不自由と不寛容さが増すこの国息苦しさ…

次期学習指導要領の高校地理では「多文化共生」が柱の一つとされ、異文化理解はSDGsでも目標の一つであり、「ダイバーシティ」という言葉も良く聞く。
しかし、「総論賛成・各論反対」のように現実には様々な問題が生じている。
社会全体に総論的な“哲学”がないことが課題だろう。「安倍論法」が社会全体を蝕んでいると言ってもいい。

嫌韓 苦悩する在日コリアン3世・4世
朝鮮学校の高校無償化 FBコメントに罵詈雑言
司法は守ってくれない
「除外は適法」上告棄却 「日本いやなら出て行け」
2019年9月14日:東京新聞・こちら特報部

 最近のかつてなく激しい「嫌韓」の風潮にさらされ、若い世代の在日コリアン三世、四世が不安に襲われている。フェイスブック(FB)を荒らされ、テレビではコメンテーターが暴言とも取れる発言をする。子ども時代から北朝鮮による拉致問題や韓流ブームなどの影響を受けて育った世代は、何を感じているのか。                                 (大野孝志、佐藤直子)

 今月8日、専門学校講師文英愛(ムンヨンエ)さん(25)=広島県福山市=のFBのコメント欄に突然、罵詈雑言が書き込まれた。日本から出てけ、死ね、日本で悪さばかりするな―。文さんは、父が在日二世で母は三世。10年ほど使っていて、こんなことは初めてだ。
 8日だけで約40件。知人のFBをフォローしている一人が書き込んだようだ。文さんは在日コリアンが税関で北朝鮮の土産を没収された問題や、「表現の不自由展」の中止の反対を書いており、それへの反応が中心だった。
 警察に相談すると、相手を特定する捜査はできないと言われ、「差し迫った危険が生じそうになったら通報を」との対応だった。人権侵害の申し立てを考え法務局に電話しても「弁護士に相談して」とだけ言われた。ヘイト対策法や、各地で禁止条例ができているが、現状では刑事罰はない。
 レストランで近くに座った中年の男性が「韓国人の知性は幼稚園レベル」と話しているのを耳にして動悸がしたことがある。食事中、知人の「反日」という発言が聞こえた時は食べ物の味がしなかった。「声を潜めて語られていた差別や偏見が、大きな声になってきた」

「韓国なんて要らない」記事 宗主国目線そのもの

 「要るとか要らないとか、宗主国の目線そのものじゃないか」。東京都内の法律事務所に勤務する在日三世の李イスルさん(29)は「韓国なんて要らない」と題した今月の週刊ポストの記事に、日本が朝鮮を植民地にした時代と変わっていないと感じた。
 李さんは小中高と横浜の朝鮮学校に通い。青山学院大法学部在学中、国が朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外した。その後、除外は適法として元生徒らが起こした裁判を見守ってきた。先月下旬、最高裁が原告の上告を棄却。「除外は適法」とし元生徒らの敗訴が確定した。「日本の司法は朝鮮人を守ってくれない。淡い期待も打ち砕かれてしまった」と李さん。
 小学6年の時、北朝鮮による日本人拉致被害者が帰国。その日は何者かに危害を加えられる可能性を懸念し、教員に付き添われて集団下校。翌日から制服を着ないで登校した。「子どもながらに、いつもと違う空気を感じた」と振り返る。
 以降、日本社会の北朝鮮バッシングには驚かなくなったが、「今の朝鮮・韓国たたきは異常」と思う。
 高校無償化除外に反対し、署名集めを手伝ってくれた友人が、FBで安倍晋三首相を支持してているのを見て気分が沈んだ。「私たちを苦しめている張本人を、事柄が変われば応援する。日本人の在日朝鮮人に対する無理解の根深さを感じて悲しかった。傷つくのが怖くて、私自身が内にこもってしまっている」

ヘイト過激化「空想の中の憎悪」
日本社会に希望持てない
テレビで女性暴行発言 慰安婦重なった

 「韓国の女性なら暴力を振るってもいいと肯定する思考が怖い。慰安婦の問題に重なった」。在日三世で大学講師の30代女性=東京都=がポツリと語りだした。
 先月下旬、テレビ番組で男性コメンテーターが「韓国女性が入ってきたら暴行しないといけない」と発言した。韓国を訪れた日本人女性が暴行を受けた事件を話題にした際の言葉に、身震いがした。
 女性は父が在日二世、母は日本人。日本名を使って小学校から日本の学校に通い、「ルーズソックス」など女子高生カルチャーにも浸った。子ども時代を過ごした1990年代は「多文化共生」が叫ばれた時代でもあり、露骨な差別を受けた経験はなかった。
 「朝鮮人であることを嫌と思ったことはなかった。体が大きく朝鮮人として誇りを持っている父が、日本人の前では遠慮がちなのを見て不思議に思ってはいたけど」
 ただ、自分の出自を積極的には語らなかった。どんな反応を返されるか心配だったからだ。実際、差別を意識させられることは何度もあった。友だちが人気俳優やタレントを「あの人、在日だって」と話しているのを聞いた。役所の窓口では、朝鮮籍と知った職員に「あんた、かわいそうに。苦労するよ」と言われて戸惑った。
 だから、朝鮮名を名乗るようになったのは大学入学後。学生時代に韓流ブームが起きた。朝鮮が植民地にされた歴史などを学んで自分のルーツを改めて知り、自分は在日朝鮮人だと心底肯定できたという。
 最近は、過激になる一方のコリアンヘイトにがく然とする。在日コリアンの存在をきちんと伝える役割を担いたくて研究職に就いたのに「日本社会に希望を持てないなと思うこともある」と顔を曇らせる。
 数年前、新宿で「在日特権を許さない市民の会(在特会)」のデモを見た時も驚いたが、今のような嫌韓は想像できなかった。「生身の人間に対するものではなく、虚構の中での憎悪。『朝鮮人臭い』というから朝鮮人に会ったのかと言えば、違う。直接知りもせず、好き勝手にヘイトの言葉をん下ている。私たちの世代は空想の世界で嫌われているんです」

ストレスはけ口 相手の気持ち考えていない

 在日三世の金洋武(キムヤンム)さん(26)=埼玉県川口市=は嫌韓、特にテレビのワイドショーのコメンテーターの発言に、こう思う。「普段の生活で感じるストレスのはけ口として、日韓、日朝問題を捉えている。攻撃できる対象を探しているような…。言われる相手の気持ちを考えていない」
 祖父母は朝鮮半島東部の出身。南北に分かれる前の40年代に日本に来たので、金さん自身、自分の出身が北なのか南なのか気にしていない。幼稚園から高校まで愛知県内の朝鮮学校に通った。朝鮮学校は各種学校として扱われるため、高校卒業資格を取得して県内の私立大学に進んだ。
 自立した生き方をと税理士を目指し、今月から都内の税理士事務所で働いている。常に本名を名乗り、友人たちは出自を知った上で、不通に付き合ってきた。だからこそ、最近の日本政府の排他的な動きに「悲しくなる」という。「報復外交、制裁外交じゃないですか」
 差別や偏見を隠すこともない、口汚いヘイトの前に在日の若い世代は苦悩している。FBを荒らされた文さんは言う。「戦争前夜みたい。関東大震災の時の朝鮮人虐殺が、今の世の中で起きてもおかしくないと思えてくる」

デスクメモ
 在日コリアンが多く住み、ヘイトデモが繰り返されてきた川崎市は、ヘイトスピーチに罰則規定を科す全国初の条例制定を目指している。表現の自由との兼ね合い罰則には反対意見も多いものの、ヘイトを止めるには他に方法はないと指摘する専門家は多い。同市の動きに注目したい。       (千)

朝鮮学校の授業料無償化除外は「適法」
 最高裁で確定
2019年8月28日:朝日新聞

 朝鮮学校を高校の授業料無償化の対象から除外した国の処分が違法だったかどうかが争われた訴訟で、「適法」とした判決が確定した。最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)が27日付の決定で、学校側を敗訴させた一、二審判決を支持し、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の卒業生らの上告を退けた。同様の訴訟は全国5カ所で起こされているが、判決が最高裁で確定するのは初めて。
 授業料の無償化は、民主党政権下の2010年に関連法が施行され、安倍政権が13年、朝鮮学校を対象から外すために文部科学省令の規定を削除した。同校の卒業生ら61人はこの処分が違法だったとして、1人あたり10万円の賠償を国に求めていた。
 昨年10月の二審・東京高裁判決は、無償化の対象を決める裁量権は文科相に委ねられていると指摘。「教育内容や人事に朝鮮総連が影響を及ぼしている」などとした公安調査庁の調査を根拠に無償化の対象外とした判断は「裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない」と認定し、一審に続いて原告の訴えを退けた。
 原告側の弁護団は28日、「最高裁は理由を何ら述べずに主張を退けた。行政による違法行為を是正するという司法の役割を放棄しており、断固抗議する」とのコメントを出した。
 同種の訴訟では大阪地裁が「教育の機会均等とは無関係な政治的な理由で朝鮮学校を排除した」として国の処分を違法と認めたが、大阪高裁がこの判決を破棄し、原告側が上告している。名古屋、広島、福岡地裁小倉支部に起こされた訴訟は原告側が敗訴し、高裁で審理が続いている。(北沢拓也)

徴用・慰安婦・独島…
研究者が見た『反日種族主義』の3大争点
2019年9月14日:朝鮮日報

(1)日帝下強制動員「1944年以前の渡日は自発的選択」「玄界灘を渡る前に40%が脱出」
(2)日本軍慰安婦被害者「軍・警が拉致したという主張はうそ、収入も悪くなく、選択の自由があった」「河野談話も『強制動員』認定、インフレを考慮するとひどい収入」
(3)独島領有権「朝鮮の地図は宇山島の位置がばらばら、1905年に日本が編入したとき抗議もせず」「明治政府が『独島は朝鮮領』と確認、1905年は外交権を剥奪されて抗議できず」

 7月初めに出版された書籍『反日種族主義』は、日帝下強制動員は「虚構」であって、慰安婦被害者は性奴隷として苦しめられたのではなく選択の自由があった-という挑発的な主張を繰り広げた。このところ「反日」の雰囲気が高まる中、同書はむしろ一段と注目を集めている。8月中旬から3週連続で、大手書店「教保文庫」の週間ベストセラー総合首位になったほどだ。『反日種族主義』が提起した日帝下強制動員、日本軍慰安婦被害者、独島領有権という3大争点について、日帝強制動員アンド平和研究会のチョン・ヘギョン研究委員、東北アジア歴史財団のト・シファン日本軍「慰安婦」研究センター長、チェ・ウンド独島研究所長など専門研究者らが紙上論争を繰り広げた。

(1)日帝下徴用等強制動員

-『反日種族主義』(以下『反日』):日帝時代に憲兵・巡査が朝鮮人を強制的に連れていき、賃金も支払わず奴隷のように働かせたという「強制動員」は虚構。強制的な性格の「徴用」は1944年9月から45年4月までの8カ月間実施しただけで、人員も10万人以下だった。39年9月からの「募集」、42年2月から行われた「官あっせん」は、志願者の自発的選択だった。民族差別のため朝鮮人は日本人より賃金が低く、より危険な作業をさせられたというのは歴史の歪曲(わいきょく)。当時、朝鮮人青年にとって日本は一つの「ロマン」だった。
-チョン・ヘギョン日帝強制動員アンド平和研究会研究委員:強制動員に関する研究が不足していたころ、一部研究者や活動家らが被害者の証言を無批判に受け入れ、憲兵・巡査が朝鮮人を強制的に連れていったかのように表現したのは誤り。だが、憲兵・巡査が捕まえていくだけが強制動員ではない。日本は38年、アジア・太平洋戦争遂行のため国家総動員法を施行した。法律に基づいて行われたが、日本も加入した国際労働機関(ILO)協約に違反する強制労働だった。日本政府も2015年7月に軍艦島など「明治産業革命遺産」23カ所を世界文化遺産に登録する過程で朝鮮人の強制労働を認めた。佐藤地・駐ユネスコ(国連教育科学文化機関)日本大使は「一部施設で、数多くの韓国人が自らの意思に反して(against their will)動員され、過酷な条件で強制的な労役(forced to work)を行った」と表明した。翌日、日本の外務省は強制性を否定したが、取り消すことはできない。賃金が高く、労働条件が良かったのなら、なぜ動員された朝鮮人が玄界灘を渡る前に40%も脱出したのか。ごく一部の資料だけをもって一般化して語ることができるのか。

(2)日本軍慰安婦被害者

-『反日』:憲兵や警察が街角で未婚女性を拉致したり、洗濯場の女性を連行して慰安所に連れていったという通念は真っ赤なうそ。人身売買や就職詐欺はあったが、国家権力による強制連行はなかった。慰安婦は徹底した監視を受けて賃金も支払われずに性奴隷として働いたのではなく、相当な選択の自由があり、収入も悪くなかった。
-ト・シファン東北アジア歴史財団日本軍「慰安婦」研究センター長;日本政府は1993年8月に発表した河野談話で、日本軍慰安婦の強制動員を認めた。20カ月にわたる政府調査で出た結果だ。日本軍が慰安所の設置と管理、慰安婦の移送へ直接・間接に関与したとした。慰安婦の募集は軍の要請を受けた民間業者が主動したが、甘言、強圧など被害者の意思に反して行われるケースが多く、場合によっては官憲などが直接加担したと表明した。慰安所の生活も「強制的状況下での使役など残酷だった」と認めた。ビルマ(現ミャンマー)で働いた慰安婦被害者(文玉珠〈ムン・オクス〉)の貯金記録(2万6551円)を根拠に「収入が高かった」と主張するのも誤り。ビルマの戦時物価インフレ(1800倍)のため、実際には20円程度の価値にすぎず、送金も自由ではなかった。それすらも終戦で紙切れとなった。

(3)独島領有権

-『反日』:韓国の独島領有権主張は歴史的根拠が希薄。朝鮮王朝時代の地図では宇山島の位置がばらばらに描かれていたほどで、独島に対する領有認識はなかった。1905年に島根県が独島を編入したときも大韓帝国はこれといって抗議しなかった。
-チェ・ウンド東北アジア歴史財団独島研究所長:16世紀の地図を現代の地図と同じ視点で解釈するのは無理。朝鮮王朝時代の地図を見ると、宇山島は17世紀末の安竜福(アン・ヨンボク)事件を契機として鬱陵島西側から東側へ場所を移す。宇山島に対する認識が具体化していることを意味する。『東国文献備考』(1770年)などには「鬱陵と宇山はいずれも宇山国の地で、宇山とはまさに倭人の言う松島(独島)」と記録されている。日本が1905年に独島を領土に編入すると、この事実を把握した鬱陵郡守が政府に報告した。参政大臣は指令3号を下し、「独島領地うんぬんする説は全く根拠がない」ということと、「再び調査して報告すべきこと」を指示した。だが「乙巳勒約(いっしろくやく)」で外交権を剥奪された朝鮮は日本に抗議できなかった。何より、1877年に明治政府の最高国家機関である太政官が「鬱陵島と独島は日本とは関係ない場所で、朝鮮領」と確認した。
金基哲(キム・ギチョル)学術専門記者

日韓関係 今こそ市民交流拡大を
2019年9月14日:東京新聞

 日韓関係の悪化による影響が、各方面に広がっている。両国は市民レベルでは助け合い、学び合ってきた。交流を断つのではなく、成熟、拡大させたい。それが関係改善の糸口にもつながるはずだ。
 日韓の自治体間交流は活発だ。姉妹(友好)都市提携をしている日本の自治体は、都道県が延べ十九、市区町村は百四十三もある。米国や中国に続く数字だ。
 日韓関係は近年、多様さも増してきた。日本では、女性の心理を丁寧に描いた韓国人作家の小説がベストセラーになった。
 韓国が進める外国人労働者などの受け入れ策を、日本の多くの自治体が視察し、参考にしている。
 また、就職難の自国を避けて、日本企業で働き口を探す韓国の若者が増え、注目を浴びている。
 海外に目を向ければ、日韓の企業が、インフラや資源開発事業で協力しているのが現実だ。
 日韓間の往来者数が昨年一千万人を超えたのは、こういった時代を反映したものといえる。
 ところが今年に入り、自治体が主体となった交流の中断が相次いでいる。政治レベルの対立が影響した結果だ。
 特に韓国では、日本への旅行を自粛するムードが広がっている。関係が困難な時にこそ幅広い世代による交流を続けるべきだが、韓国からの観光客の減少で、地方都市をつなぐ航空便が縮小を余儀なくされている。
 東京と大阪で今月七日、差別反対を訴える集会「日韓連帯アクション」が開かれた。
 若者らが日本語や韓国語で、「差別や憎悪よりも友好を」と書かれた紙やプラカードを掲げた。日韓関係への危機感の表れだ。
 こういった動きを受け、菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、「両国の将来のため、相互理解の基盤となる国民間の交流はこれからも継続していくべきだ」と述べた。
 交流の重要性を認めながらも、政府レベルでは、相手側に責任を押し付けるだけで、打開の動きが見えない。残念な事態だ。
 そもそも対立の原点には、元徴用工問題を巡る韓国大法院(最高裁に相当)の判決がある。
 両国の歴史認識に端を発した問題で、経済、安全保障にも波及し、出口が見えなくなっている。
 今後、国連総会や天皇陛下の「即位の礼」、日中韓首脳会談など首脳クラスが顔を合わす機会が続く。市民の交流に水を差さないためにも、関係修復に向け、知恵を出し合ってほしい。

橋本聖子も東京五輪で
「旭日旗」持ち込み許可の方針!
大日本帝国・軍国主義と
安倍歴史修正主義の象徴を世界に晒す愚行
2019年9月14日:LITERA

 この人たちは、東京五輪をいったいどんなグロテスクなイベントにするつもりなのか。内閣改造で入閣した橋本聖子・五輪担当相も、「旭日旗」の東京オリンピック・パラリンピック会場への持ち込みについて、禁止せず認める方針であるとした。
 12日の会見で、韓国が五輪会場への旭日旗の持ち込み禁止を求めていることについて「旭日旗が政治的な宣伝になるかということに関しては、決してそういうものではないと認識している」と語ったのだ。
 本サイトでも既報のとおり、今月はじめ、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が、「旭日旗は日本で広く使用されるため、それを防ぐ理由がない」「旭日旗自体には、どのような政治的意味も含まれていない。そのため禁止品目とは見なさない」として、「旭日旗」の持ち込みを認める方針を示していた。
 橋本五輪担当相つまり安倍政権は、この組織委の判断にお墨付きを与えたのである。
 橋本五輪担当相も東京五輪・パラリンピック組織委員会も「旭日旗に政治的意味はない」「旭日旗が政治的宣伝にならない」などとデタラメを吹いているが、「旭日旗」は紛れもなく戦前・戦中日本の軍国主義の象徴だ。韓国や中国のみならず、日本が侵略したアジア諸国からも反発が起こることは当然であり、しかも、まがりなりにも「平和の祭典」を標榜する五輪に持ち込むなど、国際社会の常識で考えればありえない判断だ。
 国際オリンピック委員会がこのまま看過するとも思えないが、「旭日旗持ち込み」が強行される可能性もゼロではないだろう。橋本五輪担当相の「旭日旗持ち込み可」発言は、橋本五輪担当相が「私の父」と言ってはばからない東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の意向に追随したのと同時に、その森会長とも極右思想をともにする安倍首相の意向を反映したものでもあるからだ。
 ここ数年、安倍政権は、「旭日旗」をめぐって、大日本帝国の軍国主義の象徴であるという負の歴史をネグり、正当化しようという動きに出ている。
 2017年サッカー国際試合での「旭日旗」持ち込みが国際的に問題になった当時、菅義偉官房長官は「旭日旗は差別的ではないとの認識か」との質問に対して、「自衛隊旗や自衛艦旗だけではなくて、大漁旗やしゅっさん、節句の祝い旗など、日本国内で現在も広く使用されていると考えている」などと会見で述べるなど、事実上、旭日旗の使用は不適切ではないとの認識を示した。
「日本国内で現在も広く使用されている」と言うが、それは在特会などのヘイトデモではないか。
 さらに、今年5月には、日本の外務省がホームページで「旭日旗」に関する説明文書をアップ。「旭日旗」が大日本帝国・軍国主義の象徴であるという史実を完全にネグり、“まったく問題ない”と強弁しているのである。
 しかし、安倍政権や東京オリンピック・パラリンピック組織委員会がどんなに「旭日旗自体には、政治的意味はない」などと強弁しようとも、「旭日旗」が大日本帝国・軍国主義の象徴であるという史実は揺らがない。むしろ「旭日旗」正当化は安倍政権の歴史修正主義の象徴であり、政治的宣伝にならないどころか、大日本帝国の侵略戦争の正当化というプロパガンダそのものだ。
 現在の国際秩序への挑発であり、こんなものをオリンピック・パラリンピックという「平和の祭典」とも称される国際イベントの場に持ち込むなど、許していいはずがないだろう。
 本サイトでは、「旭日旗」が、現在の「海上自衛隊旗」も含め、いかに問題あるものか、検証したことがある。以下に再編集して、掲載する。「政治的宣伝ではない」「政治的意味はない」などという橋本五輪担当相、安倍政権の説明がいかに欺瞞に満ちたものか。あらためて、ご一読いただきたい。

外務省がHPで「旭日旗」正当化!
サッカー国際試合でも問題になる
軍国主義の象徴を無理やり肯定する歴史修正主義

 慰安婦問題や徴用工問題などで「史上最悪」と言われる日韓関係。そんななか、またもや安倍政権による歴史修正主義が韓国世論を刺激した。2019年5月24日、日本の外務省がホームページで「旭日旗」に関する説明文書をアップ。こんなふうに“まったく問題はない”と強弁したのだ。
〈旭日旗の意匠は、日章旗同様、太陽をかたどっている。この意匠は、日本国内で長い間広く使用されている。〉
〈制定以来、自衛艦旗及び連隊旗は国内外の様々な場面で掲げられてきている。これらの旗は、これまで半世紀以上にわたり、自衛艦または部隊の所在を示すものとして、不可欠な役割を果たしてきており、国際社会においても広く受け入れられている。〉
 ようするに、安倍政権は“旭日旗のデザインは自衛隊で長年使用されてきたもので、国際社会にも受け入れられている”と主張したのだ。
 周知の通り、現在でも海自・陸自の旗として使われている「旭日旗」を巡っては、戦前・戦中日本の軍国主義の象徴であることから、韓国をはじめ国際社会で強い反発を呼んできた。
 しかも、旭日旗は、スポーツの場でも何度も問題化してきた。2017年には、サッカーのアジア・チャンピオンズリーグの試合で、サッカーJ1・川崎フロンターレのサポーターが、韓国の水原三星ブルーウィングス戦で旭日旗を掲げた。アジア・サッカー連盟は、旭日旗を掲げる行為は人種や政治的な心情による差別を禁じる規定に違反するとして、川崎に執行猶予付き無観客試合や罰金などを命じた。川崎は異議申し立てをしたがスポーツ仲裁裁判所には提訴せず、処分が確定。だが、昨年のロシア・ワールドカップでも日本代表対セネガル代表戦で旭日旗が出されるなど、同じ事が繰り返されている。
 とりわけサッカーの試合を巡っては、世界的にもナチスのハーケンクロイツを掲げたサポーターやクラブ側に厳しい処分が出されている。日本サッカー協会は「旭日旗に政治的な意図はない」などと主張しているが、先述したアジア・サッカー連盟の裁定をみてもわかるように、旭日旗はスポーツの場にふさわしくない「政治的」「差別的」な象徴としてはっきりと禁じられているのである。
 それを、よりによって戦中の旭日旗をそのまま海上自衛隊の旗にしている日本政府が〈国際社会においても広く受け入れられている〉と言い張ったのだ。
 だとすれば、何度でも、日本政府が隠蔽しようとする“旭日旗の歴史”を確認しておく必要があるだろう。はっきり言うが、外務省の旭日旗をめぐる説明は歴史修正主義と呼ぶべきシロモノでしかないからだ。

戦中は「旭日旗=天皇の分身」だった! 旗手が軍旗もろとも自爆も

 まず、「旭日旗は日本の軍国主義の象徴である」という韓国など国際社会の批判は、べつに言いがかりでもなんでもなく歴史的事実だ。旭日旗は、戦前・戦中に帝国陸軍の「軍旗」(連隊旗)および帝国海軍の「軍艦旗」として用いられた。それぞれ形が異なるが、現在、海上自衛隊が艦旗として使用している旭日旗は、戦中の海軍から丸ごと引き継がれたものだ。
 それら旭日旗は、戦前、どのように扱われていたか。たとえば陸軍では、単なる連隊の標識にとどまらず「旭日旗=天皇の分身」として、軍旗に関する礼式、取り扱い等も規定された。紛失したり、奪取されることなどもってのほかで、敗北・玉砕の際は連隊長が腹を切り、軍旗を奉焼の儀式にて灰にした(寺田近雄『完本 日本軍隊用語集』学習研究社)。
 歴史家の秦郁彦氏によれば、第二次大戦末期には爆薬によって旗手が軍旗もろとも自爆する処置までとられたという(『日本陸海軍総合事典』東京大学出版会)。まさに“狂気”としか言いようがない。実際、戦中、陸軍近衛歩兵第6連隊で旗手をつとめた作家の村上兵衛はこう書いている。
〈軍旗を失った歩兵連隊などというものは、もはや哂い者にすら価しなかった。それは存在しないのである。また存在させてもならないのである。だから、わが陸軍においては「軍旗喪失」と「連隊全滅」とは数学的正確さを持った同義語に過ぎなかった〉(小説「連隊旗手」)
 一方、海上自衛隊にそのままの形で引き継がれた、帝国海軍の旭日旗はどのように扱われていたか。1902(明治35)年に海軍少佐・奥田貞吉の名前で著された「帝國國旗及軍艦旗」は、その意匠に〈我帝國ノ武勇ヲ世界ニ輝カセ〉〈帝國ノ國權ヲ地球ノ上ニ發揚セヨ〉という意味があると説明している。つまり、外務省は〈自衛艦または部隊の所在を示すもの〉と一面しか説明せず、完全にネグっているが、歴史的には、たんに船舶の所属を表すだけでなく、国威発揚や帝国主義の正当化を図る示威行為の意図があったのだ。

海上自衛隊の旭日旗復活には、
“大日本帝國の思想性”復活の意図があった

 狂気の象徴だった陸軍の軍旗および海軍の軍艦旗、旭日旗は当然ながら、敗戦後は一度消滅する。では、なぜそれが前述したように、海上自衛隊で自衛艦旗として復活したのか。
 それは「自衛隊艦旗と旧軍の旭日旗が違うもの」だからではない。逆に、海上自衛隊がその「旧軍の旭日旗の思想性」を復活させたいと考えたからだった。
 現に、防衛省・自衛隊ホームページでは〈自衛艦旗は戦前の日本海軍の軍艦旗そのままのデザインですが、その制定にあたって海上自衛隊の艦旗はすんなりと旧軍艦旗と決まったわけではありませんでした〉と解説されている。
 1954(昭和29)年の自衛隊設置を前に、その前年から旗章が全面的に見直されることになったのだが、〈多くの部隊が希望している旧軍艦旗を採用することについても、情勢はこれを許す状況にはないのではないかとの議論〉があったというから、やはり、旭日旗が軍国主義を示すものであるとの認識は当時の関係者にもあったわけである。
 ところが、防衛省が説明するところによれば、〈各部隊・機関の意見を集めたその結果、各部隊等の大部分は旧軍艦旗を希望している意見が多いことが判明〉して、旧日本帝国軍の軍艦旗がそのまま制定されたという。
 元海軍軍人の大賀良平・第12代海上幕僚長(故人)が、かつて雑誌の「海自50周年」の記念特集に「旭日旗、再び」と題して寄稿した文によれば、1951年、吉田茂はサンフランシスコ講和条約締結と前後し、米国から艦艇の貸与を打診され、これを受け入れた。その際、貸与艦をどう運用すべきかを検討する秘密委員会が設けられ、山本善雄元海軍少佐が主席となり、旧海軍側から8名が参加したという。この答申によって、翌52年に海上警備隊が創設されたのだが、大賀元海幕長は当時をこう述懐している。
〈この時、関係者が感激し狂喜したのは、かつての軍艦旗“旭日旗”が再び自衛艦旗として使えるように決まったことだ〉(「世界週報」時事通信社/2002年8月20・27日合併号)
 大賀元海幕長の言う「感激し狂喜した関係者」が、海軍出身者のことであることは疑いない。自衛艦の「旭日旗」が、帝国海軍のメンタリティによって復活したことは明白だ。つまり、海上自衛隊の自衛艦旗=旭日旗は、たんにそのデザインが戦中と同じというだけでなく、大日本帝国の思想性を継承したものに他ならないのである。

外務省の唐突な旭日旗正当化の背後に安倍首相周辺の極右政治家

 外務省は、このたび公表したHPでの説明のなかで、〈太陽から光線が放たれる旭日のデザインは、日本特有のものではない〉として、北マケドニア共和国の国旗などに〈類似のデザイン〉があり、〈世界で広く使用されている〉としている。
 だから何だというのか。問題は「旭日」=朝の太陽の“デザイン性”にあるのではなく、「旭日旗」=帝国軍旗・戦艦旗という“史実”にある。いまでも海自が使っている日本の「旭日旗」が、まさしく大日本帝国のミリタリズムを継承したものである以上、韓国など日本が植民地化したり侵略したアジア諸国が嫌悪するのは当たり前の話だ。
 外務省はいったい何のために、こんなタイミングで、無理やりな旭日旗正当化をHPで発表したのか。
 今回の問題を巡っては、安倍首相の覚えもめでたい自民党の山田宏参院議員がTwitterで〈自衛艦旗に対し、韓国だけが「戦犯旗」などと的外れで無礼な非難を国際社会で繰り返しています。そこで国際社会で正しい認識をしてもらえるよう、このたび防衛省と外務省のホームページで、旭日旗について日本語と英語での説明文を、本日17時に掲載することになりました〉(5月24日)と投稿している。外務省HPでのプロパガンダは安倍首相周辺の極右勢力が主導したと考えて間違いないだろう。
 安倍政権が「旭日旗」を正当化しようとするのは、あきらかに戦前日本の帝国主義を肯定する歴史修正主義の延長だ。ゆめゆめ騙されてはならない。
(編集部)
徴用工と働いた91歳 報道に眉ひそめ
「嫌韓」重なる記憶
「加害の歴史向き合って」
2019年9月15日:東京新聞・ニュースの追跡

 「韓国なんて要らない」とうたう週刊誌やテレビの報道、慰安婦をモチーフとした少女像をめぐる展示の中止…。はびこる「嫌韓」の空気に眉をひそめる人がいる。水戸市の高橋あいさん(91)。太平洋戦争末期、陸軍の工場に動員され、朝鮮人徴用工と共に働いた。「あの頃に引き戻されるよう」と薄気味悪さを感じている。                                   (安藤恭子)

 高橋さんは新潟県の高等女学校を卒業した1944年春、戦時下の労働力不足を補うために創設された「女子挺身隊」に入隊。17歳で旧日本陸軍の向上「相模陸軍造兵廠」(相模原市)に動員され、戦車の計器の組み立てなどを担った。
 その年の冬、数十人の朝鮮人徴用工がやってきた。別棟で働き、監督役の軍人から怒鳴られ、日常的に殴られていた。話す機会はなかったが、夜中まで黙々と働く姿が印象に残った。
 他の男性工員らも「朝鮮野郎」と見下していた。あくる日、一人の工員が高鍋さんに「やつら日本語しゃべれないべ。でもな、かまうところ言うべよ」と話しかけてきた。「チョセンチョセン(朝鮮)、とパアカ(ばか)にするな。シャケ(酒)も飲む、ピール(ビール)も飲む。テンノウヘイカ(天皇陛下)ヒトツタ、とな」と続けた。
 ケラケラと笑って話し方をまねる工員。高鍋さんが「かわいそうよ。はるばる連れてこられた朝鮮人も天皇陛下の赤子だと言ってるのにさ」と返すと、「生意気だあ。女のくせして」とたたかれた。
 造兵廠内では徴用工が歌う朝鮮民謡の「アリラン」が広まった。哀調漂うメロディーを高鍋さんも気に入り、朝鮮語で口ずさんだ。「遠い古里を思い心を慰めるのは、歌しかなかったのだと想像した」
 当時の日本では、軍事施設のほか炭鉱の現場や造船、鉄鋼などの企業に多くの朝鮮人が連行された。敗戦までに強制労働をさせられた人数は約70万人以上に上るとされる。
 高鍋さんは45年2月、母の危篤を理由に造兵廠を脱し、新潟に戻った。残った同郷の人によると、8月の敗戦後、将校の一人が「朝鮮人が暴動を起こし、襲われるかもしれない」と不安がったという。
 実際には何も起きなかった。高鍋さんは「朝鮮の人たちに差別や虐待をして恨まれているという認識があったから出た言葉。関東大震災の後に起きた朝鮮人虐殺を思い起こす」と憤る。
 慰安婦問題を巡り、韓国国会の文喜相(ムンヒサン)議長が2月、天皇陛下の謝罪が望ましいとの見解を示した。当時の河野太郎外相は「極めて無礼な発言だ」と国会で非難した。
 この問題に高鍋さんは「植民地支配を受けた立場から歴史を見れば、議長の発言がおかしいとは思わない。私たちも朝鮮人も、皇民化教育を受け、天皇の名の下に徴用されたのは確か。徴用工も労働者と言い換えられるなど、今の政権は過去の加害から目を背けているのではないか」と語る。
 高鍋さんは戦後、「教え子を戦場へ送らない」と小学校の教員を経て、子育てや文筆活動に力を注いだ。「太平洋戦争の開戦を『万歳』と喜び、アジアへの侵略を大東亜共栄圏づくりと信じた軍国少女だった。国家に思想を支配される恐ろしさを知っている。加害の歴史と真摯に向き合い、隣国と対話する努力をするべきだ。忌まわしい過去を繰り返さないために」と願う。

「嫌韓」の裏に格差と陰謀論
2019年9月15日:毎日新聞・政治プレミアム

 「嫌韓」という排外主義が吹き荒れている。少しでも冷静な議論をすれば「売国奴」などの罵声が飛んでくる。
 背景にはアベノミクスにも責任がある格差がある。人間が感じる不満は相対的なものだ。客観的には中間層、あるいはやや上であっても、富裕層に恩恵が偏っていると感じれば不満は爆発する。
 こんな時の政権の対応ははるか昔から同じだ。一つは下に目を向けさせ「それよりはまし」と考えさせる。もう一つは外へ目を向けさせる。

国外にそらす

 安倍政権もアベノミクスに足らざる点があることは認めている。だが、安倍晋三首相は国会答弁ですぐにかっとなることに表れているように批判を受け止めることが苦手なようだ。
 政治の役目はなによりもまず、批判者、少数者との対話にある。しかし、安倍政権はすすんで自らの欠点を認め、国民と双方向の対話をすることがうまくできていない。
 トランプ米大統領の例をあげるまでもなく、国民をうまく統合することができない政権の逃げ道はいつも不満を国外にそらすことだ。対韓輸出規制はそういう機能を果たした。

今も昔も変わらぬ陰謀論

 もう一つの特徴は陰謀論だ。「中露に、あるいは中韓にあやつられている政党、新聞。自分だけが真実を知っている」「各国政府はユダヤ人とコミンテルンに支配されている。自分だけが真実を知っている」
 今も昔もポイントは、自分の知らないところで誰かが不当な利益を得ているという感覚だ。この感覚自体は間違っていない。どのような体制であろうと不備はいつもあるからだ。
 不満の先が間違っている。責任は「ユダヤ人」にも「在日」にもない。「ユダヤ人」は現実のユダヤ人とは関係がない。なぜならば現実は常に複雑であり、日韓関係も含めて一方的に非難できるものなどないからだ。そんな当たり前のことは、みんな日常生活でよくわかっている。
 けれども、意識的に現実から目をそらさないと気持ちよく他者はののしれない。だから陰謀論がセットでついてくる。

家族に言えることなのか

 その証拠に罵声を書き込んでいるあなたは、それと同じことを自分の家庭、あるいは会社で言えるだろうか。友人や家族と対立した時に「半島に帰れ」などと、面と向かって言えるだろうか。自分の現実と無関係だと思っているから書き込めるのだ。
 あなたが本当に嫌いなのは日本なのだろう。昔の日本は良かった、今の日本は左翼に汚染されて堕落してしまった、というのもおきまりの文句だ。あなたは現実の日本が受け入れられない。格差を放置し、少数者に冷たい、個人に冷たい、そしてあなたにも冷たい、きっと誰かがずるをしていい思いをしているに違いない、今の日本を否定したい。
 しかし、そうは口に出せない。すぐに「おまえはどうなんだ」という罵倒が返ってくるからだ。自己責任という理不尽な威圧が社会にのさばっている。
 だから、代わりに韓国を持ち出すのだ。決して自分に跳ね返ってくることがない韓国という的に罵声を投げつける心地よさが「嫌韓」だ。
 ヒトラーの演説の特徴について以下の指摘がある。
 「聴衆を熱狂させて強い印象を与えるには、他人に対して、特に比較的良い生活をしている――本当にそうか、または、そうみえる――人たちに対して、猛烈な侮辱的攻撃を加える演説に及ぶものはない」(「ワイマル共和国史」エーリッヒ・アイク、ぺりかん社)
 そして、ナチスのあおり文句の一つが「フランスと断交せよ」だった。

あなたには責任がある

 家でノートに書いているだけなら無害だが、たとえ匿名の掲示板であっても公にすればそれなりの責任が伴う。
 格差は社会を不安定にする。戦間期の日本やドイツでは政治家の暗殺に結びついた。「ユダヤ人の陰謀」「統帥権干犯(とうすいけんかんぱん)」などの妄想にあおられ、それを信じたものによって実行された。
 多くの国会議員と日韓関係について話をしてきた。もちろん例外はあるが、「嫌韓」の風潮に対する彼らの態度を一言で言い表すとすればおびえだ。輿論(よろん)が暴走する怖さを切実に感じている。
 無数の匿名の声が時には力を持つ。天皇機関説事件では政府も新聞も当初は美濃部達吉を支持した。不敬だという中傷は、あまりにもデタラメだったからだ。しかし、デタラメでも輿論が沸騰すると歯止めが利かなくなる。
 あなたの口汚い罵声は、残念なことにやっぱり現実とつながっている。家族や会社の同僚からは、あなたが書き込んだ非人間的な差別的言辞は隠し通せるかもしれない。しかし、いくら目を背けても現実はあり続け、あなたの書き込みはいや応なくあなたに返ってくる。
 ことが起きてから「そんなつもりではなかった」という言い訳は通用しない。

【世界裏舞台】
佐藤優 地政学的変動と日韓関係
2019年9月15日:産経新聞

 韓国の産業通商資源省が11日、7月に日本が始めた半導体材料3品目の韓国向け輸出管理の厳格化措置に関して、「韓国を直接的に狙った差別的措置」であるとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。8月22日に韓国が日本と結んでいる軍事情報包括保護協定(GSOMIA(ジーソミア))の破棄を決めたことと併せて考えると、経済、安全保障の両面で韓国はもはや友好国とは言えなくなっている。
 日韓関係が悪化した背景には、構造的要因がある。過去の植民地支配に対する日本の認識が不十分であるとの指摘があるが、このような不満を韓国は以前から持っていた。なぜ、今、それが爆発したのかという理由を植民地支配の負の遺産だけで説明することはできない。韓国に経済力がついたことも構造的要因の1つだ。
 日韓基本条約が締結された1965年時点の1人当たりのGDP(国内総生産)を比較すると、韓国が約100米ドル、日本は約900米ドルだった。それが2018年時点では韓国が3万1000米ドル、日本が3万9000米ドルだ。しかも韓国の方が物価が安いので、皮膚感覚での生活水準は同レベルになる。
 ビジネスや観光で来日する韓国人は、「生活水準のレベルが同じであるにもかかわらず、国際社会で韓国の影響力が日本よりもはるかに低く評価されているのは不当だ」という認識を抱く。そこから、日韓基本条約とそれに付随する請求権協定が、日本に比して国力が圧倒的に弱かった時点での韓国に押しつけられた不平等条約のように見えてくる。国力に応じて、日本とのゲームのルールを見直すべきだという認識を韓国人は抱いているのだと思う。
 さらに北東アジア地域における地政学的変動が日韓関係悪化の背景で無視できない要因になっている。
 地政学では、世界は大陸国家と海洋国家に区別される。大陸国家は、軍事力を背景に支配する領域を拡大することで国力の増強を図る。これに対して海洋国家は、経済力を強化し、貿易によるネットワークを地球的規模で形成することによって国力の増強を図る。日本、米国、英国は典型的な海洋国家で、中国、ロシアは典型的な大陸国家だ。
 ちなみに半島国家は、大陸国家と海洋国家の要素を併せ持つ。ただし、韓国は通常の半島国家と異なる特殊な要因を持っていた。1953年の朝鮮戦争休戦協定により北緯38度線付近に軍事境界線が設けられ、ヒト、モノ、カネの移動ができなくなった。その結果、韓国は大陸から切り離され、地政学的には島になり、経済を発展させ貿易立国の道を選んだのである。韓国は地政学的に米国、日本と同じ海洋国家戦略をとることになったのだ。
 しかし、2018年6月12日の米朝首脳会談後、朝鮮半島の緊張緩和の方向が明確になり、近未来に朝鮮戦争が終結し、北緯38度の軍事境界線が撤廃される見通しが出てきた。
 この展望を踏まえて、韓国が地政学的に本来の半島国家に回帰しつつある。具体的には、韓国が中国に引き寄せられているのである。その結果、韓国、中国、北朝鮮が連携して、日本と対峙(たいじ)する構図が生じつつある。
 韓国が日本との関係悪化を恐れなくなったのも、中国が後見してくれることを地政学的に見通しているからだ。中朝韓の連携に楔(くさび)を打ち込む戦略的な外交を、タフネゴシエーターとして有名な茂木敏充新外相が展開することを期待する。
 日韓関係が改善するタイミングは、日朝国交正常化交渉が本格化するときだ。1965年の日韓基本条約にある第3条では、〈大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される〉と規定されている。
 日本が北朝鮮と国交正常化するということは、朝鮮においては大韓民国だけでなく、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)も合法的政府であることを認めることになる。従って、日韓基本条約の改定が不可欠になる。このときに日韓関係が全面的に見直され、新たなゲームのルールが構築されることになる。


(社説)
嫌韓とメディア 反感あおる風潮を憂う
2019年9月16日:朝日新聞

 日韓関係をめぐる評論活動が活発になっている。摩擦が端緒とはいえ、近隣外交の論議が高まるのは結構なことだ。
 ただ、最近顕著になっている論じ方には憂慮すべき点が少なくない。とりわけ、「嫌韓」と呼ばれる韓国への反感をあおるような一部メディアの風潮は、いかがなものか。
 日本と朝鮮半島との交わりには長く深い歴史がある。文明の伝播(でんぱ)や交易などで双方が利を得た時があれば、日本が植民地支配をした過去もあった。
 争いは双方の国際的な立場を弱め、協調すれば共栄の可能性が高まるのは必然の理である。
 ところが一部の論評では、この隣国を感情的に遠ざけるような言葉が多用されている。
 たとえば、「憤激と裏切りの朝鮮半島/日韓断絶」(文芸春秋10月号)、「202X年韓国消滅へのカウントダウン」(WiLL4月号別冊)など。
 小学館が発行する週刊ポストは今月、「厄介な隣人にサヨウナラ/韓国なんて要らない」と題した特集を組んだ。
 関係が悪化するなか、あるべき外交をさまざまな角度から提起するのはメディアの役割だ。しかし最初から相手国への非難を意図するものでは、建設的な議論につながらない。
 週刊ポストは「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」との記事も載せた。当該論文を紹介しているとはいえ、韓国人という括(くく)りで「病理」を論じるのは民族差別というべきだ。
 テレビでも、否定的な論調が目立つ。TBS系のCBCテレビの情報番組では先月、韓国で日本人女性が髪をつかまれたとされる件にからみ、出演者が「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」と発言し、番組が謝罪した。
 もし出版物の販売促進や視聴率狙いで留飲を下げる論旨に走るのならば、「公器」としての矜持(きょうじ)が疑われる。
 政治の責任もむろん重い。両政府とも相手を責めるのみで、問題があっても善隣関係をめざす原則は語らない。国内世論の歓心をかいたい政権とメディアの追随が、重奏音となって世論を駆り立てるのは危うい。
 戦前戦中、朝日新聞はじめ各言論機関が国策に沿い、米英などへの敵対心と中国・朝鮮などへの蔑視を国民に植え付けた。その過ちを繰り返さないためにも、政権との距離感を保ち、冷静な外交論議を促す役割がメディアに求められている。
 自国であれ他国であれ、政治や社会の動きについて批判すべき点を批判するのは当然だ。ただ論議の礎には、あらゆる差別を排し、健全な対外関係を築く視座を揺るがせてはなるまい。

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