供与。韓国はその一部を使い、70年代に個人補償を実施。2007年と10年にも給付している。
 大戦中、日本統治下で働いた中国、韓国の元労働者が、個人の資格で訴え出た損害賠償請求訴訟は日中韓にたくさんある。
 日本では07年、被告企業に「被害救済に向けた努力を期待」しつつ、請求自体は棄却する最高裁判決が確定。その後、中国、韓国で訴訟が増え、16年、北京で三菱マテリアル(旧三菱鉱業)が中国人原告と和解した。対象3700人超。和解金は1人170万円、総額64億円という。
      ◇
 内閣改造で菅に近い議員の入閣が目立った。菅原一秀経済産業相、河井克行法相。それに菅と同じ神奈川県選出の河野太郎防衛相と小泉環境相。何より菅自身が間もなく7年の官房長官で留任、引き続き政府の発信の先頭に立つ。
 首相は改造後の記者会見で「対韓外交の方針はみじんも変わらない」と強調した。だが、決意表明だけでは、行き詰まった問題がますます硬直する。日本はなぜ譲歩できないか、パワー充実の官房長官に丁寧な発信を求めたい。(特別編集委員)(敬称略)


[インタビュー]
「勤労挺身隊の闘争映像から
“名古屋の愚直な市
民たち”を見つけた」
2019年9月16日:ハンギョレ新聞

 ドキュメンタリー「名古屋のパボ(ばか)たち」(75分)を制作したイム・ヨンチョル監督(47)は10日、「誰かは記録しなければならない仕事だと思って始めたのが、いつのまにか10年を越えてしまった」と話した。
 この作品は、朝鮮女子勤労挺身隊被害者の女性たちと連帯してきた「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会」(以下、名古屋訴訟支援の会)の活動が描かれている。勤労挺身隊とは、日帝強制占領期(日本の植民地時代)に13~15歳という幼い歳で日本の軍需工場労働者として動員されて働き、賃金を一銭も受けとれなかった被害者たちのことを言い、現在180人余りが生存している。


2005年の「日帝強制動員」映像作業で 
「被害者証言」をした先輩の母が亡くなり
 記録者として恥ずかしい思い 
2009年から私費で闘争の現場に同行 
「名古屋訴訟支援の会」の連帯活動に感動 
「20年余り『ばかものたち』のように愚直に支援した」 
23・24日、光州でドキュメンタリー上映会

 イム監督が勤労挺身隊を知ったのは2005年頃だ。VJ(ビデオジャーナリスト)として活動していた彼は、ある放送局の依頼を受けて日帝強占期の強制動員被害者に関する申告映像を撮りに行き、偶然、知人に会った。「小さい時からよく会っていた先輩のお母さんが、『私も勤労挺身隊被害者だ』とおっしゃったんです。私のすぐ近くに日帝強制動員の被害者がいると考え、驚きました」

















名古屋訴訟支援の会の高橋信共同代表とイム・ヨンチョルドキュメンタリー監督(右)
=写真・勤労挺身隊市民の会提供//ハンギョレ新聞社

 彼は2009年3月に発足された「勤労挺身隊女性と共にする市民の会」の会員に加わった。同年7月、先輩の母の故キム・ヘオクさんが勤労挺身隊損害賠償訴訟中に亡くなったという知らせを聞き、“証言記録者”として恥ずかしいと思った。
 三菱自動車販売店の前で開かれた高校生のろうそく文化祭(2009年11月)が、長い道のりの第一歩だった。翌年6月には、勤労挺身隊市民の会のメンバーらが日本の三菱重工業本社を訪れ、三歩一拜(三歩歩いて一回跪いてお辞儀する行動)闘争をした時も同行した。彼は「勤労挺身隊闘争の現場や行事がある時は、全ての仕事をさておいて私費を投じてでも追いかけた」と話した。
 イム監督は当初、勤労挺身隊闘争の象徴的人物であるヤン・クムドクさん(88)の生涯と闘争を映像で記録するつもりだった。ところが、これまで撮った3テラバイトの量の映像を何度も繰り返し見て、「良心的な日本の市民たちの連帯活動」に心が引かれた。彼は昨年5月、「ニュース打破」の映像公募展に「名古屋のパボ(ばか)たち」というタイトルで応募して当選した。この作品は、2月に「ニュース打破」を通じて初めて披露された。イム監督は「長い間抱えていた荷物を少しは下ろした気持ちだった」と語った。
 この作品の中心人物は、名古屋訴訟支援会の高橋信共同代表(77)だ。名古屋の教師だった彼は、1998年に1100人が参加する名古屋訴訟支援の会を設立した後、同年3月に韓国の勤労挺身隊被害者たちが日本の裁判所に損害賠償請求訴訟をするよう支援した。訴訟は2008年に日本の最高裁判所で最終的に敗訴が確定されたが、終わりではなかった。彼らは2007年7月から毎週東京三菱本社に駆けつけ、謝罪を求める「金曜行動」を始め、今までずっと続いている。イム監督は「三菱重工業の謝罪を求めるチラシを数百人に勧め、10枚も手に握らせるのです。愚直な彼らの活動を見て、逆説的な意味で『バカたち』というタイトルをつけました」と語った。
 光州(クァンジュ)広域市は23日、光州市庁で「名古屋のパボ(ばか)たち」を上映する。この日、高橋信共同代表も出席する。作品の中には、イ・ヨンソプ光州市長が国会議員だった頃の2010年6月に、三菱重工業東京本社前で三歩一拜行動に同行した姿も含まれている。勤労挺身隊市民の会も24日夕方7時、光州独立映画館でこの作品を「アンコール上映」する。
 先月29日に開かれた初の上映会が終わった後、観客たちはこの作品を日本で上映できるよう、1人1万ウォンずつ集める「市民ファンド」を提案もした。イム監督彼は「日本語字幕など今後後続作業を続けて、日本で必ず上映したい」と話した。
 イム監督は1999年に映像作業を開始した後、「東光州病院労働者闘争」、聴覚障害者のインファ学校性暴力事件の人権現場を記録してきた作家だ。勤労挺身隊被害者たちも「挺身隊」という名前のために深い傷を受けたが、大きな関心を向けられなかった歴史の少数者たちだった。
 イム監督に残されたもう一つの宿題は、もともと最初に企画した「原告ヤン・クムドク」を完成させることだ。彼は「ヤン・クムドクさんが日本政府と三菱重工業の謝罪を受けて、嬉しくて踊りを踊る姿を必ず映像に残したい」と話した。
チョン・デハ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )


【主張】
処理水と小泉氏 前環境相の決意受け継げ
2019年9月17日:産経新聞

 「思い切って放出して希釈する他に選択肢はない」と、退任直前の原田義昭環境相(当時)が発言した。
 東京電力福島第1原子力発電所で増え続ける、有害放射性物質除去後の処理水に関する閣僚としての思いだ。批判を覚悟でよくぞ表明したと評価したい。本来は安倍晋三首相の口から聞きたかった所感である。
 8年前の過酷事故で大破した3基の建屋では、溶けた燃料を冷やす注水と流入する地下水で日々、放射能汚染水が発生している。
 東電は浄化装置で放射性物質を除去しているが、水素の仲間のトリチウムは、水そのものとして存在するので濾過(ろか)できない。
 トリチウムを含む処理水は、第1原発の敷地内にタンクを設置して保管され、貯蔵量は100万トンを超えている。タンク群も約千基にまで増え、3年後には設置スペースがなくなる見通しだ。
 タンク群が敷地を占拠したままでは廃炉作業に支障が出る。廃炉工程の安全確保と工事進展のためにも、たまった処理水を海洋に放出し、十分なスペースを確保することが必要だ。
 原田氏の発言は、こうした現実を冷静に見つめ、熟慮を重ねた上での発言である。だが、漁業関係者は猛烈に反発した。風評被害の増大を懸念しての対応である。
 その怒りと危惧は理解できる。しかし、処理水をため続けることの大きなマイナスも存在する。アンダーコントロールの枠からはみ出しつつある大量の処理水が、風評被害の温床になりつつある面はないのだろうか。
 事態は事故当事者の東電の手に負えるレベルを超えている。原田氏の発言は、これまで処理水問題解決に消極的だった安倍政権を前面に立たせる好機だった。
 膝を交えた話し合いが実現すれば解決への道が見つかる可能性があった。だが、新任の小泉進次郎環境相は、原田氏の発言について福島県の漁業関係者に陳謝した。これで幕を引くのなら、若手ホープへの期待がしぼむ。
 トリチウムは放射線のエネルギーが弱く、体内に摂取しても速やかに排出されるので、韓国を含め世界の原子力施設からトリチウム水は海洋放出されている。
 小泉氏が勉強し、風評被害という因習打破に動く姿を見たい。はたして、それができるか。


韓国「原発汚染水は国際問題」
 IAEA総会で日韓応酬
2019年9月17日:朝日新聞

 国際原子力機関(IAEA)の総会が16日、本部のあるウィーンで始まった。韓国政府の代表は、東京電力福島第一原発にたまり続ける、放射性物質を含んだ汚染水の処理方法について「今も解決されていないまままで、世界中に恐怖や不安を増大させている」などと述べ、国際的な問題であると強調した。これに対し、日本政府の代表が反論し、IAEAでも日韓が応酬することになった。
 総会には韓国政府の代表として文美玉(ムンミオク)・科学技術情報通信省次官が出席。日本の原田義昭前環境相が処理済みの汚染水について「海洋放出しかない」と発言したことに触れ、「もし海洋放出するなら、もはや日本の国内問題ではない。生態系に影響を与えかねない深刻な国際問題だ」と訴えた。IAEAの積極的な関与を求め、「日本は十分かつ透明な措置をとるべきだ」とした。
 これに先立ち、日本の竹本直一・科学技術担当相は福島第一原発事故後の情報提供について、「国際社会に対して透明性をもって丁寧に説明してきている」と述べ、汚染水についても「議論の共有を含め、取組を継続していく」としていた。
 日本側は韓国代表の発言後に再び発言し、福島原発事故に関して昨年までIAEAの調査団を4次にわたって受け入れ、取り組みの評価を受けていると強調。「韓国代表の発言は海洋放水を前提としており、受け入れられない」とした。また、原田氏の発言は「個人的」なものだとして、処理方法は経産省の小委員会で協議中であると説明した。
 日本の主張に対しては韓国も反論し、日韓は計3回ずつ発言。韓国代表の厳在植(オムジェシク)・原子力安全委員長が「(日本が)言葉を明確で十分な行動に移すことが重要だ」と締めくくり、応酬を終えた。(ウィーン=吉武祐)

福島第一原発の汚染水
「海に放出以外ない」 原田環境相
2019年9月10日:朝日新聞

 東京電力福島第一原発の事故を起こした建屋などから発生し、処理後にため続けている汚染水をめぐり、原田義昭環境相兼原子力防災担当相は10日の記者会見で、「思い切って、(海に)放出して、希釈する以外に、ほかにあまり選択肢がないな」と発言した。汚染水処理については管轄外だとして、「単なる意見」とも釈明した。
 原田氏は環境相としてたびたび福島を視察したことに触れ、原子力規制委員長も同意見だとして、「安全性科学性からすれば、これはどうもね、大丈夫なんだ」と海洋放出への認識を語った。風評被害などは国が補完することが極めて大切だとしたうえで、「何が今の国家に必要なことかも常に考えておかなければいけない」などと述べた。
 福島第一原発1~3号機の原子炉では、溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための注水で汚染水が生じる。タンクにたまり続ける放射性トリチウムなどを含む汚染水は約115万トンに上り、約980基のタンクに保管されているが、1日あたり150トン前後増え続けている。
 東電は、敷地の制約から計約137万トン分でタンク設置は限度を迎え、地下水の流入量を抑えたとしても、2022年夏ごろにタンクは満杯になると主張している。
 一方、処理済みの汚染水の対応について、日本政府は8月27日、韓国政府に「現時点において具体的な結論を出していない」と回答している。(松尾一郎)


<社説>
安倍総裁4選論 独裁政治招く恐れがある
2019年9月17日:琉球新報

 これ以上任期が延びれば1強政治の弊害がさらに拡大し、独裁につながりかねない。
 安倍晋三首相(自民党総裁)の総裁4選論が再び浮上している。11日の自民党人事で再任された二階俊博幹事長は、新役員の記者会見で、安倍氏の総裁4選について「総裁が決意を固めたときは、国民の意向に沿う形で党を挙げて支援したい」と述べた。4選を促すような発言に危機感を覚える。政権の長期化は腐敗や堕落の元凶になるからだ。
 自民党は2017年に総裁任期を連続「2期6年まで」としていた党則を「3期9年まで」に改正し、安倍氏の総裁続投を可能にした。もしさらに改正し「4期12年まで」にし、安倍氏が続投すれば、24年9月まで任期が延びることになる。在職日数が戦後最長となった安倍首相は11月に歴代最長を更新するのはほぼ確実だ。あまりにも長すぎる。
 「安倍1強」は既に「1強独裁」の様相を強めている。森友学園を巡る決裁文書改ざんや交渉記録廃棄の問題などはその表れだ。「忖度」が横行し、行政のあるべき姿がゆがめられているのは疑いない。今回の第4次安倍再改造内閣も意のままに動く「イエスマン」を起用し、閣内で異論を許さない姿勢が鮮明だ。
 この人事に自民党内からも批判の声が上がっている。冷遇された石破派の石破茂元幹事長は「わがグループは政策に精通した人が多い。そういう人を使うのは国家、国民のためだと思う」と述べた。
 そもそも安倍氏は国民目線を欠いている。内閣再改造後の記者会見で、党主導で憲法改正論議を進めるとした上で「困難でも必ず成し遂げる決意だ」と訴えた。しかし、共同通信による改造内閣発足後の世論調査では、安倍首相の下での憲法改正に反対は47・1%で、賛成の38・8%を上回っている。
 世論調査では、同じような傾向が続いているが、こうした国民世論をくみ取る態度が見えない。同様に、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設でも、反対する沖縄の民意を無視し続けている。「辺野古が唯一」と繰り返すだけで政治が機能していない。そればかりか主権者をないがしろにする政治と言うほかない。
 民意を無視して新基地建設を強行している安倍氏が4選に向かうなら、沖縄県民にとっても不幸な事態である。安倍氏は辺野古新基地建設を失策と認め、早期に退陣するべきであって、総裁4選などもってのほかだ。
 法や党のルールで多選を制限するのは政治の私物化や汚職、組織の硬直化などを防ぐためだ。自民党も、それらにつながる権力の集中を回避しようと総裁任期を定めた。米国の大統領は2期8年、韓国は1期5年までと憲法で定められている。党のルールを変えてまで延命を図るのは暴走そのものだ。注意深く監視する必要がある。


(社説)
NSC局長交代 「首相主導」を過ちなく
2019年9月17日:朝日新聞

 日本の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(NSC)。その事務局である国家安全保障局(NSS)の新しい局長に、北村滋・前内閣情報官が就任した。
 警察官僚出身の北村氏は、内外の情報を収集・分析する内閣情報調査室(内調)のトップとして安倍首相を支えてきた側近の一人だ。ただ、外交・安保分野での手腕は未知数で、異例の起用と言わざるをえない。
 NSCは同名の米国の組織をモデルに、安倍政権が13年に発足させた。首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を中核として、各省庁からの情報を共有し、外交・安保の方向性を決める。
 外務・防衛両省の官僚や自衛官らで構成する事務局を率いる局長は、省庁間の縦割りを排し、各国のカウンターパートと情報交換をしながら、首相に助言をする重責を担う。
 初代局長を務めた前任の谷内(やち)正太郎氏は、第1次安倍政権を外務事務次官として支えた外交官だった。北村氏は首相との関係が緊密とはいえ、外交経験はほとんどない。その起用は、首相官邸の関与をより強化する狙いがあるのかもしれない。
 各省の立場を超え、国全体として的確な政策判断を下すために、官邸が前面に出ること自体は理解できる。しかし、各分野の専門家が長年にわたって蓄積してきた知見が軽視されたり、首相が気に入る情報ばかりが上がってくるようになったりすれば、本末転倒だ。
 首相主導外交の負の側面としては、個人の政治的実績づくりや選挙対策、世論の受け狙いといった内政上の思惑が優先される懸念も指摘される。
 安倍政権での典型例のひとつが、北方領土交渉の行き詰まりだろう。ロシアの情勢を精緻(せいち)に分析したうえで、より実現可能性のあるアプローチを採用すべきなのに、成果を急いで2島返還にかじを切った。
 韓国に対する強硬姿勢も、今のところ、世論の一定の理解を得ているようだが、日米韓の連携の揺らぎが東アジアの安保環境に与えるマイナスの影響を考えれば、NSCが大局的な見地に立って打開策を検討すべきではないのか。
 北村氏は内閣情報官のとき、特定秘密保護法の整備に携わった。NSCの会合は、まさにブラックボックスだ。「北朝鮮情勢について」など議題が明らかにされるだけで、議論の中身が一切、公開されない。
 国の針路を決める重要な舞台である。歴史の検証に付すためにも、議事録を残し、しかるべき段階で公開するルールを検討するよう、北村氏に求める。


「4選シフト」内閣改造で大激震
安倍vs二階 権力闘争の幕が上がった!
=ジャーナリスト・鈴木哲夫
2019年9月17日:サンデー毎日

初閣議を終え、記念撮影に臨む安倍晋三首相(手前中央)と第4次安倍再改造内閣の閣僚たち
=首相官邸で2019年9月11日午後7時23分、北山夏帆撮影

▼流れを変えた「10分間のトップ会談」
▼公明党「強まる存在感」のウラ
 9月11日に発足した第4次安倍再改造内閣では、小泉進次郎衆院議員の初入閣ばかりが注目されているが、実はきな臭い話もある。水面下では、首相と自民党重鎮のバトルが繰り広げられていたというのだ。今後の政局を左右する権力闘争の知られざる内幕を暴く。
 メディアは小泉進次郎衆院議員が環境相として初入閣した話題一色。たったその一点だけで、今回の内閣改造・党役員人事がまるで大成功のような印象が世間に広がっている。
 ところが、安倍晋三首相にとって本当に意のままの人事をなし得たのか。実は首相は内心、忸怩(じくじ)たる思いが拭いきれず、政権運営の不安要素が残されたのではないだろうか。
 それは、安倍首相が自民党役員会で「9月11日に人事を断行する」と明らかにした9月3日のこと。役員会直前、安倍首相は二階俊博幹事長と約10分間、サシで会談した。人事に関する話題だったのは間違いないが、考えてみれば、わずか「10分」というのがそもそもあり得ない話だ。
「昔は、内閣改造など人事の時には、総裁である首相は党を預かる幹事長としっかり話をしたものだ。だが、小泉純一郎首相の頃から一本釣りや官邸主導人事が行われるようになって意思疎通が希薄になった。それでも当時は『偉大なるイエスマン』といわれた武部勤幹事長にはきちんと事後説明していた。それが、たったの10分とは……」(安倍首相に近いベテラン議員)
 そもそも良好な関係に見える安倍首相と二階氏だが、実は常に微妙な距離感があったという。7月の参院選後は「2人だけで会うことはなく、今後の政権運営などまともに話していない」(細田派幹部)という。
「二階氏は党きっての実力者で人脈も凄(すご)い。好き勝手にやられては困るから、安倍首相は二階氏に気を使い、幹事長に就けてウィンウィンの関係を維持してきた。だが、野党議員を二階派に引き込んで自民党議員との軋轢(あつれき)を生じさせたり、その強引な手法に批判が出たり、年齢からくる健康問題もあった。そこで安倍首相は、今回は交代させると腹を決めていたようだ」(前出・ベテラン議員)
 安倍首相側近の自民党幹部の一人は、さらにこう付け加えた。
「安倍首相が今後、総裁4選の流れを作り、2021年以降も続投するかどうかが注目される。あるいは(現在の)3期で辞めるかもしれない。いずれにせよ、そろそろ退陣後にキングメーカーとなる道筋について考えなければならず、自分の意を汲(く)む後継者を育てたいという時期に入ってきた。岸田文雄氏(政調会長)、次に加藤勝信氏(厚生労働相)らを幹事長にしてそれをやろうとしていた。幹事長人事が最大のテーマだった」
 そこで先の10分の会談である。この側近幹部によると、これは幹事長交代を告げるための場だったが、どんでん返しがあったという。
「二階幹事長は『本当に自分が辞めていいんだな?』という趣旨のことを言ったようだ。二階氏は公明党との太いパイプを持っている。参院で自民党は単独過半数を失い、首相は公明党の協力なくして憲法改正もやれない。首相は10分の間にそんな圧を感じ、交代を断念した。その後、首相は相当機嫌が悪かった」(側近幹部)
 とはいえ、二階氏が総裁3選の流れを作ったことへの恩義を首相が感じていたことは確かだ。そこで「首相は権限のある党の新たな役職や議長などのポストも準備していたフシがある」(前出・ベテラン議員)。
 さらには、公明党による首相への直接的な留任の働きかけがあったとの証言もある。先に触れた通り、公明党は二階氏と厚い信頼関係を築いている。二階氏周辺の幹事長留任への執念、それに向けた綿密なシナリオまで用意されていたと、側近幹部はそう話すのだ。
「二階氏の勝手にはさせない」
 こうして人事構想の最重要部分を崩された首相。今後は、再び二階氏との微妙なパワーバランスを操っていかなければならない。
 しかも最近、二階氏と菅義偉官房長官が親密な関係にあると囁(ささや)かれている。大阪都構想などで度々勃発する「維新vs.自民党大阪府連」を巡る政局では、自民党のボスでもある二階氏と、大阪維新の会とパイプのある菅氏との対立が不安視されたが、「実は菅氏の方から二階氏に連絡を入れ、二人は連携している」(菅氏に近い無派閥議員)。
 さらには、二階派の中には「いずれ二階氏も派閥を誰かに引き継がなければならない。その時には菅氏を招き入れて合流し、二階派・菅グループで最大派閥、そして首相候補は菅氏になる」(二階派ベテラン議員)との構想があるほどだ。
 ただ、これはさすがに安倍首相も看過できない。菅氏は官房長官として霞が関を掌握するなど絶大な力を持ち、ポスト安倍として急浮上中だ。二人が組むとなれば、安倍首相の行く手を阻むことになり、新たな権力闘争へもつながる。
 こうした事態に、首相も黙ってはいなかった。それは党役員人事で明らかだ。
「党三役には禅譲を狙って安倍首相への忠誠心が強い岸田氏を政調会長、総務会長は首相の盟友の麻生太郎副総理の麻生派から鈴木俊一氏を起用した。また首相最側近の下村博文選対委員長、稲田朋美幹事長代行と、完全に二階包囲網を敷いた。二階氏のもとで幹事長特別補佐として力業を見せていた武田良太氏を入閣させ、二階氏が腕をふるう党務から引き離した。二階氏の勝手にはさせないという布陣だ」(前出・側近幹部)
 今回の改造は、閣僚19人中17人を交代させ、うち13人は初入閣。だが、顔ぶれは首相の側近が目立ち、「安倍ファミリー内閣」でしかない。任期内で辞めるなら、尽くしてくれた側近たちへの慰労人事とも映るが、逆に4選を決断したとすれば、「内閣全体がそれを支持する態勢」でもある。4選シフトと言えなくもない。
 そして、表に出ることのなかった安倍vs.二階の駆け引きは今後もしこりを残す。次期衆院選のタイミングや4選問題浮上の際、この溝が権力闘争に発展していく危険性をはらんでいる。
(ジャーナリスト・鈴木哲夫)

すずき・てつお
 1958年生まれ。ジャーナリスト。テレビ西日本、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリー。豊富な政治家人脈で永田町の舞台裏を描く。テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活躍。近著『戦争を知っている最後の政治家 中曽根康弘の言葉』『石破茂の「頭の中」』

コメント

非公開コメント