学校から失われる「教育」

日本の学校から「教育」がどんどん蒸発していくように思えてならない。
30年ほど前、「地域の教育、家庭の教育力も失われ、最後に残っているのが学校教育」という話を聞いたことがある。しかし、それから30年、学校教育は大事されるどころか、痩せ細って風前の灯だ。
その原因は、教員を人間として大切にせず、教育とは何かの根本を忘れて、教育・学校・教員・教室の監視と管理ばかりが強まったことにある。ボクが教員になった40年前には、まだ学校には牧歌的な雰囲気があった。初任のときのS校長は無能で、ボクが「週一度、半日だけ大学に通うと修士課程を終えられる」とお願いすると、「ボクは勉強する教員は嫌いだ」と言うので、中退した。恩師の上野福男先生には「裏切者」と言われたが、初任のボクは、まだ「闘う」ということを思いつかなかった。
それでもボクは、幸せな教職人生を全うできたのは、素直な多くの生徒たちに恵まれたからだ。
しかし、今では授業内容まで監視され、場合によっては県教委や校長に管理される時代になった。ボクはどうにか逃げ切ったが、今の若い教員は魂を抜かれたように教壇に立たざるを得ないのかもしれない。そもそも「魂」を養う余裕もないというのが実情だろう。


<社説>
教員の長時間労働 働き方改革の道筋付けよ
2020年1月12日:琉球新報

 長時間労働などで学校現場が疲弊し、教員にゆとりや将来への希望が見えなくなっている現状が改めて浮き彫りになった。
 県教職員組合(沖教組)が40歳未満の若手教職員に行ったアンケートで、定年まで現在のような働き方を続けられないとする人が55%に上った。月平均の時間外労働は平均55・7時間となり、持ち帰りの仕事も10・6時間あった。働き方改革関連法の施行によって、民間企業では時間外労働は原則月45時間と定められたが、それを大きく超える実態だ。
 教育現場はいじめや不登校などの課題が山積している。「モンスターペアレント」の対応に神経をすり減らす例があるのも事実だ。教員が多忙故に疲れ切っていては適切な対処ができない恐れがある。教員の残業を減らし、ゆとりある教育現場にするための具体的な対策が求められる。
 本紙が昨年12月に市町村の教育委員会へ聞いたアンケートでも、公立小中学校で月100時間を超える残業をした教員が延べ810人、「過労死ライン」とされる80時間超は少なくとも延べ2329人だった。学校現場の長時間労働は常態化している。
 文部科学省は昨年1月、働き方関連法に沿う形で公立校の教員の残業が月45時間を超えないようにする指針を出した。しかし、指針に罰則規定はなく、「臨時的な特別の事情」の場合は月100時間を超えない範囲で延長できるとしている。
 そもそも県内の公立小中学校でタイムカードやICカードなどで客観的に勤務時間を把握していたのはおよそ半数の21市町村だった。その他は教員自身がエクセルデータに記入したり、出勤簿に押印したりする方法で勤怠を管理していた。
 労働時間が正確に管理されず、月45時間の指針を守らなくても罰則もない状況では、指針が形骸化しているのも無理はない。
 沖教組のアンケートによれば、教員が本来時間をかけたいのは教材研究や補習指導、学年学級運営など子どもたちを指導する業務だが、時間外勤務が発生する理由は報告書作成や校務分掌などが上位となり、生徒と向き合う時間が取れていない実態も見えた。
 経済協力開発機構(OECD)の国際教員指導環境調査で日本の中学校教員の週当たりの仕事時間は56時間と世界最長だ。にもかかわらず、生徒が自ら考える力を育む授業を実践する教員は各国平均に比べて低い水準にある。多忙さが子どもの指導に向けられていないのだ。
 いま、学習指導は暗記中心の授業から表現力や深い思考を養う方向へ転換している。教員の指導法がより高度になるよう、授業の準備を充実させる時間が必要だ。
 教員の仕事の在り方を抜本的に見直し、働き方改革の道筋を付けたい。



元高校教諭ら、経験を基に解説本
教育← 校内問題どう対処 →法律
2020年1月11日:東京新聞・ニュースの追跡

 「罰で掃除登板させたら体罰なのか」「部活中に生徒が熱中症で死亡したら?」。学校で起こりうるトラブルを、法律の面からみるとどうなるか。よりよく生徒を指導するには、どう対応すればいいのか。元都立高校教諭が、現役時代に悩んだ事例など60例を挙げた書籍「教育と法の狭間で」(学事出版)を出した。学校での問題を抱えた時、教員だけでなく、生徒や家族にも参考になるかもしれない。 (片山夏子)

 警察から中学校に連絡が入る。防犯カメラの画像や目撃情報から、生徒が公園の銅像にペンキで落書きをしたのではないか、という問い合わせだった…。
 この本ではこのように事例を挙げて説明する。ちなみに落書きの例は、法的には器物損壊罪や軽犯罪法違反といった犯罪になりかねないと開設する。とはいえ生徒指導は、罰を与えればいいというものではない。学校の対応としては「生徒にペンキを落とさせ、謝罪させることで警察と相談する」ことを提案している。
 冒頭の熱中症のでは「教員が懲戒を受けたり、業務上過失致死罪に問われたりした例」を紹介し、事前の防止対策の必要性を説く。掃除では「体罰には当たらないが、先生も一緒に掃除したらいいのでは」と示す。
 著者は昨年3月まで都立高校教諭だった東京女子体育大の梅沢秀監特任教授(生徒指導)。法律については、校則問題や少年事件に詳しい黒岩哲彦弁護士が担当している。教育月刊誌での9年に渡る連載が好評で、取り上げた事例から抜粋して本にまとめた。

教員の指導で解決の道探る

 現役時代、梅沢氏も数々のトラブルを経験した。その時、どこから法に任せるべきか、どこまで生徒指導で対応すべきか悩んだ。
 ある工業高校では、3年男子生徒が、中学の友達の誘いでマリファナを吸ううちに頭痛がひどくなり、保健室にやって来た。梅沢氏は、警察には通報しなかった。「友達とは縁を切り、今後一切やらない」と、生徒が真剣だったからだ。
 「犯罪者を学校に置いておくのか」という教員を説得し、教育委員会からは「校長判断に任せる」と言質を取った。そして、梅沢氏は「母親とも連絡を取り合い、卒業まで指導した」と振り返る。
 今、同じことが起きたら対応は変わる。学校と警察の連絡制度があり、黙っていると教員が責任を問われかねないからだ。このケースなら「事件として通報するのではなく、この制度では、生徒を立ち直らせるためどう指導していくかを警察と相談する」と梅沢氏は説明する。
 梅沢氏には「生徒を退学させたくない」「絶対に見捨てない」という強い思いがある。法律に任せればそこで教員の手を離れてしまう可能性がある。だから指導でただす道を探るのだ。
 梅沢氏は「傷害や殺人など学校の守備範囲を超える事件もある。どこから法律の範囲になるか、私自身が現役時代に随分悩んだ。法律的にこうだと言われても、学校ではそうはいかないという場合もある。実際に同じようなことが起きた時に、この本を参考にしてほしい」と話す。
 黒岩氏は「今また校則問題が出ているが、子どもの権利や人権は尊重されるべきだ。本に取り上げた事例に合わせ、数多くの判例を読んだ。司法の学校の指導への信頼は厚い。本書が生徒や児童にとって一番いい解決方法を見つける手掛かりになれば」と語った。



【主張】
子供の体力低下 外で遊ぶ楽しさ教えたい
2020年1月14日:産経新聞

 子供の体力低下が気になる。
 スポーツ庁が昨年12月に公表した令和元年度の全国体力テストの結果によると、50メートル走や反復横跳びなど実技8種目を点数化した体力合計点は、小中学校の男女とも前年度を下回った。
 テレビゲームやスマートフォンの普及などにより、外で遊ぶ機会が減りつつあるのが一因とみられている。
 習慣の変化が影響しているのだとすれば、「娯楽の多様化」では片づけられない。将来の社会の形にかかわる問題として、教育現場や地域を巻き込んだ取り組みが必要である。
 テストは平成20年度から毎年、小学5年と中学2年の男女を対象に行っている。
 小5男子は握力、50メートル走など3種目で、平均値が過去の最低値を下回った。体力合計点でも最低点を記録した。中2男子も1500メートル走など4種目で最低値を更新している。どちらも、「走る力」の低下が目につく。
 子供の「走る力」は本来、戸外での遊びを通じて自然に培われるものだろう。鬼ごっこ一つを取っても、子供はさまざまなルールを編み出し、遊ぶ「楽しさ」を創り出してきた。それがゲーム機器やスマホなどの娯楽に取って代わられたのなら、大人の責任で状況を変えなければならない。
 ボール投げの距離も下落傾向にある。ボール遊びが周囲への危険を伴うとして、昨今は大半の公園で禁じられており、投げ方を知らずに育った子供も多い。
 東京都板橋区では昨秋、児童らが、サッカーなどボール遊びのできる公園の開放時間の延長などを陳情した。区議会は全会一致で採択し、区が具体的な施策に乗り出している。子供が自由に遊べる場所を求めている事実は見逃せない。遊び場の環境を変えるには、社会の理解も必要だろう。
 スポーツ庁は昨年末に、幼児期からの体力づくりを検討する会議を設置したが、外で体を動かす時間を増やせばいい、という発想では解決しない。体育の授業にしても放課後の学校施設の開放にしても、体を動かす楽しさを子供の中に根づかせる工夫がほしい。
 体を動かすことの楽しさ、すばらしさを学ぶのに、アスリートにまさる模範はいない。この夏の東京五輪・パラリンピックも子供たちの格好の教材となるはずだ。



東京五輪 一人でも多く祭典に関わろう
2020年1月14日:読売新聞

 ◆もてなしの心で新たな歴史を◆
 今年、五輪とパラリンピックが東京で56年ぶりに開催される。今回も、日本の歴史に新たな一ページが刻まれることになるだろう。
 真新しい国立競技場では元日にサッカー天皇杯決勝が行われ、11日にはラグビーの全国大学選手権決勝もあった。6万人を収容するスタジアムはほぼ満員となり、五輪本番に備えて、観客の誘導方法などを確認した。
 ◆共生社会目指したい
 1万8000人を迎える東京・晴海の選手村には、最高18階建ての宿泊棟21棟が完成した。共用通路は通常のマンションより30センチ広く、車いすの選手がすれ違える。白杖はくじょうの引っかかる段差もない。
 パラリンピックの選手たちも安心して利用できる。成熟した共生社会を目指した大会の理念を、実現することが大切である。
 3月からは、聖火リレーが始まる。各都道府県が、ゆかりの人をランナーに選んだのが見所だ。
 福島県須賀川市では、メキシコ大会マラソン銀メダリストの君原健二さんがランナーを務める。須賀川市は前回の東京大会のマラソンで銅メダルを取った円谷幸吉さんの故郷で、君原さんと円谷さんは親友だった。
 君原さんは北九州市在住だが、メキシコ大会を前に重圧で命を絶った円谷さんのために走ろうと、福島県に自ら申し込んだ。今年79歳になる君原さんがトーチを手に走る姿は、東日本大震災の被災地を勇気づけるに違いない。
 各地の高校生が、五輪やパラリンピックに関わっている。
 海外選手を受け入れるホストタウンの農業高校では、地元の食材を使った料理を選手に振る舞う準備が進んでいる。岐阜県の県立岐阜農林高校の生徒は、自分たちが収穫した米と特産の鮎あゆを使った釜飯を用意するという。
 東京の都立工芸高校では、パラ陸上の「こん棒投げ」で使う用具を生徒たちが製作中だ。授業の一環で、ブナ材を木工旋盤で削り、ボウリングピンに似た形のこん棒に仕上げていく。3月には完成し、大会組織委員会に納品される。
 本番で使われたら、生徒たちの一生の財産になる。こうした取り組みが、日本全体で五輪の機運を高めることにつながるはずだ。
 ◆暑さと災害対策が鍵だ
 本番での課題は暑さ対策である。日よけテントに水や氷、冷風機が用意されるが、熱中症を完全に防ぐのは難しい。大会ボランティアや訪れる観客に、首やわきの下、足の付け根を冷やす最低限の応急処置を周知しておきたい。
 台風や豪雨災害への対処方針をあらかじめ考えておくことも重要だ。近年、天気予報の精度が上がり、鉄道の計画運休などが事前に発表されるケースが増えている。こうした場合は、日程の変更や無観客試合も想定されよう。
 競技ごとに、可能な対策を練り上げておかねばならない。
 輸送対策も重要になる。海外からの観客と通勤客が重なると、交通機関の混乱が予想される。企業は可能な限り、在宅勤務や夏季休暇の取得を推奨し、鉄道や道路の混雑緩和に協力してほしい。
 ロシアが、世界反ドーピング機関から、国際大会出場を4年間禁じられたことは、東京大会にも波紋を広げている。
 スポーツ界が薬物汚染と決別するために、違反国に厳しく臨むのは当然だ。ホスト国として検査態勢を整えねばならない。
 ◆本番に向け切磋琢磨を
 競泳の五輪代表に内定した瀬戸大也選手は、正月3日から水しぶきをあげた。本大会では、開会式2日後に、得意の400メートル個人メドレー決勝がある。「金メダルを取って日本チームの流れを作る」という決意が頼もしい。
 日本が世界トップ級にいるバドミントンは、女子ダブルスの代表2枠を巡って、三つのペアがしのぎを削っている。いずれも表彰台が期待できる選手たちだ。最後まで切磋琢磨せっさたくまして、ベストの状態で本番を迎えてもらいたい。
 東京都北区に昨秋、国立のトレーニング施設が新設された。車いす競技でも床が傷つかない。パラアスリートたちが心おきなく自らを鍛えていけるだろう。
 前橋市の運動場では、寒風の中、アフリカ・南スーダンの陸上競技選手4人がスパイク音を刻んでいる。自国には内戦の影響で練習できる施設がなく、前橋市が支援を申し出た。昨秋に来日し、日本人コーチの指導を受けている。
 午前中は日本語学校に通い、時には小学校を訪ね、給食や掃除に加わっている。こうした交流も競技に劣らぬ記憶となろう。


自閉症の人たちが語る、
子どもの頃大人にしてほしかったこと
2020年1月7日:ライフハッカー

Jenna Gensicさんは、息子が自閉症スペクトラムと診断されたのをきっかけに、詳細なリサーチを始めました。

まずは、医師やセラピストといった専門家のアドバイスを集めましたが、まだ重要な視点が欠けていると感じていました。

自分がまだ当たっていなかった情報源。その1つが、自閉症コミュニティだと気づきました。

成長していくうえで、どんなことが役に立ち、どんなことに傷つくのか。そういったことについて、自閉症の人たちの考えやアドバイスをもっと知りたいと思ったのです。
自閉症の子どもが本当に必要なものは?
そこからGensicさんが学んだのは、予想とはまったく違うこと。そしてそれは、息子を育てる助けになることでもありました。

そこで、Gensicさんは自身のリサーチを、同じような子を持つほかの親のために1冊の本にまとめたのです。それが、『What Your Child on the Spectrum Really Needs: Advice from 12 Autistic Adults(自閉症の子どもが本当に必要としているもの:自閉症のおとな12人からのアドバイス)』です。

ありのままを受け入れる

取材を始めたときのGensicさんは、これまでに試した治療法や戦略、その中で役に立ったものやうまくいったもの、そうでなかったものが話題になるのだろうと予想していました。

しかし、ほとんどの人が話したがったのは、自分がどう扱われたかということでした。

自閉症の子どもが成長する中で出会う専門家の多くは、自閉症の人たちにとって難しいことについて話す傾向があります。

自閉症の人たちは常に、こうした症状を克服しようとしながら生活を送っています。

(略)けれども、彼らの望みは受け入れてもらうことであり、自閉症としての前向きなアイデンティティを持って生きていくことでした。

目立たないようにするために、自閉症であることを隠しながら生きることを彼らは望んでいなかったのです。

親は、自分の子どもが(目立ち)いじめられたくないと思うものです。そのため、身体をゆすったり、手をひらひらさせたりなどの症状や行動にフォーカスすることがあります。

しかし、Gensicさんが話を聞いた人の多くは、そうした行動は自分を制御する上で役立つものであり、逆にその行動を絶えず隠そうとすることはとても疲れるのだと語っています。

良し悪しで区別しない

問題は、「目立たないようにすること」と「うまく生きること」が同一視されていることにある、とGensicさんは気づきました。

私は、息子がとても幼い頃から、下された診断について彼に話してきました。(自閉症は)悪いと見なされるようなものではなく、「息子がどんな人間なのか」「どんなふうに生きているのか」ということにすぎないのです。

私たち親子は、自閉症をさまざまな考え方の集合として捉えて話をしています。

息子は自閉症の脳を持っていて、私は定型発達の脳を持っている。良いとか悪いとかの話ではないのです。
必要なサポートは個人によって違う

Gensicさんが取材した人の多くは、治療について語り、そうしたタイプのサポートの必要性を口にしていました。

しかし、もっと情報がほしいとも話していました。特に、「自分自身が目標にしたいこと」に関する情報です。

ある取材協力者が、「誰もが社交的なスキルのことしか話したがらない」と言っていたのを覚えています。けれども彼女自身は、それを重視したいとは少しも思っていなかったのです。

自分のことは自分で決めさせる

どんな戦略をとるのか、何を重視するのか。

その点については、とりわけ子どもが小さいうちは、親や専門家が手を貸して導く必要がありますが、本人に発言権を与え、会話に参加できるようにすることも大切です。

小さい子でも、青少年でも、若年成人でも、自分の目標や取り組みたいことは自分で決めることができます。

それに、そのほうがずっと効果があります。自分のしたいことをするわけですから。

取材協力者の多くは、セラピストと患者の関係も重要だと語りました。子どもに必要なのは、「理解されている」「受け入れられている」と感じることなのです。

Gensicさんは、著書を執筆して以来、自閉症のおとなの取材を続けています。これまでに100人を超える人へのインタビューをブログに掲載し(その数は増え続けています)、自閉症の子を持つ親たちに、さらなるヒントを提供しています。

Image: Shutterstock.com

Source: AAPC Publishing, Learn From Autistics(1, 2)



子供の性被害 加害教員を厳しく処分せよ
2020年1月9日:読売新聞

 信頼していた教員から裏切られた子供は、心身に大きな傷を負う。教員のわいせつ行為は決して許されない。
 文部科学省によると、わいせつ行為やセクハラで2018年度に処分された公立小中高校などの教員数は282人だった。そのうち、懲戒免職処分は163人に上る。ともに過去最悪だ。
 深刻なのは、自校の児童生徒や卒業生を相手とした行為の処分者が、138人と半数近いことである。被害者の多くは中高生だ。教室や保健室など学校内で被害にあったケースも目立つ。
 学校において、教員は児童生徒を指導し、成績評価をする強い立場にある。こうした関係から、性被害を受けても自分から言い出せない子は多いと指摘される。表面化していないわいせつ行為も、少なからずあるのではないか。
 今回の結果について、文科省の担当者は「SNSの普及で、教員と子供がつながる機会が増えたことが一因だ」と分析する。秘密でやりとりできるSNSの特性を悪用しているとすれば問題だ。
 多くの教育委員会が、教員に対し、メールや無料通信アプリによる児童生徒への私的な連絡を禁じているのはうなずける。使用を認める場合にも、1対1のやりとりは極力避け、複数の相手に送信させるような対策が求められる。
 不祥事が相次いだ静岡県教委では、実際にわいせつ行為やセクハラを教員が起こした職場で、同僚や管理職から、兆候と思われる言動を報告させるという。問題事例を学校現場で共有し、再発防止に役立てなければならない。
 文科省は、児童生徒相手のわいせつ行為に及んだ教員について、懲戒免職処分とするよう求める通知を出している。このような教員は再び教壇に立つ資格がないのは明らかだろう。
 懲戒免職となった教員は、官報に実名が公告される。文科省は19年度からこの情報を集め、教員採用を行う都道府県・政令市教委に年2回、提供している。処分歴を隠して採用試験を受ける人がいないか、確認してもらうためだ。
 懸念されるのは、わいせつ行為に対して、懲戒免職以外の処分の余地を残している教委があることだ。復職が前提の停職処分では、氏名は公告されない。
 過去には、性犯罪で逮捕され、停職処分を受けた教員が、他県の小学校に採用され、再び強制わいせつ事件を起こした例もある。
 被害者を増やさぬためにも、厳正な処分が欠かせない。



千葉 教え子に性的暴行 小学校元教諭公判
被告の匿名化 安易では 被害者特定防止に実効性
「重い罪 自覚する機会失う」
2020年1月7日:東京新聞・ニュースの追跡

 勤務先の小学校内で教え子の女子児童に性的暴行やわいせつ行為を繰り返したとして、強制性交罪などに問われた元千葉市立小学校教諭の男(36)に千葉地裁は先月、懲役14年の判決を言い渡した。異例だったのは、「被害者保護」を理由に被告を匿名にして審理が進んだこと。専門家は「安易な判断は国民の知る権利が侵されかねない」と指摘する。                      (佐藤直子)

 判決によると、被告は2013年1月~一昨年7月、二つの小学校の教え子だった当時6~12歳の女児7人に性的暴行を加えたり、わいせつな行為をしている様子を動画で撮影したりした。忘れ物をした女児らを「指導」の名目で空き教室や倉庫に呼び出して犯行に及んでいた。
 千葉地裁が被告の名前を伏せたのは、刑事訴訟法290条の二が根拠。性犯罪被害者の保護に力点を置いた規定で、当事者側から申し出があった場合、裁判所は身元の特定につながる情報を法廷で明らかにしないと決められる。千葉地裁広報課の担当者は「被告名もこの規定に当てはまると判断した」と説明する。
 憲法82条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と定めており、被告名も公にすべきだと解釈されている。

「知る権利 侵されかねない」

 九州大法科大学院の田淵浩二教授(刑事訴訟法)は「国家権力の恣意を排除するためにも、裁判は公開が原則になっている。特に被告が無罪を争っている場合、公開であることが利益につながる。被害者側は『これ以上傷つきたくない』との思いから被告の名前を出さないよう望むのだろうが、その要請だけに基づいて決めてしまうと、国民の知る権利の制限にもつながる」と裁判所に慎重さを求める。
 そうした考えがありながら、ここ数年は被害者保護の流れが強まり、特定を避けるために法廷で被告の名前が伏せられるケースが出ている。
 横浜地裁は13年、女子中悪性にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反などに問われた元中学校教諭の男の裁判で、被害者名と共に被告の名前を伏せた。水戸地裁も15年、養女の胸などを触ったとして強制わいせつ罪に問われた男の名前を匿名にして審理し、懲役3年、執行猶予4年の判決を言い渡した。
 禁固刑以上の刑が確定すると教員免許は失効するとはいえ、塾など子どもが多くいる職場で働くのは可能。名前が明らかになっていない以上、事件のことを相手に知られずに雇われる可能性はある。田淵氏は「加害者の名前が分かれば被害者が特定されるといっても、近しい関係者は把握しているだろう。逆に外部の人間が知る可能性がどれだけあるのかを考えないとけない」と唱える。
 一方でインターネットの普及などにより、わずかな情報から被害者が特定され、情報が広まる恐れは否定できない。性犯罪や被害者の支援に詳しい千葉大法科大学院の後藤弘子教授(刑事法)は「性犯罪は『被害者にも落ち度があった』などとバッシングを受けることが多い。自らの特定につながる情報を出したくない気持ちは理解できる」と説く。
 その上で後藤氏は「裁判で加害者の名前が明らかにならないことが、必ずしも被害者のためになるとは限らない。性犯罪の加害者は親族など顔見知りが多く、名前を出すことによって、重い罪であると本人も社会も自覚する。むしろ、被害に遭ったことは恥ではないとの考えが広まり、被害者をよりサポートする社会へと変えていくことこそが必要だ」と強調した。



桜を見る会首相「名簿廃棄に障害者」発言に抗議
「障害者ダシに使うな」
能力なしの印象付け◆作業遅れは「作り話」
2020年1月8日:東京新聞・ニュースの追跡

 「桜を見る会」招待者名簿のシュレッダー廃棄に関する安倍晋三首相の国会答弁を巡り、障害者団体が7日、首相宛てに抗議の申し入れを行った。「廃棄に時間がかかったのは障害がある職員が担当したため」と言わんばかりの発言に強い違和感を抱いたため。当事者の立場から「障害者をダシに使うな」と訴えた。(榊原崇仁)

 申し入れたのは、首都圏の障害者団体などでつくる「『骨格提言』の完全実施を求める大フォーラム実行委員会」の7人。東京・永田町の内閣府庁舎前で、首相の見解を問う要請書を職員に手渡した。
 問題視しているのは、昨年4月13日に首相主催で開かれた「桜を見る会」の名簿に関する発言。内閣府は廃棄日を5月9日と説明しているが、野党議員が資料提供を求めた日だったため「資料を出さないために廃棄したのでは」という疑惑が強まった。
 これに対し、安倍首相は昨年12月2日の参院本会議で「(廃棄用の)大型シュレッダーの予約を4月22日に行い、シュレッダーの空き状況や、担当者である障害者雇用の短時間勤務職員の勤務時間などを調整した結果、使用予定日が5月9日となった」と答弁した。
 要請書は「強い違和感と不快感を抱いた」「このような形で(障害者を)引き合いに出すのか、というのが率直な思い」と批判。脳性まひのため車いすで来た横山晃久さん(65)は「障害者はずっと差別と抑圧を受けてきた。差別をなくしたいという私たちの願いを踏みにじった」と憤る。
 視覚障害がある古賀典夫さん(60)も「『廃棄が遅れたのは障害者が担当したから仕方がない』と言いたいのだろうが、私たちの受け止め方は全く違う。『障害者は能力がなく、非効率な人間』と突き付けられたように感じる」と語気を強めた。
 答弁が、障害者白書を出すなど障害者施策の総合調整を担う内閣府に関するものだったことも深刻に受けとめられている。視覚障害者の有馬秀雄さん(66)は「政府が率先して『障害者はこの程度の仕事しかできない』と宣伝しているようなもの」と訴える。
 要請書は「内閣府は障害者として雇用した職員に対して、このようなシュレッダー作業を主要に行わせているのか」とも質問。古賀さんは「障害者には単純作業しか任せていないのかと疑っている。やりがいを感じなければ、早々に辞めてしまわないか。私たちも他の人と協力し、一緒に仕事上の目標を達成したい。一体感を味わいたい。そうした思いが中央省庁の障害者雇用でくまれているのか」と懸念を口にした。
 「こちら特報部」の取材に対し、内閣府は「担当者が不在で答えられない」と説明。実行委の要請書は1カ月以内の回答を求めているが、内閣官房内閣総務官室は「一般的な請願の一つとして受け取った。他の請願同様、解答義務が発生するものではないと考えている」とコメントするのみだ。
 疑問は深まるばかりだが、訪れた障害者らは、そもそも「4月22日に廃棄用のシュレッダーを予約した」という説明自体が「うそ」なのではないか、と口をそろえる。
 古賀さんは「資料要求を受けて急いで廃棄したのを隠すために4月22日の話を作り出し、5月9日の廃棄とつじつまを合わせるため、『障害者だから作業が遅れた』とダシに使われたのでは」と語る。有馬さんも「政府は私たちをどんな存在と考えているのか。自分たちの言い訳のために私たちを使ったとしたら許しがたい』と訴えた。

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