拡大する教育格差

最近、OECDの調査で日本の公的教育費が最下位と発表された。今までも、ほぼ最低で、「日本の教育はコストパーフォーマンスが良い」と評価されてきた。これは、個々の教員のブラックな働き方によって支えられてきたことで、喜べることではない。また、国の教育支出は低くても、私的教育費負担は高く、教育格差の基調が変わることなく維持されている。
国際的にも「日本の教育の持続可能性を危惧する」という声が上がっている。
さらに、日本の学校には自由がなく、当事者の子どもたちが意見表明することも憚られる空気がある。前文科相の「高校生の政治談議はいかがなものか」というツイートも、その証明だ。若い教員も、無難に授業を進めようと、自分なりに勉強したり、工夫しようという意欲が下がってきている。
いよいよ日本の教育も終末期に近づきつつあり、文科省は20年以上前から、日本の教育が世界標準からズレて(後れて)いることに危機感を持ち、大学入試改革や「ゆとり教育」「アクティブラーニング」などさまざまな政策を進めようとしている。
高校生の危機感を、事務所に「教育勅語」を掲げるという萩生田光一文科相が理解し共有できるかは疑問だ。

教育への公的支出、
日本は35か国中最下位…OECD調査
2019年9月11日:リセマム













 2016年の初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、日本が2.9%と、35か国中最下位であることが、OECD(経済協力開発機構)が2019年9月10日に発表した調査結果より明らかになった。

 OECDの報告書「図表でみる教育2019年版」(Education at a Glance 2019)は、世界各国の教育の現状を測った比較可能な統計データを収録。OECD加盟36か国のほか、アルゼンチン、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を分析している。

 2016年の初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、「ノルウェー」が6.3%ともっとも高く、「フィンランド」5.4%、「ベルギー」5.3%、「スウェーデン」5.2%などが続いた。一方、「日本」は2.9%と比較可能な35か国中で最下位、OECD諸国平均は4.0%、EU23か国平均は3.9%だった。

 2018年にはOECD諸国平均で25~34歳の人口の44%が高等教育修了の学歴を有しており、2008年の35%と比べて9ポイント増加した。アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで行われた同報告書の発表会見で「若者が、予測不能で変化し続ける世界で生きていくために必要な知識と技能を身に付けることが、かつてないほど重要になっている。我々は、機会を拡大し、将来のスキルニーズへの橋渡しを強化して、あらゆる学生が社会で自分の場所を見つけ、その能力を最大限発揮できるようにしなければならない」と述べた。














入試改革中止求め高校生らデモ
 文科相は「実施に全力」
2019年9月12日:朝日新聞

 2020年度から始まる大学入試改革の中止を求める抗議デモが13日夜、東京・霞が関の文部科学省前であった。8月末から始まり、今回で3回目。ネット上の呼びかけで高校の生徒や教師ら約100人が集まった。「試験の公平性がないがしろにされている」などと訴えた。
 東京都の高校2年の男子生徒(17)はマイクを手に「高校生のための制度をつくってください」「まずは延期して、当事者を交えた議論をしましょう」と声を上げた。
 現行の大学入試センター試験に代わる大学入学共通テストでは、国語と数学で記述式問題が導入されるほか、英語では「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るため、民間試験が活用される。しかし、民間試験の試験日や場所、大学の活用状況の多くが未定で、住む地域や家庭の経済力による不公平さも指摘されている。全国高校長協会は10日、民間試験導入の延期と制度の見直しを求める要望書を文科省に提出した。
 一方、萩生田光一文科相は13日午前、英語民間試験の導入について「私の(就任した)時点で見直しや廃止をするというのは大きな混乱になるので、実施を前提に全力を挙げたい」と話した。毎週金曜に抗議デモが続いていることについては認識していなかったとして、「不安に思う気持ちを一定、私は理解します。限られた時間の中で不安を解消し、いい制度にできるように努力したい」と話した。
 民間試験のうち、日本英語検定協会による新型英検は18日に申し込みが始まる。最初の申込時に3千円の「予約金」が必要で、受験しない場合返金されないことに反発が広がっているが、萩生田氏はこれについて「柔軟な運用ができるように」英検側に求めると説明した。(宮崎亮)

高校での政治談議、柴山文科相
「適切な行為?」と投稿
2019年9月10日:朝日新聞

 2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される英語民間試験について、高校3年生(18)を名乗る投稿者がツイッターで、学校で昼食の時間に「政権の問題をたくさん話した」などと書き込んだことに対し、柴山昌彦文部科学相が「こうした行為は適切でしょうか?」と投稿した。ネットでは「何が悪いのか?」といった批判が相次ぎ、柴山氏は10日の会見で、「高校生の政治談議を規制するつもりはない」などと釈明した。
 発端は6~7日のツイッター上でのやりとり。柴山氏が英語民間試験の実施団体のうち、英検(日本英語検定協会)と協定書を結んだと報告した。この書き込みに対し、高3生と、教師を名乗る投稿者が英検への不満などについて数回やりとりをした。安倍政権に投票しないように周囲に呼びかけるよう高3生に求めた教師に対し、高3生は「私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたりしていたのできちんと自分で考えて投票してくれると信じています。もちろん今の政権の問題はたくさん話しました。笑」などと応じた。
 柴山氏は8日、高3生の投稿を引用し、「こうした行為は適切でしょうか?」とツイート。高3生は「友達とご飯食べながらこの政権はあそこはダメ、この党はここがダメと話し合うことは高校生はだめなんですか?」などと尋ねたが、柴山氏は回答しなかった。
 書き込みに対し、別の投稿者から「もしかして、政治の話をしない高校生が望ましいと思っているのですか? 18歳で選挙権があるのに???」「高校生が昼食の時間に政治の話をして、政権の問題点について議論する。全国の高校で当たり前の風景になってほしいですね」といった反論も相次いだ。柴山氏は9日、「学生が旬の時事問題を取り上げて議論することに何の異論もない。しかし未成年者(18歳未満に引き下げられたが高3はかなりが含まれる)の党派色を伴う選挙運動は法律上禁止されている」などと書き込んだ。
 2015年の公職選挙法改正では、投票できる年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた。文科省は総務省とともに政治意識を高めるための「主権者教育」を進める立場だ。ツイッターでは、「この学校で主権者教育がうまくいっている証拠。こういう高校生に『投票には行け、しかし政権批判は許さん』と言いたいのですか」といった指摘もあった。
 柴山氏は会見で、安倍政権に投票しないよう求めた教師の投稿などが、教育基本法や公職選挙法に反するとの見方を示した。その上で、高3生の投稿はそれに続く流れでなされたものだったと指摘し、「教育基本法に反するようなツイートを受けた形でまさしく生徒が行動している可能性がある」ため、「問題提起した」と説明した。
 旧自治省選挙部長を務めた片木淳弁護士(元早稲田大教授)は「高3生のツイートは冷静だし、特定の選挙で特定の候補者の当選を目的とする選挙運動にあたるようなものでもない。むしろ主権者教育の観点からみて模範的なことを言っている」と指摘。柴山氏のツイートについて、「教師のツイートに結びつけて疑問を呈するよりも、文科相として高みに立ち、政権への反対意見も含めて高校生が自由に議論するように促す姿勢を見せてほしかった」と話す。
 柴山氏は8月、埼玉県知事選で応援演説をした際、大学入試改革への反対を訴えた大学生を警察官が取り囲み遠ざける騒ぎがあったことを受け、「(演説会場で)大声を出すことは権利として保障されているとは言えないのではないか」との見解を示していた。(宮崎亮)

英語民間試験に反対の声次々
「当事者の声聞いて」
高校生ら文科省前で3回目の抗議集会
2019年9月13日:毎日新聞

「高校生の立場に立ってほしい。当事者を交えた議論を求めたい」と集会で訴える高校2年の男子生徒
=東京都千代田区の文部科学省前で2019年9月13日、中川聡子撮影

 2020年度から始まる大学入学共通テストへの英語民間試験導入に反対して文部科学省前で毎週行われている抗議集会が13日、内閣改造で文科相が交代後初めて行われ、ツイッター上の呼びかけで集まった高校生や教員ら約100人が参加。「入試改革絶対反対」「生徒の未来に責任を持て」と訴えた。【中川聡子/統合デジタル取材センター】

萩生田新文科相「ブラッシュアップしたい」

 内閣改造で文科相は柴山昌彦氏から萩生田光一氏に交代。萩生田文科相は記者会見で「間違っても生徒が実験台になるような制度であってはならない。問題があれば、制度を磨いて、国民、受験生の皆さんに納得いただける試験にブラッシュアップしたい」と述べた。

高校生「当事者を交えた議論を」

 文科省前での抗議集会は3回目。この日も高校生や高校教員が次々にマイクを握った。
 東京都内の高校に通う男子生徒は「高校生の権利や機会を保障していただきたい。学校でこの問題について先生とも話したが、決まっていないことが多すぎる。全員が反対だ」と話した。さらに、萩生田氏の発言に触れ「今から『ブラッシュアップ』している場合ではない。延期して当事者を交えた議論をしましょう」と訴えた。
「未来に問題を先送りすることになる」

「入試改革絶対反対」と声を上げる集会呼びかけ人の元高校英語教諭、田中真美さん(右端)ら
=東京都千代田区の文部科学省前で2019年9月13日、中川聡子撮影

 別の男子生徒は「制度の不備はまさに目の前にある。この抗議の声は、不安とか杞憂(きゆう)とか、そういう類いのものではない。(民間試験導入の目的とされる『聞く、話す、読む、書く』の)英語4技能を測るという理念にも全くそぐわない。自分一人だけの問題ではない。このまま実施されたら、未来に問題を先送りすることになる」と、民間試験導入の中止を求めた。
 また、教員の一人は「入試制度への信頼が損なわれる事態だ。生徒から不満の声が上がり、現場は混乱している。英語力の向上という点からみても、試験制度を変えればいいという考え方はあまりに短絡的だ」と批判した。

柴山氏への抗議が発端

 この集会は、8月24日に選挙応援で演説中の柴山氏に、都内の大学生が入試改革反対を訴えたことがきっかけだ。元高校英語教員の田中真美さん(52)がツイッター上で集会を呼びかけ、毎週金曜日に行われるようになった。田中さんは13日の集会で「柴山大臣は終始不誠実な態度で、問題を何一つ解決せず去った。愚策を強行する大臣はいらない」と訴えた。
「入試の公平・公正損なう」高校も反発
 民間試験は、英検やGTECなど7種類。現在の高校2年生が最初に受験する世代となる。来年4~12月に2回まで受験し、その成績が志望大学に提供され合否の判断材料となる。しかしいまだに試験会場と試験日を明示している実施団体はなく、大学側も多くは民間試験を活用するかどうか未定としている。
 また、性質が違う複数の試験では公平な選抜ができない▽検定料が6000円前後から2万円以上と高額で、経済格差が影響する▽会場がない地方の生徒が不利になる――との懸念もある。10日には、全国高校長協会が民間試験活用の延期を求める要望書を文科省に提出するなど、制度見直しを訴える動きは広がっている。

高校生が友人相手に政権批判、違法ですか? 
柴山文科相のツイートに波紋広がる
2019年9月10日:毎日新聞









閣議に向かう柴山昌彦文部科学相=首相官邸で2019年9月10日、川田雅浩撮影

 高校生が友人相手に政権批判をするのは違法? 安倍晋三政権に批判的な教員と高校生のツイッターでのやり取りについて、柴山昌彦文部科学相が異議を唱えたことに波紋が広がっている。柴山氏は9日、昼休みに現政権の問題について話しているという高校生の投稿に対し「未成年者の選挙運動は禁止されている」とコメント。教員がツイッター上で高校生に安倍政権に投票しないよう呼びかけたことについても、教員の選挙運動を禁じた公職選挙法137条の「(違反)誘発につながる」と警告した。本当だろうか。【吉井理記/統合デジタル取材センター】

「こうした行為は適切でしょうか?」

 発端は、2020年度の大学入試への英語民間検定試験導入を巡る柴山氏のツイートに、私立高校教員や高校生を名乗る人たちが反対意見を述べたことだ。
 やり取りの中で、教員は高校生に「次の選挙ではこの政策を進めている安倍政権に絶対投票しないように周囲の高校生の皆さんにご宣伝ください」と返信。高校生は「私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたので、きちんと自分で考えて投票してくれると信じている。もちろん今の政権の問題はたくさん話しました」と応じた。
 このやり取りを見ていた柴山氏、リツイートで「こうした行為は適切でしょうか?」と疑問視。この問題を報じたメディアにも触れて「公選法137条や137条の2の誘発につながることについて一言もコメントがない」とたたみかけ、「学生が時事問題を取り上げて議論することに何の異論もない。しかし未成年者の党派色を伴う選挙運動は法律上禁止されている」とコメントした。
専門家「教育現場の萎縮を招きかねない」
 公選法137条は、教員は「学校の児童、生徒、学生に、教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない」としており、137条の2は「18歳未満の人は選挙運動はできない」と規定している。
 つまり、柴山氏が言いたいのは、教員が見知らぬ高校生に「安倍政権に投票しないよう意見を広める」よう要望する、あるいは高校生が自分で友人らに広めるのは選挙運動にあたり、違法である、ということだろう。
 この見解に「それは飛躍しすぎだ」と苦言を呈するのは、日本教育学会会長で政治と教育の問題に詳しい広田照幸日大教授である。
 選挙運動とは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」(総務省ホームページ)を指す。広田教授は「教員と高校生とのやり取りのどれを取っても、いつの選挙で、だれを当選させるためなのか、全く特定されていませんし、党派色もない。137条、137条の2についても、違反にあたる要件を全く満たしていない。それなのにこういうことを軽々に発言するのは、若者の政治参加や教育現場に萎縮を招きかねません」と指摘する。

文科省作成の「違反事例」にも該当せず

 文科省自身、選挙権年齢を18歳に引き下げる改正公選法が成立した15年、総務省とともに作成した手引「私たちが拓(ひら)く日本の未来」の中で、柴山氏が指摘した137条違反に当たる例として、教員が授業中に特定候補者に投票するよう働きかける▽教員が児童や生徒らにポスターを張らせ、特定候補者の氏名を連呼させ、あるいは応援演説をさせる▽児童や生徒を通じ、保護者に特定候補に投票するよう働きかける▽教員が保護者会などで選挙運動する――の五つを示した。どれも柴山氏が問題視した教員らのやり取りとはほど遠い。
 総務省の元キャリア官僚で、公選法に詳しい元早稲田大教授の片木淳弁護士も「『選挙運動』の定義を読めば明らかです。137条とは関係ありません」とバッサリ。
 「選挙は民主政治の要です。だからこそ、人々の萎縮を招かないよう、『選挙運動』とは何か、厳格に定義されてきた」としたうえで「18歳選挙権のスタートとともに、政治を自分のこととして考える『主権者教育』がますます大切になっている。なのに当の文科省のトップが、萎縮を招きかねない発言をするのはどういうことか。何かを言わせないようにするより、言って議論をするほうがずっといいはずです」

記者の目
政治家の劣化が表すもの
 長期政権に欠ける緊張感
=松田喬和(客員編集委員)
2019年9月13日:毎日新聞

参院選の結果を受けて記者会見に臨む安倍晋三首相
=東京都千代田区の自民党本部で2019年7月22日、川田雅浩撮影

 相次ぐ政治家の暴言や不祥事に接すると、「政治の劣化は政治家の劣化によるもの」と思われてならない。最近の例をみても、岩手県出身の自民党衆院議員のパーティーで「復興以上に議員が大事」と発言した五輪担当相が辞任。安倍晋三首相らの地元の公共事業で「(首相らの意向を)そんたくした」と広言した副国土交通相も辞任した。「口利き金銭要求」と週刊誌に報道された厚生労働政務官が辞任したのは記憶に新しい。
 国会内の書店に顔を出し、国会議員の読書傾向を尋ねたところ、「かつての新人議員は、議員会館の事務所に六法全書や大型の国語辞典をそろえていたが、そうした美風は薄らいでしまった」と店主が嘆いた。本に親しむ姿は議員からも失われつつあるのか。
優れた指導者が持つべき要件は
 平成から令和への転換期に合わせるように、かつて活躍した政治家の人物伝が出版されている。歴史学者の戸部良一氏が著書「昭和の指導者」で取り上げた55年体制確立後の指導者は、田中角栄、中曽根康弘両首相。ノンフィクション作家の保阪正康氏は、著書「続 昭和の怪物 七つの謎」で田中と社会主義、後藤田正晴と護憲を論じた。ジャーナリストの田原総一朗氏は、著書「対峙」の中で、田中、中曽根、竹下登、小泉純一郎、岸信介各首相を「政界の怪物」と評している。
 本格的な政権交代が実現した1993年以後は多くが短命政権のため、語り継がれるレガシー(遺産)を残せていない。唯一の例外が、郵政民営化を掲げた小泉元首相だろう。
 戸部氏は優れた国家指導者の要件として、歴史的構想力、理想主義的プラグマティズム(実用主義)を挙げる。その上で、「チャーチルと同じように、歴史において自分が果たすべき役割を自覚していたのは吉田茂」とし、経済大国として新たな国家像が求められる時代に首相に就いた中曽根氏は「欧米の文化に引けを取らない日本文化によって国のアイデンティティを確立することに、自らの歴史的使命を見出した」と記している。
 政治家の劣化の影響をどう見るか。通産官僚OBで、自己改革に失敗して敗戦に至る戦前の日本を描いた著書がある斎藤健元農相に聞くと、次のような答えが返ってきた。「政界、官界、経済界など、あらゆる分野で劣化は見られる。平成は平和で『宿題をしない夏休み』だった。令和には課題が山積している」
 時代が傑出した指導者を作るのか、それとも傑出した指導者が時代を作るのか。それは容易に答えが得られない課題だ。それでも「自民1強」「安倍1強」の「ダブル1強」時代到来でコンセンサスを求める政治潮流が衰え、「決められる政治」のもとで「そんたく政治」が横行している。

退陣の記者会見に臨む佐藤栄作首相(中央)に抗議して退席する新聞記者団
=首相官邸で1972年6月17日

多様性を認める保守再生が必要
 谷垣禎一前自民党総裁と若手ホープの小泉進次郎衆院議員の対談を司会する機会があった(詳報は本紙8月14、15両日朝刊に掲載)。7月の参院選から、くむべき教訓を尋ねた。谷垣氏は沖縄返還というレガシーを残し、安倍氏が超えるまで戦後最長となる7年8カ月の在任記録を作った佐藤栄作政権を引き合いに出した。「長くなると、もう『佐藤辞めろ』という感じがあった。安倍首相にも、どうしてもそういう空気が出てくる。政権を担当する勢力に緊張感の欠如が生じないか。それをどう乗り越えていくか」と政権の課題を直言した。
 政権の求心力が弱体化すると、政治家の劣化が目に付く傾向がある。佐藤内閣の末期にも閣僚らの舌禍事件が相次いだ。また高度成長のツケともいうべき公害問題が頻発、大都市圏を中心に革新自治体が次々に誕生した。最後には自民党両院議員総会での退陣表明後、記者会見に臨んだ佐藤自身が新聞記者を排除する異様な行動をとった。
 そうした歴史も踏まえつつ谷垣氏は、今後の政策課題として「貧富の差が大きな社会問題になった。もう一回所得再配分をしっかりやらなければ」と新自由主義的な経済の見直しを提唱した。小泉氏は「日本社会に『分断の芽』を感じた」と参院選を総括し、「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」などの新勢力躍進に「自分たちが聞けていない声がまだまだある」と反省の弁を口にした。
 谷垣氏はさらに高齢化対策として、自らの車椅子生活者としての視点から「地域社会の中でいろんな人が支えていく仕組みをどうするかが問題だ」と指摘。小泉氏は「支える側と支えられる側を固定化せず、多様な生き方、働き方を後押しする社会保障改革」に言及した。
 政権末期現象は、86年7月の衆参ダブル選に圧勝、後継者を自分の指名で決められた中曽根政権でも顕著だ。「レガシー作り」として売上税の導入を柱とする税制改革案を提出したが、野党の抵抗にあって廃案に追い込まれた。
 安倍首相は先の内閣改造で17人の閣僚を交代、小泉氏を環境相に起用した。だが、安倍色が強い布陣では小泉人気が消される恐れもある。多様性を認め合う保守への再生が不可欠だと痛感する。

英語の民間試験、大学6割超が問題視
 朝日・河合塾調査
2019年9月15日:朝日新聞

 2020年度から始まる大学入学共通テストで英語の民間試験を活用することについて、「問題がある」と考える大学が3分の2近くにのぼることが、朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」でわかった。昨年の調査よりも2割近く増えた。同時に実施した高校への調査でも、9割近くが「問題がある」と回答。仕組みが複雑なことや、指摘される課題が解決される道筋が見えないため、大学・高校ともに不安が高まっているようだ。
 調査は今年6~7月、大学は761校、高校は全日制課程がある国公私立高校4686校を対象に実施した。大学は90%に当たる683校が回答し、高校は20%に当たる959校が回答した。
 民間試験を活用することへの考えを大学の入試担当者に2択で聞いた結果、「問題はない」が31%、「問題がある」が65%、未回答が4%だった。「問題がある」は昨年の46%から19ポイントも増えた。
 一方、高校の主に進路指導担当者の回答は、「問題はない」は10%だけで、「問題がある」は89%に達した。民間試験の成績を活用するケースが多い国公立大に進学する卒業生の割合が高い高校ほど、「問題がある」と回答する割合が高かった。(増谷文生)

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