DTにバーゲンで売り出される、日本に。

国民の生活は置いてきぼりで、ABE政権はDTの“Buy American”に応えるためか、“NIPPON SELL”に熱心だ。来年度の予算を見ても防衛予算、武器購入費が増大し、国民の生活への予算は甚だ手薄いと言わざるを得ない。拙ブログで何度も言っているように、アベノミクスというのは「弱者に厳しく、強者に優しい」という思想のもとに、弱いものに厳しく、強いものには優しい政治ばかりが進められている。
しかも、行政が国会を蔑ろにし、安倍晋三首相は大統領にでもなった気分で、この国を支配している。結果、日本はほぼ“全体主義国家”、そして、彼は“独裁者”…。そして国民は路頭に迷うかのような日々…、では困る。


宇宙ゴミから衛星守る「監視レーダー」建設着々 山口・山陽小野田
あいまい説明 住民不信感
2019年12月22日:東京新聞・こちら特報部

 宇宙空間を漂う「ごみ」や「不審な人工衛星」から衛星を守るためとして、防衛省が宇宙を監視するレーダーを山口県に建設している。同じ県内が候補地となっている地上配置型迎撃システム「イージス・アショア」の陰で静かに進み、米主導で宇宙の軍事利用に足を踏み入れつつある。住民らは電磁波の影響や、「他憶からの攻撃目標になる」ことを懸念している。               (大野孝志)

現場看板「造成工事」の文言だけ

 レーダー建設が進められているのは、関門海峡を望む山口県山陽小野田市の埴生・津布田地区。人口5000人余の集落から1㌔ほど離れた丘が現場だ。2010年まで対潜哨戒機からのデータを受信していたアンテナ施設「山陽受信所」の跡地に建設される。9月に造成工事が始まり、市道に面した入り口は頑丈な門扉と監視カメラ、金属製の板囲いで覆われていた。
 看板には「造成工事」とあり、レーダーの文字はない。山陽道の料金所からは木々の向こうに、土がむき出しになった予定地の丘が見えた。周辺に人家はまばらで、トラックや地元の車が時おり通るほかは、鳥の声だけが聞こえる。宇宙防衛の最前線にしてはのどかだが、戦時中は軍の飛行場があり、海上自衛隊の練習機の基地も近い。
 計画では、ドームで覆ったレーダー6基を設け、通信や気象観測などの静止衛星が回る高度40000㌔の宇宙に電波を発射。寿命を終えた衛星やロケットの破片などのごみ「スペースデブリ」を24時間、無人で監視する。大きさが10㌢以下のデブリでも高速でぶつかれば、人工衛星が壊れるからだ。
 本年度予算に監視システムの取得経費として268億円を計上。23年度に運用を始める予定で、東京都府中市の航空自衛隊府中基地に新設する宇宙作戦隊が担当する。対潜哨戒機のデータは人工衛星で送られており、受信所の跡地に、その衛星を守るレーダーを造ることになる。
 建設用地の周りでは、、イージス・アショアのような反対を訴える目立った看板や活動は見当たらない。だが、住民らはもやもやとした不信感を抱く。
 これまでに住民説明会は2回だけ。17年11月の1回目の説明会の告知には、レーダーの目的を「宇宙ゴミや不審な衛星を監視」とした。不審な衛星とは、中国やロシアが開発する「キラー衛星」を意味している。ところが、今年8月の2回目の説明会では「不審な衛星」の文言がなく、説明会の内容も工事の進め方が中心。「軍事施設ではないと言いたいからか」と、矢田松夫市議(67)は疑う。
 2回目は着工直前だった。近くに住む無職篠原軍次さん(78)は「施設の中身が住民に伝わっていない。電磁波が心配」と語る。地元自治会長の石田正継さん(76)は「話を聞いてもよく分からん。国がちゃんとやってくれるんだから、反対する理由はない」としつつ「もっと地元に話が合っても良かったのでは」という。
 なぜこの場所に造るのかも疑問の一つだ。防衛省は同省が管理するすべての土地を調べ、日本の静止衛星の周りを監視できる経度にあることや、必要な面積があり、電波を遮る山がないこと、天候が穏やかなことなどから判断したという。だが、他の候補地については「詳細については回答を差し控える」とした。

「最初の攻撃目標になる」
JAXA「軍と違い常時対応は無理」
米強い要請か 薄れる軍民の垣根

 「防衛省はレーダーの出力を明かしておらず、狙った角度の外側に出る「『サイドロープ』の電磁波の影響を予測できない。国は住民の疑問に答えていない」。宇宙監視レーダーとイージス・アショアを調べている増山博行・山口大名誉教授(物理学)が指摘する。「イージス・アショアと同様、米からの強い要請を感じる。ミサイルを迎撃し、人工衛星を守るだけで安全や平和は守れない。安保法制以後、軍事力を背景に安全を確保しようという論調が強まっており、監視を怠ってはならない」
 防衛省は「総務省の電波防護指針を守り、人体に影響が出ないよう設計する」と強調するものの、発車する電波の出力を公表していない。さらに、説明会資料で「上空にのみ電波を発射」としているが、実際には赤道上空の衛星を監視するため、地面に対して20度の浅い角度となる。自宅が計画地から2㌔の無職福山清二さん(74)は「40000㌔の宇宙まで届くレーダーだから、出力は大きいはず。住民に影響がないという根拠がなく、懸念はクリアされていない」と憤る。
 近くの寺の住職(71)は「衛星を自衛隊が守るというんだから軍事利用で、戦争になり、最初に攻撃目標になるだろう。民間と軍事の垣根がなくなってきた」と語る。
 現在国内でスペースデブリを監視しているのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)だ。約23000個あるとされる10㌢以上のデブリのうち、15000個が集中する高度1000㌔前後を岡山県鏡野町のレーダーで監視。2000個が漂う35000㌔前後を同県井原市の光学望遠鏡で監視している。JAXAが運用している衛星を守るのが目的で、実際に衝突を避けるために衛星の軌道を変えることが、年に6回ほどあるという。
 このレーダーと望遠鏡は、宇宙監視の体制を構築するとした宇宙基本計画に基づき、23年までに更新される予定。レーダーはより小さなデブリを観測できるようになり、望遠鏡は現在の性能のまま新しくなる。防衛省のレーダーが監視する予定の高度付近は、JAXAの望遠鏡が監視している。
 となると、防衛省のレーダーは必要なのか。
 JAXA追跡ネットワーク技術センターの中村信一・主幹研究開発員(52)は「望遠鏡は雲があると観測できない。梅雨で1週間観測できないと、デブリの軌道が変わる。防衛省のレーダーは天候に左右されずにデータを集められるので、こちらも助かる」と語る。
 宇宙基本計画では、防衛省はJAXAと観測データやデブリ軌道の解析結果をやりとりするとしている。さらに、23000個あるとされるデブリを特定しているのは、米軍。13年に締結した監視協力や翌年の情報提供合意により、日米が協力することになっている。「基本的なデータを持っているのが米軍なので、日本で対応する窓口は防衛省になる」と中村氏。
 JAXAの施設で監視を担当しているのは10人ほど。システム更新の予算は19、20年度合わせて24億円。防衛省とは桁違いに少ない。中村氏は「うちはデータ解析の蓄積があるが、研究機関なので、デブリを脅威として捉えている軍とは取り組む姿勢が違う。研究なら晴れた夜だけの観測でも許されるが、常時対応を求められると厳しい」と明かした。
 JAXAは現在、防衛省から2人の出向者を受け入れ、いずれも宇宙監視を担当している。12年にはJAXA法が定められ、その事業を平和目的に限るとする規定をなくした。日本は米軍と歩調を合わせるように、宇宙の軍事利用に着々と進みつつある。

デスクメモ
 20日、米国は約70年ぶりの独立軍として「宇宙軍」を創設した。その目的には、人工衛星の防衛強化が含まれる。防衛省の宇宙監視レーダーも、きっとその強化策の一環だろう。イージス・アショア同様、日本の防衛ではなく、米国を守るための軍事施設が、日本にまた増える。       (歩)



地上イージス計画 深まる混迷
秋田「見直し」
「配備は撤回?」説明あいまい 揺れる地元
2019年12月19日:東京新聞・こちら特報部

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡り、候補地2カ所の地元が大揺れだ。築城自衛隊新屋演習場(秋田市)の見直し検討により、再調査中の国有地19カ所がある秋田氏以外の同県内や青森、山形県にも不安が拡大。一方、山口の住民は早々に「唯一の候補地」と押し付けられ、「こちらも見直しを」と憤る。システムが時代遅れとの指摘もあり、配備自体の見直しを求める声が強まっている。
(片山夏子、安藤恭子)

新屋演習場

 新屋演習場への配備計画を見直す方向で政府が検討を始めたことは11日の報道で明らかになった。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「再調査を実施しているところで、何らかの方針や検討の方向性を決定した事実はなく、新屋演習場への配備を断念した事実もない」と火消しに追われた。
 しかし、菅氏は11月下旬の会見で、佐竹敬久秋田県知事に「再調査では住宅地との距離も考慮して評価するよう防衛相に指示した」と伝えたことを認めている。国の再調査は秋田県の能代市、由利本荘市、にかほ市、男鹿市のほか、青森県のつがる市鰺ヶ沢し、山形県の遊佐町、酒田市、鶴岡市などの計19カ所で来年3月ごろまで行われる予定。住宅地との距離を考慮するなら、秋田市の人口密集地に近接する新屋演習場は当然対象になることになる。
 だが、新屋演習場の近隣16町内会でつくる「新屋勝平地区振興会」副会長の五十嵐正弘さん(72)は「新屋への配備はなくなったのか、一部対象などを見直すのか曖昧で分からない。住宅密集地に近いことが関係するなら、新屋への配備はないだろうが」と憤る。見直しと聞いた時は一瞬よかったと思ったが、今は安心できないという。
 新屋演習場の選定では、レーダーを遮る山の仰角が防衛省の説明資料で誤っていたり、住民説明会中に職員が居眠りをしたりする不祥事が続いた。「配備ありきで、これまでもでたらめな対応だった。政府は信用できないし、他の候補地にも配慮すべきではない」

新たに19カ所 候補に浮上

 新屋演習場以外の再調査地に近い住民の心中は穏やかでない。秋田県由利本荘市の「由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会」代表の佐々木憲雄さん(72)は「これまで新屋ありきで他の候補地は駄目だと言っていたのが、なぜ急に浮上したのか」と戸惑う。「計画が進む風力発電にも反対しているのに、この上イージスが配備され、その電磁波まで…。周辺に民家がないと言っても攻撃目標にされる可能性もあり、絶対反対」と述べた。
 同市の今野英元市議(71)は、県内25市町村の6割の議会で配備反対を求める請願や陳情が採択されていることを強調。由利本荘市では継続審議で「市民は不安がっているのに…。国防に地方が意見を言うのはおかしいという議員が根強い」とため息をつく。
 波紋は他県にも。共産党青森県議弾などでは12日、県に対し、同県内の配備を許さない態度を明確に示し、国内への配備断念を求めるよう申し入れた。安藤晴美県議は「そもそも米軍のための配備。日本に必要なのか。住民の安全上の不安は増す一方。それに新屋は住民の反対が強いからと、急に他の候補地を浮上させたり、山口も反対しているのに、『適地』とするなどとんでもない。配備はやめるべきだ」と述べた。

山口は「適地」
秋田とセットのはず■住宅もっと近いのに

むつみ演習場

 一方、防衛省は17日、イージス・アショアの山口県配備について、原稿案のむつみ演習場(萩市、阿武町)を唯一の適地とする再調査結果をまとめた。山本明広防衛副大臣が同日、県庁を訪れ、村岡嗣政知事らに「他の国有地で条件を満たすものはない」との結果を説明した。秋田との対応の違いが鮮明となった。
 ただ、同省はこれまで「秋田と山口に配備すれば、24時間365日、日本全域を守りつづけられる」と説明してきた。仮に一方の配備が見送られれば、この説明は成り立たない。
 村岡氏も記者団に「山口は秋田とセットだ。候補地が変われば当然。むつみ演習場で良いのか問わないといけない」と述べ、受け入れるかどうかの判断は秋田側の再調査結果が出た後になるとの見通しを示した。
 配備反対を明言してきた阿武町の中野孝夫副町長は「秋田県が住宅地との距離を重要な判断要素とするなら、山口でももっと近くに住宅がある。こちらだけ『ありき』で進めるのは筋が通らない」と憤る。同庁が力を注いできた、農漁業に若者を呼び込む移住政策にも影響するとみる。「演習場は海から20㌔も内陸にあり、ミサイルの飛翔ルート下の住民の不安は大きい。街の存亡にかかわる危機だ」
 萩市の市民団体「イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会」は、同市の1/4に当たる5700世帯の署名を集めた。森上雅昭代表(67)は「密集地でなくても人の命は同じ。なぜ秋田と差をつけるのか、納得がいかない。上空をミサイルが飛ぶのも攻撃目標となるのも怖い。人が多く住む狭い国土にイージス・アショアを置くことに無理がある」と憤る。
 演習場から4キロ離れた所で特産のダイコンを育ててきた同市の農業、田村健二さん(68)が心配するのは、レーダー波による健康被害や農機具への電波障害だ。「昼も夜も野外で作業する人への影響もわからないし、遠隔運転で農薬を散布するドローンやヘリコプターに干渉するかもしれない」。演習場は水源地にあり、水田農家には地下水枯れを心配する声も広がる。

「海上防衛の方が効果的」計画中止を

 こうした現状について、軍事評論家の田岡俊次氏は「仮に2カ所への配備計画の1カ所を中止すれば、国の無駄遣いが半分で済むというだけのこと」と苦笑する。弾道ミサイルの防衛能力を持つイージス艦はかつて4艘だったが、2021年3月に8艘体制が完成する。そのうちの2艘を常に洋上に待機させれば、日本全土が守備圏内に入るというのが元々の防衛省の計画だった、という。
 「ただ、ミサイル防衛用のミサイルは1発約40億円と高額だ。イージス・アショアに数千億円を投じるより、このミサイルの数を増やす方が、日本を守るのに合理的だ。米国の言うままに計画を変えるかから、無理が生じた。地元の人々の不信を招いたのも当然だ」
 防衛ジャーナリストの清谷信一氏は河野太郎防衛相の会見でレーダーの危険性について尋ねたが、「運用についてお答えするのは差し控えます」と拒まれた。「住民への説明も同じ。内陸部に配備しようというのに、レーダー波による健康被害や電波障害の恐れ、想定される事故、警備体制を説明しようとしないから、反発が広がっている」
 海上に展開するイージス艦の方がコストは安く、試射訓練もできて機動的という。「複雑な軌道を描く最新のミサイルに対応するなら、米国以外の迎撃システムの導入も検討すべきだ。米国の言いなりに装備を購入し、首相のお膝元の山口だけでも配備を強行しようというのは、責任ある政治とは言えない」と非難した。

デスクメモ
 最強の矛で最強の盾を突いたらどうなる―。「矛盾」はつじつまが合わないことを表す故事成語だが、2カ所の盾(イージス)の計画でそんな事態が相次ぐ。問題が収束しないのは、住民がそのおかしさに気付いているからだ。根源的な怒りを無視して、ごまかせる段階ではない。         (本)



膨張止まらぬ防衛予算
 対米配慮のゆがみ限界だ
2019年12月23日:毎日新聞

 防衛費の膨張が止まらない。2020年度予算案では過去最大の5兆3133億円となった。
 ただし、これでも小さく見せかけた数字だ。並行して編成された19年度補正予算案に4287億円が計上された。当初予算額を抑えるため前年度の補正予算に前倒しする手法が近年、常態化している。
 米国から武器を購入する有償軍事援助(FMS)契約が安倍政権下で急増し、その支払いが後年度の財政を圧迫するようになったからだ。
 しかし、補正予算は突発的な災害などに対応するものだ。今回の補正にFMSの支払い1773億円が計上されたのは説明がつかない。
 その結果、19年度の当初予算と補正を合わせた防衛費は5兆7000億円に迫り、国内総生産(GDP)比は1%を上回る。同じ手法を今後も繰り返せば通年での1%超えがなし崩し的に続くことになる。
 背景にトランプ米大統領からの武器購入圧力があるのは明らかだ。FMS契約の予算額は19年度に7013億円まで膨らみ、20年度も4713億円が計上された。
 19年度のFMS契約を突出させた大きな要因は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」だ。導入決定を急いだにもかかわらず、配備地を決定できないまま、米側との契約だけが先行している。
 輸送機オスプレイは既に3機が陸上自衛隊に納入済みだが、配備地の調整が難航し、訓練は米国の海兵隊基地で行われている。
 戦闘機F35の大量購入を含め、いずれも首相官邸の主導で導入が進んだ経緯がある。運用方法は後付けで検討されているのが現状だ。
 防衛装備の開発・調達には時間がかかる。10年先を見通した戦略的・体系的な防衛力整備が求められるのに、トランプ政権への過剰な配慮がそれをゆがませている。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の台頭でアジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増しているというのはその通りだ。自国第一主義を強める米国はさらなる軍事負担を同盟国に求めてくるだろう。
 日本に対しては米軍駐留経費の大幅な負担増も要求する構えをみせている。その場しのぎの対応は限界を超えつつあると考えるべきだ。



民主主義、本当に限界か
 強権化する世界をあきらめない
2019年12月22日:朝日新聞

■記者解説 欧州総局長・国末憲人

 民主主義はなぜ、こうも色あせてしまったのか。
 1989年、ベルリンの壁崩壊と冷戦終結に、私たちは自由と平和、民主主義が息づいた世界の将来像を思い描いた。2019年、目前には荒涼たる風景が広がっているかのようだ。
 欧米の多くの国で、ポピュリズムが大手を振る。その手法を取り入れた指導者が、米国で野放図に振る舞い、英国では欧州連合(EU)離脱の旗を振る。民主化したはずの旧社会主義圏で権威的ポピュリスト政治家が政権を握り、社会への締め付けを強める。
 こうした政治家の多くは、「自分たちには大衆の支持がある」と開き直る。選挙で選ばれたことを根拠に自らの行為を正当化しつつ、司法軽視やメディア攻撃、少数派の排除など、民主主義を育んだ理念に逆行する主張や政策を展開する。

記事のポイント
・東西和解が生んだ民主化への夢。30年後の現実は権威的ポピュリズムが横行する世界
・東西左右の対立が薄れ、上下格差が拡大。アイデンティティーに頼る意識が強まった
・ただ、この傾向が目立つのはここ数年。歴史の大きな流れだと悲観するのはまだ早い

 「ポピュリズム」という言葉自体は19世紀からあるが、世界に広く認知されるようになったのは冷戦後の1990年代だ。イタリアのベルルスコーニ首相、フランスの国民戦線(現国民連合)ルペン党首、オーストリアの自由党ハイダー党首といった人物が当時、その代表として脚光を浴びた。
 2000年代には、イタリアやオランダなどで右翼ポピュリズム政党が台頭した。移民やEUなどを標的と定めて攻撃し、敵と味方を明確に分ける政治手法は、いずれにも共通する。
 ポピュリズム台頭を招いた背景には、米ソ、東西、左右といった冷戦時代の対立軸の薄れがある。代わって上下の格差が浮き彫りになり、グローバル化の進展がこれに拍車をかけた。
 もちろん、冷戦時代にも格差は存在したが、政党や労組、商工団体、農協といった中間団体が上下を結びつけていた。こうした組織が力を失い、行動の指針を失って途方に暮れる労働者や農民に甘言で近づいたのが、ポピュリスト政治家だった。
 ただ、当時のポピュリズムは、不平や不満を吸収するばかりで、具体的な理念や政策に乏しかった。政権担当能力は薄く、「放っておけば消える」(欧州大学院大学のハンスペーテル・クリージ教授)というのが、政治学の専門家の一般的な認識だった。
 しかし、2010年代に入り、ポピュリズムはアイデンティティーを理念の中心に据え、次第に政治イデオロギーへと変貌(へんぼう)。国家や民族の結束を呼びかけることで支持を結集する排他的、強権的な政治モデルを確立した。「白人米国人」「イングランド人」といったアイデンティティーを軸に支持を集めるトランプ米大統領やジョンソン英首相は、既成政党の枠組みを維持しながらこうした手法を取り入れた点で、その完成型といえる。

闘う相手が代わっただけ

 不安をあおるポピュリズムは、社会の変化が大きいほど支持も集めやすい。旧東欧諸国がその舞台となったのも、急激な民主化と市場経済の波に洗われ、近年は人口減や難民危機に苦しんだからだった。ポーランドでは保守政党「法と正義」の政権が司法や報道への介入を強化。チェコやブルガリアの政権も強権的な姿勢をとる。中でも、権威的ポピュリズムを体現するといわれるのが、ハンガリーのオルバン政権だ。
 ベルリンの壁が崩壊する前年の1988年、ハンガリーで社会主義体制に批判的な若者らが、政治団体「フィデス」を立ち上げた。その運動を主導した一人がオルバン・ビクトル氏。2010年に首相に返り咲いた同氏は、多数派の支持を背景に憲法裁判所の弱体化、メディア規制、大学への介入などを進める。
 こうした強硬姿勢に対するEUの目は厳しい。与党フィデスは今年3月、欧州議会で所属していた中道右派の欧州人民党(EPP)から無期限の加盟資格停止処分を受けた。
 民主化の闘士から、強権的ポピュリスト政治家へ。オルバン氏の変節ぶりは、民主主義の行き詰まりを象徴するように見える。もっとも、支持者にとっては逆に、同氏は首尾一貫して国家統合に向け奮闘する人物と映る。かつてはソ連、今はグローバル化やEUと、闘う相手が代わっただけだ。
 民主化後、ハンガリーは他の旧東欧諸国と同様に欧米の政治経済や生活のモデルを追い求めた。その結果、それなりの自由と繁栄を得たものの、多額の対外債務を背負うことになった。若者たちは大挙して旧西欧に流出した。
 「首相になったオルバンは、人々のこうした意識を変えようと試みました。ハンガリーの生活スタイルと伝統、キリスト教に基づいたアイデンティティーを確立しようとしたのです」
 ブダペスト・コルビヌス大学のランチ・アンドラス学長(63)はこう説明し、同氏の手法を擁護する。

見過ごせない暴走のリスク

 ただ、多数派のアイデンティティーから外れる人々は疎外される。少数民族ロマ人を支援するエトベシュ・ロラーンド大学(ブダペスト大学)のマイテニ・バラジュ政治国際研究所長(46)は「彼らを社会的に排除する傾向が強まり、民主化以前よりも状況は悪化している」と危機感を抱く。
 人々がアイデンティティーを通じて国家や社会に帰属意識を持つこと自体は、決して悪いことではない。アイデンティティーの共有は、対立や格差を時に和らげる。
 一方で、東西冷戦や上下格差とは異なる分断をもたらすこともある。英国では、EU離脱派の間でイングランド人としての意識が高まった結果、そうした発想についていけない残留派との溝が修復不可能なレベルに広がった。
 選挙そのものも今や、政策よりもアイデンティティーに左右される。それは、民主主義への信頼を低下させることにもなっている。
 宗教や民族に依拠するアイデンティティーが制御を失い、紛争や虐殺に発展した例も、枚挙にいとまがない。ポピュリズムがもてあそぶアイデンティティーも、いつか暴走を始めないか。私たちは今、冷戦時代以上に複雑で予想しにくい世界にいるのかも知れない。

悲観的な見方、実は少数派では

 歴史の評価は、そのナラティブ(語り口)に左右される。たかだか30年とはいえ、冷戦終結後の歴史の評価も、ナラティブ次第で大きく変わる。
 米ジョージ・ワシントン大学のホープ・ハリソン准教授は、「ベルリンの壁崩壊」に関する受け止め方を多数のドイツ人に自由に語ってもらい、分析した。その調査によると、2015年の難民危機前後で、ナラティブに大きな変化が見られた。それまで「我々こそが壁を崩した」と自らを英雄視していた旧東独市民は、「自分たちは壁の崩壊で犠牲になった」といった、右翼に多い言説を繰り返すようになった。30年を経ても解消されない東西ドイツの所得格差などに反発してのことだという。
 「ただ、こうした声はまだ、声が大きい少数派にとどまっています。市民の4分の3は、そんなナラティブなど信じていません」
 10月にロンドンで催されたセミナーで、ハリソン准教授はこう説明した。
 今、各国でしばしば耳にする「民主主義はもう限界」「冷戦後の世界は行き詰まった」といった悲観的なナラティブも、実は同様に、まだ少数派の見方に過ぎなくはないか。
 冷戦後の歴史は常に、明暗二面を抱えてきた。核軍縮への期待が高まりつつも旧ユーゴスラビアやルワンダで虐殺が起きた90年代、9・11米テロの一方で旧社会主義圏の民主化が進んだ00年代、ロシアの脅威再来と地球環境への意識定着が並行した10年代――。そこには「冷戦崩壊時には明るかったが今は不安だらけ」といった単線ナラティブに収まらない複雑さがある。
 権威的ポピュリズムや右翼も、30年の中でここ数年の間に急成長したに過ぎない。それが歴史の流れだと恐れおののくには早すぎる。冷静に世界を見つめ、個々の現象に丁寧に対応する姿勢を心がけたい。



(社説)
100兆円超予算 健全化遠い実態直視を
2019年12月21日:朝日新聞

 「経済再生と財政健全化を両立する予算」という、安倍首相の自己評価が空しく響く。
 政府の2020年度の予算案の総額は、当初段階で2年続けて100兆円を超え、大型の経済対策をとったリーマン・ショック時の決算を上回った。
 歳出増は、政権がこだわる政策に手厚く配分した結果だ。
 増税対策を主眼に置く2年限りの臨時・特別の措置では、河川の堤防強化など災害に対応する1兆円超の公共事業や、二つのキャッシュレス決済でのポイント還元制度に計5千億円あまりを投じる。
 首相自らが決めた幼児教育や保育、高等教育の無償化などには消費税の増収分から1兆7千億円を使い、防衛費も決定済みの計画に基づいて増やした。
 消費税率は10%になり、税収の総額も63兆円超と過去最大になった。それでも歳出とのバランスは崩れたままで、40兆円近くも足りない。
 第2次安倍政権は6年前の予算編成のときから「財政健全化との両立」を掲げ、発足以来、当初予算での新規国債の発行額を前年度より減らしてきた。
 だが、まやかしがある。
 今回入りきらない様々な政策は、1週間前の今年度の補正予算案に盛り込んだ。そして、半分以上を借金の返済に充てるルールが法律で決められている18年度の剰余金を全額、この補正と今回の当初予算案で使い切る。ルールの変更は、東日本大震災以来の異例の対応だ。
 しかも、国債発行額が前年度より少ないのは、あくまでも当初段階での話だ。年度途中で組む補正分も含めると、国債の発行額は直近の2年間、前年度を上回っている。
 当初での予算規模や国債発行を抑えるため、補正を毎年のように組む悪弊から、抜けきれない。予算の実際の姿は、健全化を誇れる状態からはほど遠い。
 歳出面は硬直化が著しい。
 全体の7割超を、高齢人口の伸びで増える社会保障費と、借金の元利払いに充てる国債費、地方自治体に渡す交付税で占める。一気に絞り込むことは極めて難しい。その上に政権が重視する政策を積み重ねれば、どうしても歳出はふくらみ続ける。
 歳入面は、低金利を前提に借金に寄りかかる。
 新たな分野に予算を振り向ける余裕は乏しく、公的サービスを安定的に維持することすら、危うくなりかねない。
 安倍政権は「消費税を10%に引き上げ、財政健全化に大きな道筋をつけた」という。ならば数字を取り繕うようなふるまいはやめるべきだ。首相は、財政のありのままの姿と進む道を、説明する責任がある。



防衛費最大に 膨張に歯止めかけねば
2019年12月21日:東京新聞

 二〇二〇年度の防衛省予算案は五兆三千百三十三億円となり、六年連続で過去最大を更新した。安倍晋三首相の下で防衛費は一転、増え続けている。際限なき膨張には歯止めをかけねばならない。
 防衛費は冷戦終結後、減少傾向が続いていたが、安倍首相が政権復帰後に編成した一三年度に増額に転じ、一五年度以降は過去最大を更新し続けている。
 防衛省は安全保障環境の急速な変化に対応したり、宇宙、サイバー、電磁波といった従来とは異なる領域での防衛力を整備するための予算と説明している。
 日本を含むアジア・太平洋地域では、北朝鮮や中国が軍備を増強するなど、緊張緩和が進んでいるとは言い難い。周辺情勢に応じて防衛力を整える必要はある。
 ただ、安倍政権による防衛力整備が、適切かつ節度を持って行われていると言えるのだろうか。むしろ、米国から必要以上に高額の防衛装備を買い込んだり、憲法九条で定められた「専守防衛」の範囲を逸脱する形で、防衛力整備が進んでいるのではないか。
 例えば地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」だ。レーダーや本体の取得は二基で二千四百億円余りと高額で、維持・運用費やミサイル発射装置、用地取得費を含めればさらに膨れ上がる。二〇年度予算案には関連経費百二十九億円を計上したが、地元の反対で配備地すら決まっていない。
 自衛隊はすでにイージス艦の迎撃ミサイルと地対空誘導弾による迎撃態勢を整えている。さらに巨額の投資をして、それに見合う効果があるのか、甚だ疑問だ。
 ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の事実上の空母化費用と、同艦で運用するF35B戦闘機六機分七百九十三億円も計上された。太平洋の防空強化が理由だが、そもそも日本の防衛に必要不可欠なのか。「攻撃型空母」の保有は憲法上も認められていない。
 イージス・アショアやF35B戦闘機など米国製の防衛装備は、米国が価格や納期の設定に主導権を持つ対外有償軍事援助(FMS)で調達され、防衛費を押し上げる大きな要因となっている。
 トランプ米大統領は米国製武器の購入拡大や米軍駐留経費の負担増を求めている。巨額の防衛装備購入の背景に、米政権からの購入圧力があるのではないか。適切かつ節度を持って行われるべき防衛力整備が、米政権への配慮で歪(ゆが)められてはいないか。国会論戦を通じた徹底的な検証が必要だ。



過去最大102兆円の予算案決定
 社会保障と防衛費膨張
2019年12月20日:朝日新聞

 政府が20日に閣議決定した2020年度の一般会計当初予算案は、総額が102兆6580億円と過去最高額になった。100兆円の大台を超えるのは2年連続で、19年度当初より約1兆2千億円増えた。財政健全化をめざすためだったはずの10月の消費増税を終えたあと、政府の財政はむしろたがが緩んだようにずるずると膨らんでいる。
 20年度予算案には総額だけでなく、「過去最高額」がずらりとならんだ。
 まず、税収だ。税率を10%に引き上げた消費税が通年分の収入として加わり、63兆5130億円を見込む。ただ、国内総生産(GDP)の伸びが、「民間予想より甘い」とされる実質1・4%を前提とした増収も織り込んでいる。
 増えた税収を吸い込んだのが、歳出全体の3分の1を占める社会保障費だ。総額は35兆8608億円で、19年度から一気に5・1%も伸びて過去最高を塗りかえた。幼児教育・保育の無償化や大学など高等教育の負担減への出費が主な要因。安倍晋三首相が17年に消費増税分の使い道を変えて導入した肝いりの政策だ。
 予定していた部分もある社会保障費の増加に対し、ほかの予算で切り込んで「メリハリ」を利かせた様子は乏しい。防衛費も6年連続で過去最高となり、5兆3133億円に達した。
 そもそも、今月5日には総事業費26兆円と第2次安倍政権下で有数の規模の経済対策を決めたばかり。当初予算案がまとまる1週間前には、4兆4722億円を追加で支出する19年度の補正予算案も閣議決定した。経済対策は当初予算案にも「臨時・特別の措置」として1兆7788億円が盛り込まれたが、補正予算に回して当初予算の出費を小さく見せかけた部分もある。今月決まった政府の歳出は実は102兆円にはとどまらない。
 20日公表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との言い方を維持した。それにもかかわらずここまでの出費に打って出る背景には、来年の景気の落ち込みへの危機感があるからだ。
 首相官邸関係者は「中国の経済が減速し、欧州が低迷したまま。国内は五輪後の落ちこみも懸念される」と解説する。17年10月の衆院総選挙から2年以上が過ぎ、政権が「次」を意識するタイミングでもある。
 財政再建を重視する立場の財務省も、ようやく実現した消費増税が、8%に引き上げた14年に続いて景気悪化の「主犯」とされるのは避けたかった。幹部は「消費増税後の経済の影響は、今後の消費税のあり方の論点になると思っている」。消費税への反感を高めたくないという事情が、予算が膨らむことへの切り込みを弱めた面がある。
 予算案の決定を受け、政府は国・地方を合わせた長期債務残高が20年度末に、前年から8兆円増えて1125兆円(対GDP比で197%)に達すると見込んだ。やはり過去最高額だ。(斎藤徳彦)

2020年度予算案に盛り込まれた主な事業は…

【暮らし・教育】
・低所得者世帯への大学などの高等教育の負担軽減     4882億円
・保育の受け皿整備                   1144億円
・児童虐待の防止対策                  1754億円
・就職氷河期世代の支援策                 199億円
・「診療報酬」を0.55%引き上げ           約600億円
【五輪・パラリンピックや観光】
・空港での顔認証による搭乗手続き体制の整備        約15億円
・五輪・パラリンピック選手支援の事業費          101億円
【農林水産】
・農林水産品の輸出を増やすための体制の整備         94億円
【環境】
・海洋プラスチックごみ対策                131億円
【外交・防衛】
・米国製ステルス戦闘機F35Bを6機購入する費用     793億円
【経済対策】
・マイナンバーカードを持つ人へのポイント還元策など   2478億円

「バイ・アメリカン」に応えて

 防衛費は19年度当初から1・1%増の5兆3133億円となり、安倍政権下の6年連続で過去最大を更新した。弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、中国の急速な軍備拡大に備え、米国からの高額な装備品の購入が続いている。
 海上自衛隊の護衛艦「いずも」の事実上の空母化となる改修費に31億円を計上。同艦で運用する米国製のステルス戦闘機F35Bを6機購入するために793億円をかける。中国などを念頭に太平洋の防空強化がねらいだが、トランプ米大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に応えるものでもある。
 また、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は米国から導入予定の2基分について、ミサイル発射装置などに129億円を計上する。航空自衛隊のF2戦闘機の後継機では、初めて設計開発費111億円が充てられた。
 高額な装備品の購入費は複数年にわたって分割払いする。「後年度負担」と呼ばれ、将来の予算を圧迫し、防衛費が膨らむ要因となっている。20年度の契約に基づいて21年度以降に支払う新規の後年度負担は2兆5633億円にのぼる。(山下龍一)

幼保無償化に3410億円

 今年10月からスタートした幼児教育・保育の無償化には3410億円をあてる。すべての3~5歳児と、住民税非課税世帯の0~2歳児の計約300万人が対象。地方の負担分と合わせると、計8858億円を投入する。無償化によって潜在的な保育ニーズが掘り起こされた影響もあり、政府試算よりも1千億円あまり膨らむ。
 政府は20年度末の「待機児童ゼロ」を掲げており、保育の受け皿整備などに1144億円をあてる。保育士のなり手を増やすため、学費の貸し付けなども行い、認可外保育施設の質の確保・向上にも使われる。
 来春施行される改正児童福祉法などに基づいた児童虐待の防止策として、児童相談所の体制強化などに1754億円を計上。虐待を早く見つけたり、子どもの一時保護を拒む保護者に対応したりするため、児童相談所に医師や弁護士、警察OBらの配置を進める。
 改正法では、親らが「しつけ」として体罰を行うことを禁じており、体罰によらない子育ての広報・啓発や、虐待をした保護者への再発防止プログラム実施なども推進する。(浜田知宏)

大学授業料減免など4882億円

 大学などの高等教育にかかる経済的な負担を減らす新制度が来春始まるのに合わせ、4882億円を計上した。「両親と本人、中学生」の一家4人世帯の場合、年収380万円未満が支援対象となるなど、51万人が授業料減免や給付型奨学金を受けられる。一方、いま減免措置を受ける国立大生の一部が新制度の対象外になることで、1万人が支援を打ち切られ、9千人が支援額を減らされるおそれがあったが、別に53億円を充てることで従来通りの支援が受けられるようになる。
 大学入試センター試験に代わって20年度から実施する大学入学共通テストの関連経費は14億円。英語民間試験の活用と、国語と数学の記述式問題の導入がともに見送られたことで、概算要求時の50億円から大幅ダウンした。
 私立高校の授業料の実質無償化をめざし、4248億円(19年度比539億円増)を盛り込んだ。生徒50万人が対象となる。小中学校教員の長時間労働の解消に向け、部活動指導や補習支援などをサポートする外部人材の派遣事業に62億円(同7億円増)を計上。小学校で来春から英語が教科になるのに合わせ、英語の専門教員を1千人増やす。(宮崎亮、矢島大輔)

国の予算編成

 政府が1年間の収入(歳入)の見通しに応じ、使い道(歳出)をあらかじめ決めるためにつくる。各省庁が次の年度の事業にいくら必要かを算出して要求し、財務省が査定する。例年、年末までに政府予算案を閣議決定し、翌年1月からの通常国会で審議・議決される。予算の使い方を変えたり、災害対応などで新たに使ったりする必要が出てきた場合は補正予算案をつくり、同様に国会の議決を受ける。予算案を出せるのは憲法の規定で内閣に限られる。


防衛予算案5.3兆円、過去最大
 高い米製品の購入続く
2019年12月20日:朝日新聞

 2020年度当初予算案の防衛費は、前年度当初から1・1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最高を更新した。今後5年間(19~23年度)の防衛費の伸び率を年1・1%とした昨年末の「中期防衛力整備計画」に沿った内容だが、トランプ米大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に応じ、高額装備品の購入も続く。
 防衛費の増加は第2次安倍政権発足後、8年連続となる。米国からの導入手続きが進む陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」には、発射装置の取得に115億円、調査費に14億円を充てた。ただ、防衛省のずさんな調査報告などを受け、政府内で秋田市内への配備について見直し論が浮上。もう一方の配備適地とされる山口県でも地元了解が得られておらず「特定の配備地を前提としていない」(同省)とした上での計上となった。
 また、米国製のステルス戦闘機F35A3機の購入費として281億円。同じく、F35B6機の購入に793億円を計上した。安倍政権は18年12月、F35を将来的に計147機体制とすることを閣議了解。これに先立つ日米首脳会談ではトランプ氏が安倍晋三首相に「我々の戦闘機を大量購入しつつあり、とても感謝している」と述べていた。
 安倍政権では、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が増加傾向にある。20年度のFMSを使った装備品の購入は契約ベースで4713億円。過去3番目に高い水準だ。
 高額な装備品は複数年にわたって分割払いされ、「後年度負担」となって将来の予算を圧迫する。20年度の契約に基づき、21年度以降に支払われる後年度負担は2兆5633億円に上る。河野太郎防衛相は20日の会見で「我が国の予算が決していい状況ではない。限界があるなかで、どう装備品の充実をやれるかしっかり考えたい」と述べた。(山下龍一)



時代の風
一線を越えた政権トップ
今だけ・金だけ・自分だけ
=藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員
2019年12月22日:毎日新聞

日本総研の藻谷浩介主席研究員=宮間俊樹撮影

 ラグビー・ワールドカップ(W杯)などの楽しい話題もあったのに、そして来年には東京五輪・パラリンピックも行われるというのに、まことに寒々とした年の暮れとなってしまった。気候ではなく、世相のことである。「目的のためには平気で一線を越える」という態度が、政権トップから世間の末端にまでまん延しているではないか。
 健全な人間、健全な組織は「この一線は越えない」という自主ルールを持っている。周りがどうしているかに関係なく、また法に触れる触れないという以前に、「これはやってはいけない」「やらない」という基準が、まず自らの中にあるのだ。公職選挙法違反がささやかれる政治家や、関西電力の経営陣などは、残念ながらそういう自己基準と無縁だったとしか思えない。もし日本中の政治家や経営者が彼らと同じようなレベルになれば、日本は秩序ある法治国家としての体をなさないことになる。
 昔は自らを律する者を大人といい、律せないのを子どもといった。つまり日本は、昔より子どもじみてしまったようだ。お受験教育で子どもに「大人になれ」と求めないばかりか、「とにかく点を取った者が偉い」と教えているのだから、「目的のために一線を越える」態度を育んでいるようなものだ。自分を律することができない「大人の顔をした子ども」ばかりになって、日本は大丈夫なのか。
 しかも嘆かわしいことに、一線を越える理由が、公のためでも未来世代のためでもなく、「今だけ」「金だけ」「自分だけ」のいずれか、もしくは全部なのだ。「桜を見る会」の問題で国会議員から提出を求められた公文書を、要求があってから「ルール通り」廃棄する行為も、「反社会的勢力の統一的な定義は困難」と閣議決定して批判をかわす行為も、不明朗な「公金」支出をしてしまった「自分」の身を守って「今」をしのぐ所作である。
 それでも安倍晋三政権を支持する有権者は、なお4割程度いるという。だがその4割の中にたとえば、「異次元の金融緩和で名目成長率3%を達成」と期待し続けている人や、「アベノミクス新三本の矢」を覚えている人は、もはやいないのではないか。他方で「株価が高値を続けている限り辞めなくてよい」と、これまた「今だけ・金だけ・自分だけ」の発想で支持層になっている人は、結構な数がいるように思える。
 公金を投じた株価維持が、ここまで支持固めに役立つとは、政権関係者自身も驚いているのではないか。公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、運用額の半分を内外の株式市場に投資している。米国では一般国民を対象にした年金での株式運用が禁じられているが、日本の現政権は軽々と一線を越えた。日銀も上場投資信託(ETF)を年間6兆円購入し、保有残高は30兆円に近づいている。このままでは主要上場企業の筆頭株主が軒並み日銀になってしまいそうだ。もし株価が下がれば年金や日銀は大打撃を受けるが、そこで株式を売却するとさらに株価が下落するので、もうにっちもさっちもいかなくなってしまう。
 ネットの政治ニュースの末尾には「政権のやり方はひどい。でも安倍首相の代わりはいない」「野党はもっとどうしようもない」というコメントがあふれかえっている。これらの投稿は政権応援団の高等戦術だと思うが、それにしても書いている人間たちに問いたい。野田佳彦前首相に桜を見る会のような公私混同はあっただろうか。人格識見で石破茂・元自民党幹事長が首相に劣るだろうか。「どうしても山口から首相を選ばなければならない」なら、林芳正・元文部科学相ではどうか。さらにいえば、実質的に政権を動かしている菅義偉官房長官や二階俊博幹事長を表でも首相に据えたとして、今以上に何かまずいことでもあるのか。
 一つ指摘したい。世界経済が今後バブル崩壊局面になれば、一線を越えて副作用だらけの経済政策を乱発したツケが回ってくるだろう。その責任を首相自身と取り巻きにとってほしいと、政権外の有力政治家や、多くのまともな経済人は考えているのではないか。「『好景気のうちに辞め逃げ』は許さない。政策の結果責任は今後も問われ続ける」と内心思う人は、この年の瀬に確実に増えている。



【主張】来年度予算案 歳出の改革は置き去り
2019年12月21日:産経新聞

 国内外の経済情勢に目を配り、機動的な財政出動で景気を支えるのは国の予算の大きな役割である。だからといって、野放図な支出が許されるわけではもちろんない。
 一般会計総額が102兆6千億円を超えた過去最大の令和2年度予算案は、消費税率引き上げ後の経済活力維持に重きを置いた。一方で逼迫(ひっぱく)した財政を立て直す視点は乏しい。
 経済対策に絡む予算の確保が必要だとしても、その政策効果を吟味する作業は欠かせない。既存の歳出を見直し、選択と集中を大胆に進める改革も必要だ。
 こうした努力の跡がみられないのでは、いくら政府が経済再生と財政健全化を両立したと自賛しても説得力はない。安倍晋三政権はこの点を厳しく受け止め、経済を効果的に底上げする財政運営に努めてもらいたい。
 経済対策関連は1兆7千億円超である。政府は消費税増税後の景気低迷を防ぐための予算を通常とは別の臨時・特別措置と位置づけている。元年度も同様の措置があり、2年度までの2年でこれを終えるというのが政府の考えだ。
 だが、いったん膨らんだ予算を元に戻すのが大変なことは、リーマン危機で一気に規模を拡大した予算が、その後も増加の一途をたどったことでも明らかだ。財政規律が緩まぬよう、政府・与党は認識を共有しておくべきである。
 消費税収が増えるため新規国債が減り、国債依存度は31・7%まで低下した。それでも借金体質は同じである。元年度は法人税の減少などで2兆円以上も税収見込みを引き下げ、先の補正予算案で赤字国債発行を余儀なくされた。景気次第でこうしたリスクがあることも念頭に置く必要がある。
 個別分野では、歳出の3分の1を占める社会保障関係費が高等教育無償化などの新たな施策によって大幅に増えた。薬価改定などにより、いわゆる自然増は高齢化に伴う4千億円超に抑えたが、歳出に切り込むめぼしい改革を新たに講じたわけではない。
 公共事業も経済対策で積み増した。ただ、人手不足が深刻化する中で円滑に消化できるのか。不十分なら政策効果も減じよう。
 財政に余裕がないと、経済危機や大規模災害、安全保障上の有事などで機動的に動けない。その意味でも不断の財政構造改革が必要なことを忘れてはならない。



20年度予算案
 「100兆円」は持続可能なのか
2019年12月21日:読売新聞

 政府の2020年度予算案が決まった。一般会計の総額は102・7兆円で、過去最大だった19年度より1・2兆円増えた。当初予算での100兆円超えは2年連続である。
 今回は、経済対策のための臨時措置として1・8兆円を計上しているとはいえ、予算の膨張を漫然と続けるわけにはいくまい。財政規律をいかに引き締め直すか、課題を残したと言えよう。
 歳出の3分の1を占める社会保障費は、前年度比1・7兆円増の35・9兆円に達した。高齢化による自然増のほか、幼児教育・保育や高等教育の無償化の費用がかさみ、これまでで最大となった。
 22年から団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、社会保障費の増加は加速する。持続可能な社会保障制度の実現に向け、改革を急ぐ必要がある。
 公共事業費は、前年度並みの6・9兆円を確保した。橋や道路などの老朽化対策や、ダムや堤防の増強、川底の掘削など、災害復旧と防災に重点的に取り組む。
 人命に直結するインフラの改修や整備は優先すべきだ。だが、国土強靱きょうじん化に名を借りた不要不急の事業は避けなければならない。予算審議で精査してもらいたい。
 20年度の税収は、前年度当初より1兆円多い63・5兆円を見込んだ。10月の消費増税などで押し上げられ、過去最高となった。
 気がかりなのは、税収の前提となる成長率について、政府が実質で1・4%と、民間予想を大きく上回る楽観的な見通しを示していることだ。それでも国債の新規発行額は32・6兆円に上る。
 19年度の税収は当初の見込みから2・3兆円程度下方修正され、赤字国債の追加発行を余儀なくされた。税収は、手堅い経済予測をもとに見積もるべきである。
 国と地方の長期債務残高は1100兆円を超え、国内総生産(GDP)の2倍程度と、主要国で最悪水準だ。政府は25年度に基礎的財政収支の黒字化を目指すが、改革が進まなければ、2・3兆円の赤字が残ると試算される。
 安倍首相は7月、消費税の再増税について、「今後10年くらいは必要ない」との認識を示した。だが、厳しい財政事情を考えれば、消費税率のさらなる引き上げを封印できる余裕はなかろう。
 幸い、国内の雇用は安定し、政府は「緩やかに回復している」との景気判断を維持している。
 今のうちに、本格的な歳入・歳出改革に着手しなければ、財政再建は遠のくばかりである。



【主張】
全世代型社会保障 給付抑制から目そらすな
2019年12月23日:産経新聞

 ■支え手増やす雇用改革進めよ

 人生100年時代といわれる高齢社会が本格化している。一方で少子化により社会保障の支え手である現役世代はどんどん減ってきた。放置すれば暮らしを支える社会保障制度が立ちゆかない。
 この国難をいかに乗り越えるのか。政府の全世代型社会保障検討会議に求められるのは、長期的な視点に立った戦略であり、これを具体化する改革案である。
 その点で先の中間報告は、いかにも踏み込み不足である。負担増と給付抑制の両面で、痛みを伴う改革に真正面から向き合う必要があるのに、打ち出された方策は総じて甘さが目立つ。特に給付抑制はほとんど手つかずだ。これでは安心できる未来を描けまい。

 ≪「嵐の前」に制度整備を≫

 高齢者向けに偏りがちな政策体系を改め、現役世代を含む全世代型とする安倍晋三政権の発想は正しい。子供や孫の世代も安心して医療や介護、年金などの社会保障サービスを受けられるようにしなければならない。そのためにどうするかである。
 日本は「中福祉、低負担」といわれる。給付と負担の乖離(かいり)が社会保障制度の根本的な問題だ。
 給付と負担のバランスを取るには、支払い能力に応じて負担増を求め、真に必要な人に重点的にサービスを行う改革を加速するほかない。これが基本である。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者入りする令和4年から急伸する。その前の3年間は「嵐の前」と認識したい。
 中間報告は医療分野で、75歳以上の高齢者のうち、一定所得以上の人の窓口負担を2割とし、それ以外を1割とする方針を盛り込んだ。線引きは、来年6月の最終報告までに詰めるという。
 医療保険制度を支える現役世代の過重な負担を考えると、所得に応じて2割を求める改革は避けて通れない。いたずらに高齢者が受診に二の足を踏むことがないよう制度設計には万全を期したい。
 2割負担をめぐる与党内の議論は、1割を併記するかどうかでもめた。だが、大切なことは、一定の負担増はやむを得ないと国民に丁寧に説明することである。そこから目をそむけてはいけない。
 残念なのは、医療保険制度を維持する上で極めて重要な給付抑制に踏み込んでいないことだ。
 中間報告は、「大きなリスクを支えられる公的保険」とうたう一方、小さなリスクの見直しに触れていない。例えば、湿布薬や保湿剤など、市販で手に入る薬を公的保険の対象から外すことも検討すべきだろう。
 介護分野は物足りない。介護サービス利用者の自己負担について2割負担の対象者を拡大する議論は先送りされた。要介護度が低い利用者に提供される家事援助の見直しにも触れていない。

 ≪負担増への理解を促せ≫

 年金では、パート労働者の厚生年金適用を拡大する。これまで501人以上の大企業で働く人は一定時間以上働けば厚生年金に加入できたが、これを順次拡大し、最終的には51人以上の中小企業まで対象を広げる。
 本人の老後の年金額が増えるだけでなく、年金制度に加入する全ての人の年金額が改善される効果がある。ただし、中小企業にとっては保険料の負担増だ。適用拡大をさらに進めるには中小企業の理解を得る努力が欠かせない。
 中間報告で重要なのは、医療や介護、年金とともに、労働を柱の一つに位置づけたことだ。支え手の減少傾向を和らげるためにも、高齢者や女性の労働参画を促す意義は大きい。
 中間報告は「雇用の期間を縦に延ばすとともに、雇用の選択肢を横にも広げていく」と明記し、企業に70歳までの就業機会を確保するよう努力義務を課すとした。具体的には定年廃止や70歳までの定年延長などを求めるという。
 日本の高齢者の就業意欲は世界的にみても高く、健康な人もたくさんいる。年齢にかかわらず働きたい人が働ける環境を整える改革は、人生100年時代を迎えた日本に欠かせぬ取り組みだ。
 もちろん、働き手を増やす改革だけで、明るい未来を描けるほど日本の社会保障制度は安泰ではない。大事なのは、医療、年金、介護、雇用の抜本的な改革を一体的に進めることである。

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