ABE、DTに賢明さを望むのは妄想か?

世界平和の最大のリスクが米国大統領のDTということが証明されたのが、今回のイラン騒動だ。
世界最大の軍事力・経済力を持つ国のリーダーの不見識と不徳の影響は世界的なものとなる。
そもそもDTは、米国覇権をカネのかかる軍事力ではなく、種子と医薬の知的財産(特許)によって世界征服を図るというパラダイムに転換しようとしている。民間を利用して、世界の「命」(食料と医療・健康)を支配しようというのだ。そういうDTは米国の巨大な軍事力をどう使うかの知恵がない。今回の騒動も、米権力トップが慌てたという、ソレイマニ司令官虐殺のDTによる選択によって始まった。とりあえず騒動は収束に向かいつつあるようだが、ことは中東のこと、不確定要素が多く、今後の成り行きは不透明だ。
ABEと似て、視野が狭く、思考が単線的なDTに、世界平和構築の発想は乏しく、「自分のこと」ばかりが優先される。「アメリカ・ファースト」というのは「DTファースト」のことだ。
「アベくんがもし賢明なら…」と考えるのは、妄想にすぎないのか?


トランプ氏、イランへの反撃明言せず
 軍事力行使「望まない」
2020年1月9日:ロイター通信

[ワシントン 8日 ロイター] - トランプ米大統領は8日、米軍による革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に対するイランの報復攻撃で米国人の死傷者は出なかったと明らかにした。また必ずしも軍事力を行使する必要はないと述べ、危機打開に向けた姿勢をにじませた。
イランは8日未明、米軍が駐留するイラクのアル・アサド空軍基地に複数のロケット弾を発射。米国防総省によると、米国主導の有志連合軍が駐留する少なくとも2か所のイラク軍基地に対し、イランから十数発の弾道ミサイルが発射された。
トランプ氏は「昨夜の攻撃で米国人の死傷者は一人も出なかった」とした上で「米国は優れた軍隊と軍事装備品を保有している。しかし、それを使用しなければならないということではない。米国は(軍事力の)行使を望んでいない。米国が持つ軍事面と経済面における双方の力こそが最大の抑止力になる」と語り、イランへの軍事行動を巡って直接的な警告を避けた。
同時にイランの「侵攻」への対応として、追加的な経済制裁を即時発動する方針を表明した。制裁の具体的内容には触れなかった。また「世界がより安全で平和になるよう、われわれは一致してイランとの合意に向け努力していかねばならない」とし、各国に協力を求めた。



イランの米基地攻撃
 報復の連鎖、断ち切らねば
2020年1月9日:毎日新聞

 米国とイランが軍事攻撃の応酬を繰り広げている。一刻も早く報復の連鎖を断ち切らなければならない。
 米軍などが駐留するイラクの軍事施設2カ所をイランがミサイル攻撃した。十数発を発射したという。
 米軍のイラン司令官殺害への報復と発表した。米軍が反撃すれば「激しい報復」をもたらすとし、米国の同盟国にも警告を発した。
 イランは国連憲章に認められた自衛権の行使として正当化するが、軍事行動による応酬で中東の緊張がより高まったのは事実だ。
 報復合戦が続けば、米国とイランによる大規模な衝突につながるとの懸念が生じる。
 イランのザリフ外相は「事態悪化や戦争を求めてはいない」と言う。エスパー米国防長官も「イランとの緊張緩和を追求する」と述べた。
 そうであるなら、まずは双方とも挑発的な言動を自制すべきだ。
 トランプ氏はイランの司令官を「怪物だった」と表現した。だが、司令官殺害には米国内でも判断が正しかったか疑問が出ている。
 イランやイラクでの反米感情は高まっており、衝動的な言動が不測の事態を招くことも否定できない。米国は過剰な反応を避けるべきだ。
 イランは司令官殺害と「同程度」の報復という。だが、集中的なミサイル攻撃は大規模な殺害につながりかねず、事態を悪化させるだけだ。
 国際社会も緊張緩和を促す必要がある。国連安全保障理事会では司令官殺害をめぐり米国と中露が対立し声明を出せない状態にあるという。
 米軍による司令官殺害には欧州が理解を示し、中露は批判している。中東の権益争いで大国の分断が深まれば国際情勢も緊迫しかねない。
 英仏独や中露はイラン核合意の当事者だ。欧州3カ国は米国、中露はイランに対してこれ以上事態を悪化させないよう自制を求めるべきだ。
 安倍晋三首相は今月中旬に予定していた中東訪問の延期を検討している。情勢の悪化を踏まえたものだろう。イラクからは欧州諸国の駐留軍の一部が退避を始めるという。
 そうした情勢の変化にもかかわらず、政府は中東海域への海上自衛隊の派遣を予定通り実施する方針だ。派遣決定時の前提が変わった以上、再検討するのが当然ではないか。



イラン、アメリカ軍駐留基地を
十数発のミサイルで攻撃
アメリカの国防総省は
「被害状況を確認している」と声明を発表しました。
2020年1月8日:ハフィントンポスト
7日、アメリカ軍によって殺害されたソレイマニ司令官の追悼式典に詰めかける群衆

イランの革命防衛隊は8日未明、イラク国内にある二つのアメリカ軍が駐留する基地をミサイル攻撃した。ニューヨーク・タイムズ紙電子版によると、イラン側はアメリカ軍によってイラクで殺害されたソレイマニ司令官を念頭に、「イスラム革命防衛隊からの激しい反撃が始まった」との声明を発表。アメリカの国防総省は公式ツイッターで「アメリカ軍の兵士、パートナー、当該地域での同盟国を保護するためにあらゆる手段をとる」と発信した。
アメリカの国防総省のツイートによると、攻撃は現地時間午前1時半ごろに発生。十数発のミサイルがイラクに駐留するアメリカ軍や有志連合の基地に対して発射された。ツイートでは、「ミサイルはイランから発射されたことは明らかで、少なくとも2カ所のイラク国内のアメリカ軍や有志連合が駐留する基地を狙ったものだ」と指摘した。
アメリカ軍は3日、イラクの首都バグダッドを空爆し、イランのソレイマニ司令官らを殺害。それ以降、イランとアメリカの緊張が高まっていた。朝日新聞によると、イランのザリフ外相は7日、アメリカのCNNのインタビューに対し「イランへの武力攻撃となり、我々は報復する」と強調。イラン国会は7日、アメリカの国防総省を「テロ組織」に指定する法案を可決した。
共同通信によると、イランの国営メディアはミサイル攻撃後の8日、アメリカの同盟国に対しても、各国の領土がアメリカ軍による攻撃に使われた場合、イランの反撃の標的になると警告する声明を発表した。
影響は金融市場にも広がっている。日経平均は8日午前から一時600円以上下落した。



イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃
 イランが司令官殺害の報復と宣言
2020年1月8日:BBC

米国防総省は7日夜、イラク国内で米軍が駐留する少なくとも2カ所の空軍基地が、十数発の弾道ミサイルで攻撃されたと発表した。ドナルド・トランプ米大統領が「何もかも大丈夫だ!」とツイートする一方で、イランのジャヴァド・ザリフ外相は「我々はエスカレーションを望んでいない」とツイートした。
イラク革命防衛隊は現地時間8日午前1時半(日本時間同7時半)ごろの攻撃について、トランプ氏の命令で3日にイラク・バグダッドでイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官が殺害されたことへの報復だと宣言。「アメリカのテロ軍に基地を提供したすべてのアメリカの同盟国に警告する。イランに対する攻撃行為の出発点となるあらゆる領土は標的になる」と表明した。国営通信イラン・イスラム共和国放送(IRNA)が伝えた。
米国防総省によると、少なくともアル・アサドとアルビルの2カ所で、米兵の駐屯施設付近が攻撃を受けた。被害状況は明らかにされていない。
イラク軍によると、イランが発射した弾道ミサイルは計22発。アル・アサド基地を狙った17発のうちは2つは不発で、アルビル基地を狙った5発はいずれも有志連合軍の本部を狙っていたという。ロイター通信によると、イラク軍はイラク人の犠牲者はいないと話しているという。
これに対してイラン革命防衛隊のラメザン・シャリフ報道官は、自分たちのミサイルがアル・アサド基地の「35カ所」に当たったと表明。国営テレビで放送された集会で、「アメリカ人たちは急ぎ緊急集会を開いた。まずはトランプが演説すると言ったが、その直後の演説は中止すると発表した。我々の言い分を間違いなく受け取ったに違いない」と述べた。
トランプ大統領は攻撃の第一報から約4時間たった米東部時間7日午後9時45分ごろ、ツイッターで「何もかも大丈夫だ(All is well)! イランからイラクにある2つの軍事基地にミサイルが発射された。被害者と損傷の把握が進んでいる。これまでのところ、順調だ! 我々は世界のどこより最強で装備万全の軍隊を持つ! 私は明朝に発言する」と書いた。
これに先立ち国防総省は声明で、「7日午後5時半(米東部標準時)ごろ、イランはイラク国内のアメリカ軍や連合軍の施設に対して、十数発の弾道ミサイルを発射した」と発表した。「イラン国内から発射されたのは明らかで、アル・アサドとアルビルで、米軍と連合軍の人員が宿泊するイラク軍基地を標的にした」という。
国防総省はさらに、「我々は、初期の戦闘被害評価を行っている。イランの脅しや行動に対応してここ数日、国防総省は我々や強力国の人員を守るため、あらゆる適切な措置を講じてきた。どちらの基地も、イラン政権がこの地域の米軍や資産を攻撃するつもりだという兆候から、厳戒態勢を敷いていた。状況と対応を検討するにあたり、我々はこの地域におけるアメリカの人員と協力国と同盟国を守り防衛するため、あらゆる必要な措置をとる」と表明した。
アル・アサド基地は近年では過激派「イスラム国(IS)」掃討作戦の拠点となった同基地の駐屯施設には、約1500人の米軍を始め多国籍軍の兵士が宿泊している。
アルビル基地は現地部隊の訓練に使われており、米陸軍は昨年9月、「13カ国の軍関係者と民間人が計3600人以上」拠点としていると明らかにした。
ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は攻撃の第一報から間もなく、「イラクの米施設が攻撃されたという情報を承知している。大統領は報告を受け、状況を詳しく注視しており、国家安全保障担当チームと協議している」とコメントを発表した。
トランプ大統領のツイートに先駆けて、イランのザリフ外相は8日早朝にツイッターで、「イランは国連憲章第51条にのっとり、相応の手段で自衛権を行使した。我々の市民や政府幹部に対する卑怯な武力攻撃が発せられた基地を、標的にした」と書いた。外相はその上で、「我々はエスカレーションや戦争を望んでいないが、あらゆる攻撃に対して自衛する」と主張した。
このツイートは、事態沈静化を呼びかけるイラン側のシグナルだと受け止められている。
BBCのジェレミー・ボウエン中東編集長は、ザリフ外相のツイートについて「区切りとなる線を引こうとしていたのだと思う。これが自分たちの最終的な行動で、国際法に沿ったものだと言おうとしていたのだろう。(中略)外相とイランは両国の軍事力の不均衡は重々承知している。それだけに、ボールをアメリカ側のコートに打ち込んで、アメリカに『事態をさらにエスカレートしたいのかどうかは、あとはそちら次第だ』と伝えようとしたのだと思う」と話した。

イラク首相の反応

イラクのアデル・アブドルマフディ首相は攻撃について、8日午前零時を過ぎて間もなくイラクから警告を受けたと明らかにした。ソレイマニ将軍殺害への対応として、イランが攻撃を実施した、もしくは間もなく実施するという警告だったという。首相によると、イランは米軍の所在地のみを標的にすると連絡し、具体的な場所は明らかにしなかった。これと同時にイラク政府は米政府から、ミサイルがアンバール県のアル・アサド空軍基地とアルビル県のハリール空軍基地がミサイル攻撃を受けていると通知があったという。
その上でアブドルマフディ首相は、「あらゆる主権侵害や領土への攻撃を拒絶する」と強調。現在の危機は「壊滅的な全面戦争の危機」で、イラクと地域と世界全体を脅かしていると警告した。
一方で、イラクの強力な親イラン派武装勢力のカイス・アル・ハザリ司令官は、まずはイランがソレイマニ将軍の暗殺に対応した今、将軍と共に死亡したイラク武装勢力のアブ・マフディ・アル・ムハンディス副司令官の暗殺に対応しなくてはならないとツイートした。

イランの政府首脳は

イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「世界の横暴な者たちと戦う準備はできている」と述べた。イラン革命の前触れとなった1978年のコム抗議を記念する集会で発言した。
ハメネイ師は、ソレイマニ将軍の「殉教は我々の革命の活力を世界に示した」と言い、米軍基地への攻撃について「昨夜は連中の顔を平手打ちしてやった」と強調。集まっていた群衆は、「アメリカに死を」という合言葉を繰り返した。
さらに最高指導者は、「対決という意味では、こうした軍事行動だけでは不十分だ。大事なのは、合衆国の腐敗した存在が終わることだ」と付け足した。
イラン報道によると、同国のハッサン・ロウハニ大統領は閣議で、米軍は中東から追い出されるという見通しを示した。ロウハニ氏はアメリカについて「お前たちはソレイマニの手を体から切り落とした。お前たちの足は、この地域から切り離される」と述べたという。
ロウハニ大統領はツイッターで8日午後、「ソレイマニ将軍はイスラム国、アルヌスラ、アルカイダなどと英雄的に戦った。将軍がテロと戦わなければ、欧州各国の首都は今頃とんでもない危険にさらされていたはずだ。その彼の暗殺に対する我々の最終回答は、この地域からすべての米軍を追い出すことだ」と書いた。
BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は、「イランの究極的な目標は米軍を中東から追い出すことだ。なので、これでおしまいというわけにはいかないだろう」と指摘する。

トランプ氏はすぐには演説せず

攻撃を受けて、トランプ大統領が国民に対してテレビ演説をするのではないかと憶測があったが、ホワイトハウスは今晩の演説はないと表明した。
消息筋によると、大統領の側近たちが演説原稿を整えていたという。
米報道によると、7日深夜の時点でマイク・ポンペオ国務長官やマーク・エスパー国防長官、マイク・ペンス副大統領はすでにホワイトハウスを後にしたという。
米連邦航空局(FAA)は、アメリカの民間航空各社に対して、イラン、イラク、ペルシャ湾、オマーン湾の上空の飛行を禁止した。「今後も引き続き、国家安全保障当局と連携し、米航空各社や海外の民間航空当局と情報共有していく」とコメントを出した。
レバノンを拠点とするアル・マヤディーン・テレビによると、アル・アサド空軍基地への攻撃は、ソレイマニ司令官がイランの出身地に埋葬された数時間後に実施された。さらにその直後に、アルビルへの攻撃が行われたという。
イラン・ケルマンで行われたソレイマニ司令官の埋葬では、押し寄せた群衆が折り重なるように倒れ、少なくとも50人が死亡し、200人が負傷した。
このため、埋葬は予定から遅れて行われた。参列者が口々に「アメリカに死を」、「トランプに死を」と叫ぶなか、イラン政府幹部たちは、あらためて復讐の誓いを繰り返した。
イラン革命防衛隊のホセイン・サラミ総司令官は、「殉教者カセム・ソレイマニは死んだ今こそますます強力だ」と群衆を前に強調した。

各国の反応は

ボリス・ジョンソン英首相はイランによる攻撃を非難すると共に、「ただちに事態の沈静化を追求する」よう呼びかけた。英下院で答弁した首相は、「イランはこのような無謀で危険な攻撃を繰り返すべきでない」と述べた。
さらに首相は、「我々が把握できる限り、アメリカ側に死者はなく、イギリスの人員にも負傷はなかった」とし、「中東におけるイギリスの国益保全のためできる限りのことをしている。英艦ディフェンダーとモントローズは厳戒態勢を敷き、ペルシャ湾の海上輸送を護衛する姿勢だ」と説明しした。
ドミニク・ラーブ英外相は、英米など連合国の部隊が駐屯していたイラク国内の基地をイランが攻撃したことを、英政府として非難するとコメント。「こうした無謀で危険な攻撃を繰り返すのをやめて、それよりも緊急に事態沈静化につとめるようイランに呼びかける」と強調した。
「中東における戦争はダエシュ(イスラム国への蔑称)やその他のテロ組織を利するだけだ」とラーブ外相は述べた。
フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は、「フランスはあらためて(イスラム国に対する)連合の同盟国や協力国との連帯を示し、イラクの主権と安全保障を重視する姿勢を表明する」と述べた。さらに、「暴力の連鎖は終わらなくてはならない。フランスは断固として、緊張緩和に向けて働いていく。我々は全当事者に連絡と取り合い、自制と責任ある行動を促している」と強調した。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合(EU)は、イラクとの核合意を救うため「あらゆる努力をいとわない」と述べ、中東における武器の使用中止を呼びかけた。
一方で、シリア外務省はイランと「全面的に連帯」していると表明し、「アメリカの脅しや攻撃を前にした」イランの自衛権を認めるとコメントした。国営シリア・アラブ通信が伝えた。
シリア外務省はさらに、「アメリカの無謀な政策や、その行動を決定する傲慢な物の考え方のせいで起きている事態の結果は、すべて米政権の責任だ」と批判した。
ロイター通信によると、アラブ首長国連邦(UAE)のスハイル・マズルーイ・エネルギー産業相は、「同盟国のアメリカと、隣国のイランの関係がまぎれもなくエスカレートした。中東での緊張悪化は最も望ましくないことだ」と話した。

イラク駐留米軍は

イラクの米軍施設攻撃に先立ちトランプ大統領は、イラクに駐留する米軍の撤退はイラクにとって最悪の事態となると牽制(けんせい)していた。
イラク議会は5日、ソレイマニ司令官がバグダッドで殺害された事態を受け、駐留米軍の国外退去を求める決議を採択していた。
この後、米国防総省が撤退に応じるかのように思える、イラク首相宛の書簡が流出。米軍は、協議のための下書きが誤って送付されたものと説明している。
イラクには約5000人の米兵が駐留している。
英外務省はBBCに対して、「現地の状況を確認しようと急いでいる。我々が最優先するのは、イギリス人の安全だ」と話した。
ベン・ウォレス英外相はソレイマニ司令官の殺害を受けて、中東に配備する英海軍や軍ヘリコプターに臨戦態勢をとるよう指示したと説明していた。

どうやってここに至ったのか

以前から悪化を続けていたイランとアメリカの関係は、今月3日のソレイマニ司令官殺害によって一気に先鋭化した。
イラクの海外作戦展開を担当するコッズ部隊を長年指揮したソレイマニ将軍は、国内では国民的英雄として扱われていたものの、アメリカ政府は米兵数千人を死なせたテロリストと呼び、アメリカに対して「切迫した」攻撃を計画していたと殺害理由を説明した。
イランが「厳しい復讐(ふくしゅう)」を誓うと、トランプ大統領は「もしかすると不相応な形で」反撃に応えると発言。将軍は「化け物だった。もう化け物じゃない。死んだ」と非難し、「大きい攻撃を計画していた。こちらにとって悪い攻撃を。誰も文句を言える筋合いじゃないと思う」と述べていた。

イラクの立場は

イランは隣国イラクで様々なシーア派武装勢力を後押ししている。ソレイマニ司令官が殺害された際も、まさにそうした武装勢力の幹部と一緒だった。
その一方でイラクは、アメリカとも同盟関係にある。イスラム教スンニ派のISとの戦いを支援するため、数千人の米軍が今もイラク駐留を続けている。しかし、イラク政府はソレイマニ司令官の殺害について、アメリカの行為は両国間の合意を逸脱したものだと批判している。
イラクのアブドルマハディ首相も、米軍が首都バグダッドでソレイマニ司令官を殺害したことに反発し、「イラクの主権を傲慢に侵害し、国の尊厳をあからさまに攻撃した」と非難していた。
(英語記事 Iran attack: US airbases in Iraq hit by ballistic missiles / Reactions to Iran's attack on US)



イラン報復、米軍基地攻撃
ミサイル十数発、イラク2カ所に
―トランプ大統領演説へ
2020年01月08日:時事通信

ソレイマニ司令官の遺族を弔問するイラン最高指導者ハメネイ師
=テヘラン、最高指導者事務所が3日提供(AFP時事)

 【ワシントン、ベイルート時事】イランは8日、革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことに対する報復として、イラクにある駐留米軍基地2カ所を弾道ミサイル十数発で攻撃した。米側によると、米兵に死者はいなかったとみられるが、死傷者の有無によっては、米国によるイラン本土攻撃も考えられる。トランプ米大統領は8日午前11時(日本時間9日午前1時)に演説し、イランへの対応策を表明する。
 トランプ氏はこれまで「米軍基地や米国人を攻撃すれば、ためらうことなく美しい最新鋭兵器をイランに投入する」などと警告してきた。それにもかかわらず、イランが弾道ミサイル発射という直接的な攻撃に踏み切ったことで、報復合戦の激化は避けられない。トランプ政権の一方的な核合意離脱から悪化の一途をたどる米イラン関係は、より危険な段階に入った。

イランからイラク駐留米軍基地に向けて発射されるミサイル=イランプレスが8日提供(AFP時事)

 イランの革命防衛隊も、多数の地対地ミサイルを発射したと明らかにした。作戦名は「殉教者ソレイマニ」。声明では、米軍が駐留する国々に対し、米軍に協力すれば「標的となり得る」と警告した。最高指導者ハメネイ師は8日、「軍事行動では不十分だ。米国は戦争や分断、破壊を引き起こしており、この地域は米国の存在を受け入れない」とけん制した。
 CNNテレビによると、イランはミサイル攻撃実施を事前にイラク政府に伝えていた。イラク側から情報を入手した米軍は、着弾までに兵士らを防空壕(ごう)などに避難させることができたという。事実であれば、イランが緊張激化に歯止めをかけるため、米兵に被害を出さないよう配慮した可能性が高い。イランのメディアは「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」と伝えたが、国内向けの政治的宣伝とみられる。



トランプ氏の対イラン反応は
「めちゃくちゃ」 慶大教授
2020年1月8日:朝日新聞

中山俊宏・慶応大教授(国際政治学)
 イランの報復攻撃に対し、トランプ米大統領はツイッターで「今のところ万事よし」と投稿した。攻撃を受けた国のトップの反応としてはめちゃくちゃだ。
 トランプ氏の中東政策の核はイスラエルとサウジアラビアで、もともと明確な対イラン政策があるわけではない。イランとの核合意から一方的に離脱し、経済制裁を強化するなど強硬な姿勢をとり続ける大きな理由は、オバマ前政権の成果を否定したいためだ。強固な支持基盤である、親イスラエルのキリスト教福音派も意識した可能性がある。
 それだけに、ソレイマニ司令官の殺害が、イラン国内にこれほどのインパクトをもたらすとは考えていなかったのではないか。当初はイランの報復に対して52カ所を攻撃すると警告していたトランプ氏も、一転して態度を軟化させている。事態の悪化を望まないという、イランへのサインだ。
 11月に米大統領選を控え、トランプ氏はウクライナ疑惑をめぐる自身の弾劾(だんがい)裁判から国民の意識をそらしたい面もある。民主党の一部からは、攻撃がこのためだったという批判も出ている。証明のしようがないが、そうだとするとトランプ氏は成功したと言える。(聞き手・鎌田悠)

「戦争求めてない」はずが
司令官殺害、トランプ氏の誤算

 トランプ米政権が、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したことで、米国とイランの軍事的衝突の可能性が高まっている。トランプ大統領は「戦争を止めるための行動だ」と訴えたが、イランは報復を宣言。「出口戦略」がないまま、両国は引くに引けない報復合戦に突き進むのか。
 「私の指示で、米軍がテロリストの首謀者を抹殺する完璧な作戦を実施した」
 3日、フロリダ州マイアミの教会。「USA」の大合唱で迎えられたトランプ氏はキリスト教福音派の支持者らに、ソレイマニ司令官殺害の成果を誇った。
 しかし、トランプ氏のトーンは民主党などを攻撃する時のような激しさは無く、抑制的だった。「我々は戦争を求めていない。イランの体制転換も求めていない」とも述べた。
 この日は、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)も電話による記者会見で、「戦争を始めるためではなく、止めるための行動だ」とトランプ氏の言葉を引用し、「イランと無条件で対話する用意があり、平和的な解決を求めている」と発言。国務省高官も「数百人もの米国民の生命を救うための措置だった」と述べ、殺害はイランへの宣戦布告ではないと強調した。
 トランプ政権がこうした姿勢を取る背景には、米国民の多くが戦争に反対し、トランプ氏自身も望んでいないという事情がある。米国では泥沼化したイラク、アフガニスタン戦争の影響で厭戦(えんせん)気分が根強くあり、トランプ氏も前回の大統領選から「バカげた終わりなき戦争を終わらせる時だ」と、米兵の帰還を公約に掲げてきた。再選を目指す11月の大統領選を控え、その姿勢は強まっている。
 米国が一方的に核合意から離脱したことに反発するイランは昨年6月、米国の無人機を撃墜したが、この時にトランプ氏は報復攻撃を実行の10分前に中止させた。サウジアラビアの石油施設が昨年9月に攻撃された際も、米国は「イランの犯行」と断定しつつも報復攻撃をしなかった。
 皮肉にも、報復がなかったことが、イランが支援する武装組織による米軍側へのロケット弾攻撃などにつながった可能性がある。だが、昨年12月27日に米国民がイラク国内のロケット弾攻撃で殺害されると、トランプ政権は対応を一転させ、空爆を開始。さらに、同月31日に在バグダッド米大使館が親イラン派デモ隊に囲まれ、壁などに放火されたことにも反応した。
 2012年にリビア・ベンガジの米領事館が襲撃され、米大使らが死亡した事件をめぐり、共和党側は当時のオバマ政権を厳しく批判してきた。オバマ政権との違いを対比したがるトランプ氏は、「ベンガジの真逆だ!」とツイッターに投稿し、在バグダッド大使館への攻撃を見過ごさない姿勢を強調。その後、ソレイマニ司令官の殺害に踏み切った。
 ただ、ソレイマニ司令官の殺害は、もともと本格的な対米衝突を望んでいなかったイランを追い込み、想定以上のリスクを背負った可能性がある。イランのラバンチ国連大使は3日、米CNNの取材に「戦争行為だ」と反発し、報復の「軍事行動」に出ると宣言。ホワイトハウス元当局者は「トランプ氏は、イランがここまで激しく反発するとは予想していなかったのではないか」と話した。
 今後、衝突は収束できるのか。ブッシュ(子)、オバマ両政権で、中東問題を担当した経験を持つ民主党のスロトキン下院議員はツイッターで、両政権もソレイマニ司令官の殺害を検討しながら、報復や長期的な対立を考慮し、見送ったと指摘。そのうえで、こう記した。「トランプ政権は異なる予測をたてた。この攻撃が引き起こす作用と反作用を考え抜き、海外にいる我が国の外交官や軍人、市民を守る用意をしていることが肝要だ」(マイアミ=渡辺丘、ワシントン=園田耕司)

殺害されたのは国民的英雄
 後戻りできない米国とイラン

 イラン革命防衛隊の要人が、隣国イラクで米軍によって殺害された。米国は「防衛措置」だと主張するが、イラン側は報復を予告。両国間の緊張は、後戻りできない水準に達しつつある。
 「攻撃の情報や兆候があれば、米軍や米国人の命を守るため、先制攻撃を行う。状況は変わっており、必要な措置を取る用意がある」。エスパー米国防長官は2日、記者団にこう語り、イランや親イランの武装組織に対し、先んじて攻撃をすることがあり得ると明らかにした。米軍が無人機を使い、イラン革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官を殺害したのは、わずか数時間後のことだった。
 米メディアによると、バグダッドの国際空港からソレイマニ司令官らを乗せて出発した車列に対し、米軍の無人機がミサイルを発射し、殺害したという。ソレイマニ司令官の居場所は、協力者や通信傍受、偵察情報などをもとに特定したとされる。

なぜ米軍はイラン司令官を殺害したのか

 イラクでは数カ月前から、米軍がロケット弾などによる攻撃を受けてきた。米国は「イランが主導している」として抗議していたが、昨年12月27日にイラク北部のキルクーク近郊であった攻撃で米国の民間人1人が死亡し、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まった。米側はイスラム教シーア派の武装組織に報復の空爆を行い、31日にはこの組織のメンバーらがバグダッドの米大使館の壁に放火したり、投石したりした。ソレイマニ司令官の殺害も、この延長線上にあるとみられる。
 元々、米国とイランの緊張を高めたのは、国際的な核合意から一方的に離脱したトランプ米大統領だ。イラン産原油の禁輸などの制裁を復活させ、軍事的な圧力も強めてきた。一方で、中東からの米軍撤退が持論のトランプ氏は、軍事衝突を避けたい側面もある。昨年6月に米軍の無人偵察機がイランに撃墜された際も、報復攻撃を始める直前に中止した。
 しかし、米国人に死者が出たことで、この態度も変わったとみられる。大統領選を前に「成果」を示したい狙いも透ける。12月31日には「我々の施設で命が失われたり、被害が出たりすれば、イランは全面的に責任を負う。彼らは極めて大きな代償を払うことになる! これは警告ではなく、脅しだ」とツイート。国防総省がソレイマニ司令官の殺害を公表する直前には、星条旗の画像をツイッターに投稿した。(ワシントン=渡辺丘)

「清貧の軍人」、イランの国民的英雄の素顔

 国民的英雄のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことで、イラン国民の反米感情に火がつくことは必至だ。
 ソレイマニ司令官は反米基調の保守強硬派の代表格だが、政権の腐敗とは無縁の「清貧の軍人」として市民からたたえられることが多い。対外融和路線の保守穏健派や改革派からの支持もあつい。政治的な影響力も大きい。イランの最高指導者ハメネイ師が昨年2月にシリアのアサド大統領と会談した際には、ザリフ外相を差し置いて同席していた。
 ソレイマニ司令官は1957年生まれ。20代でイラン・イラク戦争に従軍し、その後も、イラン東部の治安維持にあたるなどの活躍を経て、97年にコッズ部隊の司令官に任命された。司令官の名声と人気をさらに高めたのは、イラクやシリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦だ。革命防衛隊は両国に「顧問」として派遣され、ソレイマニ司令官が前線で作戦指揮にあたったとされる。イラン人記者は「イラン国民の多くは、ソレイマニ司令官がいなければ、ISがイラン国境に近づいていたと考えている」と語る。
 米国が神経をとがらせていたのはソレイマニ司令官の対外工作だ。司令官は、周辺国でのイランの影響力拡大を担ってきた。イラクではシーア派武装組織を支援するほか、一昨年の国民議会選挙にも親イラン勢力の結集を狙って介入したとされる。また、レバノンのシーア派組織ヒズボラへの武器供給などの支援でも中心的な役割を果たしてきたとみられている。(テヘラン=杉崎慎弥)

イラン、各機関が一斉に報復予告

 「米国は越えてはならない一線を越えた。イランは近い将来断固とした返答をする」
 ロハニ政権のラビイー報道官は3日の声明で、ソレイマニ司令官を殺害した米側にこう警告した。革命防衛隊の報道官も「我々の活動は新たな段階に入る。米国やイスラエルのつかの間の幸福は、嘆きに変わるだろう」とするなど、イランの各機関が一斉に報復を予告した。
 司令官の殺害で、米国とイラン側との軍事衝突につながりかねない局面に入った。ペルシャ湾を航行する米国艦船などへの攻撃の可能性も排除できない状況だ。また、米軍が駐留するイラクでは、イランが支援するシーア派武装組織が米軍に攻撃を仕掛ける恐れもある。実際、武装組織から「代償は米軍のイラク駐留の終わりだ」との声明が出ている。イラクのアブドルマハディ首相は「紛れもない主権の侵害だ。イラクで破壊的な戦争に火を付ける危険なものだ」とした。

米国からも懸念の声、原油市場は急上昇

 米国の識者からも懸念の声が相次いでいる。米外交問題評議会会長リチャード・ハース氏はツイッターで「イランによる(報復)攻撃や核合意違反の加速が予測できる」と指摘。「地域(もしかしたら世界)が戦場になる」とつづった。
 米シンクタンク・新アメリカ安全保障センターのイラン・ゴールデンバーグ上級研究員は、米ワシントン・ポスト紙に「米高官も標的になる可能性がある」と警告。「トランプ政権が次の段階を熟考し、地域戦争を避ける方法を知っているかは、かなり疑問だ」とした。
 緊張の高まりを受け、原油市場では、取引価格が急上昇した。国際指標の北海ブレント原油先物は3日、一時1バレル=69ドル台半ばとなり、前日比で5%値上がりした。3日のニューヨーク商業取引所でも、米国産WTI原油の先物価格が一時、前日比で4%超伸び、1バレル=64ドル台をつけた。外国為替市場では、安全資産とされる円を買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=107円台で2カ月ぶりの円高水準となった。
 2019年の原油市況は低迷が続き、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアが協調減産を続けている状態。今のところ需給がすぐに崩れる心配は少ない。ただ、中東は産油国が集中し、地政学的なリスクが原油価格に響きやすい。イランによる米国への報復などを警戒し、市場ではしばらく不安定な値動きが続く可能性がある。(ドバイ=高野裕介、ロンドン=和気真也)

     ◇

日本エネルギー経済研究所の坂梨祥研究理事

 米軍によるソレイマニ司令官殺害は、昨年12月末の米国大使館襲撃の報復であると同時に、大統領選を前に弾劾(だんがい)裁判を抱えるトランプ大統領が国民の関心を外にそらそうとした可能性もある。
 ソレイマニ司令官はシリアやイラクで過激派組織「イスラム国」と戦って勝利に導いたとされ、イランの現体制が頼りになる軍事指導者を失った衝撃は大きい。とはいえ、米国に直接報復する危険性はわかっており、どんな対抗手段が利益になるか考えているはずだ。
 軍事行動での報復なら、イエメンやレバノンで支援してきたフーシ、ヒズボラといった武装組織に親米国のサウジアラビアやイスラエルを攻撃させるという手段が考えられる。米国への攻撃をほのめかし、戦争を避けたい欧州諸国から何らかの支援を引き出そうとすることもありうる。今後の米イラン関係はイランの対応しだいで変わると考えられ、先行きは見通しにくい。

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東京外大の松永泰行教授

 殺害されたソレイマニ司令官は、部下が負傷すれば病院に駆けつけ、亡くなれば実家に駆けつけて家族とともに泣く、浪花節的な人物だった。国民からは英雄とみられ、大統領候補に推す声もあるほどだった。
 ただし、革命防衛隊員の殉職は彼らの本望とイランでは考えられている。過去に幹部がイスラエルに殺害された際も、イランは報復攻撃をしていない。今回の殺害が、イラン側の直接的な報復行動を呼び起こすとは考えにくい。
 一方、イラクでは政治情勢の混迷が続いている。米国にとって今回のソレイマニ氏殺害は、バグダッドの米国大使館を襲撃した民兵の背後にいるとみられるイランへの報復だった可能性があるが、イラク国内の混迷を深めるだけだ。「米軍が好き放題やっている」とイラク人の反米感情が高まるおそれもある。トランプ政権がイラクをどうしたいのかは見えず、米国の中東政策の迷走を示している。(聞き手・佐藤達弥)



(社説)
米国とイラン 武力の応酬、即時停止を
2020年1月9日:朝日新聞

 世界を巻き込む紛争に陥るか否かの縁である。米国とイランはこの事態の重さを認識し、報復の応酬をただちに停止しなくてはならない。
 イランが、隣国イラクにある米軍の駐留する基地2カ所をミサイルで攻撃した。米軍の空爆による精鋭部隊司令官の殺害に対する報復だとしている。
 1979年のイラン革命に伴う断交以来、両国の対立は続いてきたが、これほど直接的な武力行使に発展した例はない。大国間の無益な全面衝突は何としても避けなくてはならない。
 イランでは、司令官を追悼する儀式が営まれ、反米世論が渦巻いた。指導部は国民感情も考慮して報復に踏み切ったとみられるが、一方で「戦争は求めていない」(外相声明)と抑制したい姿勢も垣間見える。
 冷静に考えるべきだ。80年代のイラン・イラク戦争の下での苦しい生活を、国民は記憶している。新たな戦乱と窮乏の道は誰も望んでいない。米国との衝突をここで確実に抑えることが賢明なのは明らかだ。
 ここまで事態が悪化した最大の責任は、米トランプ政権にある。司令官を殺害した空爆についての説明はいまも不明瞭なままで、法的根拠が見えない。
 そもそもイランの核をめぐる国際合意から一方的に離脱した経過を顧みれば、危機を生み出したのは米国自身だ。これ以上無謀な軍事行動を重ねるなら、米国には国際秩序の破壊者の烙印(らくいん)が押されるだろう。
 この危機の下でも国連安保理が機能しないのは、ゆゆしい事態である。とりわけ常任理事国である英仏中ロは、中東の緊迫に伴う経済市場の動揺や、過激派組織の活発化を防ぎたい共通の利害があるはずだ。国際世論を明示するうえでも安保理の行動を見せるべきだ。
 今回の米国のふるまいは、過激派組織「イスラム国(IS)」掃討を含む、国際的なテロ対策にも冷や水を浴びせた。
 イラクには掃討作戦に加わっている米以外の国々の軍部隊も駐留しているが、司令官殺害を狙った米軍の空爆は事前に知らされていなかった。そうした国々は急きょ、部隊を他国に移すなど対応に追われた。
 自国の思惑を優先し、他国にとっては危険が高まる一方的な軍事行動も辞さない。そんな米国の「同盟軽視」は、ここでも各国を悩ませている。
 安倍首相は11日から予定していた中東訪問を延期するかどうかの検討を始めた。だが、中東海域への自衛隊派遣は「方針に変更はない」(菅官房長官)という。事態の急変に伴うリスクなどの説明もしないままで国民の理解が得られるはずもない。



中東に原油頼る日本、
国益重視で米イランに自制促す
 海自派遣は方針堅持
2020年1月8日:毎日新聞

安倍晋三首相=2020年1月8日午前9時55分、川田雅浩撮影

 イランが8日、弾道ミサイルでイラク駐留米軍の基地を攻撃し、米国とイランの対立はさらに緊迫の度合いを増した。双方とも「戦争は望まない」と主張はするが、報復の連鎖が断ち切られる道筋は見えていない。

同盟国米国、伝統的友好国イラン双方に配慮

 イランによるイラクの米軍駐留基地に対する攻撃を受け、日本政府は8日、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)関係閣僚会合を開催した。安倍晋三首相は、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確に情報提供を行う▽現地の邦人保護に全力を挙げる▽関係国と連携し、あらゆる外交努力を尽くす▽不測の事態に備え、万全の態勢を取る――の4点を指示した。
 日本政府は米軍によるソレイマニ氏殺害について論評を避けている。同盟国の米国と、伝統的な友好国であるイランの双方に配慮しているからだ。今回のイランによる攻撃に関しても、菅義偉官房長官は8日の記者会見で、直接的な評価をせず、「中東地域が緊迫の度を高めていることを深く憂慮している」と述べるにとどめた。安倍首相は8日夕、首相官邸で記者団に「さらなる事態の悪化を避けるため、あらゆる外交努力を重ねたい」と語った。

会談するイランのハッサン・ロウハニ大統領(左)と安倍晋三首相
=首相官邸で2019年12月20日、川田雅浩撮影

 日本は原油輸入の8割以上を中東に依存しており、中東情勢の緊迫化は国益に直結する。外務省幹部は「イランの攻撃は基地のどこを標的にするか冷静に判断し、事態をエスカレートさせない意図を感じる」と分析した上で、「被害状況と米国の対応を注視しなければならない」と話した。

首相中東歴訪延期調整で自衛隊に不満「われわれだけ行くのか」

 政府は11~15日に予定していた安倍首相の中東3カ国訪問を延期する調整に入った。菅氏は記者会見で「現地の情勢を見極めながら判断したい」と語った。
 一方で、菅氏は海上自衛隊の中東派遣については「現地の情勢を見極めつつ、準備に万全を期したい」と述べ、現時点で方針に変更はないことを強調した。自衛隊幹部は「今回の事案だけで派遣の判断は変わらないだろう」としつつ、首相の中東訪問が延期の方向で調整されていることについて「自分は行かないで、自衛隊にだけ行けということなのか」と不満を漏らした。【鈴木一生、田辺佑介】



【主張】
イランが報復攻撃 最悪の事態回避に全力を
2020年1月9日:産経新聞

 米国によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害を受け、イランがイラクの米軍駐留基地をミサイル攻撃した。
 予告していた「報復」である。中西部アサド空軍基地と北部アルビルの基地の2拠点に弾道ミサイルが撃ち込まれた。
 米国とイランの対立は、本格戦争に突入するかどうか岐路に差し掛かった。
 最悪の事態は何としても回避せねばならない。
 米軍は言うまでもなく「世界最強」である。だが、イランはレバノンやシリアなどにシーア派武装組織を抱え、ゲリラ戦を仕掛けることができる。戦火が中東全域に広がりかねない。
 シリアでは周辺国や民族が複雑にからみあって内戦が継続し、難民が止まらない。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の復活も警戒が必要だ。イラクではすでに反米感情が表面化した。中東は混乱の極みにある。
 地域への浸透を図るロシアと中国の動きも気がかりだ。ロシアはシリア内戦に介入して影響力を強めた。昨年暮れ、中露はイランと合同軍事演習を実施した。米国が戦火で疲弊し、国民が湾岸地域への関与に忌避感を強めれば、中露は喜ぶに違いない。
 中東は、原油や天然ガスの供給地であり、日本は8~9割を依存する。戦乱は世界経済への大打撃だ。本格戦争となった場合、痛手は余りに大きい。
 日本をはじめ関係各国は、憎み合う米国とイランに自制を求めるだけでなく、イランを取り巻く重要課題に積極的に取り組み、両国の理解を求めるべきだ。
 一つは、核合意が有名無実化したイランの核問題である。イランはひそかに核開発を進め反体制派の指摘で表面化した。ここで生じた疑念を払拭し得る取り決めが将来的には必要だ。
 米国がソレイマニ司令官殺害で提起したのは、司令官の指揮下、イランが支援する各地のシーア派武装組織の脅威である。北大西洋条約機構(NATO)もこの点で、今回の米戦略を支持した。
 残念なのは、米政府の説明不足である。「(殺害で)世界が安全になった」(ポンペオ国務長官)では言葉不足だ。国連などを通じ、国際社会を説得しようという姿勢を欠く。肝心なのは、言葉でその正当性を示すことだ。



(社説)
中東情勢緊迫 自衛隊派遣の見直しを
2020年1月10日:朝日新聞

 中東情勢が大きく変化しているのに、既定路線に従って自衛隊派遣に突き進むことが、緊張緩和に資するのか。政府はいったん立ち止まり、派遣の是非から検討し直すべきだ。
 米軍によるイランの革命防衛隊の司令官殺害と、それに報復するイランのミサイル攻撃。イラクを舞台にした両国の武力の応酬は、トランプ米大統領が、さらなる攻撃はしない考えを声明で示し、最悪の事態は当面、回避された。
 しかし、トランプ氏は追加の経済制裁を科す方針も示しており、両国の対立がさらに深まる恐れはぬぐえない。イラクやシリアなどで、親イランの武装組織が米軍関連施設などを攻撃する可能性もある。衝突の火種が消えたわけではない。
 昨年末、国会でのまともな議論もないまま、安倍政権が中東海域への自衛隊派遣を閣議決定した時とは、前提となる現地情勢が明らかに変わっていると言わざるをえない。
 にもかかわらず、政府は新たなリスクをどう評価し、備えるのかの説明もないまま、派遣方針に変わりはないと繰り返している。河野防衛相はきのう、米国とイランの軍事衝突について「そのようなことは起きないだろう」と語った。
 ホルムズ海峡やペルシャ湾を活動範囲からはずしていることで、危険度は低いと判断しているのか。菅官房長官も6日のテレビの報道番組で、イランが自衛隊の活動に「理解は示している」とし、「(心配は)していない」と言い切ったが、認識が甘くはないか。
 日本は米国主導の「有志連合」には参加しないが、米国の同盟国である。米国への高まる敵意が日本に向かわない保証はない。トランプ氏は声明の中で、北大西洋条約機構(NATO)に対し「中東により関与するよう求める」とも述べた。安全保障関連法が施行された今、現地に日本の護衛艦がいれば、何らかの協力や支援を求められる事態もありうる。
 この地域に原油の供給の大半を依存する日本が今なすべきことは自衛隊派遣ではあるまい。イランと友好関係にある立場を生かし、関係国の意思疎通をはかる外交努力の徹底こそ、地域の安定に役立つはずだ。
 安倍首相はきのう、記者団に「(米国の)自制的な対応を評価する」としたうえで、今後も「外交努力を尽くす」と語った。今週末からのサウジアラビアなど中東3カ国歴訪を予定通り実施するのであれば、事態を悪化させぬよう、米国、イラン双方に一層の努力を求める立場を明確にし、国際社会に発信する場とすべきだろう。



【主張】米報復自制 危機回避へ警戒を怠るな
2020年1月10日:産経新聞

 トランプ米大統領が、イランによるイラク駐留米軍への弾道ミサイル攻撃に対し、軍事的報復はしないと表明した。
 「イランは態度を後退させたようだ」とし、新たな経済制裁で圧力をかけ続けると強調した。
 報復の連鎖はひとまず回避された。だが、全面衝突の危機が去ったわけではない。米国の自制表明を受け、事態収拾へ国際社会は速やかに動かなければならない。
 トランプ氏は同時に、イランを「有力なテロ支援国家で、核開発を進めて文明社会に脅威を与えている」と改めて非難した。
 イランの最高指導者ハメネイ師は、攻撃後の演説で「米国は中東から去れ」と述べた。両国の敵対関係は全く変わっていない。
 今回の攻撃は国内向けには、殺害された革命防衛隊の司令官の「仇(あだ)討ち」を果たしつつ、全面戦争に至らぬ規模となるよう慎重に実施されたとの見方が強い。
 イラン指導部は数日前から米軍の拠点を標的とすると予告しており、米側は犠牲者はなかったと発表した。イランは直後に「反撃しなければ、対米攻撃は続けない」との書簡を送ったという。
 当面、懸念されるのは、イランが支援する中東各地のシーア派武装組織の動向である。殺害された司令官は対外工作の中心人物で、これらの組織の打撃は大きい。
 そうした武装組織が独自の報復の手段としてテロを実行することも警戒せねばならない。その場合、標的は中東地域、米軍拠点とはかぎらない。
 イランの指示の有無にかかわらず、武装組織のテロがあれば米国との関係は極度に緊迫する。イランは自制だけでなく、こうした武装組織を抑えねばならない。
 重大な問題は、米国とイランとの間に、パイプや話し合いの場がないことである。双方が「戦争は避けたい」といっても、計算が狂い、予期せぬ展開となる可能性は否定できない。
 国連安全保障理事会は、米国など拒否権を持つ常任理事国が当事国の場合、機能しない。仲介役を担いうるのは、イラン核合意の当事国でもある英国、フランス、ドイツのほか、日本しかない。
 安倍晋三首相は米国の自制表明を受け、「地域の情勢緩和と安定化のために外交努力を尽くす」と強調した。事態収拾へ向け、日本の存在感を示してもらいたい。



米イラン対立 抑制的対応を収拾につなげよ
2020年1月10日:読売新聞

 米国もイランも、戦争を望まない点では一致している。抑制的な対応が衝突回避につながることを、両国の指導者は認識したはずだ。これを機に緊張緩和を進めねばならない。
 イランがイラクの米軍駐留基地を攻撃した。トランプ米大統領は対抗措置として、イランに追加制裁を科すと表明した。「軍事力は使いたくない」と述べ、報復攻撃には否定的な考えを示した。
 米軍の高い能力を誇示していたトランプ氏が、あえて経済制裁を選んだのは、攻撃の応酬が大規模紛争に発展する事態を避けたいからだろう。賢明な判断である。
 イランは、革命防衛隊の有力司令官が米軍に殺害されたことへの報復として、イラクの基地に弾道ミサイル十数発を発射した。
 イランが直接、米軍に軍事攻撃を仕掛けるのは、1980年代のイラン・イラク戦争の終結後、初めてだ。国民に英雄視されていた司令官の殺害を受け、イラン指導部は国内向けに強硬姿勢をアピールする必要に迫られていた。
 ミサイルは基地の駐車場などに着弾し、米国人の死傷者は出なかった。イラン外相は、報復措置が完了したと発信した。トランプ氏の怒りに油を注ぎ、全面衝突に陥ることがないよう、イラン側は周到に計算したのではないか。
 最悪の事態はひとまず免れたが、対立と衝突の火種は残る。
 イランは、イラクやレバノン、イエメンなどで、親イラン派の武装組織を支援し、中東での存在感を増している。これらの組織が米軍やイスラエル、サウジアラビアなどを攻撃し、再び緊張が高まることが懸念される。
 イラクでは、米国とイランが影響力を争う。イラクの親イラン勢力は、駐留米軍の撤退を求める。過激派掃討を担う米軍が撤退すれば、治安悪化は避けられない。
 そもそも、米イラン対立が激化した発端は、米国がイラン核合意から一方的に離脱し、対イラン制裁を復活させたことにある。
 2015年の核合意は、核兵器製造につながるイランのウラン濃縮を抑制し、国際原子力機関(IAEA)の監視下に置く点で一定の成果を上げてきた。合意に加わった英仏独中露の5か国は合意維持の必要性を強調する。
 トランプ氏は新たな核合意を結ぶべきだと主張するが、圧力強化でイランに譲歩を迫る戦術は行き詰まっている。日本や欧州諸国が仲介役として果たす役割は大きいはずだ。関係国との協議を深め、打開策を探ってもらいたい。


海自へ10日に中東派遣命令
 防衛相、護衛艦と哨戒機
2020年1月9日:東京新聞

 河野太郎防衛相が10日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対し、中東海域への派遣命令を出すことが分かった。複数の防衛省関係者が9日、明らかにした。防衛省設置法の「調査・研究」を根拠にした情報収集が任務。米イランによる全面的な武力衝突はひとまず回避されたが、緊張緩和が見通せない中での派遣となる。
 哨戒機は11日に、たかなみは2月上旬にそれぞれ日本を出発。活動海域は、オマーン湾やアラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側の公海に限定する。日本と友好関係にあるイランへの配慮から同国と接するホルムズ海峡やペルシャ湾は対象にしない。
(共同)

河野太郎防衛相



軍拡競争 「宇宙軍」は映画だけに
2020年1月10日:東京新聞

 お正月映画で「スター・ウォーズ」が公開されている。迫力のある戦闘シーンが魅力の一つだが、現実の世界でも今、宇宙空間の軍事利用が注目されている。「邪悪な企て」ではないのか。
 新年早々、政府は航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改称する方向と報道された。米国は昨年十二月に宇宙軍を発足させている。中国やロシアも宇宙空間の軍事利用に力を注いでいる。インドは昨年三月、軌道上の衛星を破壊する実験に成功し、「宇宙大国」の仲間入りをしたと発表した。
 宇宙軍は流行の先端のように見えるが、実情は違う。
 インドの実験後、米航空宇宙局(NASA)は「実験で四百個もの宇宙ごみが発生し、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士に危険が及びかねない」と非難した。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると二〇一七年現在、地球軌道を飛ぶ人工衛星は四千四百基を超えるという。軍事衛星もあるが、衛星利用測位システム(GPS)や気象などの地球観測、通信といった実用衛星である。人工衛星も宇宙ごみとの衝突を避けるためにしばしば、軌道の変更を迫られている。
 スター・ウォーズで見るような戦闘が行われれば、大量の宇宙ごみが発生し、宇宙空間の利用が難しくなる。先進国であればあるほど、望まないシナリオである。しかも、米スペースX社は現在、四万二千基もの小型衛星の打ち上げ計画を実行している。通信だけでなく、地球観測や軍事にも利用される。もはや衛星を一基一基、撃ち落とすという発想が時代遅れになっている。
 ハリウッド俳優から米大統領になったレーガン氏は、一九八三年にいわゆるスター・ウォーズ計画を発表。米国と旧ソ連は宇宙軍拡を競った。これが九一年のソ連崩壊につながったともされる。米国も財政悪化に苦しんだ。映画を見て思い出すべきは、戦闘シーンではなく、軍拡競争の愚であろう。
 国連は五九年に宇宙空間平和利用委員会を設置し、宇宙条約などが締結されている。条約は平和利用が原則だが、通常兵器で非侵略という目的であれば制限がない。
 日本でも六九年に「宇宙の平和利用」を衆議院が全会一致で決議している。政府は国連の場などを通じて、宇宙条約の平和利用を強化し、軍拡競争の流れを止めることに力を注いでほしい。



<社説>イラン米に報復攻撃
 戦争の回避へ歩み寄りを
2020年1月10日:琉球新報

 イランが、イラクに駐留する米軍の空軍基地を弾道ミサイルで攻撃した。イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に対する報復だ。全面的な武力衝突になれば、中東全体や同盟国を巻き込んだ戦争に発展する恐れがある。
 トランプ米大統領は日本時間9日未明の声明で、イランによるミサイル攻撃で米国人に死者が出なかったことから、軍事的な報復はしないと表明。事態のエスカレートをひとまず回避した。一方で、新たな経済制裁を科して圧力をかけ続けるとも述べた。
 中東情勢は今後の展開が見通せない危機が続く。報復の応酬に完全に終止符を打つため、米国、イラン双方に理性的な対応が求められる。特に、トランプ氏の衝動的な政策決定で緊張を極度に高めてきた米国の自制が必要だ。
 トランプ氏はイラン核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開させた。離脱はオバマ前政権を否定するパフォーマンスであり、国家戦略に欠けた自己中心的な政策決定を象徴している。
 トランプ氏は司令官殺害を「多くの米国民の殺害を計画していた」として正当化している。だが、根拠となる情報は何も示していない。イラク戦争でも米国は「大量破壊兵器」の存在を侵攻の口実としながら、実際には見つからなかった。トランプ氏の主張も説得力に乏しい。
 ソレイマニ氏は最高指導者ハメネイ師の最側近だった。国家の要人を狙った暗殺は、宣戦布告と取られてもおかしくない。殺害の現場はイラク・バグダッド空港近くだが米国はイラク政府の同意を得ずに空爆を決行しており、イラクの主権も侵害している。国際法違反のテロ行為だ。
 安倍晋三首相は今月中旬に予定していた中東訪問を取りやめることを一度は検討していたが、再調整している。日本政府は海上自衛隊の中東派遣を閣議決定しており、菅義偉官房長官は「準備に万全を期したい」と予定通り実施する方針を示している。自衛隊員を無用な危険にさらす中東派遣は中止すべきだ。
 イラン側は米国の同盟国に対しても、各国の領土が米国による攻撃に使われた場合は反撃の標的になると強調している。米軍基地がある沖縄にとって対岸の火事ではない。イランと米国の軍事衝突が起きれば、沖縄の安全が脅かされ、基幹産業である観光にも打撃を与えかねない。日本は双方に対話を促す外交で存在感を発揮すべきだ。
 イラン政府は対米報復攻撃直後、米国が反撃しなければイランは攻撃を継続しないという書簡を出していた。司令官を殺害され国内の反米感情が沸点に達する難しい状況にありながら、戦争回避に向けたメッセージを送っている。対話へと歩み寄る時だ。
 米国が再びイラン核合意の枠組みに復帰するよう、国際社会が協調して平和構築を働き掛けていく必要がある。

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