政治家がブローカー化する

27・28日と拙ブログ休刊したのは、日本地理教育学会の地理教育システムアプローチ研究会が、大坂・中之島の大阪大学連合大学院サテライトキャンパスで開かれ、参加したためでした。
12月27日という素っ頓狂な日程でしたが楽しくお勉強してきました。
しかし、世の中では政治の襤褸が排せつ物のようにあふれ出している。まるで「千と千尋の神隠し」の“カオナシ”のような政治状況にウンザリだ。しかも、おおもとの“カオナシ”は小者“カオナシ”の陰に隠れて年を越そうと姑息だ。


(社説)
秋元議員逮捕 カジノ推進の裏で何が
2019年12月26日:朝日新聞

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の参入をめぐり、中国企業から賄賂を受け取ったとして、東京地検は秋元司衆院議員=自民党を離党=を収賄の疑いで逮捕した。別の同党議員らの事務所も家宅捜索を受けた。
 ギャンブル依存症の増加や不正な資金洗浄(マネーロンダリング)、治安の悪化といった数々の懸念があるなか、16年12月にIR推進法が成立した際、衆院内閣委員長として採決を強行したのが秋元議員だった。
 翌年8月にはIR担当の内閣府副大臣兼国土交通副大臣に就任し、その頃から贈賄側との付き合いが始まったとされる。
 秋元議員は潔白を主張しており、慎重な捜査が求められる。一方で容疑が事実であれば、副大臣時代に制定されたIR実施法の立案・審議過程や、その後の政府部内の手続きにも、大きな疑問符がつく事態である。
 ところが菅官房長官は会見で「できるだけ早期に効果が実現できるよう、(IRの開業準備を)着実に進めていきたい」と述べ、観光振興や雇用創出につながるとしてカジノに前向きな安倍政権の方針を繰り返した。政治家や省庁幹部がIR事業者と接触することに特段の規制がないことについても、見直す考えはないと言明した。
 認識が甘いと言わざるを得ない。年明けにはカジノ規制を担う管理委員会が発足するが、いったん歩みを止め、問題点を洗い出すのが筋ではないか。
 巨額のカネが動くIRと政治の癒着を指摘する声は、以前からあった。17年に首相が訪米した際、全米商工会議所との朝食会にトランプ大統領を支援するカジノ企業代表が同席したのは記憶に新しい。西村康稔経済再生相も、米カジノ関係企業にパーティー券を購入してもらっていたことが判明している。
 外国の事業者が日本進出をめざし、陰に陽に働きかけを強めてきた。今回の摘発は氷山の一角ではないのか。カジノ利権の解明なくして、国民の理解は得られないと知るべきだ。
 誘致をめざす自治体にも慎重な対応が求められる。
 IR開設にあたっては、自治体が事業者1社を選び、一緒に政府に申請する決まりだ。その「1社」になろうと、売り込み競争が繰り広げられている。
 どの事業者をどんな基準で選ぶのか。誘致活動に税金をいくら使うのか。住民や議会への丁寧な説明が必要だが、そうなっていないのが現実だ。各地で疑問や反発が起きている背景にはこの透明性の欠如がある。
 各自治体は事件を機に、地域の将来を左右する重大な問題であるとの認識を新たにして、誘致の是非を考える必要がある。


秋元議員逮捕 IR巡る疑惑の徹底解明を
2019年12月26日:読売新聞

 カジノ参入を巡る不透明な金の動きが明らかになった。疑惑の徹底解明が求められる。
 東京地検特捜部が、秋元司衆院議員を収賄容疑で逮捕した。カジノを含む日本の統合型リゾート(IR)事業への参入を目指していた中国企業側から、現金300万円などの賄賂を受け取った疑いがある。
 中国企業の日本法人の元役員らが無届けで国内に多額の現金を持ち込んだ疑いがあり、特捜部が捜査していた。この現金の一部が、秋元容疑者側に渡された可能性があるという。元役員ら3人も贈賄容疑で逮捕された。
 秋元容疑者は逮捕前、ツイッターで「不正には関与していない」と主張していた。現職の国会議員が逮捕されるのは約10年ぶりだ。特捜部は、証拠に基づく適正な捜査に努めてもらいたい。
 秋元容疑者は現金を受け取ったとされる2017年9月当時、IR担当の内閣府副大臣だった。IRの実現を目指す超党派議員連盟のメンバーでもあった。
 副大臣当時、中国・深センにある贈賄側の企業の本社を訪問していた。この企業がIR参入を検討していた北海道留寿都村を家族で訪問し、旅費や宿泊費を企業に負担させた疑いも持たれている。
 担当副大臣として、職務と関連する企業との距離があまりにも近すぎる。癒着を疑われても仕方がないのではないか。
 中国企業側はどのような狙いで秋元容疑者に接触し、提供したとされる現金の趣旨は何だったのか。IR事業を巡って行政が歪ゆがめられた事実がなかったかについても、調べを尽くす必要がある。
 賭博を行うカジノを中核としたIRは、東京五輪後の成長戦略の柱として政府が導入を推進してきた。国内で最大3か所にカジノの設置を認めるIR実施法が18年に制定され、20年代半ばの開業を目指して準備が進められている。
 外国人観光客の増加や地域経済の振興につながるとして、大阪府・市や横浜市など複数の自治体が誘致を表明している。今後は誘致活動の活発化が見込まれる。
 気がかりなのは、IR事業への参入を目指す海外企業などから、自治体への営業活動が盛んに展開されていることだ。
 IR事業への投資規模は、多い所で1兆円超と見込まれる。巨額の資金の一部が、行政への不適切な働きかけなどに使われることがあってはならない。自治体など行政側は、事件を機に業者との関係について襟を正すべきだ。



【主張】
秋元容疑者逮捕 IR事業の闇放置するな
2019年12月26日:産経新聞

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の推進には、安倍晋三首相も「成長戦略の目玉になる」と期待している。一方で、カジノの解禁には強い反発がある。
 ギャンブル依存症への不安と、利権の行方への不信が、反発の主たる要因である。広く国民の理解を求めるためには、計画の透明性が不可欠である。そこに不正が絡めば、誰も耳を貸してはくれまい。
 IR事業をめぐる収賄容疑で、東京地検特捜部は自民党衆院議員の秋元司容疑者を逮捕した。贈賄容疑で広東省深センに本社を置く中国企業「500ドットコム」の元幹部ら3容疑者も逮捕した。
 秋元容疑者は平成28年の臨時国会で衆院内閣委員長としてIR推進法の成立に関わった。29年8月から30年10月までは内閣府副大臣でIRを担当し、観光施策を所管する国土交通省の副大臣も兼務した。党と政府で一貫してIR事業を推進する立場にあった。
 秋元容疑者は29年9月下旬に東京都内で現金300万円を受け取り、30年2月中旬には、妻子とともに北海道留寿都(るすつ)村への約70万円相当の旅行に招待されたとされる。いずれもIR担当の内閣府副大臣在任中だった。
 中国企業は留寿都村が誘致していたIR事業への参入に意欲を示していた。秋元容疑者は中国企業が那覇市で開いたシンポジウムで基調講演を行い、深センの本社も訪問した。贈賄側容疑者らとともに北海道で留寿都村幹部とも面会している。担当副大臣として事業参入を目指す一企業との密接すぎる関係は異様である。
 菅義偉官房長官は秋元容疑者逮捕のIR事業への影響について「できるだけ早期にIR整備による効果が実現できるよう着実に進めていきたい」と強調した。
 政府がなすべきは、まず捜査に全面協力を惜しまぬことである。容疑が事実であれば、担当副大臣に登用した不明を恥じ、任命責任を問われなくてはならない。
 留寿都村はすでに優先候補地から外れ、北海道は誘致を見送っている。逮捕直前まで「事実無根」などと関与を否定していた秋元容疑者は自民党を離党した。
 それで事件に幕が引かれるわけではない。最大3カ所とされる候補地の選定は、これから佳境に入る。他に不正はないか。監視の目を強める必要がある。



秋元議員逮捕 カジノの闇はどこまで
2019年12月26日:東京新聞

 カジノ汚職だ。統合型リゾート施設(IR)参入に絡み、自民党の秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検に逮捕された。成長戦略が利権にまみれていた証左だ。IRは立ち止まって再考すべきだ。
 IRを所管する内閣府副大臣と観光施策を所管する国土交通副大臣を二〇一八年十月まで兼務した。さかのぼれば秋元容疑者は超党派の国際観光産業振興議員連盟にも加わり、IR整備推進法案の審議を取り仕切る衆院内閣委員会の委員長でもあった。
 つまり安倍晋三政権が成長戦略として描いたカジノ法を作り上げた立役者なのだ。その人物が中国企業側から便宜を図ってほしいとの趣旨で計三百七十万円相当の利益供与を受けた。それが容疑だ。
 東京地検による国会議員の逮捕は約十年ぶり。汚職事件では二〇〇二年の鈴木宗男衆院議員(現在は参院議員)以来となる。大阪地検の証拠改ざん事件などで信頼が崩れていた検察だけに、カジノ参入をめぐる闇を徹底的に解明してもらいたい。
 首相自ら「新たなビジネスの起爆剤」「観光先進国へ引き上げる原動力」と位置付けている事業である。これまでに横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の四地域が誘致を表明しており、自治体側の準備が進んでいる最中だった。二十四日には運営事業者の公募手続きを開始したばかりだ。
 さらに国の意向調査では東京都、千葉市、名古屋市なども前向きな回答をしており、さながら“カジノ列島”の熱気さえ感じる。だが、日本にはもともとノウハウがない分野で、結局は米国など海外資本の進出が見込まれる。
 それだけに政・官との癒着が起きるのは中国企業ばかりではあるまい。東京地検は推進派の議員を含め、カジノ汚職の捜査の視野を広く持ってもらいたい。
 何より誘致表明の自治体では住民の反対運動が起きている。もともとギャンブル依存症の比率が高い日本であるし、生活環境の悪化も懸念される。マネーロンダリング(資金洗浄)の場になる心配もある。そんな住民の不安が解消されたわけではない。
 雇用創出などのプラス面ばかりを強調せず、この際、政府は住民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、考え直すべきなのではないか。
 日本では古くから、民間の賭博を禁じてきた歴史がある。この禁を破り、ギャンブルで経済成長しようという発想自体が、どこかおかしい。



娯楽産業人脈を築いた秋元議員
 接点はパチンコ業界から
2019年12月26日:朝日新聞

 朝日新聞が「逮捕へ」と報じた25日朝。秋元司衆院議員(48)=東京15区=から「事実無根であり、全く関与してません」というメールが記者に届いた。午前10時36分には、「(出頭要請を受けて)今、向かっているところ」。東京地検が「収賄被疑者」として逮捕を発表したのは、その約1時間後のことだった。
 カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる贈収賄事件で、東京地検特捜部はこの日、秋元議員を収賄容疑で逮捕した。現職の国会議員が逮捕されるのは2010年1月以来、およそ10年ぶりのことだ。秋元議員はいったいどんな人物なのか。巨大利権を生むとされるIRと、どんな関わりを持っていたのか。
 16年12月、衆院の内閣委員会。一部野党が猛抗議する中、「カジノ解禁法」の採決が強行された。賭博罪に触れるカジノの合法化につながる重要法案だったが、委員会で費やされた時間はわずか5時間33分。委員長として審議を打ち切り、採決に踏み切ったのが秋元議員だった。
 「荒っぽくなるが間違いなくやる」。前月、秋元議員は所属派閥の長でもある二階俊博・自民党幹事長との面会を終えた後、周囲に語った。連立を組む公明党内で賛否が割れ、長くたなざらしにされていた法案を委員長の職権で審議入りさせる意欲を示したものだった。これを聞いた党幹部からは、不用意な発言を慎むよう厳重注意を受けた。
 IRは、安倍政権が成長戦略の目玉と位置づける。秋元議員が軸足を置いたIR実現を目指す議員連盟で、安倍晋三首相はかつての最高顧問でもあった。
 解禁法の採決強行という「実績」をつくった秋元議員はその後、IR担当の副大臣を任され、より中心的な立場を担うことになる。
 「大した力はないが、お調子者で、危ない筋とも付き合っていた」。自民ベテラン議員は秋元議員をそう評す。その議員活動をたどると、娯楽産業との最初の接点はパチンコ業界にあった。
 秋元議員は東京生まれ。大東文化大(東京都板橋区)に在学中の1993年、21歳で自民党の小林興起衆院議員(当時、旧東京5区)の学生秘書になった。卒業してそのまま正式な秘書になり、2000年に公設第1秘書に就いた。
 小林氏は首相を目指して全国各地に後援会組織を作っており、その取りまとめ役を担った。「朝から晩までよく働き、人に取り入るのがうまかった。政治への志もあった」と、小林氏は振り返る。
 「秘書を国政に送り込んで派閥を形成する」。そんな小林氏の構想の第1号として、04年の参院選に全国比例区で立候補し、32歳で当選した。自民党では竹中平蔵・経済財政相(当時)に次ぐ2番目の得票数。秋元議員は周囲に「(あいうえお順の)比例名簿が『あ』で1番だったから」と言って笑った。
 小林氏はパチンコ業界と関係が深く、秘書時代にパーティー券を売っていた秋元議員は、各業者の懐具合を熟知していた。05年に小林氏が落選すると、引き継ぐようにパチンコ業者を自分の支援者にしていった。
 10年の参院選では再選できなかったが、衆院東京15区(江東区)にくら替えし、12、14、17年の選挙で比例復活を含めて3連続当選。議員活動で力を入れたのは、パチンコ業界から人脈を伸ばした娯楽産業の振興だ。
 「カラオケや飲食店は夜遅くまで営業しているのに、(ナイト)クラブだけ規制するのは行き過ぎだ」
 「ダンス文化推進議員連盟」では事務局長を務め、クラブの規制緩和を提言。朝までの営業が可能になる改正法が15年に成立した。
 IRをめぐっても議連で活動した。内閣委員長として16年に採決を強行した議員立法「カジノ解禁法」で政府にIR整備を促すと、政府が作った実施法には担当副大臣として関わり、18年に成立させた。
 「日本の極みプロジェクト 世界から大富豪が訪れる国へ」。国土交通省の官僚らと研究会を作って本も出版した。本の中で秋元議員は、IRでは質の高い娯楽を手頃な値段で楽しめるとし、「それができるのは、カジノで収益を得るから」と強調した。
 高い集金力も目に留まる。秋元氏が代表を務める二つの政治団体は14~18年、各年の収入総額が約9千万~約2億円に上る。パチンコ、クラブ、太陽光、不動産、飲食店……。寄付者やパーティー券の購入者はさまざまだ。
 一方、その交友関係が問題視されることもあった。
 18年には証券取引等監視委員会が粉飾決算の疑いで強制調査したバイオ燃料企業から36万円の献金を受けていたことが発覚し、返金した。東京地検が今年着手した企業主導型保育事業をめぐる詐欺事件をめぐっては、国会で「保育所の開設を口利きしたのではないか」と追及された。
 「小泉進次郎(現・環境相)とは仲が良いが、ライバルとして競うんだ」。ある元国会議員は昨年、秋元議員からこんな言葉を聞いた。「昔から鼻っ柱が強かったが、相変わらずだった」
 「パチンコもカジノも、業界を仕切る政治家は自分だと印象づけようとしていた」。自民党の閣僚経験者はそう指摘したうえで、続けた。「注目は、問題が秋元(議員)にとどまるかどうかだ」



委員長時に「カジノ法」採決強行
 秋元衆院議員とIR
2019年12月25日:朝日新聞

 カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐり、自民党の秋元司衆院議員(48)=東京15区=が中国企業側から現金200万~300万円を不正に受け取っていた疑いが強まったとして、東京地検特捜部が秋元氏を逮捕する方針を固めた。秋元氏はどのような経歴で、IRとどう関わってきたのか。
 秋元氏は衆院議員秘書を経て、2004年の参院選比例区で初当選した。第1次安倍晋三内閣で防衛政務官を務めたが、自民党が野党として臨んだ10年参院選では落選。その後、衆院に転じて12年から3回の当選を重ねた。カジノ解禁を推し進めていた自民議員ら超党派による「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)に所属していた。
 IR誘致が各地で進み出したのは、議連が議員立法で提出したカジノ解禁法が成立した16年12月のことだ。民進党(当時)などの反対を押し切って法案の採決を強行した衆院内閣委員会で、委員長を務めていたのが秋元氏だった。
 その後、内閣府には担当の大臣や副大臣がおかれ、観光行政を所管する国土交通相と国交副大臣がそれぞれ兼務した。17年3月には、国交、警察など各省庁から50人弱の職員が集められ、内閣官房にIR推進室ができた。秋元氏は同年8月に国交副大臣に就任し、2代目のIR担当の内閣府副大臣になった。
 ただ、カジノ解禁法はカジノをつくるための具体的な法整備を政府にさせることが目的で、取り扱う事務はIR整備に向けた「総合調整」や「法律案及び政令案の立案」などあいまいだった。
 IRに関するより具体的な内容は、18年7月に成立したIR実施法に盛り込まれた。全国に最大3カ所のIR設置を認めることや、各地域の計画を認定する時の評価基準を示した基本方針づくり、実際の審査・認定の業務を国交省が担うことが明示された。しかし、秋元氏は同年10月の内閣改造で国交副大臣とIR担当の内閣府副大臣を外れた。
 その後、各自治体でIR誘致に向けた動きが本格化したが、申請の時期も含めた基本方針案を国交省が示したのは今年11月になってからだ。秋元氏が担当副大臣だったのは法整備がスタートし、自治体が誘致へ動き出し始めた時期と一致する。だが、政府関係者は当時の秋元氏について「熱心にIRをやっていたという印象はない」と話す。(贄川俊)


カジノ汚職と誘致活動
 まずは立ち止まるべきだ
2019年12月29日:毎日新聞

 カジノ事業参入を巡る汚職事件を受け、カジノ整備の是非について議論が再燃している。
 秋元司衆院議員は、事業参入を図る中国企業側からの収賄容疑で逮捕された。2017年9月の衆院解散当日、議員会館の事務所で現金300万円を受け取った疑いがある。
 当時、秋元議員は、カジノを含む統合型リゾート(IR)担当の副内閣相兼副国土交通相だった。IR実施法の制定に携わっている。贈賄側から何らかの働きかけがあったとすれば、法の正当性が揺らぐ。
 にもかかわらず、菅義偉官房長官は「早期に整備効果が実現できるよう、必要な準備は進めたい」と繰り返した。カジノは訪日客増や地方の活性化につながると主張して、スケジュールは変えない方針を示した。
 しかし、元副大臣が逮捕されるという重大性に照らせば、こうした姿勢は理解しがたい。事態の深刻さを認識していないのではないか。
 政府は来月、カジノ事業者を審査して免許を与えるカジノ管理委員会を設置する。整備の基本方針も来月中に決定し、21年1月から自治体の誘致申請を受け付ける予定だ。
 参入外国企業絡みの汚職事件に発展した以上、いったん立ち止まるべきだろう。東京地検特捜部の捜査結果も踏まえて、カジノ整備の問題点を検証するのが先決である。
 カジノ事業者を実際に選定するのは、誘致を目指す自治体となる。大阪府・市は他に先駆けて、事業者の募集要項を発表した。
 参入を狙う外国企業は、住民にPRするなど攻勢をかけている。自治体は事業者との面会の際、複数の職員で対応して記録を残したり、会食を禁止したりしている。
 それでも癒着の芽は残る。大阪では、府と市がアドバイスを依頼したコンサルティング会社の社員が、事業者側から接待を受けていた。
 多くの自治体は住民の理解が不十分なまま動いている。横浜市の市民説明会では、財政上の理由からカジノの必要性が強調される半面、計画には具体性がなく、参加者から不満の声が出ていた。
 そもそもカジノは、治安悪化やギャンブル依存症などが懸念され、反対論は根強い。カジノが地域にとって本当に必要なのか再考すべきだ。



菅官房長官の右腕もIR汚職企業と関係か
内閣官房IR推進本部の事務局トップが
500ドットコムCEOと
仲良くシンポジウム参加
2019年12月28日:LITERA

 自民党の秋元司衆院議員の逮捕によって、カジノ(IR)を取り巻く状況は政界の巨大疑獄事件に発展しようとしている。逮捕された秋元司衆院議員、家宅捜索を受けた白須賀貴樹衆院議員以外にも、贈賄で顧問が逮捕された中国企業「500ドットコム」から接待や供与を受けたとして、さまざまな政治家の名前が取りざたされている。
 そんななか、今度は菅義偉官房長官率いる内閣官房のIR事務責任者が、中国企業「500ドットコム」が深く関わったシンポジウムに参加していたことがわかった。
 このシンポジウムとは、2017年10月29日、東洋大学白山キャンパスで開かれた「ギャンブル依存研究の最前線」。周知のように、カジノを認めるIR法成立にあたっては、ギャンブル依存症対策の必要性が叫ばれ、現在も、予算拡大、保険適用などの動きが進んでいる。このシンポジウムもそうした推進とセットで開催されたものらしく、会場に集まった100人ほどの聴衆も多くはIR関係者だった。
 シンポジウムではまず、京都大学医学部の高橋英彦准教授(当時)が基調講演を行ったのだが、これに続いて、なぜか500ドットコムの最高責任者・潘正明CEOが登壇。「ギャンブル依存症対策におけるビッグデータの役割」と題して特別講演を行なったのだという。
 そのあと、潘氏も残る形でパネルディスカッションが開かれたのだが、これに参加したのが、中川真・内閣官房IR推進本部事務局長(当時は次長)だった。中川氏はこの日、菅官房長官の「日本から依存症を減らすのではない。依存症をなくす」という言葉を紹介し、IR推進法の成立を受けて、政府はギャンブル依存症の取り組みを本格化させると力説。来場者からの質問に応じるかたちで、「IR法案を出すことになるのは、おそらく来年以降に開催される国会になるのではないか」と、法案提出の見通しまでとくとくと解説していた。
「中川氏は財務省出身ですが、2014年から内閣審議官として内閣官房に出向。菅官房長官に重用され、2017年からはIR法の策定やカジノ事業者の管理政策を一手に仕切ってきた。2018年には、来年から発足するカジノの監視機関・カジノ管理委員会の人選にも大きな影響力を発揮してきました」(全国紙官邸担当記者)
 いわば、中川氏は日本のIR推進のキーマンとなってきた官僚、IR政策における菅官房長官の右腕的存在なのだ。そんな人物が国会議員への賄賂ばらまきで捜査を受けているカジノ企業のCEOと同席していたというのは驚きではないか。
 しかも、これ、第三者が開いたシンポジウムにたまたま同席したという話ではない。というのも、このシンポジウム主催者は「依存学推進協議会」(以下・依存学会)というNPO 法人なのだが、この団体、500ドットコムと一時、密接な協力関係を築いていたからだ。2017年10月、500ドットコムと依存学会は共同でギャンブル依存症対策研究のテーマ検討部会を立ち上げており、前述したシンポジウム3日前の10月26日に、潘CEOと依存学会の西村周三理事長が同席して記者発表を行っている。
「当時、500ドットコムは8月に日本法人を立ち上げたばかり。その存在を政府や自治体、IR関係者にアピールするために、この依存学会に接近して、協力体制を築いたんでしょう。当初は、研究助成の名目で500ドットコムが資金提供する予定があるとの話も聞きました。内閣官房IR推進本部の中川局長が出席したシンポジウムも、明らかに500ドットコムの宣伝の意味合いがあったと思いますよ。実際、500ドットコム自体がまるで自社主催のような体でプレスリリースを出していましたから」(IR関係者)
 500ドットコムが依存学会に資金提供していたかどうかについてはまだ、はっきりした証拠はないが、少なくともこのシンポジウム自体、500ドットコムの息が強くかかっていたことは間違いない。
 逮捕された秋元議員も2017年8月、逮捕された500ドットコムの顧問が仕切って那覇市で開いたIRのシンポジウムで潘CEOとともに基調講演を行ったことが明らかになっているが、内閣官房のIR推進本部事務局長・中川氏も、同じことをしていたといってもいいだろう。
 また、これは裏を返せば、500ドットコムのアプローチが政権中枢にまで伸びていたでもあるだろう。

500ドットコムCEOと
内閣官房事務局長が参加したシンポジウム主催団体の正体

 今回の贈収賄事件については、逮捕されたのが秋元議員で、ターゲットが北海道の留寿都村だったことから、「IR利権の中心からは遠い小物、マイナーな勢力がおこぼれに預かろうとした不正ではないか」ともいわれていたが、菅官房長官の右腕で、IR推進の中心的官僚が関わっていたとすれば、話は大きく違ってくる。
 いや、IR推進の官僚だけではない。実は、500ドットコムはIR誘致が決定的といわれる大阪府や大阪市、そして、大阪を拠点とする日本維新の会にもアプローチしていた可能性がある。
 鍵を握るのは、500ドットコムと密接な協力関係をしき、くだんのシンポジウムを開催したNPO法人依存学推進協議会だ。
 不可解なことに、会のホームページは秋元容疑者が逮捕された前後から閲覧できない状態になっているが、この依存学会の幹部には、以前からIRを積極的に推進してきた学者やカジノやギャンブル業界と深い繋がりを持つ企業関係者、大手広告代理店のIR推進担当者たちが参加している。
 しかも、この依存学会の幹部を調べていくと、“大阪のIR推進勢力”とのただならぬ繋がりが明らかになる。
 まず、依存学会の副理事長で、潘CEOや中川事務局長とともに問題のシンポジウムに参加していた谷岡一郎・大阪商業大学学長だ。谷岡氏はカジノやギャンブルについての著作を多数もつ「IR推進派」の学者。学長を務める大学の大学院にIRの専門コースまで設置している。谷岡氏はIR推進論客として「Hanada」(飛鳥新社)2017年2月号にも登場し、当時、審議中だった「IR法案」に反対する野党を批判。さらに〈カジノが新しく作られた地域でギャンブル依存症患者が統計上増えるのは、ほとんどが「ギャンブルをやめられないのが病気である」ことに気がついた人が増えるためと、もうひとつ、「相談窓口と治療施設が増えた」ことによると考えられる〉などの持論を展開していた。
 もうひとりが、理事の勝見博光氏だ。勝見氏は研究者であると同時に、大阪にある「IR戦略コンサルティング会社」の代表取締役社長でもある。この会社は〈日本のカジノユーザー約3万人が登録する、日本最大級のカジノとリゾートの情報サイト〉の運営等も行なっており、昨年秋には、大阪市北区に「カジノを疑似体験できる」と謳う店をオープンしている。同店では、客に飲食物を供するとともに、実際にディーラーがポーカーやバカラなどの遊戯を行う。メディアにも取り上げられ、勝見氏は「IR関係者が集まって交流するような場にしたい」などと語っていた。さらに勝見氏は、IRへの参入が取りざたされる日本のパチスロ大手・セガサミーホールディングスが今年になって立ち上げた一般社団法人「セガサミー文化芸術財団」の「クリエイティブディレクター」にも就任している。

シンポジウム主催のNPO幹部は
大阪府・大阪市IR推進会議の委員も務めていた

 しかし、問題はここからだ。この500ドットコムと協力関係にあった依存学会幹部の2人は、その関係があった時期、大阪府・大阪市IR推進局が夢洲地区へのIR誘致を検討・協議する「IR推進会議」(座長=溝畑宏・公益財団法人大阪観光局理事長)の委員を務めていたのである。
 谷岡氏は2017年の大阪IR推進会議に発足当初から2019年2月の第10回会議まで委員を務めた。第2回会議から第9回までは座長代理に就任し、府民・市民向けのIRセミナーで何度も講演しているだけでなく、大阪維新に所属する府議会議員の集会にも参加していた形跡がある。
 勝見氏にいたっては、“維新のドン”である橋下徹氏が首長時代から「大阪カジノ構想」に深く関与してきた。勝見氏はかつて「大阪エンターテイメント都市構想研究会」なる、2009年に大手ゼネコンや広告代理店らが設立した団体で研究員を務めていたのだが、この「都市構想研究会」は2010年1月、カジノに関する報告書をまとめて大阪府に提出。橋下府知事が掲げた「大阪カジノ構想」のたたき台となったと言われている。同年、大阪府は「大阪エンターテイメント都市構想推進検討会」を発足し、勝見氏はそのメンバーとなった。そして、2017年に大阪IR推進会議が発足すると、当然のように委員に就任し、2018年2月の第7回会議まで委員を務めた。
 しかも、依存学推進協議会の谷岡氏と勝見氏が、大阪行政のIR推進会議の委員として意見を述べていた時期は、500ドットコムがこのNPOと接触し「共同研究」をぶち上げていた時期と重なる。
 結果的には、500ドットコムが大阪のカジノ構想に食い込んだ形跡はないが、少なくともカジノ業者たちはこうして様々なルート・手段を使って、カジノ利権に食いこもうとアプローチを行なっているということだろう。そして、政治家や官僚、学者までがその誘いにホイホイのって、癒着関係を築いていく。まさに、IRはいま、原子力ムラと同じような利権の巣になろうとしているのではないか。
 メディアは疑惑の徹底追及するだけでなく、利権しか生まないIR法を即刻廃止に追い込むべきだ。
(編集部)

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