ささやかな、市民的異議申し立て…

今日(1月8日)、1・8新宿駅西口緊急行動、DTのイラク攻撃・自衛隊派遣反対の街頭行動に行く予定だ。
DTとイラクの応酬のエスカレートは、「第三次世界大戦」につながりかねない。ボクは、ABEのようにノホホンとはしていられないし、愚かな選択をするDTを許すわけにもいかない。市民として、最低限の異議申し立て行動の責務を果たそうと思い、新宿に向かいたい。


イランのソレイマニ司令官殺害は
「最も極端な選択肢」だった。
トランプ大統領の決断について米紙報道
「司令官が米国の外交官と軍人を攻撃する計画を進めていたため、
防衛措置として攻撃した」という
トランプ政権の説明にも疑義が生じている。
2020年1月6日:ハフィントンポスト

司令官殺害、トランプ氏が決断するまで 国防総省に衝撃
 米軍が、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したことをめぐり、米メディアは相次いで、トランプ米大統領が殺害を急に決め、政権内にも驚きが広がった様子を伝えている。「司令官が米国の外交官と軍人を攻撃する計画を進めていたため、防衛措置として攻撃した」というトランプ政権の説明にも疑義が生じている。
 イラクでは数カ月前から、米軍などがロケット弾攻撃を受けており、米側は親イラン派の武装組織が行っていると抗議してきた。昨年12月27日、イラク北部のロケット弾攻撃で米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まった。
 ニューヨーク・タイムズによると、この攻撃を受け、米軍幹部らはソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ氏に提示した。国防総省は歴代大統領に非現実的な選択肢を示すことで、他の選択肢をより受け入れやすくしており、今回もトランプ氏が選ぶことは想定していなかったという。
 実際、トランプ氏は昨年12月28日に殺害計画を拒否し、親イランの武装組織に対する空爆を承認した。だが、数日後に在バグダッド米大使館が親イラン派に襲撃される様子をテレビで見たトランプ氏はいらだち、その後に司令官殺害を決断した。国防総省幹部らは衝撃を受けたという。
(朝日新聞デジタル 2020年01月05日 21時41分)



米のイラン司令官殺害
 湾岸危機あおる身勝手さ
2020年1月7日:毎日新聞

 米国のイランへの攻撃や威嚇でペルシャ湾岸情勢が緊迫している。米国は自制し緊張緩和に動くべきだ。
 トランプ米政権がイラン精鋭部隊の司令官をイラクで無人機攻撃により殺害した。米国人への攻撃を準備していたというのが理由だ。
 イランは直ちに軍事的な「報復」を宣言した。核合意の履行も全面的に停止すると発表した。ウラン濃縮を「無制限」に進める方針という。
 トランプ大統領はイランが報復攻撃すれば反撃すると威嚇している。危険極まる一触即発の事態である。
 一義的な責任は行き当たりばったりの軍事行動をとった米国にある。
 トランプ政権は「差し迫った脅威への自衛手段」と攻撃の正当性を強調する。だが、脅威の詳細を明らかにしていない。米議会から法的根拠への疑問が出るのは当然だろう。
 今回の攻撃にイラクは「主権侵害」と反発し、議会は米軍撤退を求めた。イラクの承諾なしに武力行使したなら国際法違反の疑いが生じる。
 なにより問題は、トランプ氏の短絡的ともみえる意思決定だ。
 米メディアによると、攻撃は、昨年末にトランプ氏が、イラクの米大使館を親イランのデモ隊が襲撃する映像を見て激怒し、命じたという。
 司令官殺害の選択肢はトランプ氏もいったんは見送っていたため、国防総省は衝撃を受けたとされる。ウクライナ疑惑の弾劾訴追から関心をそらす狙いではとの臆測もある。
 中東に3000人規模の米軍を増派する決定や、反撃目標にイランの重要文化施設を含める方針は、むしろ反米感情をあおりかねない。
 慎重な判断に基づく戦略的な決定だったのか。疑問が残る。
 中東の緊張をこれ以上高めてはならない。米政府は外交的解決に乗り出す必要がある。
 イランは冷静に対応すべきだ。ホルムズ海峡を封鎖したり、イスラエルなど米国の同盟国を攻撃したりすれば、中東は大混乱に陥る。
 本格的な核開発に突き進めば、米国を批判する中国やロシアもイランから距離を置くだろう。孤立する状態を自らつくるべきではない。
 日本は中東で情報収集する護衛艦を予定通り派遣するという。緊張緩和に向けて双方に自制を促す努力こそ最優先にすべきではないか。



米イラン緊張 強硬策の応酬に歯止めかけよ
2020年1月7日:読売新聞

 米国とイランの緊張が一段と高まった。両国の指導者が強硬措置を競い合い、相手への武力行使を警告している。双方が冷静さを取り戻し、解決の糸口を探らねばならない。
 対立激化のきっかけは、米軍がイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官を空爆で殺害したことだ。
 司令官が率いる部隊は、イラクやシリア、レバノンで、親イラン武装組織を育成・支援し、中東でのイランの影響力拡大を支えてきた。司令官がイラクでの活動中に殺害されたことは、その役割の大きさを物語っている。
 イラクでは、米大使館が昨年末にデモ隊の襲撃を受けた。米軍の駐留する基地が攻撃され、米国人が死傷する事件もあった。事態を放置すれば、イラク駐留米兵や米外交官らの被害が増大する、という米政府の懸念は理解できる。
 トランプ米大統領は、自らが殺害作戦を指示したとし、司令官は「テロの首謀者」だとして正当性を強調した。ジョンソン英首相は「彼の死を悼むことはない」と同調し、マクロン仏大統領も米国との連帯を表明した。
 問題は、司令官殺害がイランやイラクの反米感情を煽あおり、情勢悪化を招くリスクを、トランプ氏がどこまで認識していたかだ。11月に大統領選を控え、国民に「強い大統領」をアピールする狙いを優先したのなら批判は免れまい。
 イラクの議会が米軍撤退を求める決議を採択したことに対し、トランプ氏は制裁を警告した。
 米イラク関係の悪化と米軍撤退は、イランを利するだけだ。トランプ氏は、イラクとの関係を立て直し、中東の安定に向けた包括的戦略を提示する責務がある。
 イラン指導部は、国民から英雄視されていた司令官が殺害されたことを受け、報復を明言した。革命防衛隊が支援する武装組織などを使い、中東に展開する米軍部隊を攻撃する可能性がある。
 報復の連鎖は事態をエスカレートさせ、不測の衝突につながりかねない。イランは地域大国として情勢を不安定化させる行動を自制すべきだ。ホルムズ海峡で民間船舶が標的となり、安全が脅かされる事態があってはならない。
 イランが2015年の核合意の規制に従わず、無制限でウラン濃縮を行うと宣言したことも看過できない。核兵器開発に乗り出せば孤立はさらに深まるだろう。
 中東の混乱は原油高を招き、世界経済に悪影響を及ぼす。日本を含む全ての関係国が重大さを認識し、事態収拾に努めるべきだ。



【主張】
米イラン緊迫 大規模紛争を封じ込めよ
2020年1月7日:産経新聞

 米国が、イランの最高指導者ハメネイ師の直属組織であるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を攻撃し、殺害した。
 イランは欧州などとの核合意から逸脱して保有ウランを無制限に濃縮すると宣言し、両国間の緊張が一気に高まった。
 これが大規模な紛争に発展するようなことになれば、中東にとどまらず、世界全体の平和と安全が深刻な打撃を受けるだろう。両国はもちろん、日本を含む国際社会が紛争の抑制に全力を挙げなくてはならない。
 レバノンやシリア、イラクなどで、親イラン武装組織が米国やイスラエルに対してテロを含む挑発を繰り返している。これらを背後で支援してきたのがソレイマニ司令官が率いる「コッズ部隊」とみられている。
 昨年暮れにはイラク駐留米軍が武装組織の攻撃を受け、米国人軍属も死亡した。米国にすれば、国民の安全を守るためのやむを得ない措置として司令官の殺害に踏み切ったのだろう。
 見逃してはならないのは、トランプ米政権が今回、米国を脅かす行為をもはや容赦しないという姿勢を明確にしたことである。
 イランが支援する武装組織によるテロの拡散は、中東の大きな不安要因である。航行の自由を脅かすタンカー攻撃や船舶拿捕(だほ)でもイランの関与が指摘されている。
 米国は、軍隊の一種であるイラン革命防衛隊を「テロ組織」と指定している。イランがなすべきは米国に対する威嚇ではなく、各国の武装組織との絶縁である。タンカー攻撃などと無関係ならそれを証明しなくてはならない。
 憂慮するのは、ソレイマニ司令官が国民に英雄視され、殺害への報復として戦争の危険が高まったことだ。ロウハニ大統領は報復を公言し、トランプ大統領も激しい攻撃で応じると表明した。
 イランは昨年5月以来、段階的に核合意の逸脱を表明しており、今回の措置は5度目である。合意は破綻の瀬戸際ともいえる状況だ。国際社会はイランに対して、報復の自制と核合意復帰を求めなければならない。
 英国とフランス、ドイツの3首脳はイランに合意の順守と暴力行為の停止を求める共同声明を出した。米国、イランの双方と強いつながりを持つ日本が担うべき役割は大きい。仲介役として積極的に関わっていくべきだ。



(社説)米中対立と日本経済
 「頂点への競争」目指すとき
2020年1月4日:朝日新聞

 今世紀に入り、世界経済はグローバル化とデジタル化の道を突き進んできた。ここ数年、その先端で鮮明になってきたのが米国と中国の対立だ。
 2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以来、政治体制の違いは大きくとも、経済活動では国境を越えた融合が進んできた。その構図がいま揺らいでいるかに見える。米中貿易紛争は小康状態になったとはいえ、根底にある覇権争いは、産業や技術の分野に及んでいる。

 ■冷戦とは異なる様相

 最先端の第5世代通信規格をめぐって中国企業の華為技術(ファーウェイ)を排除するといった動きがどこまで広がるのか。米中いずれでもビジネスを展開する企業にとって、神経をとがらせる状況が続いている。
 日本でも、昨年末の臨時国会で外国為替及び外国貿易法の改正が全会一致で決まった。安全保障上の重要技術が海外に流出するのを防ぐため、外資による日本企業への出資規制を強める内容だ。今春には国家安全保障局に経済班が置かれる。
 もとより経済と安全保障は無関係ではない。外為法は米ソの冷戦時代にも活用された。だが中国は国際分業に組み込まれながら経済規模を拡大し、一部では先端技術も手にした。かつての冷戦とは様相が違う。
 いくら対立が先鋭化しても、米中の経済圏が完全に分かれるわけではないだろう。昨年末の合意で、中国から米国に輸入されるスマートフォンなどの関税引き上げが見送られた。極端な障壁は両国の利益を損なうという現実の反映だ。
 米中が深く結び付きながら覇権を争う。その中で、両国に次ぎ世界3位の経済規模を持つ日本は、どう振る舞うのか。
 安全保障の中核にかかわる部分では、米国との協調が必要だろう。しかし安保の論理を経済の領域に野放図に広げたり、中身を問わずに米国に追従したりするのは避けなければならない。政治と経済の関わりについて、その場しのぎではない視座を持つ必要がある。

 ■何を問題とするのか

 市場経済においても政府の役割は重要だ。景気の安定化と適正な再分配に加え、健全な競争環境を保ち、教育や基礎研究、公共財を提供する。
 グローバル化やデジタル化は国民経済全体としては恩恵が大きいが、海外との競争に敗れたり、機械に仕事を奪われたりといった人々も生む。変化のスピードが速ければ、政府が関与すべき課題も多いはずだ。
 試金石の一つは、革新的なサービスと同時に、国際的な寡占と富の偏在を生んでいる米中の巨大IT企業にどう臨むかだ。いたずらな外資たたきは生産的でないし、米中対立の時代だからといって、米国企業は認め中国企業は排除するといった単純な選択も解ではない。
 何を許容し何を問題とするのか。まず格差の拡大と独占に歯止めをかけねばならない。巨大企業へのデータの集積が人権を損ねないかとの懸念も大きい。政府との関係が不透明な中国企業でより深刻だが、企業の国籍を超えた課題でもある。
 公正な競争を保ち再分配の財源になる課税の抜け穴を防ぐ。個人情報の悪用は許さない。そうした視点こそ、経済への政策的介入の基準になるべきだ。
 企業活動に制約を加えると、日本での投資が減り、成長が鈍る恐れはないだろうか。米国はもちろん、政治的自由が制約されている中国も民間経済の自由度は高い。後れをとることにならないのか。

 ■舞台を広げるために

 米ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス氏は著書『貿易国家のジレンマ』の中で、「底辺への競争」と「頂点への競争」を対比している。前者は、貿易自由化に伴い、企業をひきつけようと労働や環境の基準を切り下げる競争が起きるという仮説だ。ただし実証的には確認されていないという。
 一方で、カリフォルニア州がより厳格な環境基準を求めたような「頂点への競争」も起こりうるという。厳しい基準に適合できることは、企業の競争力の源になるからだ。
 日本経済は現時点では相応の規模を持つ。米中のはざまで「底辺への競争」の不安に溺れるのではなく、新時代の「頂点への競争」を切り開くことこそ目指すべき道ではないか。
 社会的公正と人権の確保を土台にし、経済成長を実現する。それを支えるのは、政治的には自由と民主主義であり、経済的には豊かな購買力が国民に幅広く行き渡り、自発的で多様な選択が行われる社会である。
 そうした営みは自国内では完結し得ない。「頂点への競争」の舞台を広げるには、同様の価値観を共有するできるだけ多くの人々と、国境を越えて協調することが必要だ。デジタル課税やデータ保護などでは、欧州を中心に芽が育ち、日本も小さくない役割を果たしている。その流れを、さらに加速させたい。



年のはじめに考える 米国は再び輝けるか
2020年1月6日:東京新聞

 米国が米国らしさを取り戻し、再び輝くことができるでしょうか。十一月三日の米大統領選には世界中が注目しています。
 ◇    ◇ 
 四年間のトランプ政治に審判が下されます。トランプ氏は二〇一六年の前回大統領選で、白人労働者層の支持を集めました。グローバル化の恩恵にあずかるどころかそのしわ寄せを受けて、失業といった辛酸をなめた人々です。
 顧みられることの少なかったこの人たちに光を当てたのはトランプ氏の功績でした。
◆トランプ政治に審判
 半面、国境の壁の建設といった反移民色の濃い政策は、少数者への差別・偏見意識を解き放ち、社会の分断を深めました。
 米国は民主主義、人権、法の支配という国家原理に加え、自分とは違う他者を認める寛容性が持ち味です。自由と平等をうたった独立宣言に代表される建国の精神と理念が多民族国家の米国を束ねてきました。
 おせっかいで独善的な面もある米国ですが、こうした美点が世界の人々を引きつける訴求力になってきました。
 ところが、トランプ氏は建国の精神を軽んじる言動を続けています。束ねを失えば国民の結束力は弱まります。
 外交でもおよそ生産的ではありません。米国主導の国際秩序を自ら壊し、同盟国・友好国との関係を損ねる。国益を考えているとは思えない行動を連発しています。
 トランプ氏の弾劾訴追に発展したウクライナ疑惑では、外交の私物化があらわになりましたが、下院公聴会で証言に立った国家安全保障会議(NSC)の元高官は、外交スタッフが置かれた深刻な状況を明かしました。
 多くの高官やスタッフが誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)や脅しを受け、身の危険を感じて辞めていくというのです。この元高官の自宅にも殺害すると脅迫電話がかかってきたり、自宅玄関のドアを何者かがハンマーでたたいていった、と隣人から聞いたそうです。
 政権から有為な人材が去っていき、大統領のイエスマンばかりが幅を利かせるようになったら、米外交はガタガタになります。
 トランプ氏が第一に優先してきたのは、支持層に受ける政策です。万人のための政治ではなく、お得意さま向けの政治です。それは、ひとえに再選のため。統治よりも選挙キャンペーンを続けてきたと言った方がいいでしょう。
 そのおかげなのかトランプ氏の支持率は四割ほどでほとんど変動しません。米国の景気が良いことが強みになっていますが、それにしても盤石の支持基盤です。
◆結束がカギ握る民主党
 再選戦略は前回選挙の再現。東部から中西部に広がる「ラストベルト」(さびついた工業地帯)がトランプ氏の主戦場です。前回、ここを制して当選をたぐり寄せました。
 対する民主党の候補者選びは混戦です。二月三日の指名争い正式スタートまで一カ月。最近の支持率によると、バイデン前副大統領(77)がトップを走り、サンダース上院議員(78)、ウォーレン上院議員(70)の二人がこれに続き、インディアナ州サウスベンド市のブティジェッジ前市長(37)が先行の三人を追いかけています。
 党内では穏健派のバイデン氏は白人労働者層に人気があり、トランプ氏の支持層と重なります。ウクライナ疑惑でトランプ氏がバイデン氏の捜査をウクライナ政府に要求したのは、そんな事情も計算に入れてのことでしょう。
 サンダース、ウォーレン両氏はともに左派です。民主社会主義者を自称するサンダース氏と、大企業や富裕層への大増税を打ち出したウォーレン氏の急進的な主張に穏健派はついていけません。
 政権奪還を目指す民主党にとって、左派と穏健派の融和を図って結束しないと勝算はありません。
 前回、候補者指名争いでサンダース氏はクリントン氏に敗れはしたものの、予想外の健闘をみせました。ところが、サンダース氏を支えた若者たちを、クリントン氏は取り込めなかった。これも本選挙でトランプ氏に後れを取った大きな要因でした。
◆米国民が下す重い選択
 自分の足らざるところを補う人材を副大統領候補に据えて、幅広い支持を取り付けようという動きが出てくるでしょう。例えば、バイデン氏が指名されれば、リベラルで若者に人気のある女性のハリス上院議員(55)を副大統領候補に指名するというような。
 国際舞台で後退を続けるのか、それともリーダーの座復帰を目指すのか。
 米社会の分断を深化させるのか、それとも修復に動くのか。
 米国民はとても重い選択を迫られることになります。



中東は戦争に向かうのか?
米国によるイラン・スレイマニ司令官
殺害が意味するもの
2020年1月6日:Yahoo!ニュース

 米国がイラクでイランの革命防衛隊のクドス部隊のスレイマニ司令官を無人攻撃機のミサイルで暗殺したことで中東全域に緊張が高まっている。暗殺作戦について、トランプ大統領は声明を出し、「我々は戦争を止めるために行動した。戦争を始めるためではない」と述べたが、イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい報復を行う」と表明している。中東は新たな戦争に向かいかねない危機に直面している。
 トランプ大統領は「スレイマニは20年にわたってテロ活動に関わり、中東の安定を乱してきた。イランの革命防衛とクドス部隊は彼の下で、数百人の米国人の軍人や民間人を標的とし、傷つけたり、殺害したりしてきた。今回の措置はずっと前に行われるべきだった」と述べた。20年というのはスレイマニ司令官が1988年にクドス部隊の司令官に就任してからのことである。
 スレイマニ司令官を単にイランの軍司令官の一人と捉えると、今回の米軍による暗殺作戦の重大さを見誤ることになる。さらに、クドス部隊はイランの革命防衛隊の精鋭部隊とされるが、スレイマニ司令官が部隊を率いて、各地で戦っているわけではない。スレイマニ司令官はイラク、シリア、レバノン、アフガニスタン、イエメンなどイラン国外で、各地のシーア派の民兵組織に資金や武器、訓練を提供するというイランの対外工作を担っていた。
 スレイマニ司令官は最高指導者のハメネイ師と直接連絡を取ることができる唯一の軍人とされていた。つまり、ハメネイ師の下で、中東に広がっているシーア派勢力の統一戦線をつくり、それを統括するゼネラル・マネージャーのような存在ということである。
 クドス部隊はシーア派だけでなく、スンニ派であるパレスチナのハマスやイスラム聖戦などにも資金や武器を提供していた。部隊名「クドス」は「聖地エルサレム」のことであり、異教徒に占領されたイスラムの地を解放するという部隊の使命に沿ったもので、レバノン南部のシーア派組織ヒズボラと合わせて、イスラエルを挟み撃ちにする構図をとっている。
 トランプ大統領がいうように「20年間」のスパンで見れば、イランがイラクとともに米国の二重封じ込め政策のもとに置かれていた20年前と比べれば、現在、イランがイラク、シリア、レバノン、さらにイエメンで政治を左右する決定的な影響力を持ち、さらに湾岸へと影響力を強めている。それはすべて、スレイマニ司令官の功績といっても過言ではない。
 スレイマニ司令官は、イラクやアフガニスタンのシーア派民兵、レバノンのシーア派武装組織「ヒズボラ」、イエメンのシーア派組織「フーシ」を支援し、武器や資金を提供してきた。スレイマニ司令官の手腕と役割が最も影響力を示したのは、シリア内戦である。アサド政権は2012年から13年春にかけて、反体制派勢力、特に武装イスラム勢力の攻勢を受けて、危機に面していた。それが現在に至る攻勢に転じたのは、13年4月にレバノンのシーア派のヒズボラがシリア北部の要所クサイルの奪回作戦に参戦し、2カ月間の激戦で奪回してからである。その後、シリアにはヒズボラだけでなく、イラクやアフガンのシーア派民兵が参戦し、アサド政権軍の攻勢を担った。
 イランの国外でスレイマニ司令官の姿がメディアに出ることは特別な機会以外はないが、2016年12月初め、シリアのアサド政権軍がシリア北部の反体制勢力の拠点だったアレッポ市東部を制圧している最中に、スレイマニ司令官は制圧された地域の通りを歩いたり、イラクやアフガンのシーア派民兵たちに囲まれたりする様子がメディアに公開された。アレッポ東部の陥落はアサド政権の決定的な優勢と、反体制勢力の劣勢を印象付けた出来事だった。スレイマニ司令官が現地を訪れる映像が流れたのは、掃討作戦の主力をになったシーア派民兵を統率する同司令官の影響力を誇示する狙いとも見られた。
 イエメン内戦ではフーシは首都サヌアを制圧し、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が支援する暫定政権を圧倒している。昨年9月にはフーシによるサウジ国内の石油施設のドローン攻撃によって、サウジの石油生産の一日生産量の半分にあたる日量570万バレルが減少したとサウジ政府が発表した。世界の石油供給の5%に相当する。ドローン技術はイランの革命防衛隊から提供されたとの見方が強く、レバノンのヒズボラがドローンやミサイル発射でフーシを支援しているという見方もある。事実かどうかは分からないが、各地のシーア派民兵組織を束ねるスレイマニ司令官がいることで、シーア派組織間の連携は可能になる。スレイマニ司令官は一人の司令官というだけでなく、米国に対抗する手段と戦略を持った人物だったのである。
 トランプ大統領は声明の中で、スレイマニ司令官指揮下のクドス部隊が「20年にわたってテロ活動に関わった」と述べたが、この20年間に中東で起こったことを見れば、米国は中東に軍事的に関与したいくつかの重大な軍事的局面でイランの協力を得ている。
 まず2001年の9・11米同時多発テロの後に、米軍主導の北大西洋条約機構 (NATO)軍がアフガニスタンの北部同盟と協力して、過激派組織アルカイダを庇護していたタリバン政権を排除し、アルカイダの拠点を掃討したアフガニスタン戦争にイランは協力した。北部同盟にはアフガンのシーア派勢力も含まれ、イランは戦争前から北部同盟を支援していた。
 次は、2003年のイラク戦争後に米軍占領下で創設された統治評議会に参加したイスラム革命最高評議会やダワ党などシーア派組織は、旧フセイン体制時代にイランに拠点を置いていた。シーア派政治組織が米占領体制と戦後復興に参画したのは、イランの意図があったと考えるしかない。
 さらに2014年にイラクの第2の都市モスルが「イスラム国」(IS)に支配された後、シーア派民兵各組織はスレイマニ司令官のもとでIS掃討作戦を行う民衆動員部隊をつくり、米国が勧めたIS掃討作戦に協力した。2017年7月にイラク軍が米軍主導の有志連合による空爆の支援を受けて、ISが支配したモスルを制圧した時、シーア派民兵組織の民衆動員部隊も参加していた。
 当時、イラクの治安関係に近い人物と連絡をとったところ、「バグダッドにある民兵組織が集まる作戦本部は、イラク軍や内務省から独立していて、イラク政府の指令は受けない。その作戦会議を仕切っているのはスレイマニ司令官だ」という話を聞いた。
 今回、米軍による暗殺作戦でスレイマニ司令官と共に殺害されたイラク人の一人ムハンディス司令官は、民兵組織イラク・ヒズボラを率い、民衆動員部隊の副司令官で、スレイマニ司令官の右腕だった人物である。イラク・ヒズボラは2016年12月にスレイマニ司令官がアレッポの前線を訪れた時のビデオや写真にも登場する。ムハンディス司令官とイラク・ヒズボラは、イラクだけでなく、シリアでも、スレイマニ司令官の手足となっていたことが分かる。
 アフガン戦争も、イラクの戦後復興も、ISとの戦いも、いずれもイランにとっての利益でもあるが、それぞれの局面でイランの協力がなければ、米軍はその都度、より重大な困難に直面していたことは間違いない。イランの協力というのは、スレイマニ司令官の協力と言い換えてもいいだろう。イランで反米一辺倒の強硬派の宗教者たちが影響力を持つ中で、中東での対外政策ではハメネイ師直下のスレイマニ司令官が強い主導権を持っていたことが、局面に応じて米軍との協力が可能になった理由ともいえよう。
 トランプ大統領が「(クドス部隊が)20年にわたってテロ活動に関わった」というのは、そのような20年の経緯を無視したものである。オバマ大統領がイランの核開発問題で合意に進むことを決断したのも、中東で急激に影響力を増したイランと正常な外交関係を持たないままでは、イラクやシリアはもちろん、イスラエルやペルシャ湾岸を含む中東の安全保障を維持できないという情勢の変化があったとみるべきである。
 イラク、シリア、レバノン、イエメンという紛争地域で各地のシーア派勢力に対して圧倒的な影響力を持つスレイマニ司令官は、米国にとっては、中東での決定的な軍事的な危機回避のための最終的な交渉相手でもあった。その意味では、トランプ大統領は、彼がいつも強調する「ディール(取引)」の相手を失ったことになる。
 スレイマ二司令官なき今後の最大の不安定要因は、もし、イランで宗教的強硬派が主導して米国に対する報復が始まったら、歯止めが効かなくなることであろう。イランがすぐに直接的な報復に動かないとしても、米国の中東政策でイランの協力を得られず、逆に妨害を受けるとすれば、ただでさえ影響力を低下させている米国の中東政策は機能不全に陥ることになりかねない。
 スレイマニ司令殺害の後、駐イラク米国大使館はイラク国内の米国人に即時出国を勧告した。イランの政治的・軍事的政影響下にあるイラクで、米国や米国系企業・組織が安全に活動できるのかどうかは大きな懸念材料となろう。
 最大の謎は、トランプ大統領はなぜ、大きなリスクを冒してまでスレイマニ司令官を殺害したのかということである。暗殺の直接の理由について、大統領は声明の中で、「最近、一人の米国人が殺害され、4人の米軍人が負傷したロケット攻撃やバグダッドの米大使館への暴力的な攻撃は、スレイマニの指揮下で実行された」と書いている。それは昨年末から年始にかけて起こったことである。この経過は次のようなものである。
 ▽12月27日 米軍関係者が拠点としているイラク北部のキルクーク州の軍基地に対してロケット攻撃があり、米国人の請負業者一人が死亡し、米軍人4人が負傷した。
 ▽12月29日 米軍は報復としてイラク・ヒズボラの本部を含む3つの拠点を空爆し、25人の民兵を殺害した。空爆について、イラクのアブドルマハディ暫定首相は「イラクの主権を侵害するもの」と非難した。
 ▽1月2日 シーア派民兵組織への空爆に抗議して、デモ隊がバグダッドの米国大使館に押しかけて、投石し、入口に火をつけるなどした。イラク・ヒズボラの支持者と見られている。
 ▽1月3日 米軍は無人攻撃機をつかってバグダッド国際空港近くで車両を空爆し、スレイマニ司令官とムハンディス司令官らを殺害した。
 以上の経過を見れば、米軍の報復はいかにも性急で、過剰である。事態を収拾しようとする意思は全く感じられない。それもイラク・ヒズボラに照準を合わせたような報復である。この流れを見る限り、トランプ大統領と米軍にはスレイマ二司令官の暗殺計画が先にあったのではないかと勘繰りたくなるような展開である。トランプ大統領の意図や計算は分からないが、ものの弾みでこうなったというには、余りにも重大な出来事であろう。

川上泰徳 中東ジャーナリスト

元新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」など取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランスとして夏・秋は中東、冬・春は日本と半々の生活。現地から見た中東情勢を執筆。著書に新刊「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)「中東の現場を歩く」(合同出版)「イスラムを生きる人びと」(岩波書店)「現地発エジプト革命」(岩波ブックレット)「イラク零年」(朝日新聞)◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com



「イラン危機」
朝米非核化交渉にどのような影響与えるか
2020年1月6日:ハンギョレ新聞

膠着局面、長期化の可能性高い 
「中東の緊張の高まりで米国の朝鮮半島積極介入は困難」

 米軍によるイラン軍部の実力者ソレイマニ司令官殺害にともなう中東地域の緊張の高まりが、朝米非核化交渉にも影響を与えそうだ。
 「イラン事態」は朝米交渉にはあまり良いシグナルではないとの観測だ。中東地域の「一触即発」状況で、ドナルド・トランプ大統領の重心が中東に置かれざるを得ず、北朝鮮問題が後回しにされるのではないかという分析が出ている。韓東大学のパク・ウォンゴン教授(国際地域学)は、「中東全体の不安定性が高まり、米国が非核化など朝鮮半島の状況に積極的に介入することは難しくなるだろう」とし、「過去にも中東地域で緊張が高まる度に、米国はアジア地域については、現状維持を基調として管理してきた」と述べた。
 パク教授はしかし、米国の今回のソレイマニ殺害を北朝鮮に対する警告と見ることはできないと述べた。「北朝鮮とイランは違う。トランプ大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と関係が良好で、イランとはすでに全面戦争を宣言している状態のため、トランプ大統領は強硬政策を取るには北朝鮮よりもイランが良い相手だと見ているようだ」とし、「今回の事案を北朝鮮に対する警告と見ることはできない」と述べた。
 ただ、イラン事態で朝米対話の膠着局面が長引く場合、北朝鮮が強硬対応に出る可能性も排除できない状況だ。北朝鮮の金正恩国務委員長は最近、労働党全員会議で、米国の態度変化によって対応方向を変える可能性があると警告し、「新たな戦略兵器」にも言及している。
 韓国政府は、朝米対話のモメンタムを維持するために積極対応に出ている。外交部のキム・ゴン次官補は3日(現地時間)、ワシントンの米国務省庁舎でデイビッド・スティルウェル次官補と協議を行った。外交部は資料を発表し、「両次官補は韓米関係と同盟の懸案、両国関連地域の情勢など、相互の関心事全般について深く話し合った」と明らかにした。
 韓米はこの外交次官補協議を皮切りに、今月中に外相会談と北朝鮮核首席代表の協議も計画している。年初から様々な外交チャンネルを通じ、対北朝鮮政策の協力に乗り出している格好だ。パク教授は、「北朝鮮の全員会議で出た内容など、韓米間で論議することは多い」とし、「北朝鮮が『レッドライン』を超えないよう韓米の協力が必要だ」と述べた。
キム・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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