露呈する日本の“残念化”

これじゃだめだよなぁ~。
新聞記者は首相と仲良くして喜んでるし、菅義偉官房長官は記者会見を支配しよとしているし、産経なんか日本の全体主義を棚に上げてるし、年末の素っ頓狂な死刑執行は世界標準からズレてるし、日本の女性人権はダダ下がり…。
こんなデタラメな国の、下劣な首相の下から海外に派遣される自衛隊。
安倍晋三首相のお下劣はこの国全体を覆いつくし、日本をダークサイドに突き落としていく。
これでは、来年も良くならない。


首相と番記者の“ごっつあん忘年会”
記念撮影に今年も長蛇
2019年12月28日:日刊ゲンダイ

「官庁御用納め」だった27日、安倍首相が参加していたのが年末恒例の内閣記者会の懇親会だ。「首相番」の記者らとの忘年会である。
 国費で賄われるのが慣例のこの会は第2次安倍政権発足以降、グレードアップ。毎年、有名寿司店の腕利きの板前がトロやイクラを握り、公邸お抱えシェフがとろけるようなローストビーフを切り分けるなど、豪華メシが振る舞われていた。もちろんアルコールも完備。タダ酒タダ飯を大盤振る舞いする“ごっつあん忘年会”なのだ。8回目となった今年はどうだったのか。

「総理が公金で有権者らを接待した『桜を見る会』をめぐる疑惑がくすぶっていることもあり、記者会側が〈時節柄、今年はやめましょう〉と申し入れたのですが、官邸側は〈食事抜きでやろう〉と引かず、結局今年も開催されました」(参加した記者)

 ジュースやビールなど飲み物だけがセットされた官邸地下の大広間には、例年より少なめの200人弱が参集。最初にマイクを握った長谷川栄一首相補佐官が「この会はオフ(オフレコの懇談)なので、くれぐれも取材しないでください」とクギを刺したこともあり、桜疑惑やカジノ汚職に関する質問は全く挙がらなかったという。

■「死期が迫っている」に一瞬ギョッ!

 次に挨拶に立ったのが大トリの安倍首相。新天皇即位や改元、ラグビーW杯成功を一通り喜んだ後、「日本チームには品位と尊重の精神があった。われわれ内閣、自民党も見習いたい」と笑いながら口にし、会場からは失笑が漏れたという。今だけカネだけ自分だけの「オマエが言うか!」というわけである。

「このところ顔色の冴えない総理が〈年々1年が短く感じる。死期が迫っているんじゃないかと思う〉と言ったのには一瞬ギョッとしましたが、例年通りの流れで懇親会は進行し、写真撮影タイムになると総理と菅官房長官の前に長蛇の列ができました」(前出の記者)

 終盤になると、参加した記者らがめいめい、安倍首相や菅長官とツーショットで記念撮影するのがお決まり。いわばハイライトだ。

 中には「令和」と揮毫された色紙を持参して菅長官とフレームに収まる記者や、安倍首相とも菅長官とも握手でポーズを決める記者もいたという。大手メディアの記者たちが官邸に抱き込まれているのがアリアリ。オトモダチのような、なれ合い関係で政権を厳しく追及できるわけがない。嘘デタラメのアベ政治が8年目に突入するわけだ。



菅氏会見、桜絡みの質問中に
官邸側が終了要請 一時紛糾
2019年12月25日:朝日新聞

 「桜を見る会」などについて質疑があった25日の菅義偉官房長官の記者会見で、複数の記者が手を挙げているにもかかわらず、司会役の上村秀紀・官邸報道室長が会見を終えるよう求める場面があった。記者側が反論して一時紛糾、会見はその後も続いた。
 会見は内閣記者会が主催し、幹事社の記者が質問が一通り終わったことを各社に確認して終わるのが慣例。ところが、25日の会見は、桜を見る会の質疑が続くさなかの開始15分後に上村氏が「この後の日程があるため、次の質問を最後で」と要請。記者側が「まだ質問がある」として、挙手している記者の質問に答えるよう求め、菅氏も受け入れて会見は続行した。会見時間は約20分間だった。
 菅氏の記者会見は、16日以降、計13回あるが、その全てで、上村氏は日程を理由に会見を終えるよう促している。官邸内からは「あからさまに質問から逃げているように見える」との声も出ている。
 政府は今年2月、「会見は内閣記者会主催で、政府として一方的に質問を制限できる立場になく、その意図もなく、あくまで協力依頼に過ぎない」とする答弁書を閣議決定している。(安倍龍太郎)



【主張】
エジルの中国批判 全体主義のリスク正視を
2019年12月29日:産経新聞

 サッカー英プレミアリーグの強豪アーセナルのメスト・エジルがツイッターに投稿した中国批判が波紋を広げている。一連の騒動で浮き上がるのは他国の「表現の自由」も許さない、共産党独裁の全体主義国家、中国の異質ぶりである。
 元ドイツ代表で3度のワールドカップ(W杯)に出場したスター選手のエジルはトルコ系で、敬虔(けいけん)なイスラム教徒であることも知られている。
 エジルは中国国内でイスラム教徒の少数民族、ウイグル族が弾圧されているとして「コーランが焼かれ、モスクは閉鎖され、宗教学者は次々に殺されている」などと書き込んだ。
 これを受けて中国国営の中央テレビは予定していたアーセナル戦の放送を取りやめた。中国版のスマートフォン・サッカーゲームはエジルを登録から除外した。中国の外務省もサッカー協会もエジルを批判した。異様なのは政府、サッカー界、メディアなどが一斉に排除に向く姿である。
 同様の騒動はバスケットボール界でもあった。10月、米NBAのロケッツ幹部が香港のデモを支持するツイートをしたことに中国から批判が集中し、試合の放送や配信が中止となった。スポンサー企業の撤退表明も相次いだ。
 「表現の自由を支持することはNBAが持つ長年の価値観だ」としたアダム・シルバーコミッショナーの発言に、中央テレビは「言論の自由は絶対ではない」と論評した。外務省の耿爽(こうそう)報道官は「中国側と交流や協力をするには、中国の民意を理解しなければ通用しない」とも述べた。
 中国国内に言論の自由はない。中国との協力を望むなら、他国であろうともそのルールに従え、ということなのだろう。
 現実には、NBAも欧州のサッカー界も巨大な中国資本に支えられている。ロケッツもアーセナルも、発言は個人のものでチームは関わっていないと釈明に躍起だった。中国マネーを背景とする恫喝(どうかつ)に屈した格好である。
 ポンペオ米国務長官は「中国はNBAに対して影響力を行使し、関係者が自らの政治的意見を自由に表明することを封じた」「米実業界は、中国国内でビジネスを行うことに対するリスクに気付きつつある」と述べた。スポーツ界にとどまらず、全ての関係者が共有すべき認識である。



日本で中国人の死刑を執行
 福岡一家4人殺害事件
2019年12月27日:BBC

法務省は26日、2003年に福岡市で一家4人を惨殺した中国籍の死刑囚について、福岡拘置所で刑を執行したと発表した。外国籍の死刑囚の刑が執行されたのは、2009年以来10年ぶり。
絞首刑が執行されたのは中国人の元語学学生の魏巍死刑囚(40)。
魏死刑囚は、中国籍のほかの2人と共謀して、2003年6月20日未明、福岡市で松本真二郎さん(当時41)方に侵入。妻千加さん(同40)を浴槽に沈め、真二郎さん、長男海君(同11)と長女ひなさん(同8)を首を絞めて殺害。4人の遺体を博多湾に遺棄した。
共犯の2人は中国に逃亡後に逮捕された。同国で裁判にかけられ、2005年に1人が死刑を執行され、もう1人は無期懲役が確定している。
魏死刑囚は殺人については容疑を認めたものの、首謀者ではないと主張していた。
森雅子法相は26日の会見で、「慎重に検討」した上で刑の執行を命じたと述べた。
「8歳と11歳の子どもを含む家族全員を殺害し極めて冷酷かつ残忍な事件であり、慎重な検討を経たうえで死刑執行の命令を発した」
昨年の死刑執行は15件
日本では、死刑執行は当日まで死刑囚に宣告されない。
2007年以降、死刑が執行された元死刑囚の氏名が公表されている。氏名の公表開始後に外国籍の死刑囚の刑が執行されたのは、2009年の1件のみ。都内で中国人3人を殺害した中国籍の男に絞首刑が執行された。
国内には現在、100人以上の死刑囚がいる。昨年は15人の死刑が執行された。
その中には、終末思想のカルト宗教「オウム真理教」の元代表、麻原彰晃(本名:松本智津夫)死刑囚など教団幹部ら13人が含まれる。オウム真理教による1995年の地下鉄サリン事件では13人が死亡し、少なくとも5800人がサリンガスの影響を受けた。
(英語記事 Japan carries out rare execution of foreigner)



東浩紀
「日本における女性の地位の低さは異様」
2019年12月7日:AERA

 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。
*  *  *
去る11月22日、熊本市議会で緒方夕佳議員が生後7カ月の長男とともに出席を試みた。出席は認められず、最終的に長男は退場を迫られた。是非をめぐり議論が沸騰している。

 ネットを見るかぎり、子連れ参加賛成派と反対派は拮抗(きっこう)しているようだ。欧米は子連れOKだと説く賛成派に対し、反対派は欧米になんでもあわせればいいのかと噛みついている。問題提起の方法に疑問を呈する向きもあるようだ。

 しかし本当の問題はそこにはない。重要なのは、そもそも日本では女性議員の割合が異様に低いということである。日本の地方議会における女性の割合は、2016年の時点で都道府県議会が約10%、市区町村議会平均で約13%にとどまっている。この割合が異常なことはあきらかだ。地方議員の国際比較統計は存在しないが、日本の国会の女性議員比率は9%強(16年)。これは世界平均の約23%を大きく下回り、193カ国中163位だ。むろん中国や韓国よりも低い。欧米がどうという問題ではないのだ。

 ぼくたちはこの状況を恥じなければならない。高齢化が進むなか、若い世代の政治参加も求められている。子育てが若い女性の政治参加を妨げるなら、ただちに対策を取るべきだ。議員の声を封じてはならない。

 それにしても、日本における女性の地位の低さは一種異様なものがある。先日、世界経済フォーラムが発表したジェンダー格差指数では、日本は144カ国中114位だ。たいへん深刻な数字だが、より深刻なのは、多くの日本人がこれを問題だと感じていないことである。数字ではたしかに低い、でも数に表れないところでは日本の女性は活躍している、と男女ともに思っているふしがある。

 私見では、その背景には日本独特の文化環境がある。日本の大衆文化では女性の存在がきわめて大きい。政治家が女性アイドルのファンであることを公言し、広告会社はつねに女性消費者を気にしている。けれどその状況が逆に人々の目を眩(くら)ませているところはないか。女性的感性を文化的に愛めでることと、現実の女性を政治的に包摂することはまったく違う。両者を混同してはならないのである。

※AERA 2017年12月11日号



小島慶子
「日本の男女格差は過去最低の121位、
それでも『女尊男卑』の声は何ゆえ」
2019年12月28日:AERA

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
*  *  *
 111、114、110、121。世界経済フォーラムが毎年12月に発表するグローバル・ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)の日本の順位の推移です。GGGIは経済・教育・健康・政治の4分野での男女格差を分析して算出した指数。国別に比較したランキングが毎年発表されます。日本は2019年の調査対象153カ国中121位で、先進7カ国の最下位をキープしています。毎度のことながら、政治・経済分野での男女格差が大きいのが特徴です。政治に至っては153カ国中144位。9月の内閣改造まで女性閣僚は1人だけ、女性国会議員も衆議院で約1割、参議院でも約2割ですから、当然の結果とも言えます。

 ちなみにランキングで一つ上の120位はアラブ首長国連邦。インドが112位、韓国は108位、中国は106位です。トップ3は、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド。私の家族が暮らしているオーストラリアは44位でした。

 Yahoo!ニュースがこのニュース記事をツイートすると、いや日本はむしろ女尊男卑だとか、女性の努力が足りないからだなどの、男性のものと思われるリプライがたくさんつきました。匿名で即座にこんなことを書き込む人がいるのを見ても、この社会の女性に対する冷たい眼差しがよくわかります。男性のいら立ちや嫉妬は「女はいいよな、長時間労働が当たり前で無職だと無能扱いされる男と違って、働かなくても差別されないのだから」という被害感情の表れかもしれません。そのいら立ちを経営者や政治家に向けるのではなく、女性をたたいて憂さ晴らしをするしかない惨めな現状は、日本の男性の幸福度の低さにも表れています。こんな社会に誰がしてるんだよ、と本当は男女が一緒に言えるはずなのに。ののしる相手を間違えないで、現実を冷静に見てほしいです。

※AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号


(社説)
中東海域へ自衛隊
 海外派遣、なし崩しの危うさ
2019年12月28日:朝日新聞

 派遣の必要性にも、法的根拠にも疑義がある。何より国会でまともに議論されていない。自衛隊の海外活動の歴史の中で、かくも軽々しい判断は、かつてなかったことだ。
 安倍政権がきのう、米国とイランの対立が深まる中東海域への自衛隊派遣を正式に決めた。イランとの友好関係を損なわないよう、米主導の「有志連合」には加わらず、独自派遣の体裁こそとったが、対米配慮を優先した結論ありきの検討だったことは間違いない。

 ■明らかな拡大解釈

 派遣の根拠は、防衛省設置法4条にある「調査・研究」だ。日本関係船舶の護衛をするわけではなく、目的はあくまでも安全確保に必要な情報収集態勢の強化だという。これなら防衛相だけの判断で実施でき、国会の承認は必要ない。
 しかし、4条は防衛省の所掌事務を列挙した規定に過ぎない。「調査・研究」は主に、平時における日本周辺での警戒監視に適用されている。
 日本をはるか離れ、しかも緊張下にある中東への、長期的な部隊派遣の根拠とするのは、明らかな拡大解釈だ。
 一方、現地で日本関係船舶を守る必要が生じた場合は、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令して対処する方針も決められた。限定的とはいえ、武器の使用も許される。政府は今のところ、防護が必要な状況にはないというが、いったん派遣されれば、なし崩しに活動が広がる懸念が拭えない。
 連立与党の公明党は当初、「調査・研究」名目に難色を示したが、閣議決定という手続きを踏むことや、派遣期間を1年と区切り、延長の際は再度閣議決定して国会に報告することなどが盛り込まれると、あっさり追認した。しかし、これらが活動の歯止めとして有効に機能するとはとても思えない。

 ■国会論議を素通り

 憲法9条の下、専守防衛を原則とする戦後日本にとって、自衛隊の海外派遣は常に重い政治テーマだった。
 「私は閣議決定にサインしない」。1987年、イラン・イラク戦争でペルシャ湾に敷設された機雷除去のため、海上自衛隊の掃海艇派遣をめざした中曽根康弘首相を、後藤田正晴官房長官はそう言って翻意させた。
 しかし、91年の湾岸戦争後のペルシャ湾への掃海艇派遣を転機に、自衛隊の海外での活動が繰り返されるように。そのつど9条との整合性が問われたが、時の政権は対米関係を優先し、自衛隊の活動領域をじわじわと拡大させてきた。
 米国が同時多発テロへの報復としてアフガニスタンを攻撃するとインド洋に海自を派遣し、米艦に給油した。イラク戦争の際は「非戦闘地域」と主張して復興支援活動を行った。
 ただ、これらは根拠となる特別措置法をつくっての対応であり、強引ではあったが、国会を舞台に国民の前で激しい議論を経ていた。既存の法律を無理やり当てはめた安倍政権の今回の手法は、それ以上に乱暴と言わざるをえない。
 政府は現地で米国と緊密に情報共有を進める方針で、この時期の派遣決定も、本格化する有志連合の活動と足並みをそろえる狙いがうかがえる。いくら、日本独自の取り組みであると強調しても、米国と一体の活動と受け止められる可能性は否定できない。
 安倍首相は先週、来日したイランのロハニ大統領に対し、自衛隊派遣の方針を直接説明し、「理解」を得たとされる。
 しかし、6月にホルムズ海峡近くで日本関係船舶など2隻が被害を受けた件も、いまだに誰が攻撃したのかはっきりしていない。軍事組織の派遣が現地の人々を刺激し、無用な敵を生み出す恐れもある。イラン国内にしても、革命防衛隊には強硬派もおり、一枚岩ではないと見られている。

 ■外交努力の徹底を

 日本から遠く離れた中東海域には、国内の監視の目が届きにくいことも懸念材料だ。
 現地情勢の悪化を受け、陸上自衛隊の部隊を撤収させた南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の教訓を忘れてはいけない。派遣後に内戦状態に陥ったが、防衛省はその事実を認めようとせず、部隊の「日報」は隠蔽(いんぺい)された。これでは情勢の変化に対応できない。
 そもそも今回の緊張の発端は、トランプ米政権が昨年、イランの核開発を制限する多国間の合意から一方的に離脱したことにある。事態の打開には、米国側の歩み寄りが不可欠だ。
 日本は原油の大半を中東地域から輸入している。緊張緩和のため一定の役割を果たす必要はあるだろう。だが、それが自衛隊の派遣なのか。米国の同盟国であり、イランとも友好関係を保つ日本には、仲介者としてできることがあるはずだ。
 この問題に軍事的な解決はない。関係国とともに外交努力を徹底することこそ、日本が選ぶべき道である。



来月通常国会 首相に宿題
予算委で答えを!
桜を見る会 杜撰な公文書扱い
辞任させ任命責任?閣僚不祥事
2019年12月26日:東京新聞・こちら特報部

 秋の臨時国会で、与野党攻防の主戦場である衆参予算委員会から逃げ続けた安倍晋三首相。もちろん「桜を見る会」を巡る疑惑追及から逃れるためだが、今年を振り返ってみれば、相次いだ閣僚不祥事、不透明な日米貿易交渉など、首相が国会の場で責任を取り、説明すべきことはたくさんあった。来年1月中旬からの通常国会予算委で「首相が答えるべきこと」を、列挙しておこう。    (佐藤直子、中山岳)

 安倍首相が来月の国会で問われる問題の筆頭は「桜を見る会」だ。
 第二次安倍政権以降、招待客が膨張を続け、今年4月の会には同伴者も含め18000人が参加。そのうち安倍晋三首相の後援会関係者が約800人含まれていたとされる。反社会的勢力やマルチ商法「ジャパンライフ」の元会長も招待されていたとされるが、真相は分からない。
 疑惑の追及が始まってから、招待客名簿を巡る動きも不自然だ。各省庁には過去の推薦名簿が保管されているが、内閣府は首相ら「政治枠」の推薦名簿はシュレッダーにかけられ、全体の招待客名簿は共産党議員が資料請求した日に廃棄されたと説明した。
 その後、バックアップとして名簿の電子データがあることが判明したが、「復元予定はない」としている。
 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「桜問題の本質は安倍一強、長期政権の弊害が象徴的に表れたこと」と指摘し、最大の弊害は公文書が杜撰に扱われたことだと批判する。「文書は政治の歴史。政策委業の検証に不可欠だが、それが消えた。国の予算は決算までで完結するが、決算より前に予算執行資料が捨てられるなんて大罪だ」
 招待客の人選だけではない。「見る会」の前日、安倍首相は都内のホテルで後援会との夕食会である「前夜祭」に出席していた。だが、後援会の政治資金収支報告書に記載がなく、収支実態は不明。
 1人5000円という破格だった会費についても、首相側が有権者に便宜を図ったなら公職選挙法違反に、ホテル側が首相側に値引きをしていたなら寄付として政治資金規正法違反に当たるのではないかと疑念を向けられている。
 だが、一連の「桜疑惑」で首相が国会で答弁したのは、11月20日と12月2日の参院本会議の2回のみ。野党は予算委員会での集中審議を求めたが、与党は拒否した。「安倍首相は、集中審議にも国会の要請があれば出ると言っているのに、与党第一党の自民党が動かない。行政監視という立法府の責任を放棄した罪は重い。直近の世論調査で自民党支持率は3割から2割に落ちたが、それでも自民は首相を守り続けるのか」
 首相自身を直撃する「桜を見る会」でも逃げの一手だから、相次ぐ閣僚らの不祥事についてもまともな対応をしない。
 9月の内閣改造から1カ月余りに公選法違反の疑惑で菅原一秀前経済産業相と河合克行前法相が相次ぎ辞任。首相はその都度「任命責任を痛感する」と言いつつ、雲隠れするのを容認した。25日に逮捕された秋元司衆院議員についても、17~18年に内閣府副大臣(IR担当)に任命した責任は重い。
 九州大の斎藤文男名誉教授(行政法)は「安倍首相は不祥事閣僚を辞任させて任命責任を果たしたと言いたいのだろうがただの不正隠し。更迭した上で、きちんと彼らに説明を果たさせるべきだ。それが任命責任を果たすということ」と指摘する。

日米貿易交渉 自動車関税撤廃 確約は
追及から逃げ腰
米国に追従予算膨張 安全保障

 安倍首相の説明逃れは、日米貿易交渉にも当てはまる。9月にトランプ大統領と署名した共同声明は、日本が牛・豚肉など多くの農産品の関税を環太平洋連携協定(TPP)並みに撤廃、削減することで合意。一方、日本の輸出車にかかる関税(2・5%)は維持された。日本の譲歩が目に付くが、安倍首相は国会で「日米双方にとってウィンウィンの結論」と主張した。
 政府は車の関税撤廃が約束されており時期を今後の交渉で決めるというが、東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)は、そう見ていない。政府が署名後に公表した資料に「関税の撤廃に関してさらに交渉」とあるからだ。「トランプ氏が大統領選前に撤廃を約束するわけがない。政府の主張はその場しのぎで安倍首相は説明責任を果たしていない」と批判する。
 貿易交渉によりひとまず回避された日本の輸出車に対する25%の追加関税についても「米国が日本からさらなる譲歩を引き出すため、今後の交渉で持ち出してくる可能性がある」とみる。さらに見過ごせないのは、安倍首相が8月の日米首脳会談でトウモロコシの購入方針を表明したことという。「害虫被害に備える名目だが、現実に被害はほとんどない。米国の求めるまま購入を約束し、民間業者に押し付けたのはひどい」
 米国追従の懸念は安全保障でも強い。トランプ大統領は今月3日、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の大幅増を安倍首相に要求したことを明らかにした。それにもかかわらず安倍首相は国会で説明していない。日米関係に詳しいジャーナリストの吉田敏浩氏は「米国の要求に応えるまま、日米地位協定で支払い義務がない思いやり予算が膨張し続けるなら間違っている」と断じる。
 米国製の地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入も「米国のミサイル戦略に日本が組み込まれ、中国やロシアを含めた軍拡競争が進みかねない」と危ぶむ。米国製兵器を爆買いする一方、しわ寄せで社会保障関係の予算は削られていくとし「そもそもイージス・アショアが必要かも含め、首相が説明すべきだ」と話す。

伊藤さん被害、モリカケも

 経済や外交だけではない。民事訴訟で勝訴したジャーナリスト伊藤詩織さん(30)の性暴力被害を巡り、被告側の元TBS記者山口啓之氏(53)は安倍首相と交友関係があった。裁判を傍聴してきた作家の北原みのりさんは「なぜ刑事事件にならないのか、安倍首相が答えるべきだ」と強調する。
 詩織さんは15年に刑事告訴し、警視庁高輪署は準強姦容疑で山口氏の逮捕状を取ったが、警視庁の中村格刑事部長(当時)の指示で執行されず、山口氏は書類送検後、不起訴になった。北原さんは「民事訴訟では、採用されなかった証言も含めて詩織さんが被害を受けた経緯が判明した」と指摘。逮捕の見送りに安倍首相との関係が影響した疑惑は消えていないとし、国会での検証を求める。
 もちろん、森友・加計学園問題も忘れてはならない。「森友・掛け問題の幕引きを許さない市民の会」発起人の醍醐聡・東京大名誉教授(会計学)は「森友学園問題で昭恵夫人の関与があったかや、安倍首相が加計学園の加計孝太郎理事長と頻繁にゴルフをする関係なのに獣医学部の新設計画を長い間知らなかったとするなど、疑問は残ったままだ」と話す。
 桜を見る会を含め、野党の追及に首相が具体的な説明を避け続けていることにも警鐘を鳴らす。「安倍首相は数々の問題に関わっていないと証明する責任があると自覚してほしい。追及されても言葉で否定するだけで逃げ切れるなら、政治不信が広がるだけだ」

デスクメモ
 冬休みに入った子どもたちには、宿題が出されている。提出をサボれば先生に叱られるはずだ。安倍首相にも、答えるべき問題が山積みになって、宿題として課されている。ただ、首相は提出サボりの常連だから、またサボりそう。国民が鬼教師となって「出せ」というしかない。        (歩)



内閣府、データ消去8週間の
「文言、私の手元にございません」
 桜を見る会野党ヒアリング
2019年12月26日:毎日新聞

安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題の野党追及本部のヒアリングで
内閣府などの担当者に質問する議員たち=国会内で2019年12月26日、川田雅浩撮影

 「桜を見る会」について、政府の担当者に疑問点をただす野党追及本部のヒアリングが26日もあった。焦点となっている招待者名簿の電子データについて、政府はこれまで保管期間を「最大8週間で、データはもう残っていない」と説明してきたが、居合わせた内閣府の幹部や担当者が、その根拠となる明文規定の有無について、誰も答えられない一幕があった。次回のヒアリングは来年1月7日に予定されている。主な一問一答は以下の通り。【吉井理記、大場伸也/統合デジタル取材センター】

内閣官房「(首相の)議員としての活動、お答えしない」

 黒岩宇洋衆院議員(立憲民主) 山井議員が12月24、25日に下関で現地調査した。ご報告を。
 山井和則衆院議員(無所属) 現地で聞いたのは、安倍さんを応援していた人以外は呼ばれない。呼ばれた人は、みんな安倍さんに呼んでもらったと大喜びしていたとのことだった。今回の報道で、国の税金でやってる行事だと聞いて「安倍さんがやっていたんじゃなかったんだ」という声もあるそうだ。選挙でお世話になった人だけを、えこひいきで呼んでいるということになれば、公選法違反、買収の疑念も出てくるんではないか。
 黒岩議員 安倍事務所宛ての13項目の質問状。届けてもらえましたか。
 内閣官房・中井亨参事官 いずれも総理の議員としての活動に関することですので、政府としてはお答えする立場にない。また政府から安倍事務所にお尋ねする立場にはない。
 山井議員 それを言うなら、衆院議員・安倍晋三として、地元の有権者850人を国の税金でやっている桜を見る会に招くなんてことは言語道断じゃないですか。完全なる公私混同じゃないですか。「それは議員の知り合いでしょ。桜を見る会に呼ぶ対象ではない」と蹴らないといけないんじゃないですか。
 中井参事官 官邸、与党に推薦をお願いしていたのは長年の慣行でございました。そこ自体は反省すべきだろうと総理もおっしゃっている。ただ議員としての活動については、政府として一つ一つお答えしていない。

首相の反省は「招待者の数が膨れ上がったこと」

 原口一博衆院議員(国民民主) 総理として国会で答弁されたことについて聞いている。もし安倍晋三議員としてやっておられたというなら、桜を見る会の当該部分の公金を返金してください。何千人分かしらないけれど国民に。総理としてでなく、安倍議員個人として反省すべき点があるというなら、最大の問題は税金を私物化したところですから返金をお願いします。何を反省しているんですか安倍晋三議員は。

「桜を見る会」の来場者と記念撮影をする安倍晋三首相(中央)
=東京都新宿区の新宿御苑で2019年4月13日、代表撮影

 中井参事官 長年の慣行の中で、招待者の数が膨れ上がったことなどを反省しているという認識です。招待基準が明確でなかった。招待プロセスが透明でなかった。それから予算など。
 田村智子参院議員(共産) 安倍さんの私物化を許したってことが問題なんでしょ。
 黒岩議員 総理のところに質問状を持って行っても回答してくれないから、実務的主催者である内閣府と内閣官房にお願いした。誠実に、まじめに回答してほしい。

「内閣府のファイルサーバーを削除すれば、同期のデータも削除」

 石垣のり子参院議員(立憲民主) 本日、(電子データを管理する共有サーバーなどの)2018年の内閣府LANの仕様書を出してもらった。仕様書と名のつくものはこれですべてか。
 内閣府・酒田元洋官房総務課長 内閣府LANの共通システムに関してはこれがすべてでございます。
 石垣議員 最後のページには「別紙」が1から27まである、と。こちらの別紙は今回添付されていない。その理由は。
 酒田課長 ここにつきましてはセキュリティーの関係があり、ご容赦をと思っています。
 石垣議員 この仕様書の中に「首都圏外のバックアップセンター」という言葉がある。以前、バックアップデータは「最大8週間で消える」という答弁があった。8週間ということは、この首都圏外のものも消えるのか。
 酒田課長 そういうことでございます。<野党議員から「そんなわけない」とどよめき>
 石垣議員 災害対策用と思われるが、8週間で(バックアップの役割として)足りるのか。<酒田課長、後ろに控えていた内閣府の情報システム関連の担当者の男性を振り返り、小声で何やら話し合う>
 石垣議員 分かる方が答えていいですから。

国会内で開かれた安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題の野党追及本部のヒアリング
=2019年12月26日午後3時11分、川田雅浩撮影


 黒岩議員 (実務担当者に)マイク渡してよ、もう時間ないから。
 実務担当者 首都圏外のバックアップセンター、そちらは今まで話していたバックアップを取っていたものとは別に、(日常的に使う内閣府内設置の)ファイルサーバーと同じものが別のところに置かれていて、そこでのバックアップは取られてなくて、内閣府のファイルサーバーにあるもの(データ)がそのまま、同期されて(データが存在している)。ファイルサーバーのデータを削除すれば、そちらのデータも削除される。ファイルサーバーに現存するものがそのまま、同期して存在している。

データ消去8週間の根拠「今日来ているメンバーでは分からない」

 田村議員 さっきの「8週間」って、どこにどう書いてあるんですか?
 原口議員 どこにもない。
 石垣議員 仕様書を読み込めていないんですが、「8週間」の根拠となる場所はどこなんですか。
 酒田課長 少しお待ちください。<手元の資料を繰る>
 石垣議員 考えている間ですが、これまで名簿を削除したということを記憶および「人から聞いた」ということで話しているが、やはり(名簿のデータを消去したことを示すサーバーや端末の)「ログ」を出してください。「消しました」という客観的なものを出してください。まずは「8週間」から。
 酒田課長 仕様書には書いていないということでございます。<野党側、一斉に「どこに書いてあるの?」>
 黒岩議員 後ろの方(担当者)でいいから。「8週間」って、どういう理解をしているか教えてください。<酒田課長、再び後ろの担当者と話し合う。野党側から「根拠は何」「『8週間』ってどこに書いてある話なの」という声が相次ぐ>

「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄した大型シュレッダーが置かれている内閣府本府(手前)
=東京都千代田区で2019年11月20日、野口武則撮影

 酒田課長 承知していません。今日来ているメンバーでは分からない、ということです。
 黒岩議員 じゃあ誰をヒアリングに呼べばいいんですか?
 酒田課長 分かる人に聞いて……。
 黒岩議員 どこの部署の人?
 酒田課長 (内閣府の)情報化推進室長がシステムについては統括している。
 黒岩議員 1月7日(の次回の野党ヒアリング)には出てもらえますね。
 石垣議員 「8週間」の根拠そのものも揺らぎます。本当に消えているかどうか分からない。

内閣府「私がきちんと調べて……」

 黒岩議員 我々が聞きたいのは「8週間」って何なのか、バックアップデータがどのくらい取られているか、ログがどうなっているのか、この点ぐらいなんですよ。何度も聞いてきましたが。だから聞ける人を出してくださいよ。分かっちゃうから出したくないの?
 酒田課長 そういうことじゃございません。私がきちんと調べて……。
 田村議員 安倍首相も本会議で答弁しているんだから。
 野党議員 虚偽答弁になっちゃうよ。
 石垣議員 (提出された仕様書に名前だけ記載のある)「別紙の12『データバックアップ管理及びログ管理一覧』」を出してください。
 田村議員 官房長官も繰り返し記者会見で(「8週間」と)言っているんですから。根拠になるものを出せないとおかしいですよ。
 山井議員 確認ですが「8週間」という言葉が、ペーパー、文書に明記されているということは確認しているのか。それとも「8週間」がペーパーに書いてあるのかどうか、お二人(酒田課長と担当者)はご存じないのか。
 酒田課長 「8週間」という数字、文言がどういう形で定められているかということは今、私の手元にございません。
 山井議員 つまりお二人は分からないということですね。
第2次安倍政権で決済簿は「残ってございません」
 黒岩議員 12月24日の共産党の宮本徹衆院議員(が国立公文書館から開示を受けた05年の「桜を見る会」招待者名簿など)の資料について。(05年当時は招待者名簿を取りまとめる際、首相らが最終決裁し、その決裁文書も残っていた。内閣府は19年の「桜を見る会」について、決裁行為はなかったと説明しているが)決裁はいつまでされていたのか。
 酒田課長 決裁を取っていたのが確認できたのが2010年までであったということでございます。<野党側、一斉に「(11、12年は開催されなかったので)安倍政権になってから取っていなかった、ということじゃないか」>
 黒岩議員 決裁文書はないの?
 酒田課長 決裁文書そのものが残っているのは06年に(国立公文書館に)移管された(宮本氏らが開示を受けた)ものだけでございます。
 黒岩議員 では決裁を受けたというのはどうやって分かるのか。
 酒田課長 どういった決裁をしたのかというものは記録として残っている。決裁簿というものがあるということでございます。
 黒岩議員 13年以降は決裁した形としての名簿は残っていないのか
 酒田課長 残ってございません。<野党議員「すごいな」とどよめき>
 黒岩議員 民主党とか自民党じゃない。安倍さんになってから、決裁を取らなくなったんだ。



桜で失速、第2次安倍政権7年
 「令和」効果限定的 長期政権にほころび
2019年12月26日:毎日新聞

安倍晋三首相=首相官邸で2019年12月23日午後0時23分、川田雅浩撮影

 安倍政権は26日、2012年12月の第2次内閣発足から7年を迎えた。11月20日に通算在職日数が歴代最長となった安倍晋三首相は、政治的遺産(レガシー)づくりを目指す。ただし、新元号「令和」が世論の好感を受けた今年前半は順調だったものの、終盤は「政治とカネ」を巡る問題で2閣僚が辞任したり、「桜を見る会」で追及を受けたりして失速し、長期政権のゆがみが露呈している。
 首相は26日午前、首相官邸に入る際、記者団に7年を迎えたことについて聞かれると「これからも初心を忘れずにしっかりとやっていく」とだけ語った。安倍政権で副内閣相などを務めた秋元司衆院議員が25日にカジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む収賄容疑で逮捕されたことも問われたが、首相は立ち止まらなかった。
 4月1日に発表された「令和」は、初の国書典拠となる万葉集からの引用で、首相の意向が反映された。菅義偉官房長官が色紙を掲げたのは前例踏襲だったが、首相自ら記者会見で意義を語る政治主導の演出が際立った。「ミスなくやって当たり前」(首相官邸幹部)と重圧もある中、代替わりの一連の儀式を円滑に乗り切り、「令和効果」で内閣支持率が一時上昇した。
 7月の参院選では、首相は「憲法を議論しない政党かする政党か」と改憲を争点に訴えた。改憲発議に必要な改憲勢力3分の2は割り込んだが、自公過半数を維持して「勝利」した。9月の内閣改造は「安定と挑戦」をキャッチフレーズに、小泉進次郎氏を環境相として初入閣させ、話題を集めた。
 しかし、その後は長期政権のほころびが目立つ。改造から1カ月余りで、初入閣の菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相が政治とカネの問題で相次いで辞任。大学入試の民間英語試験導入は、萩生田光一文部科学相の「身の丈発言」が批判を浴び、実施延期に追い込まれた。菅原、河井両氏は過去にも疑惑を報じられ、萩生田氏も失言した例がある。懸念の声を顧みず、首相や菅氏の側近を重用したゆがみが露呈した。
 さらに、首相主催の「桜を見る会」でも、公的行事に首相支持者を多数招き、招待者名簿を内閣府が廃棄した問題が発覚した。野党は森友・加計学園問題に通じる「身内優遇」「隠蔽(いんぺい)体質」と批判し、首相自身を直撃している。
 20年8月まで政権が続けば、連続在職期間も佐藤栄作元首相を上回り最長となる。ただし、内閣支持率は下落気味で、「桜を見る会」を巡る野党の追及は当面やみそうにない。自民党総裁任期が残り2年を切る中、求心力の維持や宿願とする憲法改正に向けた道筋を付けることなどレガシーを残せるかが課題となる。【杉直樹】



記者の目
公文書クライシス
 官邸の隠蔽体質 もはや民主主義ではない
=大場弘行(特別報道部)
2019年12月26日:毎日新聞

各府省から送られてきた数々の不開示決定通知書。
首相との面会に関する文書は「不存在」と記されていた=東京都千代田区で4月10日撮影

 「霞が関には闇から闇に消える文書がある」
 2017年の春、こんなミステリアスな話を官僚OBから聞いたのがきっかけだった。私は同僚と「公文書クライシス」取材班を発足させた。2年以上に及ぶ取材で見えたのは、あらゆる手段を使って記録の公開を避けようとするすさまじい隠蔽(いんぺい)体質だった。
 私たちの取材に、20人近い現役官僚が重い口を開いた。彼らが明かした公文書を隠す手口は大胆かつ巧妙だ。
 表に出したくない記録があれば、業務で使っている明らかな公文書であっても、「個人のメモだ」と言い張って情報公開請求の対象から外す。近年は電子メールで重要なやりとりをし、それが残っているのに「メールは電話で話すのと同じだ」などという理屈で公文書にはしない。ウェブで公開されている公文書ファイルの名称をわざとぼかして国民に中身を知られないようにもしていた。
 こうした実態を知るうち、最も重要であるはずの首相の記録が残されているのか私は不安になり、調べ始めた。

首相発言記録、事実上禁止に

 首相は官邸で省庁幹部と頻繁に面談する。報道機関が取材で特定できた面談者は「首相動静(毎日新聞は『首相日々』)」として伝えられるが、面談内容が明らかになることはほとんどない。
 ただ、国の公文書管理ガイドラインは、重要な打ち合わせをした場合、日時や参加者、やりとりの概要を記録するよう義務づけている。検証に必要な記録が省庁に残されていなかった加計学園問題の教訓を踏まえ、17年12月に新たに盛り込まれた規定だ。この件で友人に便宜を図ったのではないかと疑われた安倍晋三首相は「公文書管理の質を高める」と国民に約束もした。
 そこで、私はガイドライン改定から約1年の間にあった首相と省庁幹部の打ち合わせについて、その記録を首相官邸に情報公開請求してみた。
 すると官邸は「政策を担当する省庁側が必要に応じて作成すべきものだ。官邸では作っていない」と回答した。それならばと、重要と思われる面談を抽出して省庁側にも請求したが、記録が残されているケースは確認できなかった。
 驚いたのは、首相の下で重要政策や大規模災害対応を担当する内閣官房が1年間を通じて70回以上、首相と面談をしていたのに、打ち合わせ記録を一件も作っていなかったことだった。
 未作成の理由は「記録が必要な打ち合わせがなかった」と説明されたが、真相を省庁幹部らから聞いて耳を疑った。「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」「面談中にメモを取ると注意される」。首相が発言したことの記録が事実上禁じられているのだ。
 こうした証言を報じると、菅義偉官房長官は記者会見で「ご指摘のような事実はない」と否定した。その菅氏も内閣官房と約1年の間に150回以上も打ち合わせをしていたが、記録は一件も作られていなかった。官邸はあえて記録を残していないと疑わざるを得ない。
 なぜこんなことがまかり通るのか。背景に、改定された公文書管理ガイドラインの「抜け道」が見えてきた。ガイドラインは記録が必要な打ち合わせを「政策立案の方針などに影響を及ぼすもの」と定義している。つまり、影響を及ぼさないと判断したものなら記録を残さなくていいとも解釈できる。前述した「記録が必要な打ち合わせがなかった」という内閣官房の説明は、そういう意味だ。

裁量余地あればやすきに流れる

 実はガイドラインの改定直前、原案に対して、この部分の定義があいまいなため職員が記録を作らない恐れがあるとの指摘が、省庁からガイドラインを所管する内閣府に相次いで寄せられていた。内部資料に記された国土交通省の担当者の指摘は率直だ。「規則の運用に裁量的な余地がある場合、やすきに流れるのが普通だ」
 内閣府は省庁からのこうした指摘を聞き入れず、改定内容を審議した「公文書管理委員会」の有識者委員にも伝えなかった。最初から省庁に記録を作らせるつもりがなかったと思えてならない。実際、昨年発覚した毎月勤労統計の不正問題では、厚生労働省が対応を決めた際の打ち合わせ記録が1件しかなかった。それも国会で野党から指摘されて2カ月後に渋々作ったものだった。延べ2000万人以上の保険給付に影響した不祥事の記録すら残っていない事実は、公文書未作成の常態化を強くうかがわせる。
 首相官邸を頂点に隠蔽体質が省庁に根を下ろしているように私には見える。「税金の私物化」と批判されている首相主催の「桜を見る会」の問題でも、首相に関する記録は「ない」と官僚が必死に繰り返している。問題の根源がどこにあるかは明らかだと思う。
 首相や政府高官らの面談記録がないことは、国民の運命を左右する事柄を、一部の権力者が外部から検証できないブラックボックスの中で決めていることを意味する。それは民主主義とは呼べない。この政権は公文書の意義を否定していると言わざるを得ない。


論点 戦後政治と桜を見る会
2019年12月27日:毎日新聞

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る一連の批判は、来年も続きそうな勢いだ。政治に「うそ」は付きもので、政治家は記録を残したがらないもの。とはいえ、今回は、従来の常識を超えているようだ。ベテラン2人に、戦後政治における「うそ」や記録と公文書の意味から、今の問題点を浮き彫りにしてもらった。

安倍首相に思想性なし 田原総一朗・ジャーナリスト

 1960年以降、歴代の政権は、「うそ」をついてきた。ただし、従来の「うそ」と安倍晋三政権のそれは、全く違う。前者は、戦争の反省と安全保障の現実を踏まえたもの、後者は、単なるつじつま合わせだ。
 従来の「うそ」とは、自衛隊と憲法の両立である。自衛隊は明らかに軍隊で、憲法と矛盾する。自民党最初の首相だった鳩山一郎や安倍首相の祖父、岸信介は、「うそ」を解消しようと自主憲法制定を唱えた。
 岸の次の池田勇人政権が経済成長優先に転じて以降、自民党政権は、改憲を大声で言わなくなった。「自衛隊は憲法と両立する」という「うそ」を、国民も支持してきた。
 71年、私は、後に首相となった宮沢喜一さんに「池田以降の首相はうそをついている」と言ってみた。宮沢さんは「日本人は身の丈に合った服を作るのが下手で、お仕着せに体を合わせるのは得意なんだ」と、歴史を振り返って話した。
 第一次大戦後に、国際社会は、侵略戦争、つまり植民地獲得戦争を非合法化した。にもかかわらず、欧米列強は既に領有していた植民地を手放さなかった。日本では、これを「欺まん」だと批判してアジアの植民地解放を唱える動きが広まった。ところが結果として、軍の暴走などで国際社会から孤立し、対米戦争に突き進んで敗れた。つまり、自前の服で破滅した。戦後は、憲法を押しつけられて正式な軍隊は持てなくなったが、米国に守られることで、戦争をしないでこられた。お仕着せだからこそ、うまくいったわけである。
 竹下登さんには、首相だったとき(87~89年)、「自衛隊は戦えない軍隊でいいのか?」と聞いた。「それでいいんだ」と返された。太平洋戦争の直前、海軍の永野修身軍令部総長は、対米戦争を(戦力差がまだ小さい)「今ならば戦える」などとした。限定付きでも「戦える」軍隊は、戦争を始めてしまうものなのだ。
 憲法改正を掲げる安倍首相は、戦後政治の「うそ」が、本当に祖父と同じく嫌いなのだろうか。第2次政権発足後、2013年12月に靖国神社を参拝したが、それっきりだ。歴史修正主義者と米国に認定されれば、政権が続かないと見たからだ。「戦後レジームからの脱却」も言わなくなった。集団的自衛権の行使も、憲法改正抜きで一部容認できた。おそらく、改憲はしないだろう。要は、政権維持のために転向したのだ。
 安倍政権の「うそ」には、何の思想性もない。加計学園問題が、わかりやすい。国が獣医学部の新設を決める際に、安倍首相が「加計学園の加計孝太郎理事長と長年の友人だ」と言えば、忖度(そんたく)されなかったわけがない。ところが、安倍首相は追及を受けて、(加計学園での獣医学部新設について)「働きかけはしていない」などと言い出した。首相に話を合わせて、関係者誰しもが「うそ」をつかざるを得なくなったのだ。森友学園問題でも、財務省が決裁文書を改ざんしたのは、首相を忖度したからである。
 桜を見る会の問題でも、内閣府は名簿を破棄した。しかも、共産党から開示を要求された1時間後の破棄だ。シュレッダーの予約が取れなかったとか、いいかげんな理由で逃げる。バックアップデータも、「公開できない」と言い張る。
 森友学園と加計学園の問題で政権が潰れなかったのは、野党と自民党の反主流派が弱くなったせいだ。この「成功体験」のおかげで、政権は「何をやっても大丈夫」と思い込んだ。桜を見る会が税金を使った行事だとの認識はまるでなく、「誰々も呼べば喜ぶ」程度の感覚だったのだろう。自民党のある幹部も「誰かが少しでも招待者の数などをチェックしておけば、こんなことにはならなかった」と嘆いている。
 安倍政権は「ほかに代わりがない」だけで維持されてきたが、もはや、気の緩み方が尋常ではない。ある新聞の社説は「いつまでもこんな話を追及するのは愚かだ」と書いていたが、まるでピント外れである。桜を見る会問題で政権が倒れる可能性は、あるかもしれない。【聞き手・鈴木英生】

情報重視した佐藤元首相 堀越作治・元朝日新聞編集局次長

 自分が天下をとったのだから何をやっても自由だ。「桜を見る会」をめぐる安倍晋三首相の言動は、そう考えていると言われても仕方ないものだろう。私が接した首相の大叔父・佐藤栄作は違っていた。人間、特に政治家の価値は、棺をおおいて事定まるという意識の持ち主だった。
 佐藤元首相の原点は造船疑獄である。1953~54年に起こったこの疑獄事件で、当時、自由党幹事長だった佐藤は法相の指揮権発動によりかろうじて逮捕を免れた。政治の師と仰ぐ吉田茂の内閣を守るため犠牲になり、一時は「政治生命を絶たれたと覚悟するところまで追い込まれた」と、私にも漏らしたことがある。
 「気がついたら自分の背中がボーボー燃えているんだ」と、佐藤は語っている。交友関係を記録しておかないと危ない、訴追されかねない行為は慎まなければならない。そう思い定め、右翼や政治資金の扱いは全て秘書に任せた。自分では絶対に会おうとしなかった。
 それに比べると、安倍首相は甘すぎる。第1次政権に失敗して再登板したといっても割と単線形だ。佐藤は造船疑獄で複雑骨折したところからはい上がった。他人の情報は全て集める一方、自分の情報は一切漏らさない。前任の池田勇人首相の病状をいち早く察知していたし、最後には池田が自分を後継指名することもつかんでいた。「早耳の佐藤」と言われ、「赤坂で針がポトリと落ちた音も聞き分けた」と言われたほどのすごい情報マンだった。
 その佐藤が日記を書いているのではないかとにらんだのは、72年6月17日の退陣記者会見である。「新聞記者の諸君とは話さないことにしている。帰ってください」。佐藤がそう言い放ち、記者が退席した会見場で一人で演説したあの時だ。政治部のデスク席近くでこの場面を見た私は、テレビに向かって「出るな」と声を上げたことを覚えている。
 実は、私自身、中学1年の時から日記を書いてきた。毎日つけていると、他人がつけていることも言葉の端々からピンとくるところがある。佐藤はそれまで「偏向的な新聞が大嫌いだ」などとストレートな物言いをしたことはなかった。口の重い人だった。あれを聞いて思いのたけを日々書いているに違いないと考え、すぐ会見を申し込んだのだ。
 首相を辞めた佐藤との面会が実現したのは、8月4日のことだった。よもやま話に花を咲かせた後、帰り際「日記をつけておられませんか」と尋ねた。ぐっと詰まった佐藤の答えは「メモをつけている。面白くはないが、村田蔵六(大村益次郎、幕末・維新期の軍政家)の旅日記よりはいいと思う」というものだった。
 だが、それから「佐藤栄作日記」を世に出すまでには、実に四半世紀の歳月を要することになる。佐藤家との折衝は137回を数えた。まずかったのは、佐藤の兄・岸信介元首相と旧佐藤派の長老・橋本登美三郎に頼んだことだ。彼らは「時期尚早」と強硬に反対した。
 24年間にわたる「佐藤日記」のうち、55年体制の始まった55年と岸内閣時代の57~60年の計5年分が欠けているのも残念だ。関係先をくまなく探したが、見つかっていない。
 生前、佐藤は日記をそのまま公開することまでは考えていなかっただろう。54年1月1日の日記に、以下の一節がある。「党史の一頁(ページ)と迄(まで)はゆかなくとも、総理を中心にして後々批判をうける様な、或(あるい)は又国家の為(ため)の歴史の一こまでもありたい」。「総理」とは吉田首相のこと、「後々批判をうける」とあるのは「批判に堪える」という意味である。造船疑獄から沖縄返還まで、佐藤という政治家の軌跡とは何だったのか。その後の政治にどう影響したのか。私はそれを知りたい一念だった。
 佐藤は、公文書管理に関心が薄い安倍首相とは対照的に記録を大事にする人だったと思う。それでも、沖縄核密約の文書を私蔵していたことが後年判明した。安倍首相は惜しまれて辞めることができるだろうか。あるいは佐藤と同様、思いのたけを一方的に話して幕引きするかもしれない。【聞き手・岸俊光】

繰り返される不祥事

 この数年、公文書問題と閣僚らの発言、資質は、本欄の定番テーマとなってしまった。前者は、2018年3月13日の「森友文書改ざん」を皮切りに、同年5月12日「メールは公文書か」、同月23日「国家公務員の不祥事」、19年6月28日「『不都合な真実』の扱い方」など、既に6回。後者も、17年6月9日の「乱れる政治の言葉」以降、19年6月26日の「政治家の資質」など繰り返し論じている。

 次回は1月8日に掲載します。ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

 ■人物略歴
堀越作治(ほりこし・さくじ)
 1930年埼玉県生まれ。一橋大卒。56年朝日新聞社入社。政治部次長、福岡総局長、編集局次長を歴任した。著書に「戦後政治裏面史――『佐藤栄作日記』が語るもの」「戦後政治13の証言――政治記者取材メモから」など。

 ■人物略歴
田原総一朗(たはら・そういちろう)
 1934年生まれ。テレビ東京ディレクターとして多数のドキュメント番組を制作し、77年からフリー。司会を務める討論番組「朝まで生テレビ!」は放送32年。著書に「殺されても聞く」など、共著に「脱属国論」など。


出生数90万割れ 政府の危機感足りない
2019年12月25日:東京新聞

 八十六万四千人。二〇一九年の出生数推計が公表された。九十万人を下回る事態は国の別の推計より二年早い。少子化の勢いが止まらないが、政府の反応は鈍い。危機感が足りないのではないか。
 日本の人口は子どもが減っているのに、高齢者が増えるという特徴がある。社会や地域、家族を支える次世代が生まれてこないのだ。
 働きながらでも希望する人が結婚し、出産・子育てできる社会の実現が望ましい。だから、少子化対策は政府にとって重要課題のはずである。
 厚生労働省によると、日本人の年間出生数は団塊世代の三分の一程度まで落ち込む事態になった。人口は〇五年から減少に転じ一九年の自然減は五十一万二千人だ。
 これは東京都江東区とほぼ同じ、金沢市や愛知県豊田市より多い人口が消えたことになる。
 安倍晋三首相は少子化を「国難」と位置付けてはいるが、その事実を重く受け止めているのか。
 政府は、これまでも消費税財源を使い、待機児童対策として保育所整備を進めてきた。幼児教育・保育の無償化も実施の段階だ。取り組みを進めていると説明する。
 だが、政府の全世代型社会保障検討会議がまとめた中間報告に、肝心の子育て支援策は盛り込まれなかった。来年度から未婚のひとり親の税負担を軽くする制度を導入するが、そもそも税制に子育て支援の視点は十分あるだろうか。
 さらに、政府の支援策は主に既婚夫婦に向いている。確かに必要だが、出産の前提となる結婚が難しくなっている現実もある。厚労省によると一九年の婚姻件数は五十八万三千組、一九七〇年の百万組超から減り続けている。
 雇用が不安定で賃金も安い非正規雇用の広がりが若者の結婚を阻んでいる面がある。
 バブル経済崩壊で正社員採用が絞られたため思うように就職できなかった就職氷河期世代への支援に、政府はやっと乗り出した。
 だが、この世代は既に四十代にさしかかっている。これから出産する人は限られるだろう。
 今後、子どもを産む女性の数が減る以上、少子化の加速は避けられない。「子育てを社会で支える」との考え方に立って雇用や貧困、住宅を含めた政策の総点検が必要だ。その上で実効性ある政策を集中するしかない。
 私たちも政府任せにせず、例えば電車内では妊婦に席を譲るなど生活の中でのちょっとした心遣いを大切にしたい。


自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ
2019年12月28日:東京新聞

 政府が中東地域への自衛隊派遣を閣議決定した。調査・研究が名目だが、国会の議決を経ない運用は、文民統制の観点から危ういと言わざるを得ない。
 自衛隊の中東派遣は、日本関係船舶の航行の安全確保のため、防衛省設置法四条の「調査・研究」に基づいて実施される。
 活動領域はオマーン湾やアラビア海北部、アデン湾の三海域。海上自衛隊の護衛艦一隻を派遣し、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に当たるP3C哨戒機二機とともに、海域の状況について継続的に情報収集する。派遣期間は一年で、延長する場合は改めて閣議決定する、という。
◆米追随、イランにも配慮
 自衛隊派遣のきっかけは、トランプ米大統領が、ペルシャ湾やホルムズ海峡などを監視する有志連合の結成を提唱し、各国に参加を求めたことだ。米軍の負担軽減とともに、核問題で対立するイランの孤立化を図る狙いだった。
 しかし、イランと友好関係を築く日本にとって、米国主導の有志連合への参加は、イランとの関係を損ないかねない。
 そこでひねり出したのが、有志連合への参加は見送るものの、日本が独自で自衛隊を派遣し、米軍などと連携して情報共有を図るという今回の派遣方法だった。
 急きょ来日したイランのロウハニ大統領に派遣方針を説明し、閣議決定日も当初の予定から遅らせる念の入れようだ。自衛隊の活動範囲からイラン沖のホルムズ海峡を外すこともイランへの刺激を避ける意図なのだろう。
 米国とイランのはざまでひねり出した苦肉の策ではあるが、トランプ米政権に追随し、派遣ありきの決定であることは否めない。
 そもそも、必要性や法的根拠が乏しい自衛隊の中東派遣である。
◆船舶防護の必要性なく
 中東地域で緊張が高まっていることは事実だ。日本はこの地域に原油輸入量の九割近くを依存しており、船舶航行の安全確保が欠かせないことも理解する。
 とはいえ、日本関係船舶の防護が直ちに必要な切迫した状況でないことは政府自身も認めている。
 そうした中、たとえ情報収集目的だとしても、実力組織である自衛隊を海外に派遣する差し迫った必要性があるのだろうか。
 戦争や武力の行使はもちろん、武力による威嚇も認めていない憲法九条の下では、自衛隊の海外派遣には慎重の上にも慎重を期すべきではないのか。
 調査・研究に基づく派遣は拡大解釈できる危うさを秘める。米中枢同時テロが発生した二〇〇一年当時の小泉純一郎内閣は、法律に定めのない米空母の護衛を、この規定を根拠に行った。
 今回の中東派遣でも、現地の情勢変化に応じて活動が拡大することがないと断言できるのか。
 日本人の人命や財産に関わる関係船舶が攻撃されるなど不測の事態が発生し、自衛隊による措置が必要な場合には、海上警備行動を新たに発令して対応するという。
 この場合、自衛隊は武器を使用することができるが、本格的な戦闘状態に発展することが絶対にないと言い切れるのだろうか。
 最大の問題は、国権の最高機関であり、国民の代表で構成される国会の審議を経ていないことだ。国会による文民統制(シビリアンコントロール)の欠如である。
 自衛隊の海外派遣は国家として極めて重い決断であり、そのたびに国会で審議や議決を経てきた。
 国連平和維持活動(PKO)協力法や、インド洋で米軍などに給油活動するテロ対策特別措置法、イラクでの人道支援や多国籍軍支援を行うイラク復興支援特措法、アデン湾で外国籍を含む船舶を警護する海賊対処法である。
 自衛隊の活動を国会による文民統制下に置くのは、軍部の独走を許し、泥沼の戦争に突入したかつての苦い経験に基づく。
 日本への武力攻撃に反撃する防衛出動も原則、事前の国会承認が必要だ。自衛隊を国会の統制下に置く意味はそれだけ重い。
 今回の中東派遣では、閣議決定時と活動の延長、終了時に国会に報告するとしているが、承認を必要としているわけではない。
◆緊張緩和に外交資産を
 国会の関与を必要としない調査・研究での派遣には、国会での説明や審議、議決を避け、政府の判断だけで自衛隊を海外に派遣する狙いがあるのだろうが、国会で説明や審議を尽くした上で可否を判断すべきではなかったか。
 閣議決定にはさらなる外交努力を行うことも明記した。米イラン両国との良好な関係は日本の外交資産だ。軍事に頼ることなく緊張を緩和し、秩序が維持できる環境づくりにこそ、外交資産を投入すべきだ。それが平和国家、日本の果たすべき役割でもある。


自衛隊の中東派遣決定
 結論ありきに疑問が残る
2019年12月28日:毎日新聞

 海上自衛隊の中東派遣が閣議決定された。米国主導の海洋安全保障イニシアチブ(有志連合)に参加すれば、イランとの友好関係が立ちゆかなくなる。そのため有志連合とは一線を画す独自派遣の形をとった。
 しかし、ホルムズ海峡付近で日本企業が運航するタンカーが攻撃されたのは6月だ。その後、情勢は落ち着いている。なぜ派遣が必要なのか。米国の顔を立てるため、結論ありきで検討が進んだ印象は拭えない。
 疑問が残るのは、防衛省設置法の「調査・研究」を派遣の根拠規定としたことだ。日本周辺の海域・空域で自衛隊が普段行う警戒監視活動などの根拠とされている。
 調査・研究名目の情報収集活動であれば、イランに軍事的圧力をかける意図はないと説明しやすい。だが、海外に軍事力を派遣する重い政治決断の法的な裏付けとしては軽すぎる。あまりにアンバランスだ。
 護衛艦の活動海域はアラビア海北部からオマーン湾までとし、ホルムズ海峡とその奥のペルシャ湾を除外したのもイランへの配慮だ。危険度の高い海域には入らず、情勢の変化を見極める思惑もあろう。
 それでも広大な海域だ。日本関連の船舶が攻撃される事態になれば海上警備行動を発令するというが、護衛艦1隻では限度がある。
 護衛艦の到着は来年2月になる見通しだ。いくら中立の体裁をとっても、実態は米国の同盟国としての活動が中心になる。収集した情報は米海軍と共有し、事実上、有志連合と連携していくとみられる。アデン湾で海賊対処に当たってきたP3C哨戒機も新たな任務を兼ねる。
 安倍政権としては米国への「お付き合い」程度にとどめたつもりでも、敵対勢力からは「米軍と一体」とみなされ、日本が紛争当事者となりかねないリスクがある。
 だからこそ、軍事力を動かすときには厳格な法治とシビリアンコントロール(文民統制)が求められる。国会でほとんど審議せずに閣議決定した政権の姿勢は問題だ。国会での継続的な検証を求めたい。
 そもそもホルムズ海峡の治安が悪化したのは、米国がイラン核合意から離脱したことに端を発している。緊張を緩和するための平和的な外交努力を継続すべきだ。

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