愚かなリーダーの愚かな選択…

昨日(1月5日)、東中野のキャラバンサライ包(パオ)に、古くからの仲間で「中村哲さんを偲んで“新春ジジイ放談”アフガニスタン料理を食べる会」というささやかな「会」を開いた。
ラグマン(スパイシーミートソース掛けうどん)、カバブ(マトン・ラム・心臓の串焼き)、ペシャワールのカラヒィ(マトンの辛くないスパイス煮込み)、ナン(チョッとチャパティ風)などをいただいて山梨県・勝沼のルバイヤートという思わせぶりな名前のワインを飲んだ。イラン人スタッフもいて、話題は自ずと中東情勢に…。
ボクは、中村さんが殺されたとき、9・11の2日前、アフガニスタンの英雄・マスードが暗殺されたことを思い出して不安になった。今回の米軍によるソレイマニ司令官虐殺もこの地域の大きな変動だけでなく、さらに大きな紛争へとつながる可能性があり、心配だ。
折も折、自衛隊小部隊がこの地域に派遣される。ボクには「やられ部隊」のように思えて仕方がない。自衛隊が攻撃されたら、本格参戦というシナリオが透けてみえるのだ。
DTやABEの愚かな選択を、第三次世界大戦につなげてはならない。


イラン司令官殺害
イランとアメリカの関係は
なぜここまで悪化した
2020年1月4日:BBC

イランの国民的英雄とされる精鋭部隊のカセム・ソレイマニ司令官を米軍が空爆で殺害したことに、イラン政府が「厳しい復讐(ふくしゅう)」を誓うなか、ドナルド・トランプ米大統領は3日、カセム・ソレイマニ将軍(62)の殺害は「戦争を始めるためでなく、止めるため」だったと述べた。
フロリダ州に自ら所有するリゾートで会見したトランプ氏は、「合衆国の軍は、世界随一のテロリスト、カセム・ソレイマニを殺害した空爆を完璧な精度で実行した」と話した。
一方で、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「(ソレイマニ司令官が)神のもとへと旅立っても、彼の道や使命は終わらない。しかし、彼の血、そして彼と共に昨夜殉教した者たちの血で手を汚した犯罪者たちには、厳しい復讐が待ち受けている」と表明した。
中東情勢の一大転換点とも言われるこの状況に至るまで、なぜアメリカとイランの関係はここまでこじれてしまったのか。1950年代にさかのぼって短く解説する。

【解説】 イランの選択肢は
 ソレイマニ司令官を殺害され
2020年1月5日:BBC








殺害されたソレイマニ司令官の影響力は中東全域に及んでいた。
写真は司令官の遺影を手にするレバノンのヒズボラ支持者

カセム・ソレイマニ司令官の暗殺によって、イランとアメリカの関係は、1979年に始まった米大使館人質事件以来の深刻な対立状態に陥った(文中敬称略)。
ソレイマニ殺害というドナルド・トランプ米大統領の決定によって、アメリカは自分たちにとって最も厄介だった敵の1人を取り除き、イラン・イスラム共和国の中枢に打撃を与えた。同時にこの攻撃は、ただでさえ緊迫して暴力がはびこる中東の情勢を悪化させる、危険なものだ。
バグダッド空港での殺害によって、両国は全面戦争へなだれ込むのではという懸念が浮上した。全面戦争になると決まったわけではない。アメリカもイランも、戦争は望んでいない。しかし、ソレイマニ司令官と、親イラン派イラク武装勢力幹部の殺害によって、わずかな計算違いさえもが致命的になりかねない危険が高まった。
イランは復讐を誓った。その危険は深刻に受け止めなくてはならない。ソレイマニはイラン政権の中枢にいたし、イランの強硬派にとっては頼みの綱のような存在だった。イラン強硬派は相応の仕返しを求めるはずだ。もしかすると、相応以上の仕返しを。

代理勢力

武器禁輸制裁を受けながらも、イランはロケット砲やミサイルなど最新式の軍備を備えてきた。しかし、米軍相手にそれを使って報復しようとすれば、イランは自分たちの立場を悪化させかねない。
アメリカによる戦争行為への報復として、たとえばペルシャ湾で米艦船を攻撃するなどの戦争行為に出れば、イランは壊滅的な反撃をアメリカから受ける危険がある。イランの石油精製所は湾岸地域にあり、アメリカが湾岸周辺に展開する強大な攻撃力のかっこうの標的になる。
イランの報復は、ソレイマニ自身が得意とした間接的戦術に従うことになりそうだ。いわゆる非対称的な戦闘。相手の正面玄関から攻撃するのではなく、横の窓から仕掛けるというやり方だ。
ソレイマニは多彩な民兵組織を揃え、潤沢な武器を提供した。アメリカと真正面から正攻法で戦えばイランは負けるしかないが、民兵組織を駆使することで、正面衝突に至らないまでも様々な選択肢が可能になる。
アメリカは今後、中東に展開する米軍部隊のどれが今、最も攻撃されやすい脆弱(ぜいじゃく)な状態にあるか点検するだろう。そのひとつは、シリアにいる小規模な部隊だ。
計算されたリスク
米政府はなぜ今、このタイミングでソレイマニを殺すことにしたのか。これは大きな疑問だ。
少なく見積もってもアメリカが2003年にイラクに侵攻してからというもの、ソレイマニはアメリカに脇に刺さった厄介なとげのような存在だった。イラクのイスラム教シーア派を支援し、訓練し、武装し、熟練した民兵組織が生まれるように手を施したのが、ソレイマニだった。そうやって組織された武装勢力は、アメリカとその同盟諸国に立ちはだかる、強力で容赦のない対抗勢力になった。
アメリカとイスラエル、そして西側諸国はもう何年も前から、ソレイマニの動向を注視してきた。以前にも攻撃対象になったこともあるだろう。
米軍が今度こそひきがねを引いたのは、プラスがリスクを上回るとトランプ大統領が判断したからかもしれない。国際社会からの孤立や経済制裁、そして国内で最近相次ぐデモによってイラン政府は弱体化している、よってソレイマニ殺害にイランが激高しても深刻な戦略的脅威にはならないと計算した可能性もある。
しかし、今回の暗殺が果たしてアメリカの首尾一貫した戦略の中にあてはまるのか、まったくはっきりしない。それだけに、トランプ政権の意図を決め付けるのは危険だし、間違っていることもあり得る。
ソレイマニはイラン国内では巨大な存在だった。イランの戦略を取り仕切る立役者だった。自分が殺された場合にはどうすべすという、対応を指示してあったかもしれない。
新年早々、新しい10年代の冒頭に起きたこの暗殺は、中東で新しい一里塚になり得る。これを機にまたしても、中東で流血沙汰が相次ぐ事態になりかねない。
イラン政府は今、ソレイマニ亡き後の対応を検討しているに違いない。国境を越えた中東全域でソレイマニが長年かけて築いてきた自分たちの地位は、今後も維持できるのだと、イランはまず示さなくてはならない。
(英語記事 Qasem Soleimani death: The response options open to Iran)


第三次世界大戦が現実に!?
米VSイランの深刻度
2020年1月5日:週刊朝日

 日本では正月気分も抜けきれないなか、世界では緊張が高まっている。米軍がイランの重要人物を殺害し、米国とイランの戦争の現実味が増しているのだ。「第三次世界大戦」のような大規模戦争につながりかねないとの懸念もあり、2020年はきな臭い幕開けとなった。

「もしイランが米国の人や施設を攻撃すれば、イランの52の重要施設を直ちに徹底的に攻撃する」

 トランプ米大統領は1月4日ツイッターでこう宣言した。空爆する準備は整っているとして、イラン政府に反撃しないよう圧力をかけるためだ。米大統領がツイッターで様々な相手に“脅し”をかけるのはいつものことだが、今回は深刻さが違う。

 今回の危機を理解するためには、米国とイランの長年の対立を理解しておく必要がある。1979年にイランの革命指導者ホメイニ師が親欧米だったパーレビ王政を打倒。欧米との関係が一気に悪化するなか、イランの首都・テヘランの米国大使館が過激派に占拠され、大使館員ら52人が1年以上にわたって人質となった。この事件をきっかけに米国とイランは断交し、双方に根深い不信感ができた。その後も、米国とイランはことあるごとに対立し、いまに至っている。

 トランプ大統領は今回攻撃するかもしれないとした重要施設数「52」は、人質事件の数を象徴していると説明。40年前の対立の原点がいまにつながっていることがわかる。

 40年間にわたって対立し、時には正規軍同士の局地的な戦闘もあったが、全面衝突は双方とも避けてきた。イランは人口8千万人超で、兵員数は予備役も含めれば100万人を超えるとされ、中東でも有数の軍事力を誇る。最新鋭の武器をそろえる米軍は空軍や海軍力で圧倒的に優位だが、地上戦ともなれば大きな被害が予想されるためだ。

 そのため正規軍同士の衝突はできるだけしないようにし、双方がそれぞれ支援する軍事組織が、イラクやシリアなどのイラン国外で戦ってきた。

 ところが今回は、トランプ大統領が空爆準備を宣言したように、全面衝突の危険性が高まっている。発端は、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したこと。日本での知名度は低い人物が、イランでは国民的な英雄だ。最高指導者のハメネイ師の側近ともされ、その存在感は大きかった。
 革命防衛隊は最高指導者に直属する精鋭部隊で、イラン国外での工作活動も行ってきた。イラクやシリア、レバノンやパレスチナなど中東各地で、軍事支援や戦闘活動を長年続けていた。標的は米軍だけではなく、イスラエルや過激派組織「イスラム国」(IS)など様々だ。その先兵となっていたのが革命防衛隊内のエリート組織「コッズ部隊」だった。

 ソレイマニ司令官は20年以上もコッズ部隊を指揮し、工作活動で成果を上げてきた。多くの一般市民が死亡する戦闘にも関わったとされる。米軍にとってはまさに「不倶戴天の敵」だが、ISへの戦闘では事実上共闘することもあるなど関係は複雑だ。ソレイマニ司令官はイラクの首相選びに介入するためイラクを何度も訪れるなど、その政治的手腕も注目されていた。

 こんな重要人物を、米軍はイラクのバグダッド国際空港の近くで1月3日未明に殺害した。乗っていた車両に無人機からミサイルを発射したとされ、同乗していたイラクのイスラム教シーア派武装組織の司令官らも死亡したとされる。

「われわれは戦争を止めるために行動した。戦争を始めるためにやったのではない」

 トランプ大統領は会見でこのように訴えた。ソレイマニ司令官は米国を襲うテロリストで、さらなる攻撃を計画していたとして、殺害の正当性を強調した。トランプ大統領はツイッターに星条旗の画像を投稿し、次のように書き込んだ。

「イランは戦争に勝ったことがないのに、交渉では負けたことがない」

 トランプ政権は、イランの核開発を制限する多国間の合意から2018年に離脱を表明するなど、強気の姿勢をとってきた。イランと交渉してきたオバマ前政権を批判し、自らは妥協しない強いリーダーだとアピール。星条旗も掲げ米国民の愛国心に訴えることで、支持率を上げる狙いがある。

 今回のタイミングでソレイマニ司令官を殺害したことについては、多くのメディアが今年11月に予定されている米大統領選との関連を指摘している。「ウクライナ疑惑」で米下院が昨年12月に弾劾訴追を可決し、支持率が伸び悩むなか、危機をあおることで求心力を高めようとしているという見方だ。
 もちろんイランも黙っていない。最高指導者ハメネイ師は、「米国は激しい報復を受けることになる」と発言。ラバンチ国連大使は、「殺害は戦争行為で、間違いなく激しい報復をする」と語った。イランも体制を維持するために国民の反米感情を利用してきた経緯があり、引くに引けない状況なのだ。

 緊張が高まるなか、米軍は3500人を中東地域に増派する方針だ。イラクにおいてイランが支援する軍事組織への攻撃も強化している。イラクの首都・バグダッドの米国大使館は3日、イラク国内の米国市民に直ちに国外退避するよう求めた。

 現在はイランの出方に関心が高まっている。報復を宣言した以上、何らかの攻撃をするとみられるが、全面衝突を避けるべく米軍への直接的な攻撃はしないとの見方が有力だ。これまで通り、支援する軍事組織を使ってイラン国外での戦闘を仕掛けていくようだ。第三次世界大戦のようなことは、すぐには起きないとみられている。

 ただ、歴史が物語っているように、突発的な衝突が大規模戦争につながることもある。「第三次世界大戦」を意味する言葉が、世界的に検索ワードの上位に一時入るなど、不安は根強い。

 もし大規模戦争ともなれば経済にも悪影響が出る。国際市場ではリスクを回避するべく株が売られ、安全資産とされる円が買われた。原油の流通に支障がでる可能性もあり、原油高も進んだ。

 日本は中東に原油や天然ガスなどエネルギーの大半を依存している。戦争で日本に原油や天然ガスを運ぶ航路が寸断されれば、大きな打撃を受ける。

「トランプ大統領は選挙に向けて支持を得るため、対決姿勢を強める可能性があります。日本市場では正月明けに株安や円高、原油高になりそうで、景気の先行きが不透明になります」(大手証券アナリスト)

 こんな危機的状況なのに、日本政府の対応は見えてこない。安倍晋三首相は4日、イランの情勢について記者団から問われたが、具体的な言及を避けた。イランとの太いパイプがあると自負してきただけに、危機にどう対処するのか問われる。
(本誌・多田敏男)


イラン司令官殺害は「戦争止めるため」と
トランプ氏 イランは「厳しい復讐」誓う
2020年1月5日:BBC

ソレイマニ司令官の棺を載せた車を大勢が取り囲んだ(4日、バグダッド)

イランの国民的英雄とされる精鋭部隊の司令官を米軍が空爆で殺害したことに、イラン政府が「厳しい復讐(ふくしゅう)」を誓うなか、ドナルド・トランプ米大統領は3日、カセム・ソレイマニ将軍(62)の殺害は「戦争を始めるためでなく、止めるため」だったと述べた。
4日未明にはバグダッドで、ソレイマニ司令官や同じ空爆で死亡したイラク人たちの葬列が始まった。イラクの旗を振りながら「アメリカに死を!」と叫ぶ人たちが、棺を載せた車に続いた。
ソレイマニ司令官の棺を載せた車がバグダッド市内を進んだ

これに先立ちフロリダ州に自ら所有するリゾートで会見したトランプ氏は、「合衆国の軍は、世界随一のテロリスト、カセム・ソレイマニを殺害した空爆を完璧な精度で実行した」と話した。
トランプ氏はさらに、「ソレイマニはアメリカの外交官や軍関係者に対する邪悪な攻撃を間もなく実施しようとしていた。しかし我々は、現行犯でそれを押さえ、あの男を終了させた」と述べ、「(ソレイマニの)恐怖の支配は終わった」と表明した。
報道によると、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップだったソレイマニ将軍は3日、イランが支持するイラクの民兵組織と共に車両でバグダッド国際空港を出ようとしたところ、貨物ターミナルの近くで米軍のドローン空爆を受けた。司令官はレバノンもしくはシリアから、バグダッドに到着したところだったという。
イラン革命防衛隊によると、複数のミサイルが車両2台の車列を直撃し、計10人が死亡した。
米国防総省は、「大統領の指示のもと、米軍はカセム・ソレイマニを殺害することで、在外アメリカ人を守るための断固たる防衛措置をとった」と発表した。
司令官の殺害によって、イランとアメリカの緊張は一気に激化すると懸念されている。米政府関係者によると、米軍は予防措置として兵3000人を中東に増派する方針という。
米国務省は、イラク国内のアメリカ人に「ただちに国外に退去するよう」警告した。


米vsイラン“一触即発”状態!
殺害された司令官は「対米テロ首謀者」
米大使館近くにロケット弾4発、
トランプ氏「イランが報復したら…」
2020年1月5日:夕刊フジ

 米国とイランの緊張がさらに高まっている。イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガーセム・ソレイマニ司令官が米軍に殺害された現場となったイラクの首都バグダッドで4日、米大使館近くにロケット弾4発が撃ち込まれたのだ。一方、米政府は「ソレイマニ氏=対米テロの首謀者」と認識しており、米国内にはドナルド・トランプ大統領の判断を支持する声も多い。トランプ氏は同日、報復への徹底抗戦を警告した。日本の左派メディアの「反米」報道だけでは、状況を見誤りそうだ。
 「米国に死を!」
 バグダッドで4日行われたソレイマニ氏の葬列の行進開始に合わせて、市民数千人が街頭で弔意を示す一方、こう反米色をあらわにした。
 こうしたなか、バグダッド中心部の米大使館近くなど3カ所に4日、ロケット弾計4発が撃ち込まれた。死者は確認されていない。犯行声明は出ていない。イランはイスラム教シーア派の大国だが、隣国イラクにもシーア派は多数いる。
 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐(ふくしゅう)」が待っていると米国に警告している。中東地域の米関連施設が攻撃目標となるとの見方が強い。
 これに対し、米国の理解は違う。
 トランプ氏は、攻撃に踏み切った根拠について、「ソレイマニ氏が、イラクとシリア、レバノン、中東にいる米外交官と米軍将兵を今にも攻撃しようとしているとの確度の高い情報があった」「攻撃は戦争を阻止するためだ。戦争を起こすためではない」「米国民を守るために、すべての措置を講じる」と声明(3日)で説明した。
 さらに、トランプ氏は4日のツイッターで、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告した。米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めている。
 日本の左派メディアは、ソレイマニ氏について「イランの国民的英雄」「ハメネイ師に次ぐナンバー2の実力者」などと伝えているが、これだけでは日本人をミスリードする危険性がある。
 米CNN(日本語版)は4日、ソレイマニ氏が率いた「コッズ部隊」を「米国からは外国テロ組織と見なされている」とし、「国防総省は、ソレイマニ司令官と指揮下の部隊が『米国や有志連合の要員数百人の殺害、数千人の負傷に関与した』としている」と伝えた。
 英BBC(同)も同日、「米政府からすれば、ソレイマニは大勢のアメリカ人を死なせてきた、血染めの張本人だった」と解説した。
 ともかく、日本がエネルギーを大きく依存する中東の情勢が緊迫しているのは間違いない。

司令官殺害、トランプ氏が決断するまで
 国防総省に衝撃
2020年1月5日:朝日新聞

 米軍が、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したことをめぐり、米メディアは相次いで、トランプ米大統領が殺害を急に決め、政権内にも驚きが広がった様子を伝えている。「司令官が米国の外交官と軍人を攻撃する計画を進めていたため、防衛措置として攻撃した」というトランプ政権の説明にも疑義が生じている。
 イラクでは数カ月前から、米軍などがロケット弾攻撃を受けており、米側は親イラン派の武装組織が行っていると抗議してきた。昨年12月27日、イラク北部のロケット弾攻撃で米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まった。
 ニューヨーク・タイムズによると、この攻撃を受け、米軍幹部らはソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ氏に提示した。国防総省は歴代大統領に非現実的な選択肢を示すことで、他の選択肢をより受け入れやすくしており、今回もトランプ氏が選ぶことは想定していなかったという。
 実際、トランプ氏は昨年12月28日に殺害計画を拒否し、親イランの武装組織に対する空爆を承認した。だが、数日後に在バグダッド米大使館が親イラン派に襲撃される様子をテレビで見たトランプ氏はいらだち、その後に司令官殺害を決断した。国防総省幹部らは衝撃を受けたという。
 ワシントン・ポストによると、国防総省幹部らは何らかの軍事行動を求めていた。昨年6月にイランが米軍無人機を撃ち落としたり、昨年9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けたりした後、米側が何ら報復をしていないことをトランプ氏に伝え、「何もしなければ、イランは何でもできると考えてしまう」と訴えたという。
 トランプ氏も、無人機撃墜に報復をしなかったことをめぐる批判的な報道が気になり、「弱腰」と映ることを懸念していたという。ただ、同紙も司令官殺害が「非常に大胆で、我々の多くを驚かせた」という政権高官の言葉を伝えた。
 同紙によると、殺害計画の決定後、米当局は司令官の動きを追い、バグダッド空港の付近で攻撃することが最適だと判断した。1月3日の攻撃の直前、トランプ氏はゴルフリゾートで最終承認をしたという。
 CNNは、攻撃直前まで政権内で攻撃の法的根拠をめぐる議論が続いたと伝えている。トランプ氏は3日の会見で「米国の外交官と軍人に対する切迫した、邪悪な攻撃を計画していた」と述べ、阻止するために司令官を殺害したとした。だが、CNNは「政権は具体的な脅威を明らかにせず、法的な根拠もはっきりと示していない」と指摘。こうした点については、米議会からも疑問が出始めている。(ワシントン=渡辺丘)


トランプ、イラン革命防衛隊司令官殺害は
「戦争をやめるため」
 ハメネイ師「厳しい報復」警告
2020年1月4日:ニューズウイーク








イラクの首都バグダッドの空港で3日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(左)
らを乗せた車列が空爆され、同司令官とイラク民兵組織の指揮官が死亡した。
写真は2015年3月にイラクで撮影。(2020年 ロイター)

米国防総省は、イラクの首都バグダッドの空港で現地時間3日未明、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(62)らを乗せた車列を空爆し、同司令官を殺害したと発表した。一方、イラン側は報復を予告するなど反発を強めており、米イランの対立激化が懸念されている。
国防総省は声明で「トランプ大統領の指示により、米軍は海外に駐留する米職員を守るため、ソレイマニ司令官を殺害することで断固とした防衛措置を講じた」と表明。イランによる将来の攻撃計画を抑止することが狙いと説明した。
ポンペオ国務長官は米メディアとのインタビューで、今回の対応はイランによる「差し迫った攻撃」を回避するためのもので、対応しなければ中東にいる米国人の生命が危険にさらされていたと強調。ただ脅威の詳しい内容については多くを語らず、「諜報の判断」で司令官の排除が決まったと述べるにとどめた。
トランプ大統領はツイッターで「ソレイマニ司令官は長い間、数千人もの米国人を殺害したり重傷を負わせ、さらに多くの米国人殺害を目論んでいた」と明かしたが、詳細には触れなかった。
さらに記者団に対し「ソレイマニ司令官は米国の外交官や兵士らを対象に悪意のある差し迫った攻撃を画策していたが、われわれが彼を取り押さえ殺害した。われわれの行動は戦争をやめるためであって戦争をしかけたわけではない」と説明した。米国はイランの体制変更を望んでいないが、イランは地域における侵略活動をやめる必要があると強調もした。
米国防総省は、第82空挺師団から中東に約3000人を増派すると発表。中東地域で米軍に対する脅威が高まる中での予防措置という。
一方、イランの国営テレビは3日、最高指導者ハメネイ師の声明を発表。この中でハメネイ師は、ソレイマニ司令官を殺害した「犯罪者」には厳しい報復が待ち受けており、米国とイスラエルに対する抵抗の機運が倍増すると警告した。
イランのロウハニ大統領は、司令官の殺害で米国に対するイランの抵抗は強まると明言。イラン革命防衛隊は司令官の死亡を確認するとともに、反米勢力がイスラム世界で報復すると予告した。
イランが支援する民兵組織を統括するイラクの「人民動員隊」(PMF)の報道官は、民兵組織幹部のアブ・マハディ・アル・ムハンディス氏も空爆で死亡したと明らかにした。その上で、2人の死亡について「米国とイスラエルに責任がある」と非難した。
こうした中、イラクの首都バグダッドにある米国大使館は、イラクに滞在する米国民に対し、直ちに国外退避するよう呼び掛けた。
イラクのアブドルマハディ首相は、米国の攻撃はイラクの主権を侵害するとともに、戦争につながるものと批判。国連のグテレス事務総長は、中東の緊張激化を深く憂慮しており、各国に「最大限の自制」を求めるとした。
複数の米当局者によると、ソレイマニ司令官はバグダッドで無人機による攻撃で殺害された。イラン革命防衛隊は、米国のヘリコプターから攻撃を受けたとしていた。
イラクの民兵組織は、バグダッド国際空港に3発のロケット弾が撃ち込まれ、民兵組織の5人と2人の「ゲスト」が死亡したと明らかにした。
ロケット弾は貨物ターミナル付近に着弾し、2台の車両が炎上した。
民兵組織の関係者はロイターに対し、ソレイマニ司令官とアル・ムハンディス氏は同じ車に乗っており、米国のヘリコプターから発射された2発の誘導ミサイルが車両に当たったと述べた。もう1台の車には護衛官らが乗っており、ロケット弾1発が当たったとした。
イランと米国の関係を巡っては昨年末、米国がイラクのイスラム教シーア派武装組織の拠点数カ所を空爆したことに反発して、バグダッドの米国大使館をデモ隊が襲撃するなど、緊張が高まっている。ソレイマニ司令官の殺害はイランにとって大きな打撃になるとみられる。
コッズ部隊は革命防衛隊の対外工作を担い、ソレイマニ司令官はシリアやイラクでの戦闘で重要な役割を果たした。
[バグダッド ロイター]


司令官殺害、トランプ氏が決断するまで
 国防総省に衝撃
2020年1月5日:朝日新聞

 米軍が、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したことをめぐり、米メディアは相次いで、トランプ米大統領が殺害を急に決め、政権内にも驚きが広がった様子を伝えている。「司令官が米国の外交官と軍人を攻撃する計画を進めていたため、防衛措置として攻撃した」というトランプ政権の説明にも疑義が生じている。
 イラクでは数カ月前から、米軍などがロケット弾攻撃を受けており、米側は親イラン派の武装組織が行っていると抗議してきた。昨年12月27日、イラク北部のロケット弾攻撃で米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まった。
 ニューヨーク・タイムズによると、この攻撃を受け、米軍幹部らはソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ氏に提示した。国防総省は歴代大統領に非現実的な選択肢を示すことで、他の選択肢をより受け入れやすくしており、今回もトランプ氏が選ぶことは想定していなかったという。
 実際、トランプ氏は昨年12月28日に殺害計画を拒否し、親イランの武装組織に対する空爆を承認した。だが、数日後に在バグダッド米大使館が親イラン派に襲撃される様子をテレビで見たトランプ氏はいらだち、その後に司令官殺害を決断した。国防総省幹部らは衝撃を受けたという。
 ワシントン・ポストによると、国防総省幹部らは何らかの軍事行動を求めていた。昨年6月にイランが米軍無人機を撃ち落としたり、昨年9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けたりした後、米側が何ら報復をしていないことをトランプ氏に伝え、「何もしなければ、イランは何でもできると考えてしまう」と訴えたという。
 トランプ氏も、無人機撃墜に報復をしなかったことをめぐる批判的な報道が気になり、「弱腰」と映ることを懸念していたという。ただ、同紙も司令官殺害が「非常に大胆で、我々の多くを驚かせた」という政権高官の言葉を伝えた。
 同紙によると、殺害計画の決定後、米当局は司令官の動きを追い、バグダッド空港の付近で攻撃することが最適だと判断した。1月3日の攻撃の直前、トランプ氏はゴルフリゾートで最終承認をしたという。
 CNNは、攻撃直前まで政権内で攻撃の法的根拠をめぐる議論が続いたと伝えている。トランプ氏は3日の会見で「米国の外交官と軍人に対する切迫した、邪悪な攻撃を計画していた」と述べ、阻止するために司令官を殺害したとした。だが、CNNは「政権は具体的な脅威を明らかにせず、法的な根拠もはっきりと示していない」と指摘。こうした点については、米議会からも疑問が出始めている。(ワシントン=渡辺丘)


露、イラン司令官殺害で米を非難
「国際法の原則に違反」 中国は自制求める
2020年1月5日:毎日新聞

トラックに乗せられたソレイマニ司令官らのひつぎを囲み、追悼する大勢の人々
=イラン南西部アフワズで5日、イラン学生通信提供・AP

 米国がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したことについて、イランと関係を深める中国やロシアは「武力の乱用」などと、非難を強めている。特にロシアは近年、シリア情勢などを巡りイランとの連携を深めてきたこともあり、米国へのけん制を強めていく構えだ。
 中国の王毅国務委員兼外相は4日、イランのザリフ外相と電話協議し、「米国は武力を乱用してはならない」と批判し、対話による解決を求めて米国に自制を促した。
 中国外務省によると、王氏は同日、ロシアのラブロフ外相とも電話協議し、米軍の行動に対する懸念を共有し、共同歩調を取ることで一致した。王氏は一連の協議で「中東の平和と安全のために建設的な役割を果たす」と述べた。
 米国に対しては、中国外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員が3日、ポンペオ米国務長官と電話協議して武力行使に反対する立場を直接伝達。「米国側が自制を保ち、事態の沈静化を進めるよう希望する」と述べた。
 中国は対米摩擦が強まる中、米国と対立するロシアやイランとの連携を深めてきた。昨年末、中国、ロシア、イランの3カ国は初の海軍合同演習をオマーン湾で実施。12月31日にはザリフ氏が訪中して王氏と会談し、双方が米国のイラン制裁を改めて非難したばかりだった。
 一方、ロシア外務省によると、ラブロフ外相は3日、ポンペオ米国務長官と電話で協議。「第三国(イラク)領内で、その国が関知しないままに、他の国連加盟国で公の立場にある人物を計画的に抹殺する行為は国際法の原則に違反」しているとの考えを伝えた。
 さらに、米国の行動について「中東で積み重なってきた問題を解決するのではなく、新たな紛争を招くものだ」と非難した。
 プーチン大統領も3日、マクロン仏大統領と電話で協議。ロシア大統領府の声明は、両首脳がソレイマニ氏の殺害について「懸念を表した」と伝えた。
 ロシアはシリア情勢でイランやトルコをパートナーにして、内戦終結をにらんだ外交で主導権を握ってきたことから、イランを擁護する立場を取る。
 その一方で、ロシアはイランと敵対するサウジアラビアやイスラエルとも連携を強化している。ロシアとしては、米国が再びイランや関係する勢力を攻撃しないよう圧力をかけたい狙いのようだ。【河津啓介(北京)、大前仁】


(社説)米イラン緊迫 報復の連鎖を避けよ
2020年1月6日:朝日新聞

 米国とイランの対立が危険な領域に入りつつある。どのような形であれ、戦争に陥ってはならない。両国に最大限の自制を求める。
 この危機を直接引きおこしたのは、またも米国の唐突な行動である。イラン国民に広く知られる革命防衛隊の有力司令官を、空爆により殺害した。
 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい報復」を予告しており、情勢は予断を許さない。
 国連事務総長は「新たな湾岸戦争に対応する余裕は今の世界にはない」と警告した。国連安保理はただちに会合を開き、善後策を話し合うべきだ。
 トランプ大統領は1年半前、イラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁を再開した。そこから悪化した緊張関係が、今回の行動によって中東全体の緊迫へと一気に高まった。
 殺害された司令官は、米国の外交官や軍人への攻撃を企てていたと米政府は主張し、「戦争を防ぐためだ」と釈明する。だが、証拠も示さず一方的に攻撃する行為そのものが戦争行為とみられるのは当然だ。
 空爆の現場はイランの隣国イラクの首都で、イラク首相は「主権の侵害だ」と反発している。米軍は、脅威に対応するため3500人を中東に増派するというが、反米感情をあおっているのは米国自身である。
 秋に大統領選を控えるトランプ氏は、自らの弾劾(だんがい)から国民の関心をそらす狙いではないか、との見方もある。真相がどうあれ、この人物が米軍の最高司令官を務めている危うさを改めて痛感せざるをえない。
 今後、イランの動きが憂慮される。国内で強硬派が穏健派を抑えるようになれば、欧州などとの対話も壊れかねない。米側の挑発にのらず、核合意の枠組みを守ることが国益につながる現実を見失ってはならない。
 米国とイランの衝突のおそれは場所も形も複雑にありえる。イランは、イラク、レバノン、イエメンなどの武装組織を支えており、各地の米軍施設などへの攻撃で関与が疑われてきた。ホルムズ海峡などでも警戒レベルが高まるのは必至だ。
 その中東近海に自衛隊を派遣することを、安倍政権は先月に国会論議もしないまま決めた。米主導の「有志連合」には加わらないとはいうものの、反米勢力からは米軍と一体と見なされても不思議ではない。
 外交の常識では予測できないトランプ氏のふるまいに、ただ追随するリスクは明らかだ。安倍首相は中東情勢の緊迫をめぐる見解を示したうえで、何のために自衛隊を派遣し、どんな危険を伴うのかを、国民に正面から説明する義務がある。

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